phantasmagoria

読んだ本のこと、それ以上に買った本のこと、ときどきライブのことを書き散らかしてみたりする。 (当ブログは全文無断転載禁止です)

カテゴリ: 川上稔


とりあえずは夏合宿!ということで奥多摩のキャンプ地へ向かった出見たち。水妖調査の中で出会った「ゲロのオッサン(略してゲッサン)」ことローマ神話の海神ネプトゥーヌスも交えて情報交換をしつつも、カレー作りなどを楽しむことに。そんな彼らの前に、ギリシャ神話の神々であるデメテルとアテナが現れる。水妖を追っている彼女たちは、出見たちによる介入を防ぐために強く牽制してくるが、神道側の交渉役として出見たちに同行していた菅原・天満はそれを逆手にとって武力行使を宣言し……。

夏の山でテラフォームしながらウハウハザブーン(???)な2−下巻。

もちろん今回の焦点となるのは、上巻から執拗に人類=出見を狙ってきた水妖の正体と目的、そして木戸・阿比奈江の正体。どちらもこの場における「唯一の人類」である出見にまつわるものであり、それらが明らかになったことで、不可解だったオリンポス勢の意図も明かされるという展開に。上巻の感想で、先輩・木戸・出見の三角関係が出来上がるのでは?と書いたが、でまあ実際はその通りになりそうではあるが、ちょっと木戸の立ち位置が特殊なので、この先どう転ぶかがわからず、そのあたりも楽しみになってきた。


◇前巻→「EDGEシリーズ 神々のいない星で 僕と先輩のウハウハザブーン〈上〉」


なんとか出見と「先輩」との契約関係も正式に決まり、引き続きテラフォーム作業に取り掛かるようになった面々。自転と地軸の設定が終わり、次は「水」についての設定を進めることに。その一方で、夏休みになり、地脈の乱れを直してほしいというバランサーの依頼で、出見たちは福生市へと向かう。なんとか精霊たちをなだめることに成功した面々だったが、その精霊たちが上半身は女性、下半身は蛇体という存在に怯えていることを知る。しかも地元に戻った出見の前に、その水妖が現れて……。

人類(ただし1名のみ)と神々が世界創造!?なシリーズ2−上巻。

今回のテラフォーミングのテーマは「水」ということで、水にまつわる謎の存在が現れる。ひとつは上半身が女性、下半身が蛇体という姿をとる水妖。ただし「日常」側では水、「現実」側では炎でできていることや、今巻、監査役として新登場したオリンポス神話のアテナとデメテルがこの水妖を確保しようとしていたり、かと思えばローマ神話のゲロのオッサン……もとい(笑)ネプトゥーヌスはそれを阻止しようとしていたりで、出見たち現場の人間からすると何が起きているのかさっぱりわからない状態。かといって思兼やシャムハト、あるいはエシュタルたちが真相をどこまでつかんでいるのかも不明なので、このあたりは下巻を待ちたいところ。

そしてもうひとつは、今巻の表紙を飾っている新キャラ、木戸・阿比奈江(きど・あびなえ)のこと。出見のことを知っているというか、彼に対してさりげなく過保護すぎる態度をとっているが、その反面、出見とは距離を置こうとしていることが明白な彼女。もちろん出見本人は木戸との関係を知る由もないといった具合なので、彼女の神としての正体は今のところ不明。倉敷(あるいは地中海、ギリシャ方面)に関係があることや、水を操れることがヒントになりそうだが……。さらに不可解な怪我の状況も含め、例の水妖とも何かしらの関係がありそうな気配もあるが、こちらも下巻を待つしかない模様。まあそれはそれとして、出見を挟んで先輩および木戸の穏やかな三角関係が成立しそうな予感(境ホラにおける浅間とネイトのような……)。


◇前巻→「EDGEシリーズ 神々のいない星で 僕と先輩の惑星クラフト〈下〉」


三河争乱から始まり、ヴェストファーレン会議を経て、2つあった月の一方を破壊することで世界を救った「末世事変」――これで世界はこの先も「続いて」いくはずだった。しかし事変の影響で世界の地脈が変動し、情報がオーバーフローを起こしているのだと「武蔵」は語る。取り急ぎ、武蔵艦上では三河争乱以後の様々な出来事があちこちで「再生」されていることが判明。ということで武蔵の面々は、順を追ってこれまでの出来事をおさらいしつつ、ターニングポイントとなる部分の「再生」に介入し、解決していくことになったのだった……。

昨年、10年の月日をかけて完結した戦国学園ファンタジーシリーズに新展開。小説投稿サイト「カクヨム」にて「NEXT BOX」と題された続編が登場!ということで「序章編」となる今巻は、本編全11巻29冊の総集編というかリブート編というか、な内容となっている。

