phantasmagoria

読んだ本のこと、それ以上に買った本のこと、ときどきライブのことを書き散らかしてみたりする。

カテゴリ: 瑞山いつき


あやかし絵専門の画家・富嶽北斗には、あやかしを見るだけでなく、自身の描いた絵にそれらを封じることのできる能力を持っていた。しばしばやってくる大学時代の同級生で怪奇小説家の多喜沢にうらやましがられつつ、展覧会に出品する絵を描いたり、多喜沢の小説の装画を担当したりと、それなりに充実した日々を送る北斗。そんなある日、いつものようにネタを求めて押しかけて来た多喜沢と共に、地元である浅草の蕎麦屋へと向かうことに。その帰り道、傘にまとわりつく暖簾のようなあやかしに遭遇し……。(「観音裏の縄簾」)

浅草を舞台に、あやかしが見える画家と見えない小説家が、おいしいものを食べながら様々な怪異に遭遇するという、あやかし&下町グルメ連作集。

タイトルに「グルメ」と付くだけあって、蕎麦、かにコロッケ、揚げまんじゅう……と、なんともおいしそうな単語が連なる本作。個人的な話になるのだが、これを読んでいたのが夜なので、なんともお腹がすいてきて困ってしまった(笑)。

さておき、そんな感じでおいしいものを食べに外出した先で、北斗と多喜沢、そして北斗の姪で同じくあやかしを感知することのできる女子高生・美紗緒たちが遭遇するのは様々なあやかし。かれらは人に害成すモノであることもあるし、そうではないこともある。ただ道に迷っているだけだったり、美紗緒に危険が迫っていることを察知して守ろうとしてくれていたり。いいものも悪いものもいて当たり前――そんな雑多な、しかし人情味のある雰囲気が、舞台である浅草、そして北斗の「あやかし画家」という職業によくマッチしているなあと思う。

子どもの頃のトラウマ的な体験(あやかしが見えることを信じてもらえないとかそういうこと)のことがあるのでわりと人付き合いが苦手なのかと思いきや、ちゃんと彼女がいたりする(ただし本作の時点では別れているが)という北斗の人物像がわりと謎なので、続編があれば元カノなんかにもぜひ登場していただきたいところ(笑)。


見習いとしてヴォルフ騎士団の一員になったエリカだったが、自分の魔獣をまだ持っていなかったり、ジークからラルフとの恋路を反対されたりと、もどかしい日々を過ごしていた。そんなある日、ラルフとジークと共に魔獣管本部へと向かうことになったエリカ。しかし向かった先で魔物が出現。その場に居合わせたルクス騎士団の面々と共に魔物討伐へと向かったエリカだったが、そこで奇妙な少女に遭遇し……。

恋に仕事に大忙し!な見習い騎士ヒロインの奮闘を描くシリーズ2巻。今回も波乱の予感?ということで。

エリカとラルフ、当人同士は完璧に両想いではあるが、だからといってすんなりうまくいくはずのないふたり。物理的な障壁としてはもちろんエリカを溺愛する兄ジークの存在が大きいのだが、結局のところジークのそれは兄心なのか、それとも男としてなのか、いまだに微妙な感じ。本人は後者を否定してはいるが、ここまでムキになられるとかえってあやしいというかなんというか……。そして最大の障壁はやはり身分の差。ラルフの「第三王子」という王位に近すぎる立ち位置はいかんともしがたく、ジークの懸念もごもっとも。しかし走り出した恋が止められるはずもないので、とにかくふたりにはがんばってほしいということで。まあなんというかラルフがいつまで我慢できるか、という部分もあったりするのだけれど(笑)。

一方、いろいろと問題を起こしながらもなんとか自分の魔獣を得られそうなエリカ。しかし今回彼女が出くわした事件は――ひいては彼女がゲシュテルンで経験したあれこれは、彼女にその立場――例えば「騎士」という身分だったり、あるいは「辺境伯の娘」という血筋だったり――を否応なく自覚させるものばかり。しかしそういったものから目を背けないエリカの強さが頼もしい。だからこそ余計に、エリカの今後が気になるところ。


