勢いでセドリックに告白してしまったため、返事を聞く前にその場から逃げ出してしまった紬。以来、武流の家庭教師に行ってもなるべくセドリックとは顔を合わせないように去る日々が続いていた。そんなある日、友人からネット上に竹善の悪評が書き込まれているという話を聞かされる。憤慨した紬は意を決して店に向かい、様子を探ってみたものの、セドリックの接客に変わった様子はなかった。しかしその時、近くに座っていた女性客が、料理に髪の毛が入っていると騒ぎ始め……。
谷中にあるびんづめ専門カフェ「竹善」を舞台に繰り広げられるハートフルストーリー第4弾。今回はあちらこちらで恋の花が咲きかけているようなそうでもないような。
かねてより虎太朗→紬→セドリックという一方通行の関係が微笑ましい本シリーズ、しかし前巻ラストで紬がうっかりセドリックに告白してしまったことで事態は急展開!――と思ったもののそこまでの劇的な変化があるわけでもなく。セドリックとしてはやはり亡き妻・笑子のことがどうしても忘れられないし、紬にしてみても、そうやって妻と息子を愛しているセドリックのことが好きなわけで、告白が成功したからといってそれでハッピーエンドというわけでもないという、気付けばなんとなく複雑な関係性に。これに関しては気長に行くしかないということで、今後の関係の変化に期待したい。
一方で虎太朗と紬の関係について。紬がセドリックに告白したと聞かされるシーンにはつい笑ってしまったのだが(すまん……)、もしかしたら虎太朗の方も「セドリックが好きな紬」が好きという、紬とセドリックの関係に似た状態になってしまっているような気がする――基本的に人見知りでコミュ障気味の紬がこうして虎太朗とケンカ友達みたいになっているのは、その間にセドリックあってのことなのだから。なんというか「三竦み」みたいな状況になっているような気がしないでもないが、これはこれでいいのかもしれない。
◇前巻→「谷中びんづめカフェ竹善3 降っても晴れても梅仕事」