1巻にて囚われのホライゾンの世話をしていた女子学生「世話子」ことロドリゴが、新たに「ルイス・フロイス」を襲名して武蔵上にやってくる本作。1巻ごとの内容を武蔵メンバー総出(もちろん羽柴組も含む)でおさらいしまとめながら、全体を把握していない世話子に説明しつつ、各艦上でリピートされているかつての戦いを、当時参戦していたのとは別のメンバーが代わりに出場して再現するという流れに。リアルタイムで読んでいたとはいえ、総重量13キロ(公式作成のPV情報による)もある大ボリュームの作品だったからして、ところどころ細かなつながりなどは忘れかけていたため、ざっくりとはいえ公式に総まとめしてもらえるのは「助かった!」のひとこと(笑)。「序章編」ということで現在も「カクヨム」にて連載中とのことだがそちらは読んでいないので、今後どんな問題が起きて、どのように対応していくのか。特に末世事変を経て武蔵面々ができることの範囲や権限はとてつもなく大きくなっているだろうから、彼らがどのように問題を解決していくのか(そしてどんなトンチキなことをしでかすのか・笑)が楽しみ。


◇前巻→「GENESISシリーズ 境界線上のホライゾン11〈下〉」


メソポタミア神話における半神半人、ビルガメスと木藤・円――エンキドゥと相対することになったのは、神道によるテラフォーミングに協力している北欧神のトールとシフ――雷同・徹と紫布・咲。壮絶な戦いの末、徹・咲ペアが勝利した。敗北を認めつつ、ビルガメスたちは神道への亡命を願い出る。事情を聞こうとする住良木たちだったが、そこに現れたのはビルガメスたちの「上役」である江下・伊奈々。彼女は神委の一員として神道によるテラフォームの遅れを弾劾しつつ、メソポタミアにおける神話再現のため、エンキドゥを殺すためにやってきたのだというが……。

唯一のヒトと神々による創世神話、「EDGEシリーズ」1−下巻。

同じ世界観だから当たり前なのかもしれないが、軸となるのは「惑星クラフト」としつつ、このシリーズでも過去シリーズと同じモチーフが繰り返される。特にこの本シリーズの次の世代となる「GENESISシリーズ」における《歴史》が本シリーズでは《神話》となり、改めて顕現した神々が惑星という「世界」を改めて創っていくことになるのだ。そしてもうひとつ、自分の存在を否定するヒロインを、ヒーロー(というには多少アレなところもあるが・笑)は全肯定し、受け止めていく。「先輩」はその権能や立ち位置から自分の存在をどうしても肯定しきれず、後ろ向きになってしまう。けれどそんな彼女を選んだ住良木は、自ら離れていこうとする先輩を、言葉を尽くして引き留める。何度ロールバックしても先輩を選ぶという彼の言葉は、自分で自分を失わせようとしたホライゾンを引き戻したトーリの姿とよく似ている。歴史は繰り返すと、そういうことなのかもしれない。

先輩の「最弱にして最強」の所以が分かり、メソポタミアの面々とも(一応?)和解というかお引き取りいただくことに成功した住良木たち。今後現れるであろう別の神話体系の神々は、さてどう出るか、気になるところ。


◇前巻→「EDGEシリーズ 神々のいない星で 僕と先輩の惑星クラフト〈上〉」


1990年代の夏、人類は宇宙進出に向けて「新開拓」に乗り出していた。そんなある日、何かのゲームをして、そこで何かにやられて死んでしまった夢(または寝落ちしただけ?)から目覚めた住良木・出見(すめらぎ・いずみ)。隣の部屋に長身の巨乳美女が引っ越してきて歓喜に打ち震えつつ、向かった学校で彼を待っていたのはゲーム部の友人たち。そこで話題は昨夜やっていたゲームのことに。住良木たちがプレイしていたのはテラフォーミング系のゲームらしいのだが、意味が全くわからない住良木は、その知識を得るために資料を調達したりもしつつ、とりあえず再プレイ。そこでゲーム内に現れたのは、昨夜も一緒にプレイしていたゲーム部の面々、そしてお隣の美女だった。このゲーム内では住良木以外のメンバーはみな「神」であり、住良木だけが「人」なのだという。そして住良木のパートナーとなるのが例の美女――「先輩」だというのだが、住良木は彼女をパートナーにした記憶はまったくなく……。

新シリーズは小説サイト「カクヨム」で連載されている、前作「GENESISシリーズ」において「神代の時代」と呼ばれていた世代の物語。今回は神話をベースにテラフォーミングで宇宙進出という展開に。

主人公である住良木・出見は境ホラのトーリ同様(?)、まともではないというかまあいわゆる「(安定の)異常者」キャラ(笑)。その信仰基準は巨乳であるため、パートナーとなった「先輩」への食いつきはもちろん半端ない。その一方で自身の記憶が虫食い状態というか、「今」しかないことに気付いていない(または気付かないふりをしているか、どうでもいいと思っている?)という不安定な状態。そんな中で明かされるのは、現実だと思っていた学校生活の方がむしろ仮想空間であり、ゲームの方が(つまり1度死んだ「夢」の方が)現実であるということだった。けれどそんな現実を住良木は受け入れ、どころか「先輩」と一緒にいられることを喜ぶばかりなのだから能天気というか、本能に忠実というか(笑)。

