唯一の血縁者である叔母・キャロルが結婚するという知らせを受けたジョー。しかも結婚のタイミングで、相手であるヘンリー・バスカヴィルがデヴォン州アルスター一帯を治めていた領主の跡継ぎであることが発覚し、彼女は男爵夫人になるのだという。結婚式のために単身アルスターを訪れたジョーだったが、そんな彼女を出迎えたのは、以前の幸せオーラ全開な姿から一転して、どこか元気のない様子のキャロルだった。なんでもヘンリーの結婚およびバスカヴィル家当主就任を歓迎していないという文面の手紙が届いたのだという。しかもヘンリーが継ぐことになったバスカヴィル家には、オカルトめいた伝説や儀式が存在しているらしく……。
男女逆転&現代版ホームズ・パスティーシュシリーズ、久々の第2弾。2019年に雑誌「ミステリマガジン」に連載された表題作と、同誌に2010年に発表された短編「ミシェール・ホームズとハロッズの段ボール箱」の2作が収録されている。
シャーリーはその職務、そしてなにより体調のこともあってロンドンを離れられないため、ひとりでアルスターへと向かうジョー。となると、今巻でのシャーリーは本格的に「安楽椅子探偵」としての活躍になってしまうのか……と思ったら、中盤でジョーを助けるためにシャーリーがやって来るのだから驚くやら嬉しいやら。常日頃から「自分には心がない」とのたまうシャーリーだが、なんだかんだ言ってジョーのことが心配なんだな、と思わず頬が緩んでしまう。そしてシャーリーの電脳探偵ぶりはロンドンを離れても精彩を欠くことはなく、どんどん事件の真相に近付いていくその手腕の鮮やかさには目を瞠るばかり。ジョーのシャーリーに対する評価も好意もうなぎのぼりなわけだが、その行為をあっさりといなすのもまたシャーリーらしい。それが本心からきているのかどうかはさておいて。
そんな中、またしても謎が深まるのはシャーリーではなくジョーのこと。前巻ではさらっと、アフガン時代にテロリストに拉致され、半年後にひとり生還したことや、テロ組織の頭領の愛人だったこと、そして軍医であることとは別にして人を殺しているらしい、ということが明かされていたが、今巻ではさらに、アフガン時代以前の彼女の生い立ちらしきものが示されている部分がある。おそらく人を殺すための方法を幼い頃から仕込まれていたと思しき彼女の正体は、いったい何なのだろうか。そしてシャーリーはそれを知ってもなお、彼女を「信頼」しているようだが、その真意はいったい。
◇前巻→「シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱」















