phantasmagoria

読んだ本のこと、それ以上に買った本のこと、ときどきライブのことを書き散らかしてみたりする。

カテゴリ: 今野緒雪

Friends (集英社オレンジ文庫)
今野 緒雪
集英社
2015-11-20

カスミと碧は高校生の頃からの親友。碧は服装や髪形、小物など、カスミと同じものをそろえ、彼女にべったりとくっつくようになっていた。それはふたりが同じ美大に入ってからも変わらないかと思われたが、いつからか碧はカスミの真似をしなくなっていった。そんなある時、同じく高校時代の友人である睦実から合コンに誘われたカスミ。いつまでも碧と一緒にいるから彼氏もできないのだ、と指摘されたカスミは、碧には内緒で合コンに参加する。しかしカスミの態度から何かを感じ取った碧は、なんと合コン現場に登場。その場はお開きとなったものの、その中のひとりに送っていくと言われたカスミ。しかしひとりで出ていった碧が気になるカスミは、その申し出を断って碧を追うのだった。やがて大学は夏休みに入り、カスミは碧と会うこともなくなっていた。だがあの合コン以来、どうも碧に対してもやもやした気分を抱いていたカスミは経験豊富な祖母に相談。すると祖母は、カスミの碧に対するその想いは恋であると断言し……。

高校時代からの親友との「関係」に悩む女子を描く、ひと夏の物語。

親友というには距離が近すぎる。けれど「親友」としか呼べないこの関係。カスミはひょんなことから「親友」である碧との関係に悩み始める。恋人がほしいとは思うものの、それと碧との関係、どちらを優先させるかと言われれば、きっとカスミは碧を優先させる。けれどそれはなぜなのか。それまでべったりとくっついていたふたりだったが、思いがけず距離を置いたことで、カスミは碧との距離を、そして自分の想いについて思いを巡らせてゆく。

夏の日々は過ぎてゆき、意識すればするほど碧と顔を合わせづらくなるカスミ。揺れ動くその心は恋する乙女そのもので、そんな自分の意識の変化にも戸惑い始めているのがよくわかる。けれど悩んでいたのはカスミだけではなかったこと、そしてそれを互いに告げ合うラストは、ささやかだけどとてもあたたかなもの。ゆるやかな変化を受け入れて、少しずつ大人になってゆくふたりの姿が垣間見えるような結末だった。

マリア様がみてる フェアウェル ブーケ (マリア様がみてるシリーズ)マリア様がみてる フェアウェル ブーケ
今野 緒雪

集英社 2012-04-28
売り上げランキング : 41

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薔薇の館へ向かおうとしていた祐巳は、植え込みの中にしゃがみこんでいる担任の鹿取先生を見つける。なにか悩んでいる様子の鹿取先生を薔薇の館に招いた祐巳は、彼女にハーブティーを勧める。やがてそこに、次々と山百合会の面々が集まり始めて……。(「フェアウェル ブーケ」)

約1年半ぶりとなる久々の「マリみて」は短編集。2009年以降に「雑誌コバルト」に発表された短編5作に加え、表題作「フェアウェル ブーケ」を含む3作の書き下ろし短編が収録されている。

マリみて短編集恒例、各作品のつなぎとなる連作掌編「フェアウェル ブーケ」では、どこか様子のおかしい祐巳の担任・鹿取先生を囲んで、山百合会の面々がお茶したりあれこれお喋りしたり。山百合会の中でハーブ栽培がブームということで、ハーブティーを淹れたり、自分が育てたハーブをおすそわけしたり交換したり……なんとも優雅というか、ほのぼのしているというか。そのやりとりの中にも、それぞれの姉妹の関係が見えてきて楽しい。

そして今回の短編は、どれも先生が関わってくるものばかり。祐巳たちが出てくるものはほとんどないのだが、どれもこれもユニークなエピソードばかり。
でもやっぱり、最後に置かれている書き下ろし「薬香草茶話」を読むと安心してしまう。祐巳と、大学生になった祥子さまとがお茶するという、ただそれだけのエピソード。でもやっぱりこの姉妹あってのシリーズだし、姉妹がそろっているのを見ると落ち着くというか。


