phantasmagoria

読んだ本のこと、それ以上に買った本のこと、ときどきライブのことを書き散らかしてみたりする。

カテゴリ: 西尾維新

西尾維新のデビュー15周年を記念して、「西尾維新大辞展」という展示イベントが昨年開かれたそうなんですが、東京・大阪に引き続き、年を越して岡山で開かれることになったので行ってみました。なぜ岡山。

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というわけで今日の朝イチで天満屋に行ってきました。したらば会場からはみ出る長蛇の列。まだ開店して数分しか経ってないのに。おそるべし西尾維新……と慄きつつ会場入りしたわけですが、まあわかってはいたけど小説家の展覧会だからして、作品を辞書形式で展示してるわけです。結構天井近くから足元まで文字がびっしりのパネルが、さながら迷路のようそこここに立っています。ただでさえ読むのに時間がかかるうえ、音声ガイド(キャラ別で3種類ある)を借りてる人はそれを聞き終わらないと次に進めないので、序盤はなかなか前に進めませんでした(笑)。

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一応デビュー当時からリアルタイムで西尾作品を読んでるわたくしですが、手を付けてないシリーズや途中で脱落したシリーズもあるので、全部が全部わかるというわけでもありません。とはいえキービジュアルを見ればわかる通り、やはりメインは戯言と物語と忘却探偵なので特に問題もなく。すごいなーと思ったのはデビュー以降の作品(漫画含む)をずらっと並べ、その上に年表&書き記した文字数グラフをパネルにしている展示。これとは別に作者の1日のスケジュールが3パターン(通常・旅行中・漫画原作)掲示されていたのですが、それとあわせて考えるとますますすごい。というか旅行中にもしっかり執筆時間が入ってるのは驚きました。まあしょっちゅう旅行されてるみたいなので、旅行中も仕事しないとここまで本は出せないよなーということで。

で、せっかくなのでちょこちょこ買い物もしてきました。パンフレット(と言いつつ布張りのかなりしっかりしたやつ)と、友のアクリルスタンド(けっこうでかい)と、戯言シリーズのトレーディングキーホルダー(けっこう小さい)。

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友のアクリルスタンド、シリーズ中のカバーイラストで一番好きな「サイコロジカル」のやつだったので、買わざるを得なかった……。キーホルダーはブラインド商品で何が出るかわからないやつなんですが、結果は出夢くんでした。かわいい。ちなみに買いはしなかったんですが、岡山会場限定としてきびだんごがありましたよ(笑)。

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そういえば入場時に「FANDAカード」というものを貰いまして。先着プレゼントだそうなので、それでみんなあんなにも早く来てたんだなーと(いまさら)。全3種類(戯言・物語・忘却探偵)あって、日替わりでどれかがもらえるそうなんですが、今日は戯言でした。やった。
で、貰ったカードに書かれた番号に電話をかけ、同じくカードにあるコードを入力して電話を切ると、折り返しで電話がかかってきてキャラクターのメッセージが聴けるというもの。戯言なのでいーちゃんでしたが、途中で友が混ざってきました。OVA見てないんでふたりの声を聴くのもこれが初めてなんですが、友がアホっぽくてかわいかったですよ(笑)。


*ここ1週間の購入本*
さんかくやま「概念」(ドラゴンコミックスエイジ/KADOKAWA)
小嶋ララ子「ひなげしの眠り姫1」(バンチコミックス/新潮社)
中村明日美子「ノケモノと花嫁6」(バーズEX/幻冬舎)
内藤了「憑き御寮 よろず建物因縁帳」(講談社タイガ/講談社)
藍内友紀「星を墜とすボクに降る、ましろの雨」
草野原々「最後にして最初のアイドル」(以上、ハヤカワ文庫JA/早川書房)
坂上秋成「TYPE-MOONの軌跡」(星海社新書/星海社)
石川宗生「半分世界」(東京創元社)
妹尾ゆふ子「翼の帰る処 番外編−君に捧ぐ、花の冠−」(幻冬舎)
こうの史代「ギガタウン 漫符図譜」(朝日新聞出版)