しかしそんな「先輩」一筋の住良木の周囲に伸びる影。なんでも開発すべき惑星そのものの反抗に遭い、AIによるテラフォーミングは難航。そんな中で発覚したのが、神の加護を受けた道具があればその反抗を抑えることができたという事実だった。そこでAIは世界中の神話に基づいた「神々」を創り出し、神話単位で神々の「奇跡」によるテラフォーミングを進めているのだという。ゲーム部のメンバーである雷同、紫布、桑尻は北欧神話の神々であるし、部長の四文字は某唯一神、そして「先輩」は本人曰く「ドマイナー」で「アウト系」な神道の神。この「先輩」の正体が明かされぬまま、とりあえず今回の上巻はイントロダクション的に話が進むのだが(なにせ主人公である住良木にもそのあたりの記憶や知識がゼロなため)、住良木にとっては「先輩」が「先輩」であるだけで他はもうどうでもよく、そしてそんな住良木の態度に「先輩」が救われているのが見て取れる。ふたりの関係はまだ「産土神とその氏子」というものではあるが、今後どのように変化していくのかが気になるところ。そして9月刊行予定の下巻は北欧神の雷同・紫布コンビと、目下唯一の「人類」である住良木を狙うメソポタミア系のビルガメス・エンキドゥコンビによる戦闘からスタートしそうなので、そのあたりも楽しみ。


ヴェストファーレン会議を終えて歓談を始めた各国代表たちの前に現れたのは「運命」の借体。「運命」は「幸運」を自身の守りとし、聖譜顕装を操れることを示して姿を消すのだった。この時の「運命」との会話から得られた情報をもとに作戦を立てた武蔵勢は、年内最後の満月の日に第二の月へ向かうことを決める。浅間がトーリを祭神とした東照宮の設定を進め、ホライゾンやミトツダイラと共に最終調整をかける中、ついに12月30日――決戦の日がやって来る。武蔵と大和、そして各国の代表者たちが第二の月へ向かい進むと、月からは「幸運」――正純たちが「瓦解」と称した竜属や武神群、そして「幸運な自分の分身」たちが現れて……。

戦国学園ファンタジー、開始から10年を経てようやく本編完結(なお分量は約1140ページ!)。

決戦直前の死亡フラグ……ではなく(笑)、武蔵強化のための準備として、ホライゾンと浅間、ミトツダイラによるトーリとのアツい一夜(!)が繰り広げられるというまさかの一幕を経て、始まりました人類の存亡を賭けた最終決戦。トーリたちが第二の月にたどり着くのを阻止すべく「運命」が繰り出してきたのは、生まれてからずっと何の障害もなく順調にここまで育ってきた「幸運な自分」という存在。能力は互角、どころか「幸運」なので当人が持ちうる最高の能力値を誇る分身たちを前に、武蔵の面々、そして世界各国の襲名者たちは様々な工夫を凝らして挑むことになる。

自分たちのことを「不運」と呼ぶ「幸運」たちを前に、人々はその「不運」をこそ誇りに立ち向かう。なぜならその「不運」がなければ今の自分はなかったのだから。「運命」はどこまでも現状に対して否定的で、だからこそ自身の死を望む。しかしトーリたちは、ひとりで抱えきれない現実をみんなで考え、受け止めようとする。世界中で彼らが繰り広げてきたことの下敷きには、いつだってこの想いがある。失わせない。ひとつでも欠くことなく、支え合う。かつて同じ選択をしたホライゾンは涙でトーリの手を取った。そしてこの結末を経て、ホライゾンは笑顔で再びトーリの手を取る。最後まで強い信念を貫き通したラストには思わず涙が出てきた。すばらしい大団円。


◇前巻→「GENESISシリーズ 境界線上のホライゾン11〈中〉」


「関ケ原の戦い」の歴史再現を終えた武蔵勢の前に現れたのは、行方不明となっていた元教皇総長インノケンティウスと、ムラサイの長スレイマン。ふたりの言動からその狙いを察知した正純は、輝元やマティアスに確認を取りつつ、ヴェストファーレン会議の日を迎えるのだった。正純はその議場で、この会議を「大阪の役」の歴史再現とし、自分たちが羽柴側、各国が松平側となることを宣言。さらにはこの会議で話し合われるそれぞれの講和において、敗戦国側の代理として講和をまとめてゆくこととなり……。

世界、そして武蔵の在り方と命運を賭けた会議、その顛末を描くシリーズ11-中巻。

ホライゾンが「そういう気分なので」1873回を始めたり(まさかトーリが撮られる側になるとは・笑)、それを利用して浅間がトーリの東照宮設定を行って「現人神」として会議に参加させる手はずを整えたりしつつ、ついに始まったヴェストファーレン会議。世界中の重鎮たちが集まる会議なので、メアリとエリザベスが感動の再会を果たしたり、全裸が3人もいたりと序盤からすでにおおわらわ(笑)。そんな中で始まるのは3つの講和。