◇前巻→「マリア様がみてる ステップ」

マリア様がみてる ステップ (コバルト文庫 こ 7-69)マリア様がみてる ステップ (マリア様がみてるシリーズ) (コバルト文庫 こ 7-69)
今野 緒雪

集英社 2010-12-28
売り上げランキング : 36

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親友同士の律と佳月。ある日、佳月は律から彼氏ができたことを聞かされる。ショックを受けた佳月がひとりふらふらと帰っていると、酔っ払いに絡まれてしまう。だがそこを助けてくれたのは、絡まれる前に偶然ぶつかっただけの見知らぬ男性。互いに名乗ることなく別れた佳月だったが、後日、律がその男性と歩いているのを目撃して……。

久々のマリみては薔薇さまたちの出てこない、リリアン女生徒の友情物語。
あまりにも仲良しで大好きだからこそ、律に彼氏ができたことに衝撃を受けた佳月。なんとなく気になる男性ができたのも束の間、その男性が律と歩いていたのを見てしまった佳月は、すわあれが例の彼氏か、とまたしてもショックを受けるのだが、その真相はなんとも面白い。そんな感じで親友の恋路を応援しようとする佳月だったが、今度は律に問題が。彼氏とは別れたという律のために、佳月は奔走することになる。

親友に彼氏ができても妬まない(むしろ「親友を彼氏にとられちゃう!」的な思考に陥る)。気になる人が親友と歩いていても、ショックを受けこそすれ、親友を憎むという方向にはならない。まったくもって年頃の女の子としては純粋無垢すぎる性格であり展開なので、もはやファンタジーの域に近い気も(笑)。けれどそれを「ありえるもの」として読めるのがこのシリーズ。
律と歩いていた男性の正体、律が彼と別れた理由。そして律と彼氏を再びくっつけるために佳月が講じた策。どれもこれもほほえましくて、かわいらしくて。ありえないとはわかっているけれど、ああ、女の子っていいなあ、と思ってしまう。


◇前巻→「マリア様がみてる 私の巣」

マリア様がみてる私の巣 (コバルト文庫 こ 7-64)マリア様がみてる私の巣 (コバルト文庫 こ 7-64)

集英社 2010-01-25
売り上げランキング : 14
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リリアン女学園高等部1年の朝倉百は、母の再婚話がきっかけで謎のめまいを起こすようになった。ある日、友人のお姉さまのクラスメイトが百に興味を持ったということで、引き合わされることになったのだが、その時も突然倒れてしまう。保健室に運ばれた百を、そこに居合わせた2年生の保健委員・筒井環が家まで送ってくれることになるのだが、初対面なのになぜか馴れ馴れしい環に、百はある疑念――母の再婚相手の身内?――を抱いて……。

マリみて新作はなぜかいつもの山百合会の面々はほぼ出てこない、完全に番外編な連作集。
ひょんなことから知り合った百と環の関係、そしていかにしてふたりが姉妹になっていくかが描かれていく。

ある意味百に餌付けされた感のある環と、そんな彼女の奔放さに振り回される百は、はたから見てもなかなかいいコンビで、その関係はとても面白い。
山百合会がほとんど関わってこないどころか、舞台は学校より家庭の方が多いこの巻は、これまでの番外編という観点から見ても異色な作品。けれどいつもと視点・観点が違うぶん、なかなか面白かった。

マリア様がみてるリトルホラーズ (コバルト文庫 こ 7-62)マリア様がみてるリトルホラーズ (コバルト文庫 こ 7-62)
今野緒雪

集英社 2009-07-01
売り上げランキング : 12
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リリアン女学園高等部に入学して早々、黄薔薇さまである由乃と姉妹になった菜々。ある日、部活の集まりに現れない姉を探していた菜々だったが、薔薇の館にいた白薔薇姉妹・志摩子と乃梨子に問うても、ふたりとも知らないという。乃梨子と共にあちこちを探し始める菜々だったが……。

終わった?と見せかけて短編集、しかも繋ぎの短いエピソードは祐巳たちが3年生になってからの話なので、もしかして続編?といった感じのシリーズ最新刊。

入学早々休んでいた照が登校すると、彼女のためにノートをとってくれていた少女が入れ替わりでお休み。だが気がつくと、彼女の名前を名乗る不思議な生き物が現われて……という「チナミさんと私」をはじめとして、ちょっと不思議な作品ばかりを収録。それも面白いが、やはり気になるのは繋ぎの部分である表題作「リトル ホラーズ」。集まっては消えていく山百合会の面々。取り残された菜々は……という話なのだが、祐巳がすごく「薔薇さま」らしくなっているのが見えてほほえましい。