掟上今日子の裏表紙
西尾 維新
講談社
2017-05-23

その容貌や態度のせいか、容疑者たちがやってもいない罪を喋り出してしまうために「冤罪製造機」とあだ名され、しばらく取り調べ業務から外されていた千曲川署の日怠井警部。そんな彼が久しぶりに取り調べを命じられた相手は、警察内部でも「最速の探偵」として名高い忘却探偵・掟上今日子だった。実はこのたび、さる有名な一族のひとりが刺殺された状態で発見され、今日子はそのそばで凶器を手に眠りこけていたのだという。もちろん目覚めたのち、何も覚えていない今日子だったが、自分が名探偵である以上、罪を犯して捕らえられることは起こるはずがないと断言。どころか、自分を雇いこの事件を解決させるよう日怠井に提案するのだった。そこで日怠井は、ひとまず「忘却探偵の専門家」――すなわち彼女の関係者である隠館厄介と接触を図り、情報を引き出そうと試みるが……。

シリーズ9巻では今日子さんがまさかの容疑者!?ということで、彼女の取り調べを行う日怠井警部と、忘却探偵の「専門家」として協力を依頼された厄介のダブル視点で描かれる長編エピソード。

自分が名探偵だからして完全犯罪でない犯罪を起こせるはずがない――という今日子さんの主張はもっともなようなそうでもないような(笑)。しかしそれをとはいえそれなりに説得力のあるこの説を基点に、日怠井警部と厄介は捜査を進めてゆくことに。しかし前半は推理というよりは、あまりにもゆるぎない自信に満ちている今日子さんという存在について、日怠井警部が疑念を抱き、そして悩み続けるという、なんだか可哀想としか言いようのない状況が綴られてゆく。今日子さんが関わった事件に携わるというのは、謎が解けるに越したことはないにせよ、担当した警官にとってはかなりのトラウマものなのかもしれない(笑)。


◇前巻→「掟上今日子の旅行記」

D坂の美少年 (講談社タイガ)
西尾 維新
講談社
2017-03-22

美少年探偵団副団長にして指輪学園中等部生徒会長である咲口長広ももう3年生ということで、ようやく次期生徒会長選挙が開かれるという運びに。しかし最有力候補であった現副会長・長縄女史が交通事故に遭い、選挙への出馬を断念。生徒の自主性を削ごうとする学園側に対抗するため、現政権の維持を最重要課題とする会長により、なんと眉美が立候補することに。かくして探偵団のサポートの元、眉美は会長選挙に立候補するかたわら、長縄の事故について検証することになるのだった――長縄の事故は偶然ではなく、選挙戦を妨害したい何者かの工作である可能性が高いという結論に達したがために。一方、探偵団だけでなく前会長・双頭院踊による支援があるにも関わらず、眉美の支持率は2位止まり。しかし1位をキープしている立候補者・沃野(実は眉美のクラスメイト)はどこにでもいそうな、およそ特徴らしき特徴のない平凡な男子生徒。なぜ彼がこれほどまでに支持を集めているのか、眉美には理解できず……。

ついにロリコン会長が卒業!? しかも次期会長候補は眉美!? というまさかの展開から幕を開けるシリーズ6巻。

眉美のクズっぷり(本人自覚済)は留まることを知らず、なんでこの娘が主人公かつヒロインなのだろう……とその資質に首を傾げることしばしばなこのシリーズなのだが(ってまあそこもある意味魅力のひとつなのかもしれないが・笑)、そんな眉美がまさか、学園内で最も人望やら人徳が必要そうな「生徒会長」なるポストを目指さねばならないのか――あるいはそんなことが可能なのか(笑)というところから始まる本作。しかしまあ眉美のクズっぷりを知っている面々だけに、車で轢かれてもいい人物として選ばれるのだからさもありなん(笑)。――そう、敵対陣営(?)は、候補者を車で轢いてもいいと考えるような存在というのがまた恐ろしい。

そういう手段を選ばない的な人物といえば――というかこういった局面で、裏で糸を引いていそうな人物といえば、真っ先に札槻嘘を思い浮かべてしまうのだが、今回はそうではないことも明らかに。となればいったい敵は何者で、どんな目的を持っているのか……ここにきて新たな謎が出てきたということで、今後の展開が楽しみ。


