売れているわけではないがそれなりに依頼も来る作家である星子。高校生の娘・拠の進路問題に頭を悩ませたり、親友の志保がプライベートではいろいろと問題が起きているはずなのに、いざ顔を合わせると平気そうに振舞っていることがひっかかったりしながらも、現在は雑誌「婦人公論」でのSF小説連載に勤しんでいた。そんな中、星子は偶然知り合った大学生・称と一緒に映画を観に行くように。最初は映画だけだったのだが、次第に食事、居酒屋、カラオケと一緒にいる時間が増えていき、ついにキスまでされてしまい……。
表紙に大きく「婦人公論連載小説」と銘打たれている通り、実際に2019〜2020年にかけて「歌を友に/レジャーをともに」のタイトルで連載されていた長編作。40代のシングルマザー・善財星子の恋と友情と子育てを描くラブコメ小説(!?)となっている。
親友の志保と健康ランドでくつろいでいるさなか、年下の男からメッセージをもらって「イーッヒッヒ」と笑う(「ねるねるねるね」のCMのマネらしいが誰も気付いてくれない)。それはなにかを誤魔化したい時のわざとらしい笑い声で、志保はただの妙な振る舞い程度にしか思っていないが、娘はそれを見抜き、真似して自分も同じように笑ってみたりする。「あぁ」というフレーズが入っている曲縛りでカラオケに興じる。娘の副担任がなぜかドローン操縦とゲームが得意であることを知る。娘が急に理系を専攻し、かと思ったらすぐに文系に戻りたがったり、通っている塾の職員と付き合っているらしいという噂を聞きつけ動揺する。そんな日常に不意に飛び込んでくる年下の「友人」、称の存在。そして、未来へタイムスリップしてしまった青年が主人公の物語を、あろうことか「婦人公論」に連載していること。何気ない日常の中に潜む問題の種を、時に敏感に拾い、あるいはわかっていてスルーすることもあるが、もちろんいつでもうまくいくとは限らない。それはきっと星子や志保の世代でも、拠や称の世代でも、変わらず起きることなのだろう。
最初は世代(あるいはあからさまに年齢そのもの)の間にある壁を意識していた星子だが、次第にそんな壁はないことに、あるいは乗り越えられることもあるということに気付き始める。自分だけでなく、誰しもの進む先には「未来」があるということは間違いのないことで、それがどんなものかわからないということについては、老いも若きも関係ない。そのことが、未来にタイムスリップした青年が主人公の物語「過去を歩く未来」にも反映されていく。そんな彼女の日常がとても楽しく、そして愛おしい。
