もしかしたらこんなふうにシリーズは続いていくのかな、と期待させられる作品。

マリア様がみてる―ハローグッバイ (コバルト文庫)マリア様がみてる―ハローグッバイ (コバルト文庫)
今野 緒雪

集英社 2008-12-26
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ついに迎えた卒業式の日。卒業生たちにコサージュをつけに行くことになった祐巳だが、彼女の担当のクラスは祥子のクラス。同じ役目のクラスメイトたちに促されて祥子の前に立った祐巳は、かつて彼女がプレゼントしたリボンを託される。そして式は始まり……。

シリーズ最新刊で、ついに《祐巳・祥子編》終了。
長かった……ここまでで、作中の時間は約1年半。シリーズが続いたのは約10年(!)。
そんな本作は前薔薇さまの3人も登場しての大団円。

内容は……卒業式。以上。
本作だけだとかなりあっさりした感じなので、前巻「卒業前小景」とセットで読んだ方がといいかとは思う。

今後の展開はまだ明らかにされていないが、もし続けるのであれば、引き続き《祐巳・瞳子編》を期待。

マリア様がみてる卒業前小景 (コバルト文庫 こ 7-59)マリア様がみてる卒業前小景 (コバルト文庫 こ 7-59)
今野 緒雪

集英社 2008-10-01
売り上げランキング : 21
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ついに卒業式の前日。姉妹たちは別れを前に、それぞれの時間を過ごす。祥子と令が新聞部の三奈子に逆襲を企てたり、由乃がこれまでの自分を振り返って「よき妹」であれたかどうかを自問したり、まもなく祥子という大きな存在を失ってしまう祐巳に対して瞳子が悩んだり、そんな瞳子を乃梨子が支えたり。そして祐巳は、卒業式前の恒例行事である「薔薇の館」の倉庫の片づけで祥子の「忘れ物」を見つけてしまい……。

ようやく卒業式か……と思っていたら、その前になくてはならない前日譚。
ついに祥子と令が卒業かと思うと感無量。前薔薇様たち、そしてこのふたりの存在が大きかったから――そして、この物語を支えてきた要素のひとつ――しかも限りなく中心的な要素――が祐巳と祥子の姉妹だったために、その柱が欠けてしまうことが想像できない。瞳子の不安は読者の不安と重なっているよう。

さて、泣いても笑っても次巻は卒業式。もしかしたら前回のように前後編になるのかもしれないが――とりあえず、どのように卒業式の幕が下ろされるのかが楽しみ。

お釈迦様もみてる―紅か白か (コバルト文庫 (こ7-58))お釈迦様もみてる―紅か白か (コバルト文庫 (こ7-58))
今野 緒雪

集英社 2008-08-01
売り上げランキング : 244
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仏教系のエスカレーター式私立校、花寺学院。高等部の入学式の日、福沢祐麒は選択を強いられる。それは校門の先にあるふたつの道。平氏の白か、源氏の紅――選ぶ道によって今後の学生生活が変わってくるこの選択において、何も知らなかった祐麒がとった行動により、彼は生徒会に目をつけられるはめに……。

そんなわけでタイトルを見ればまるわかり、「マリア様がみてる」の姉弟編。マリみての主人公・祐巳の弟・祐麒の入学から、生徒会に入るまでのなれそめ話。
とはいえ内容は、ほぼマリみての登場人物を男にして、設定をキリスト教から仏教に置き換えただけ、といった感じ。ロザリオの代わりに念珠を、聖書の代わりに経文書を、聖歌の代わりに「南無阿弥陀仏」を唱える。そしてスール制度ではなく烏帽子親子制度(笑)。リリアンといい花寺といい、なぜ高等部だけこんなにも特殊な設定があるのか(笑)。そしい生徒会長というのは、そんなにも全校生徒の憧れ・崇拝の的になりえるのか。