◇前巻→「パノラマ島美談」

掟上今日子の旅行記
西尾 維新
講談社
2016-11-17

いつものように就職先で冤罪体質ゆえのトラブルが起き、もちろんクビになってしまった隠館厄介。しかしその際、退職金代わりにパリ行きのチケットを渡されてしまう。なんとか出国を果たしフランスにたどり着いた厄介だったが、そこで厄介が目撃したのは見間違いようもないほどに見事な白髪の女性――忘却探偵の掟上今日子だった。驚きつつも今日子を尾行した厄介だったが、今日子はあっさり看破。しかし今日子は訝しむでもなく、厄介を助手に任じ、今回の依頼について教えてくれるのだった――いわく、このたび「怪盗淑女」を名乗る人物から、エッフェル塔を盗むという予告状がいずこかに届いたのだ、と。そこで白羽の矢が立ったのが今日子。厄介は今日子が眠らないよう起こし続けるという役割をまたしても命じられることになってしまう。しかし着替えるといってホテルに向かった今日子がいつまでも戻ってこない。不審に思った厄介が部屋に踏み込むと、果たして今日子は眠らされており、その腕の備忘録の「探偵」という部分が「怪盗」と書き換えられていたのだ。よって目覚めた今日子は自分が怪盗であると思い込み、エッフェル塔を盗む算段を考え始め……。

シリーズ8巻はまさかの海外編。おなじみ冤罪体質の青年・厄介を語り手とし、今回は今日子さんが「怪盗」になってしまうという展開に。

今まで思いつくようで思いつかなかった(少なくとも私は)のが今回の「今日子さんの備忘録を書き換える」という、ある意味禁じ手ともいえる行為。これによって今日子さんは探偵ではなく怪盗になってしまい、エッフェル塔を盗むと言い始めるのだが、結局のところまずはその動機を考えようとするあたりが今日子さんらしいというか、役割が変わったとしても性格が変わるわけではないという部分にはひと安心。それ以後も巧妙な罠を仕掛けてくる真犯人には驚くばかりだったが、最終的にはそのすべてを今日子さんが上回ってしまうという結末にはすっきり。しかしこの真犯人は結局何者なのか――失われた今日子さんの過去を知っているようだが、今回の依頼のことといい、他にも色々と隠していそうな雰囲気。いつか再戦があったりするのだろうか……。


◇前巻→ 「掟上今日子の家計簿」

パノラマ島美談 (講談社タイガ)
西尾 維新
講談社
2016-10-19

「冬期合宿」と称して美少年探偵団御一行がやってきたのは、琵琶湖に浮かぶ人工の無人島「野良間島」。ここは指輪学園を追放された元美術教師・永久井こわ子のために作られた島なのだという。眉美たちは美術室の鍵を賭けて、こわ子からの挑戦を受けることに。それは鳥の名を冠する島内の5つの美術館に飾られた「見えない絵」を鑑賞すること。眉美たちは手分けしてそれぞれの絵を探そうとするが……。

シリーズ5巻は「見えない絵」探し――ということで、立地条件も外観もまったく違う5つの建物に展示された「絵」を巡り、団員たちが個別行動を余儀なくされる中編作。

朝からめいめい美術館へ向かうということになっていたのに、相変わらず図太い(褒め言葉)眉美は寝坊。なのでこわ子からひとつずつ「お年玉」と称して与えられたヒントを携え、各人の持ち場を回って謎を解いていくという流れに。それぞれの謎解きも面白いのだが、それ以上にすごいのは建物もすべてこわ子ひとりで作ったということ。建物も作品の一部ということなのだが、それぞれの「絵」に込められた意味やテーマが興味深く、またどの「絵」についても眉美のおかげで謎が解けてゆくというテンプレート的な流れも面白かった。

ちなみに今回も短編2本が併録。「曲線どうか?」はミチルの食事のせいで太ってしまった眉美がダイエット(?)しようとするエピソードで、オチがなんともふるっている(さすがミチル……!)のだが、もう1本の「白髪美」はあの忘却探偵とのコラボエピソード。煙に巻かれた感が半端ないので、ぜひリベンジマッチ(?)を見てみたい気も。


◇前巻→「押絵と旅する美少年」

いーたんコラボ

◇「混物語 第殺話 いおりフーガ」(映画「傷物語〈暁血篇〉来場特典ぁ
阿良々木暦が目を覚ますとそこは見覚えのある廃屋で、目の前には大ばさみを口にくわえた女子高生がいた。そうして思い出すのは、目を覚ます前に彼女に蹴り倒されて意識を失ったのだということ。しかし彼女は――無桐伊織と名乗るこの人物は「殺人鬼」であり追われている最中であることを暦に告げるのだった……。

「傷物語」来場特典として書かれているこのシリーズは、「物語」シリーズの主人公・暦が、他のシリーズの女性キャラと遭遇するという展開の模様。そして今回は「人間」シリーズより、殺人鬼「零崎一族」の末妹・無桐伊織が登場し、彼女の冤罪を晴らす方法をふたりで考えてゆく。