三征西班牙から阿蘭陀が独立する「ミュンスター条約」は、フアナが火事案件(久しぶりに……)によって撃沈させられたので、代理として大久保が立つことに。羽柴勢が合流したことで、正純の無茶振りが竹中にも振られることになったため、それはそれで面白くない大久保がその成長ぶりを見せつけることに。
瑞典とM.H.R.R.旧派による「オスナブリュック講和条約」では、瑞典の副長であるアクセル・オクセンシェルナと、傀儡皇帝マティアスによって指名された正純が対決。しかし後半で相対戦を望むアクセルのため、クリスティーナが登場して戦うことに。
そして六護式仏蘭西とM.H.R.R.旧派による「ミュンスター講和条約」では、毛利・輝元と、これまたマティアスによって指名された羽柴=三成が相対することに。とはいえ輝元とコンセンサスがとれている状況の中、本当の意味で敵対してくるのはマティアスの方。しかし元々プログラムであるがゆえに、単純な損得勘定を越える発言を繰り返すマティアスに対抗できない三成の代わりに、竹中が補佐としてその能力を発揮するという展開に。
これまで裏で参謀あるいは情報担当として「縁の下の力持ち」的な存在だった3人が、世界を向こうに回した大舞台で活躍するという流れがとにかく熱い。話し合い、あるいは腹の探り合いという流れが続く中、武蔵勢がこれまで積み上げてきたものをきちんと踏まえつつアップデートしていく姿になんともしみじみする。

そうして最後に置かれたのは、武蔵を世界が認めるかどうか――という、シリーズ冒頭に教皇総長から出された「課題」の回答編。他国の人々が言うように、トーリの存在だけでなく、彼が正純に全権を委任しているというシステムもまた脅威のひとつとなっていた。トーリとホライゾンの「失わせない」という理想を、武蔵の存在意義、そして政治理念に落とし込んでいく正純の手腕もまた、今回最大限に発揮されたと言える。かつてのトーリとホライゾンのように、正純と教皇総長とが「平行線」の議論を繰り広げていくラストは圧巻。ホライゾンのアップデートにより「大罪武装」もバージョンアップし、罪を突き付けたり裁いたりするのではなく「赦す」という属性を得たことで、彼らは「運命」とどう相対していくのだろうか。


◇前巻→「GENESISシリーズ 境界線上のホライゾン11〈上〉」


武蔵勢は「関ケ原の戦い」およびヴェストファーレン会議に向け、羽柴勢と「合流」することに。とはいえ十本槍を中心とした面々を武蔵艦上に迎え入れはしたものの、合流に向けて双方で決めなければならないことは山積していた――そもそも合流すべきかどうかという点も含めて。そんな中で「親」と「子」たちは顔を合わせ、言葉を交わすことでそれぞれの「距離」を見定めようとしていた……。

戦国学園ファンタジーシリーズもついに最終章に突入!の11-上巻。今巻ではこれまで敵対していた武蔵と羽柴の「合流」、そして会議前における最大にして最後の歴史再現である「関ケ原の戦い」完遂が描かれていく。

二大勢力の合流というのはもちろん世界を揺るがすレベルの大事ではあるが、本人たちにとっては文字通り「認知」問題になってしまうというのがさすがというかなんというか(笑)。ということで母娘(ただし直政のところのみ姉妹)の御対面!という展開に。とはいえ「母」側からしてみれば「娘」たちはまだ産んでいない(どころか一部にとっては産むかどうかすら不明な)存在。「娘」たちにしてみればかつての「母」の面影を見つけて喜ぶ半面、厳密にいえば本当の「母」ではないという事実に戸惑いを隠しきれない。しかし「母」たちは思いのほかすんなりと彼女たちのことを受け入れる。それは実の娘だと認めたというよりは、自分が彼女たちのような「娘」をこの先産むだろうという確信を持てるようになったからなのかもしれないな、と思ったり。そしてそう思えるようになったのはもちろん、トーリとホライゾンの存在あってこそ。すべてを失わせない、あるいは皆と共に在りたいというふたりの想いが、浅間やミトツダイラたちの背中を押したのだと、そう思う。

で、後半は毛利・輝元たち六護式仏蘭西の面々を教導院に呼び寄せての「関ケ原の戦い」の再現へ。もちろん会議のことを見据え、行う再現はまさかの大運動会。とはいえこのメンツが集まってまともな運動会になるはずもなく、状況の報告を受けていたフアナの気持ち(何やってんだこいつら的な)がよくわかってしまう展開になるのだが、最終的にはまたしても「失わせない」という武蔵の方針が生きてくる結果に。これで輝元の協力も取りつけてさあ会議!というところで現れたのは、行方不明になっていた教皇総長インノケンティウス。スレイマンと共に武蔵へとやってきた教皇総長が、ここにきて何をしでかすつもりなのか……。