とにかく、そこはかとないBLっぽさを感じてしまったので、シリーズ化したとしても、ちょっと私には無理かも知れない。マリみては大丈夫なんだけど。

マリア様がみてるマーガレットにリボン (コバルト文庫 こ 7-57)マリア様がみてるマーガレットにリボン (コバルト文庫 こ 7-57)
今野 緒雪

集英社 2008-04-01
売り上げランキング : 9313
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ホワイトデーも近いある日の放課後。祐巳・由乃・志摩子の3人は、下級生へのバレンタインのお返しにと買ってきたお菓子のラッピングに悩んでいた。そのままあげるのでは芸がないし、かと言ってラッピングの材料もアイデアもあまりなくて……。

3人がプレゼントのかたちを決めるエピソードを挟みつつ、前薔薇様――蓉子・江利子・聖の近況話から志摩子の出生の秘密、祐巳の未来日記、果ては「レイニーブルー」の頃になくした青い傘が、いかにして祐巳の元に戻ってきたのか……というエピソードまで、バラエティに富んだ(つまり、本筋とはあまり関係のない)内容。
いつも雑誌掲載分の文庫化の際に採られる方法で書かれているが、今回は全編書き下ろしとのこと。

前薔薇様のエピソードはそれぞれの「らしさ」がよく出た話ばかりで、大変懐かしい。また、例の青い傘の話は、いつもと視点が違うし、書き口もやや変わっていて、なかなか面白い試みだと言える。

さて、次巻こそいよいよ……?

マリア様がみてるキラキラまわる (コバルト文庫 こ 7-56)マリア様がみてるキラキラまわる (コバルト文庫 こ 7-56)
今野 緒雪

集英社 2007-12-26
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さっくり読めるのは内容があまりにも少ないからか。

そんなわけで今回のマリみては集団遊園地デートの巻。祥子さまのリベンジを果たすべく、以前のメンツ――祐麒、柏木をまじえて遊園地にやって来た祐巳。祥子さまの呼びかけで他の姉妹たちも三々五々やってくる。黄薔薇姉妹、白薔薇姉妹、蔦子さんと笙子、そして瞳子と可南子。けれどそれぞれ、道中で問題を抱え込んでしまって……。

デート→気まずい→でも仲直り……で、話は全く進まないですが、これはもう雰囲気を楽しむ話。そしてこの先に待つ別れ――お姉さまたちの卒業に向けての思い出作り。そう思うと寂しくなります。

ちなみに祥子さまが前巻でとった不審な行動、その理由については予想通り。

次こそ、いよいよ卒業エピソードに突入でしょうか。

マリア様がみてる 薔薇の花かんむり (コバルト文庫 こ 7-55)マリア様がみてる 薔薇の花かんむり (コバルト文庫 こ 7-55)
今野 緒雪

集英社 2007-10-02
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バレンタインデートを終え、ついに瞳子との関係に決着をつけた祐巳。一息ついたのもつかの間、また慌ただしい日々が始まる――いよいよ「3年生を送る会」の時期。しかしその頃、祐巳は妙な噂を耳にする。すでに進学先が決まっているはずの祥子さまが、なぜか猛勉強をしているということで……。

いやあ、良かった良かった。やっと「この時」がきました。長かった……。

祥子さまの猛勉強の理由は何となく察しがつきますが、次巻に持ち越された祐巳と祥子さまの遊園地デートがどうなるかはさっぱりわかりません。というわけで次回はきっと、久々の紅薔薇姉妹のラブラブあまあま展開に……(期待)。

マリア様がみてる フレームオブマインド (コバルト文庫 こ 7-54)マリア様がみてる フレームオブマインド (コバルト文庫 こ 7-54)
今野 緒雪

集英社 2007-06
売り上げランキング : 38037
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ご存じ写真部のエース・蔦子さんの写真整理に付き合う祐巳。そこに映る様々な生徒、そして姉妹たちの物語。

というわけで短編集。
いや、祐巳と瞳子はどうなったんだ!とやきもきしつつ読む。
まあ、これはこれで。
特に気にいったのは、自分を輝かせてくれる姉を求める「三つ葉のクローバー」と、前黄薔薇様・江利子さまが令さまを見初める(笑)「黄色い糸」。

あと面白いのは、下級生が祐巳をどう見てるかが、この短編集の中で見えてくること。可南子の見方と繭の見方――果たして祐巳は太陽か月か。
まあものの見方なんてのは主観に過ぎないのだから、対象とどれだけ関わっているかによって変わってくるだろうけど。

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