殺人鬼が殺人の罪を着せられて逃亡中。――というどうにも矛盾しているとしか思えないシチュエーションだが、諸事情により「殺人」を封じられ、破ればもれなく潤さんに追われる身となるということでは、さしもの伊織も従わざるを得ない状況。しかし状況証拠は伊織を犯人と指し示す――なぜなら犯行に使用された凶器が伊織の持つ「自殺志願」だったから……というわけで、こちらもやはり伊織を疑わざるを得ないのだが、そこは我らが阿良々木くん、きちんと推理してくれる。まあでもこれは相手が「殺し名」「呪い名」だからこそ成立するんだろうな、ということである意味反則ではある(笑)。


◇「月物語 第交話 つばさライオン」(羽海野チカ「3月のライオン12」特装版特典)
高校生棋士・桐山零が将棋会館の前で遭遇したのは、新聞紙にくるまって眠る女子高生だった。羽川翼と名乗る彼女は、とある謎を解いてもらうため、ここで棋士を待ち伏せしていたのだと言う。そうして彼女が地面にチョークで描いたのは、およそありえない状態の局面だった。彼女の友人が文通相手から貰ったものなのだというが、その意図はまったくわからず……。

というわけでこちらは作者から異なる作品とのコラボ小説。プロ棋士をもってしても意味不明な局面を、零と翼がふたりで解いてゆくという短編。

まあ普通ではないのは知ってはいたが、零と翼のかみ合っているようないないような、などこかズレた会話がなんとも楽しい。それ以前にこの「謎」の手紙の持ち主・老倉さん(「終物語」登場人物のようだが、未読のため詳細不明)の方が気になってくるのでそろそろ積みを崩すべきか(苦笑)。終盤の「世界観が違う」という台詞に深く頷く今日この頃。



探偵団のアジトである美術室に向かう途中、和装の美少女に出くわした眉美。しかしその美少女は眉美の姿を認めるなりとんでもない毒舌を吐き、そのまま姿を消すのだった。さらに、あまりのことに放心状態で美術室へ入った眉美が目にしたのは、室内に鎮座ましますリアルな怪物の押絵付きの巨大な羽子板だった。生徒会業務につき不在のナガヒロを除く面々も、誰ひとりとしてこの羽子板の正体は分からないのだが、なぜか特に興味を示す風でもない。そこで眉美が先ほどの美少女について話したところ、彼らの態度が一変。実はあの美少女こそが、ナガヒロの婚約者である川池湖滝(小1)だという。しかも彼女は以前「美少年探偵団」に入団を希望し、しかし団長に断られたという経緯があるらしく……。

「美少年探偵団」シリーズ4巻。ついにあの「ロリコン会長」と呼ばれて久しい生徒会長・咲口長広の噂の婚約者登場ということで。

今回はエピソード自体が短く、内容はずばり「羽子板をどうやって、なんのために美術室に置いたのか」という謎解きのみ。しかも犯人が湖滝嬢であることは自明の理らしく、その理由についてはナガヒロに聞けばすぐわかる。しかしこの羽子板、重すぎてとてもひとりでは持ち運べず、かといって羽子板の本体は継ぎ目がなく1枚板のようなので、外から材料を持ち込んで組み立てることは不可能なはず。そこでナガヒロを除く団員たちは、羽子板の持ち込み方について一晩おいて考えることになるのだが、眉美の予想通り、そして前巻の展開をそのままなぞるように、誰ひとりとしてまともに推理できていないというオチがいっそ清々しい(笑)。

ちなみに今回、なぜナガヒロ(中3)の婚約者が幼女(小1)なのかという理由や、湖滝嬢のとんでもない毒舌の理由も明かされるのだが、かといってナガヒロのロリコン疑惑が払拭されたわけでもないのである意味ひと安心というかやっぱりというか。政略結婚(もとい婚約)であることや、状況によっては婚約解消も辞さない構えであることをアピールするが、結局しなかったあたりやっぱり怪しい(笑)。そして眉美のひねくれっぷりは前巻に輪をかけてひどくなっているのでこれまた今後が楽しみ。しかし眉美はそう思っていないようだが、眉美と湖滝はきっといい友達になれると思う(笑)。