◇前巻→「双翼の王獣騎士団 狼王子と氷の貴公子」


シュティーア辺境伯の公女であるエリカは、美しい異父兄・ジークに比べて地味すぎる自身の容貌にコンプレックスを抱きながらも、王都に行ったきりのジークの帰還を待ち続けていた。そんなある日、領地に魔物が出現したということで、エリカは領内の騎士団と共に現場へ向かうことに。しかし領民の避難を指示しようとしていたエリカの前に魔物が現れ、窮地に陥ってしまう。そんなエリカを救ったのは、このテルンビルト王国の第3王子でもあるヴォルフ騎士団の団長・ラルフだった。ついでエリカの前に現れたのは、ラルフの副官を務めているジークだったが、彼のエリカに対する視線は以前と変わらず冷ややかなもので、エリカだけでなく両親の言葉にも耳を貸さない態度も相変わらず。ジークが家に戻らない理由のひとつがラルフの副官を務めていることだと考えたエリカは、ジークを実家に戻す代わりに自分を騎士団に入れるようラルフに要求。ラルフはエリカにジークの代わりが務まるのであれば、と仮入団を許可するが……。

自分の居場所を探し続ける少女の成長を描くラブファンタジー長編。

その長身や剣術、さらに魔獣を操れるという特性を生かし、公女でありながら領地では魔物との戦いに身を投じることもあるエリカ。しかし例えば男装して騎士団に入るというような大胆さを持ち合わせているわけではなく、かと言って社交界に出たり政略結婚の相手がいたりするわけでもないという中途半端な状況。そしてそれらはすべて、自分に対する自己評価の低さが原因で、どこにも進めないというような状態。それは母や義兄であるジークが月光に例えられるほど美しいことだったり、過去にジークとの「事故」がきっかけで喉元に大きな傷跡が残っていることだったり――そしてなにより、敬愛するジークが実家に寄り付かず、それを自分のせいだと思っていたり。よく言えば健気、悪く言えば自虐的なエリカの姿にはなんともじりじりとさせられるものがある。

そうやっていろいろなものが綯い交ぜになり殻に閉じこもっていたエリカだったが、ようやくその殻が破れたのはラルフとの出会いがきっかけ。自身を否定し続けるエリカをまっすぐすぎるくらいに肯定し(まあ手段はともかく……)、認めていくラルフは、エリカにとって文字通りの王子様になったのだろう。まさにロマンス!ということで、お互いに認めまいとしつつも想いを止められないふたりの距離感には、胸の奥をぎゅっと掴まれるような気分にさせられた。ただしジークのエリカに対する態度の真意がアレなので、ふたりの関係はある意味前途多難なような……とりあえずラルフは死ぬ気でがんばれということで(笑)。


諜報員としての能力を持つ使用人ばかり集められているヤードリー男爵邸。ここで働く16歳のメイド・フェイスもそのひとりだが、このたび、初めての任務が与えられることとなる。ウェッダーバーン子爵令嬢ハリエット・ステイシーの婚約披露パーティーを控えたかの邸宅に脅迫状が届いたため、フェイスはレディースメイドとしてその令嬢の護衛を務めることになったのだ。幼なじみでもあるライリーと共にステイシー家に潜り込んだフェイスは、ハリエットに届けられた婚約者からの手紙に不審感を抱き、指定された場所へ単身向かうことに。そこでフェイスが遭遇したのは、どこか印象的な瞳を持つ、ノアと名乗る青年。ハリエットの婚約者・ロバートを昏倒させていたノアに襲いかかるフェイスだったが、そんな彼女に対しノアは突然愛の告白を始め……。

ココアが大好きな戦うメイド・フェイスが、初任務でまさかの敵に告白されてさあ大変!?な恋愛ファンタジー長編。

帯にもあるがフェイスの鈍感力は相当なもので、幼なじみでもある同僚ライリーの気持ちにまったく気付いていないし、ノアからのまさかの告白にも動揺はしたもののその後のこまごまとしたアプローチには気付いていなかったり。とはいえ常にクール、というわけでもなく単純に初心なだけで、ノアからの甘い台詞や身体的接触には悲鳴を上げたり動揺したり。そんなまだまだお子様なフェイスが今回の任務で目の当たりにするのは、まだ経験したこともなければ想像したこともないような恋愛事情だったりする。