◇前巻→「GENESISシリーズ 境界線上のホライゾン10〈下〉」


「哀しみ」を得たことで契約違反とみなされ、トーリが死んだ。しかしかねてから浅間が行っていた「仕込み」、そしてトーリが先日松平・元信の襲名権を得ていた事実を利用し、浅間とミトツダイラがトーリを復活させるため黄泉へと向かうことに。一方、儀式で騒ぐ地上武蔵の様子をうかがっていた羽柴勢。そんな中、武蔵勢へ強襲をかけようとする真田・信繁の前に真田・信之が、そして前田・利家の前には佐々・成政が立ちはだかり……。

シリーズ10-下巻はまさに「再起」の巻。またしても本文1000ページ超えで、武蔵勢が再び立ち上がり立ち向かうという展開に。

先だってついにホライゾンと結ばれたトーリだったが、今回はなんと黄泉にて自身の再起をかけて浅間&ミトツダイラと――!というのっけから濃すぎる展開でお送りされてしまう今巻。ふたりの懸命のあれこれ(以下略)のおかげで再生には成功したものの、他の神々の介入により現世への引き戻しが混迷を極める中、やってくれるのが賢姉・喜美。神をも捕らえねじ伏せるその底力はすさまじく、なんというかやっぱり彼女がシリーズ内最強キャラなのでは……と驚愕を禁じ得ない(笑)。

その一方で久々に登場したのが前田・佐々の同級生(?)コンビ。前田にはまだ襲名者としての「この先」があるが、佐々にはもうほとんど残されていないという事実を認めつつ、これを終わらせたくない前田と、終わらせるべきと考える佐々の激突はまさに壮絶といっていいもので、佐々の真面目さが最後の最後まで発揮されるいいエピソードだった。ちゃんと不破が止めに入ってくれるという結末もさすが。

そして後半は武蔵勢と羽柴勢の再戦。前は羽柴勢の後出しっぷりに憤慨したものだが、ちゃんと武蔵側にも新装備が用意されていてほっとひと安心。再び母と娘たちの対決が繰り広げられることになるのだが、娘側である羽柴勢が母たちに怒りを得、同時に母たちを守りたいと考えているのに対し、母側である武蔵勢はそんな彼女たちごとまるごと守ろうと考える。そこが双方の差となり、今回の結末へとなっていく。すべてが丸く収まるというのはまさにこのことなんだな、と思わせるラストにはすっきりとさせられた。

さらに今回、全巻通しての謎となっていた「二境紋」の意味、さらには梅組の担任であるオリオトライの正体も明らかに。まさか「公主」の存在にミリアムが関わっていたとは思いもよらなかったのだが、そのミリアムの行方は依然としてわからないまま。クライマックスが近付いているようで、どんどん問題(伏線)が片付きつつある中、新たな謎も生じていてますます目が離せない。


◇前巻→「GENESISシリーズ 境界線上のホライゾン10〈中〉」


「山崎の合戦」の歴史再現として武蔵を追う安土。艦上に次々と乗り込んでくる羽柴十本槍の面々が明かしたのは、彼女たち自身の正体だった――10人のうち竹中と石田を除く8人は、未来から抽出された武蔵勢の実子たちだというのだ。さらに彼女たちの生まれた未来では武蔵勢は失敗し、運命は失われて世界は滅んでしまったのだとも。ゆえに武蔵を止めると宣言する羽柴勢に対し、正純は戦闘の続行を決断。かくして各所で相対(親子対決含む)が始まり……。

10-中巻はシリーズ最大の急展開。帯にて完全にネタバレ(苦笑)されている通り、「武蔵」が羽柴勢によって撃沈させられるという最悪の結果が描かれていく。

かねてから似てる似てるとは思っていたが、まさか未来の子供たちだったとは……という衝撃の告白から始まる今巻。しかしまあ驚きなのは8人のうち3人の父親がトーリだという事実だったりする。しかもその3人の母親の内訳が浅間、ミトツダイラ、そして鈴だということにも。どうやらトーリとホライゾンの子もいたらしいが、それは十本槍には含まれていないということ、そしてそもそも彼女たちの生まれた「未来」では、三河争乱の時点でトーリとホライゾンがそろって失われているということも判明し、武蔵勢同様、読んでいるこちらも「な、なんだってー!」と何回叫んだことか(笑)。

というわけで前半は武蔵勢と羽柴勢による相対戦。結果として勝率は大した差がついていないものの、武蔵側は特務級がほとんど負けているうえ、主力はその武器を壊されてしまうという後のない流れに。そして後半では武蔵と安土による艦隊戦に持ち込まれるのだが、武蔵優勢かと思われた戦闘の流れはあっという間にひっくり返されてしまう。「未来」を知るが故の周到さと言ってしまえばそれまでだが、個人戦でも艦隊戦でも、武蔵側が優勢に見えていると羽柴側が新装備を出してきて逆転ホームラン!な流れが頻発するので今度は「ズルい!」と何回叫んだことか……特に武蔵が撃沈されるシーンは悲しいというより悔しいという意味で涙が出てしまった。”武蔵”の「また、いつか」という言葉が、その短さに反してなんと重たいことか。