◇前巻→ 「屋根裏の美少年」

掟上今日子の家計簿
西尾 維新
講談社
2016-08-23

吹雪の山荘で殺人事件が発生した。被害者は単身スキー旅行に来ていた女性。容疑者候補となるのは、同じ山荘に泊まっていた子供連れの家族、カップル、老夫婦、そして管理人。しかし彼らは誰ひとりとして、被害女性との接点はなかった。折からの吹雪のため、山荘を出入りした人間はいない――まさしくクローズド・サークル状態のこの事件を解決させるべく御簾野警部が呼び寄せたのが、「最速の探偵」あるいは「忘却探偵」として有名な掟上今日子だった。彼女は犯人の動機の解明――ただし「なぜ殺したか」ではなく「彼女を殺すことで誰が利益を得るか」を主眼に置いて推理を始めるが……。(「第一話 掟上今日子の誰がために(クイボノ)」)

忘却探偵シリーズももう7巻。今回は警察に呼ばれて捜査に協力する「刑事と今日子さん」パターンの短編集となっている。

これまでももちろんそうだったが、今巻はサブタイトルに「クイボノ」「叙述トリック」「真理実験」「筆跡鑑定」と冠せられているように、特に推理の方法に主眼を置いた作品群となっているような印象が強い。特に2話目の「掟上今日子の叙述トリック」では犯人が明記されないまま結末を迎える(もしかしたら推理力の高い人は犯人が分かる仕組みなのかもしれないが、私には無理だった)。そうやってあぶり出されていくのは、犯人たちの心理を巧みに読み取り、事件を解決に導いて行く今日子さんの特異さなのかもしれない。それを端的に表しているのが第3話の「掟上今日子の心理実験」で、ここでは今日子さんの存在を異様に恐れる刑事が登場する。しかしそんな彼の心理ですら、今日子さんはあっさりと暴いてみせるのだ――とはいえこのケースはオチがわかってしまえばいささかわかりやすい類のものだったかもしれないが。もしかしたら、そんな悪意にさらされ続けたがゆえに、彼女は今のような状態になってしまったのだろうか、と思ったりもして。



◇前巻→「掟上今日子の婚姻届」

人類最強の純愛 (講談社ノベルス)
西尾 維新
講談社
2016-05-07

「哀川潤包囲網」が解除され、請負人としての仕事も順調に増えつつある潤。そんな彼女に喧嘩を吹っ掛けてきたのは、示際祭と名乗る少年だった。片腕を文字通り炎に変えて襲いかかってくる祭に驚きつつも勝利した潤。その祭に連れられて潤が向かったのは、彼の依頼人――マッドサイエンティスト・喜連川博士の自宅だった。しかし引き会わされた博士はまだ5歳くらいの幼女である喜連川ほつれ。彼女は潤の知る「喜連川博士」――喜連川茂連の意志を継ぐ存在であるという。ほつれは先代の遺したある研究の完成を手伝うか、あるいはそれを処分してほしいと潤に依頼。その研究というのが、人類の上位に当たる生命体の作成というとんでもない代物で……。

最強シリーズ第2弾は「メフィスト」掲載の3本に加え、本シリーズ開始よりだいぶ前に発表されていた潤さん主人公の短編「哀川潤の失敗」シリーズ2本を同時収録。

今回も潤さんの「広義の婚活」のお相手は人外ばかり。住宅街で出会ったのはマッドサイエンティストが作り上げたホムンクルスに「生きた炎」、絶海の孤島に現れたのは「12歳の哀川潤」本人、そして深海で遭遇したのは巨大なウミヘビに人魚……という具合に、行き先も相手も相変わらずの規格外ぶりだったりする。

そんな中、特に面白かったエピソードは、潤さんが過去の自分と出会う「人類最強の求愛」。イリアの誘いで小唄と共に鴉の濡れ羽島へ向かおうとして遭難(理由:悪天候にも関わらず出港したため)というくだりだけでもおかしいのだが、たどり着いたのが無人島で食料も水もなく、夜になれば見える星は見たことのない配列で、泳いで脱出しようとすればいつの間にか島に戻っているという謎展開。特に星座の配列から島の場所を特定しようとすべての星座を諳んじ、なおかつそこで星座の名前についてダメ出しする潤さんの危機感のなさがなんというかもう大好きである(笑)。


