小山内さんに誘われ、名古屋にできた新しいパティスリーへ向かった小鳩くん。彼が誘われた理由は、その店で出される「ティー&マカロンセット」でマカロンが3種類選べるのに対し、小山内さんが狙っている味が4種類であるためだった。首尾よく注文した小山内さんは手を洗いにトイレへ向かったため、小鳩くんが席でひとり待つことに。するとその瞬間、外の時計台から5時を告げる音楽が鳴り響く。驚いて外を見ていた小鳩くんに対し、トイレから戻ってきた小山内さんは首をかしげるのだった――なぜなら席に届けられた小山内さんの皿には、マカロンが4つ乗っていたのだから……。(「巴里マカロンの謎」)
つい謎解きにふけってしまう小鳩くんと、つい復讐に燃えてしまう小山内さんのふたりが、ふつうの高校生――「小市民」目指して互恵関係を結ぶも、なかなかうまくいかない《小市民》シリーズ、約11年ぶりとなる新刊は番外編となる短編集。シリーズ1〜2巻の間に位置するエピソードで、2016〜2019年に雑誌「ミステリーズ!」に発表された中短編3本に、書き下ろしとなる「花府シュークリームの謎」が収録されている。
注文していないマカロンが増えた謎を解く表題作から始まり、小山内さんが隠した謎のCDのありかを探る「紐育チーズケーキの謎」、新聞部にて激辛揚げパン(正確には「ベルリーナー・プファンクーヘン」)を食べてしまった人物を探す「伯林あげぱんの謎」、そして捏造された写真のために停学処分をくらった少女を助ける「花府シュークリームの謎」……と、タイトルを見ているだけでもなんだかお腹がすいてきそう(笑)な本作。起きている事件もライトだったりそこそこヘビーだったりとバラエティに富んでいるのだが、相変わらずこのふたりは小市民になりきれていなかったりする。
特に「花府〜」での小山内さんの行動は苛烈のひとことで、たとえ本人が嫌がることが分かっていても、目的を果たすために、利用できるものは容赦なく利用していく。そして小鳩くんもそれを止めることなく見守っているし、自分もそれに乗じて推理を進めていく。なんだかんだ言ってこのふたり、あまりにも自分に正直すぎて、結局のところ「小市民」になる気はなさそうだなあ……という流れが面白かった。
◇前巻→「秋季限定栗きんとん事件(下)」


