……しかしここで終わらないのが10巻。これまで王として皆を牽引してきたトーリが、ついに自身の信念を揺らがせてしまう。彼の「子供」たちが、彼のやり方に否定を突き付けたというのはいかほどの衝撃だっただろう――まして戦闘の果てに「武蔵」を失ってしまったのだからなおさら。しかし再び「後悔」を得たトーリの前には――否、その境界線上にはホライゾンがいた。すべてを受けとめてくれる人がいるからこそ、彼は泣くことができたのだろう。たとえそのせいで命を失うことになるとわかっていても。次巻ではそんなトーリの魂を呼び戻すための儀式がスタートするのだが、その方法はまさかの……ってまあ予想はついていたけれど、ということで次巻ではホライゾンに続き、浅間&ミトツダイラのターンが始まる模様。なかなか(広い意味で)えぐい展開になりそうな予感。


◇前巻→「GENESISシリーズ 境界線上のホライゾン10〈上〉」


「創世計画」の真相と「本能寺の変」の結末に動揺を隠せない武蔵勢だったが、そうしているうちに「大返し」とこれに連なる「山崎の合戦」の歴史再現を行うため、羽柴勢が接近してきていた。正純は安土の猛追を逆手に取り、これを「伊賀越え」の歴史再現にすり替えようと目論む。そこで竹中は、「伊賀越え」の一環として、史実ではそのさなかに犠牲になったとされる「穴山・信君」の死の再現をも迫ってきて……。

久々のシリーズ本編となる10-上巻は、「本能寺の変」および「創世計画」の真相が明かされたということで、まさにクライマックス直前!とも言える展開に。

トーリが明智・光秀の権限を得たこと、そして「本能寺の変」が起きてしまったことで、必然的に次に起こるのは羽柴が明智を討つ「山崎の合戦」。前半では逆に羽柴勢を明智と見立てた「伊賀越え」の再現にすり替え、とにかく逃げ切ろうとする正純の機転が描かれていくのだが、今回もよく言えば巧妙、悪く言えば屁理屈すぎて(このへんはネシンバラの微妙な入れ知恵も相当ありそうだが)、相対させられる竹中はそりゃ吐くのも仕方ないかなといった流れに(笑)。

しかし後半ではやはり「山崎の合戦」の再現は避けられず、武蔵は羽柴勢の侵入を許してしまう。あちこちで戦いが始まる中、今巻でさっそく決着がついたのが立花夫妻VS大谷&左近ペア。不死者である左近をあっさり追い詰める立花嫁の攻撃の鮮やかさもすごいが、鬼武丸と宗茂による、流派の歴史を内包した決戦もまた凄まじい。

しかし一方で、再現のためにわざわざ十本槍たちが武蔵に乗り込んでくる必要がないと気付く正純たち。ここで羽柴勢が隠していたもうひとつの「真実」が明かされるという展開には唸らされるばかり。なぜ十本槍の面々は、梅組の主だった人々に似ているのか――その理由は前作「終わりのクロニクル」における新庄の正体にも通じるものがあり、ある意味これも「歴史は繰り返す」ということなのかとしみじみ。しかしだからといって、「創世計画」の遂行を簡単に受け入れることはもちろんできない。世界の趨勢はこの「山崎の合戦」の結果に託されたと言っても過言ではない中、どのような決着がつくのだろうか。ちなみに次巻は「10-中巻」(12月刊行予定)のようなので、待ち遠しいけれどすべての決着が次巻でつくわけではないのか……ということで。


◇前巻→「GENESISシリーズ 境界線上のホライゾン9〈下〉」


三征西班牙とのアルマダ海戦を終え、改修のためIZUMOへ向かう武蔵。正純たちが復興対策に加え、先の戦闘を経て武蔵へやってきたメアリや立花夫妻の処遇や手続きに追われる中、なぜかIZUMOから着港拒否の連絡が入る。理由がわからず首を傾げる正純の前に現れたのは、かつての教皇ウルバヌス8世――現在はその任を完遂し、以心・崇伝を襲名しているという少女だった。彼女は正純を「極東の代表」とし、後に徳川幕府の元で発布されることとなる「武家諸法度」の歴史再現を迫ってきて……。

梅組女子による女子会的回想話な番外編「ガールズトーク」ももう3巻。これまでは本編以前のエピソードだったが、今回は本編2〜3巻の間に起きていた騒動が描かれてゆく。

おそらく誰もが耳にしたことのある「武家諸法度」。幕府の麾下にある大名たちの行動を制限し、幕府の影響力を強めるこの方策は、確かに今後「徳川幕府」となるであろう武蔵の面々にとって重要なもの。しかしまだその時期が来ていない現状にあって、この存在と運用方法を先んじて示唆することはどう考えても武蔵にとってマイナスになりかねないできごと。ではなぜ崇伝はこの再現の前倒しを突然要求してきたのか。そして遠くない未来、これを世界に向けて発布しなければならない武蔵側は、これをどう解釈し、同時に世界にそれぞれ解釈させようというのか。まさに崇伝の言う通り「極東の在り方を決める」重要なエピソードとなっている。