◇前巻→「人類最強の初恋」

掟上今日子の婚姻届
西尾 維新
講談社
2016-05-17

次々と冤罪をかけられ続けている厄介に取材の話が舞い込んだ。依頼人である女性記者・囲井は、先日今日子さんが行った講演会の参加者で、質疑応答の際に恋愛にまつわる質問をした女性でもあった。彼女は厄介の話を聞いたうえで、自身の恋愛遍歴について語るのだった――いわく、彼女はこれまで6人の男性と付き合い、その誰もが「破滅」してきたのだと。そして幾度冤罪をかけられてもこれをくぐり抜けてきた厄介であれば、相手を破滅させるような自分とでもうまくいくのではないか、ついては自分と結婚して欲しいのだ、とも。当惑した厄介は、とりあえずそのプロポーズを断るため、彼女の身上調査を――すなわち彼女と付き合った男性たちが本当に破滅していったのかどうかを今日子さんに依頼することに。しかしその依頼内容に、今日子さんはいたく不快感を抱いたようで……。

シリーズ6巻は厄介まさかの結婚!?ということで、厄介が受けたプロポーズとその顛末について描かれる長編となっている。

囲井女史の告白も驚くべきものではあるが、それ以上に驚かされるのは、今回の今日子さんの態度。女性の身上調査を女性である自分に頼むなんて、と嫌悪感を抱いたものだから、厄介に対する態度はかなり辛辣なものに。しかしそのせいで予断があったと考えた今日子さんは、眠る直前に反省し、再び厄介のもとへ。そこできちんと仕事をするために今日子さんがとった対応がまさに裏技というか反則技というか、なレベルの行為で、改めて彼女のプロ根性を見せつけられるという結果に。こんなものを見せられてしまっては、いくら眠ることで記憶がリセットされているとはいえど、今日子さんの態度や言葉がどこまで真実でどこからが演技なのかがわからなくなってしまうようなもので、もうシリーズ6冊目だというのに、ますます「掟上今日子」という存在がわからなくなってくる。一体彼女は、何者なんだろうか。


◇前巻→「掟上今日子の退職願」

人類最強の初恋 (講談社ノベルス)
西尾 維新
講談社
2015-04-23

気が付けば仕事がひとつもないという状態に陥っていた「人類最強の請負人」哀川潤。友人の石丸小唄いわく、あまりにも最強すぎるがゆえに、世界は彼女に仕事を依頼しないという協定を結んだのだという。暇を持て余した潤は目下の拠点である東京スカイツリーへと戻り、身の振り方を考えつつ眠ろうとしていた。しかしその瞬間、謎の爆音が彼女の直上に降り注ぎ、さらにその音の発生源と思しきものが腹部を直撃、そのまま気を失ってしまう。やがて目覚めた潤はどこかの研究施設のような部屋に寝かされており、目の前には長瀞とろみと名乗る檻神財閥の一員の女性がいた。とろみいわく、潤の真上に降ってきたのは巨大な隕石であり、このために都心部はほぼ壊滅(ただし潤が東京を拠点とした際に都民はすべて都外へと逃げており、人的被害は皆無)。落下地点は巨大なクレーターとなり、そこから潤が発見されたのだという――隕石から出てきたと思われる、地球外生命体の手をしっかりと握った状態で。その地球外生命体――つまるところ宇宙人は、目には見えども機械での観測がいっさい不可能で、しかも観察者によってその姿も声もまったく異なるのだという。そこでER3システムの一員でもある因原ガゼルは、その宇宙人「シースルー」と潤を接触させようと試みるが……。

戯言シリーズではあちこちに十分すぎるくらいの爪痕を残しまくっていた「人類最強」こと哀川潤。そんな彼女を主人公に据えた「最強シリーズ」がついに開幕。第1弾となる今巻には、雑誌「メフィスト」に掲載された中編と短編が1本ずつ収録されている。

まさか強すぎて全世界にハブられるとは思わなかった――というのは本人でなくとも思ってしまうのだが、つまりはそんな状況が発生しているらしく。
手に余るとはまさにこのことというくらいに最強すぎる潤さんの相手は、ついに人類ではなく宇宙人になってしまったのだからさあ大変。特に、機械では計測できない宇宙人「シースルー」との顛末はかなりのインパクト。「彼(潤さんにとっては)」が何のために地球にやってきたかというその真相は、タイトルの「初恋」にふさわしい内容。あの潤さんの「初恋」とは一体、と読む前はまったく想像がつかなかったのだが、読んでみるとさすが潤さんと言わざるを得ない。このひとはどこまで規格外なんだ、と。

ちなみに「人類最強の初恋」の続編となる短編「人類最強の失恋」は、失恋とはちょっと違うような……と首をかしげつつも、やはり意志を通じえなかったということでは失恋なのかもしれないと思ってもみたり。しかし今度は舞台が月になるとは思わなかったということで、やはり規格外すぎるとしか言いようがない。続巻ではどんな方向にスケールアップするのか、今からとても楽しみ(笑)。

