5人きょうだいの真ん中(上も下も男女の双子)として生まれ、両親は大手メーカーの経営者ということもあり、何不自由ない暮らしを送ってきた龍岡富士。しかしそう思っているのは周囲だけで、実際は大学卒業を目前にして、両親の決めた婚約者から突然縁談を断られ、就職はおろかフリーターになることも許されず実家での引きこもり生活が確定となり、さらには卒業式後の打ち上げでゼミの仲間たちからも辛辣な言葉を投げかけられ、絶望の淵に立たされていた。そんな中、打ち上げ会場の近くで行われていた「バーバリアン・スキル」なる小劇団の舞台を観た富士は、その勢いに魅了されてしまう。数日後、実家に帰るための準備をしていた富士は、突然退学してしまい音信不通になっていた同級生・須藤と再会。演劇が好きで自身も小劇団に所属しているという須藤の伝手で、富士は「バーバリアン・スキル」のメンバーと顔を合わせ、さらには彼らから「マネージャー」としてスカウトされてしまう。主宰である南野の持ち家がシェアハウスということもあり、喜んで参加を表明する富士。しかし「バーバリアン・スキル」の現状は富士の想像をはるかに超えた悲惨なもので……。
「カドブンノベル」に2019〜2020年にかけて連載された、愛すべき演劇バカたちが繰り広げる青春ストーリー。
のっけから富士の抱える問題の根深さに頭を抱えてしまう本作だが、彼女が自らの意思で選んだ新たな道――小劇団「バーバリアン・スキル」は、それに輪をかけて問題だらけ。なにしろ金も時間も余裕もなく、なのにメンバーたちはこと演劇にかけては妥協を許さず、とにかく素晴らしい舞台を作るという、それだけに向かって邁進し続けるばかり。そして唯一の良心というか管理者的な立ち位置の人物は、劇団の帳簿や通帳を持ったまま、富士が観た舞台が設備トラブルにより中断されおおわらわになって以来行方不明の音信不通という状態。そこに大学卒業したての、劇団の裏側もなにもまったく知らない素人である富士がどう立ち向かっていくか、というのがメインの流れとなっていく。
基本的に親の言う通り、流されるがままに生きてきた富士だからこそ、自己評価は限りなく低く、自分ができることだけをやるというスタンスで生きてきたであろうことはなんとなくわかる。しかしバリスキのメンバーとなったことで、富士の行動パターンは「できることからコツコツと」、さらには「できないではなく、やる」というところにまでレベルアップ。奔放すぎる上の双子と下の双子の手綱をなんとか握ってきた経験が遺憾なく発揮され、バリスキを蘇らせていくという展開にはすかっとさせられる。とはいえ、ひとつの作品を成功させることがもちろんゴールではなく、バリスキにはこれからも様々な苦難が待っている模様。けれどきっと、富士がいれば大丈夫。そう思わせるラストがとても爽快だった。