とはいえやっぱりそこはガールズトーク。締めるところは締めるが、基本的にはいつも通り女子会のノリで進んでいくことに。広義のガール(?)ネイトママンも参戦し、状況はますます混迷を深めることに(笑)。そしてなんといっても今回の目玉は表紙にもなっているメアリ。英国を出て武蔵へとやってきたことでいくばくかの不安を抱いていた彼女だが、それを解消してくれたのはいつものノリの梅組の面々、そしてなにより点蔵の存在。点蔵への募る想いだとか、ふたりで初めて町歩きするエピソードだとか、現在パートで新居を考えるくだりとか、とにかくメアリの点蔵さま好き好き状態には降参するしかない。ごちそうさまでしたー!


◇前巻→「GENESISシリーズ 境界線上のホライゾン ガールズトーク 祭と夢」


ヘクセンナハトを間近に控え、魔女たちは学院を中心として準備を進めていた。そんな中、堀之内から「黒の魔女」である妹について問われた各務は、ハンターやメアリーを伴い、品川のファミレスで腹ごしらえをしつつ説明をすることに。そこでハンターはフルールも呼び寄せるのだが、道中でフルールはある少女と出会い、行先が同じということで同行することに。しかしふたりを出迎えた各務は驚きを隠せなかった――フルールに同行していたのが、妹にして「黒の魔女」たる各務・硝子であったがために。各務が自分を追ってこの世界に現れ、仲間を得て、いまやその仲間たちと自分を倒すための算段を立てていたと思い込んだ硝子は逆上して各務を刺し、「黒の魔女」として顕現。各務と堀之内が召喚したジオフレームに一撃を加え、翌日の再戦を宣言して姿を消すのだった。しかも各務は硝子に刺された後に昏倒し、そのまま意識が戻らず……。

川上稔によるロボットSF的魔法少女シリーズ、4巻にしてついに完結。いくつもの世界を越えた壮大な姉妹喧嘩にもついに決着の時が。

「黒の魔女」の想像によって作られた世界なのだから、彼女の想像を越えれば勝機がある――という、言葉にすれば単純だが実際やるとなるとどうすればいいんだ的な命題からスタートした最終巻。ようやく硝子が姿を現し、独白を重ねることで、彼女が各務に対して抱えていたコンプレックス、ひいては彼女が世界を次々と滅ぼしてゆくその理由が明かされてゆく。ある意味まっすぐなその性格はさすが各務の妹と言ったところで、まあなんとなればすべて各務が悪いのでは(笑)と思えなくもないがそこは置いておいて。想像すること、そして創造すること――図らずも各務が有していたのも、無から有を作り出すクラフト能力。絶対的にすら見える力ではあるが、かと言ってひとりが想像し、創造できることには限りがある。束ねられた力はいつしか「神」の想像すらはるかに超えてゆく――そんな希望に満ちたラストがとても印象的だった。


◇前巻→「OBSTACLEシリーズ 激突のヘクセンナハト3」

OBSTACLEシリーズ 激突のヘクセンナハト (3) (電撃文庫)
川上稔
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
2016-09-10

メアリーを倒し、ランク2位となった各務・堀之内ペア。しかし残るランク1位の魔女についてはその正体をはじめとしてなにひとつ情報がなかった。そんな中、ハロウィンパーティー直後の学院に、欧州U.A.H.代表にして「三賢人」のひとり、リスベス・ルエーガーが現れる。学院の保護という名目でヘクセンナハトの掌握を目論むリスベスに対し、学長のスリズィエは対決も辞さない警告を放つ。そうして現れたのは、ガスマスクを装着した小柄なひとりの魔女。彼女こそがランク1位の魔女にしてスリズィエの実子・フルールだった。フルールはかつてスリズィエが使用していた術式を継承・発展させたデバイスを使用し、リスベス、そして彼女を救うため割って入ったハンターとメアリーをもあっと言う間に追い込んでゆく。その桁外れの威力に驚きつつも、各務と堀之内はフルールの周囲に使役体の存在が感知できないことに気付き……。

3巻は欧州U.A.H.との抗争か?と思いきや、これまで通りランカー戦ということで。

ハンターとメアリーがいつの間にか仲良く(?)なっており、そのやりとりが増えたので各務と堀之内の夫婦漫才が目立たなくなってきたような……などと思いつつも、今回は前回のヘクセンナハトで黒の魔女に挑み、敗れた堀之内の母・充代について明かされてゆくという流れに。堀之内が亡き母の術式やデバイスをそのまま引き継いでいるということは、そこに黒の魔女に対抗しうる要因が隠れているはずだが、先の敗戦後、黒の魔女は充代と彼女との戦いに関する情報・記憶をすべて消去したということで、誰にもわからないという状況。結局は自分の力で何とかするしかないということであるが、各務はもちろん堀之内に対して全幅の信頼を置いているからして、こちらも心配することではないのでは、と心が軽くなる。