屋根裏の美少年 (講談社タイガ)
西尾 維新
講談社
2016-03-17

団長からの呼び出しを受け、しぶしぶ旧美術室、もとい美少年探偵団の事務所へと向かった眉美は、天井画を描く創作の手伝いをさせられるはめに。しかしその矢先、天井の板が外れ、天井裏から33枚もの絵画が出てくる。かつての生徒の作品かと考えていた眉美だったが、よくよく見るとそれらの絵は実在する絵画の模写だった――ただし、元の絵に描かれていた人物部分をすっかり取り除いた状態の。描き手とその目的を推理することになった探偵団の面々だが、調査の結果、ここ指輪学園の講堂にも似たような絵があることが判明。無人の講堂を描いたその絵は、7年前まで学園に在籍し、その後行方不明になった美術教師・永久井こわ子によるもので、なおかつ彼女は失踪前に、学園の生徒全員を誘拐する、という謎の台詞を残していたらしく……。

美少年探偵団シリーズ3巻の舞台は学園内、しかも彼らの本拠地たる美術室にて、天井裏から出てきた絵画の謎を追ってゆくことに。

人物がすっかり抜き取られた絵画――その目的はいったい何なのか。今回は探偵団の6人が地道にその理由を考察するという展開に。宿題よろしくいったん家に帰って考えてくる、という流れが学生らしいというかなんというか(笑)。しかしそんな中、眉美は前巻に登場したライバル校・髪飾中学校の生徒会長である札槻嘘と接触することに。札槻の意見を自分の推理として披露する眉美のことはまあさておき、彼がわざわざ眉美に接触し、彼女を手助けすることにどれほどの「裏」があるのだろうか。今のところそのあたりは不明だが、純然たる善意などということはないと思われるので、あとあと面倒なことになりそうな気も……。

そんな中、どうしても気になるのは眉美の動向。探偵団の一員になったものの、生来のひねくれ者な性格のせいか、召集されているのに逃げたり(あっさり捕まるが)、つい憎まれ口を叩いたり。しかし今回の天井画の件で、少しは素直になれるのかも……とは思うが、このあまのじゃくっぷりも楽しいといえば楽しいので、眉美にはぜひそのままでいてほしいということで(笑)。


◇前巻→「ぺてん師と空気男と美少年」

暦物語 (講談社BOX)
西尾 維新
講談社
2013-05

4月のある日、阿良々木暦は羽川翼から唐突に「石」にまつわる話を聞かされる。なんでもふたりの通う直江津高校に、意味ありげに奉られている石があるのだという。かつて花壇付近にただ転がっていたはずのその石は、いつの間にか木製の祠のようなものの中に鎮座しており、さらにその手前には台が置かれお供え物までされているのだ。怪異譚を蒐集している忍野にお礼代わりに教えてあげたいという翼だったが、いくら調べても祠とお供え台の来歴がさっぱり分からないらしい。それを聞いた忍野は、直江津高校のカリキュラムを調べてみれば、とアドバイス。翌日、そのアドバイスから翼は即座に何かに気付いたようで……。(「第一話 こよみストーン」)

〈物語〉シリーズ、ファイナルシーズン第2弾は短編連作形式。シリーズのこれまでを振り返る――というほどでもないが、翼と初めて出会った4月からスタートし、シリーズ本編の傍らで起きていた小さなエピソードが各ヒロインと絡めて描かれてゆく。

ひとつひとつのエピソードはびっくりするような裏話というわけでもないが、ヒロインたちと暦との関係(主に上下関係とか・笑)がよくわかる内容。シリーズがここまで長く続いてきたからこそ、復習がてらといったところだろうか。後半になるとヒロインたちともかなり打ちとけた段階でのエピソードなのだが、序盤のエピソード――特に第2話はまだ知り合って間もない頃のひたぎが登場するので、かなりデレている最近の状況とは真逆の辛辣すぎる振る舞いに懐かしみが止まらない(笑)。

しかし終盤――つまり前巻の続きとなる時期のエピソードに差し掛かる頃には、次第に暗雲が立ち込める。影縫余弦が姿を消し、臥煙伊豆湖は失われたはずの「怪異殺し」の刃を暦に向け、そして姿を消した余弦の代わりであるかのように、消滅したはずの真宵が現れる。扇や臥煙の言う「怪異の不在」がキーワードとなるのだろうが、それが何を引き起こすのかはまだ分からないまま。怪異がなければそれはそれで平和なのに、という単純なことではないという現状がなんとも不安感を誘う。