しかしそんな思いを圧倒的な攻撃力でもって阻みにくるのはランク1位のフルール。まさかのラスボスが学長だとは……というのもさることながら、これまで以上の派手すぎる攻撃態勢にはもはや言葉も出ない。映像化すればさぞかし映えるだろう、というフルールとのランカー戦は圧巻としか言いようがなく、準決勝(?)でこれなら、決勝(つまりヘクセンナハト本戦)ではいったいどうなってしまうのか、想像もつかない。

堀之内の母親について語られるのと同様に、一方でリスベスはフルールの母、つまり学長であるスリズィエの現状についても語ってゆく。そうして見えてくるのは、フルールと堀之内が実はよく似た境遇に置かれているということ。しかしフルールと堀之内には決定的な差があった。それは母親が娘に対して遺したものの違いという点もあろうが、それよりなにより、堀之内の側には各務がいて、フルールの側には誰もいないということ。各務の存在はその圧倒的な強さだけでなく、精神的支柱という意味合いもかなり大きくなっている。だからこそ堀之内は、亡き母にまた1歩近付くことができたのだろう。

というわけであとは本番、ヘクセンナハト――黒の魔女との戦いを残すのみ。黒の魔女とはすなわち各務の妹だからして、いかにこれまで超然とした態度を崩さなかった各務といえど、相手の出方によってはどうなるか見当がつかないのも事実。そんな時、今度は堀之内が支えになってくれるはず。そういった意味でも、最終決戦の行方が楽しみになってきた。


◇前巻→「OBSTACLEシリーズ 激突のヘクセンナハト2」

GENESISシリーズ 境界線上のホライゾン (9)下 (電撃文庫)
川上稔
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
2016-06-10

歴史再現としての「賤ヶ谷の戦い」が開始された。糟屋・武則ら率いる異族部隊は前田・利家と、加藤・清正は丹羽・長秀と相対し、羽柴勢が先輩であるP.A.Oda勢に苦戦を強いられる中、強化合宿地から直接戦場へ向かっていた福島・正則は完全に道に迷っていた。一方、「本能寺の変」に介入すべく準備を進めていた武蔵勢は、本能寺の現状から逆算し、かつての三河争乱は、何かを地脈間輸送するために地脈炉を暴走させ、さらにその痕跡を隠すために引き起こされたのではないかと推測する。しかしその「何か」の正体、そして本能寺の変の鍵となるであろう暗号文も解読できぬまま、現地へと向かうことになり……。

シリーズ最大の山場である「本能寺の変」がついに決着する9−下巻。前半は羽柴vs織田となる「賤ヶ谷の戦い」、そして後半はついに織田・信長がその姿を現し、創世計画の意味が明かされる「本能寺の変」が描かれてゆく。

前半では先輩格であるP.A.Odaの面々が圧倒的な実力で後輩格の羽柴勢を追い詰めてゆくが、最終的には(そして聖譜記述通りに)羽柴勢がなんとか勝利を収めてゆく。それは本人たちが自覚している通り、戦いに際して個の能力を最大限に活かすか、あるいは仲間を信じ連携を重視するかということの違いが際立つ結果となる。何度も描いているが、目標は違えど羽柴勢と武蔵勢のスタンスは同じ。仲間への信頼が第1と、そう言える展開はよんでいてやはり清々しいものがある。

ちなみに今巻、ついに加藤・清正と福島・正則の痴話喧嘩(笑)にも決着が。ようやく再会したふたりは、多くを語らずとも互いへの想いに気付き、通わせ合い、柴田夫妻と相対することになる。ふたりの関係の成就も、バディ戦とも言える最終決戦も、そして柴田夫妻の「最期」も、どれも凄絶な美しさを放っている。読んでいるこちらとしては、もうとにかく良かったね、ということで。

後半ではついに「本能寺の変」と創世計画が始まり、トーリたちの前に羽柴・藤吉郎と織田・信長が現れる。特に前巻では羽柴とホライゾンがうりふたつということが明らかになったが、今回はその理由もすべて明かされるという展開に。もうこの真相というのが驚きの連続なのだが、やはり一番の驚きは織田・信長の正体。今回の表紙がその信長なのだが、彼女とトーリたちとの関係、そしてトーリへの想いがなんとも切ない。トーリの服装やしぐさを信長が真似ているのがわかるというエピソードが特に。「失わせない」ということを誓ったトーリたちにとって、今回の結末は苦いものになったが、それでもまだすべてが終わったわけではもちろんない。わずかではあるが創世計画完遂までの猶予を得たことで、彼らはどうやってその真相を明かし、世界を味方につけ、信長を救うことができるのか。とにかく続きが気になって仕方ないので、できればヘクセンナハトやGTより先に本編の続刊を……!


◇前巻→「GENESISシリーズ 境界線上のホライゾン9〈上〉」

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