◇前巻→「憑物語」


私立指輪学園に密かに実在する「美少年探偵団」――先の事件をきっかけに、瞳島眉美は晴れて(?)この探偵団の一員となった。そんなある朝、登校中の眉美は前を歩くサラリーマン風の男がポケットから100万円の束を落とすところを目撃してしまう。慌ててそれを拾って追いかけてきた眉美に対し、男性は謝礼としてその1割、つまり10万円を渡して再び去ろうとしていた。もちろんそんな大金を受け取れない眉美は、それも返そうと男を追うが、彼は路地を曲がった途端、忽然と姿を消してしまうのだった。困り果てた眉美は探偵団の面々に相談。すると創作は、眉美が受け取った1万円札が偽札であること、そしてその精巧さから、これを作るにはどう考えても1万円以上はかかるであろうということを告げる。さらに眉美がその特殊な視力で改めてお札を見ると、それ自体が袋状になっており、その中に何か別の紙片が挟まっていることがわかり……。

それぞれある分野に秀でた個性あふれる美少年たちが集まる「美少年探偵団」、そんな彼らが遭遇する奇妙な事件を描くシリーズ2巻。

女子でありながら男装し、「美少年探偵団」の仲間入りをすることになった眉美。……という1文だけを見ると意味が分からなくなってくるが、まあこれは事実であり前提条件なので置いておくとして(笑)、前回同様、今回も眉美によって新たな案件がもたらされることに。今回の謎は、消えた男性と精巧すぎる偽札に始まり、指輪学園のライバル校で開かれているカジノへ潜入というどこからつっこんでいいか分からなくなるような展開になっている。

今回の事件は前哨戦というか、1巻が世界観のイントロダクションであるとすれば、この2巻はこれから探偵団が対峙すべき敵組織のイントロダクションといった雰囲気。前巻にも登場した「トゥエンティーズ」だけでなく、このたびライバル校として登場した髪飾中学校の生徒会長・札槻嘘も、今後は探偵団の敵として立ちはだかってくるのだろう。特に眉美たちと同じ中学生でありながら、あっと言う間に生徒会長として学校を掌握したり、カジノを経営したりという恐るべき手腕を見せる札槻は今後のキーパーソンとなるのかも。眉美の前から忽然と姿を消した彼が、次にどのようなかたちで登場するのかがとても楽しみ。


◇前巻→「美少年探偵団 きみだけに光かがやく暗黒星」

掟上今日子の退職願
西尾 維新
講談社
2015-12-17

女性警部の佐和沢が協力を要請したのは、警察公認の探偵・掟上今日子。眠れば記憶を失うという機密性の高さ、そして1日以内に事件を解決してしまうという「最速の探偵」という特性から警察に重宝されている彼女は、今回もなんのてらいもなく佐和沢の捜査に協力することに。そんなふたりが挑むのは、身体を十数分割ものバラバラ状態に切り刻まれている殺人事件の犯人探し。被害者である男性は周囲から恨みを買いまくっており、関係者の誰もが容疑者という状況ではあるが、その誰もが犯行時刻にアリバイを持っていたのだ。今日子は現場で遺体が執拗なまでにバラバラにされた、その理由を考察してゆくが……。(「第一話 掟上今日子のバラバラ死体」)

忘却探偵・掟上今日子が主人公の本シリーズもこれで5冊目。今回は短編集形式で、4人な女性警部たちと協力しながら、いくつもの変死体を生みだした事件を解決してゆく。

今回の今日子さんの依頼は4つ。執拗なまでに細かく刻まれたバラバラ死体、周囲に何もない野球場で発見された飛び降り死体、寝たきり老人の絞殺死体、そして水深がほとんどない公園の池に沈められていた水死体。この4人の被害者たちがいかにして死に至ったか、犯人も含めて今日子さんは推理してゆく。もちろんトップスピードで。

今回特筆すべきなのは、依頼人兼助手となる警部たちがみな女性だということ。シリーズ第3弾は男性刑事たちが依頼人兼助手として登場したが、今回はその逆。今日子さんの容姿や行動について同性の視点から描かれていくのは、男性視点のそれとはまた異なる点もあって面白い。そして同性だからと言うべきか、彼女たちは今日子さんという特異な存在に触れることで、自分たちのこれまでやこれからについて見つめ直したりもする。そんな展開もなんだか新鮮だなと思った。


◇前巻→ 「掟上今日子の遺言書」

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