今回の任務であるところの陰謀話も楽しいと言えば楽しいが、やはり一番楽しいのはフェイス・ノア・ライリーの三角関係。今巻ではフェイスがかろうじて(息絶え絶えな状態ではあるが)逃げ切ったような気もするが、後半はどうしても陰謀解決編に紙幅を裂かれていたため、やや中途半端に終わった感は否めない。個人的にはそのあたりももうちょっとがっつり書いてほしかったところ。特にフェイスの過去の出自にまつわるあれこれも。


ヘルシャーグラール王国はアルブランの森に住む魔女・リタの家に、仔猫のような魔獣が現れた。その魔獣と使い魔の契約を結んだリタは、ひとまず魔獣を檻に入れて眠りに就く。しかし翌朝、檻の中にいたのは黒髪の青年だった。彼はこの国の第1王子・ヴァルトであると名乗り、アルブランの森の魔女に助けを求めに来たのだと告げる。最初は信じていなかったリタだったが、しばらく一緒に過ごしてみてその魔獣らしからぬ行動に気付き、調べてみたところ、ヴァルトの言うことが真実であることが判明。ヴァルトは何者かによって夜の間だけ魔獣になる呪いをかけられているのだが、リタの計算では日に日にその獣化は進み、近いうちに人間に戻れなくなってしまうこともわかる。実はリタに一目惚れしていたヴァルトは、それでもいいとリタに迫り……。

新作はタイトル通り、魔女がうっかり王子様(呪い付き)を使い魔にしてしまってさあ大変!な恋愛ファンタジーもの。

アルブランの森を司る魔女としてこの近辺では名高いが、森から出てしまうとまだぎりぎり一人前といった状態のリタ。彼女は同じ魔女であった母親に捨てられ、孤独をかこって生きてきたという過去があった。そしてそれは皇子であるヴァルトも同じ。母親を早くに亡くし、継母の産んだ弟――実際には弟ではなく、継母の一族――との間での権力闘争に倦んでいた。そんなふたりが出会い、惹かれ合うのは無理からぬ話。ことにヴァルトはリタに一目惚れしてしまっていたのだから、まあそのあたりはトントン拍子に。主と使い魔という関係性のせい、と最初は目を背けようとしていたリタが、いつしかほだされてしまうあたりはなんとも微笑ましい。

結局は呪いを解くしかないということで王都に向かい、そこでヴァルトを狙った騒動に巻き込まれるという展開になるのだが、自分より強い魔法使いを前に、リタが自身の持てる力すべてを使って立ち向かってゆくシーンはかっこいいし、すべてが終わった後でのふたりの関係がなんともイイ。なのでできればふたりのその後を見てみたい気も。

蓮華鬼譚 宿命と恋の始まり (ビーズログ文庫)蓮華鬼譚 宿命と恋の始まり (ビーズログ文庫)
瑞山 いつき

KADOKAWA/エンターブレイン 2015-03-14
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世にはびこる鬼を斃す能力を持つ「真実の一族」――その一員である少女・蓮華は任務を終え、仲間の籐二と共に故郷である雨の里に戻ることに。だが里は焼け落ち、住人達は皆殺しにされていた。ふたりはこの事態を引き起こしたであろう鬼を追って旅を続けているのだった。そんなふたりが旅のさなかで出会ったのは、同じく里を滅ぼされたという青年・出雲と、少年・鳥羽のふたり。出雲の容貌が幼なじみで許嫁だった青年・浅沙によく似ていることに気付いて戸惑う蓮華だったが、一緒に旅をするにつれ、その軽薄さに憤るように。しかし同時に、復讐のみを誓ってきた自身の心を、出雲が乱しつつあるのも確かで……。

作者初の和風ファンタジーとなる新作。隠れ里を襲う鬼への復讐を誓う少女・蓮華の恋と戦いが描かれてゆく。

里を滅ぼされ、大切な家族や仲間を殺された蓮華は、その瞬間に復讐の鬼と化す。鬼への憎悪だけを胸に日々を生きてきた蓮華だったが、そんな彼女を変えたのが、同じ境遇の青年・出雲との出会いだった。
……などと書くととてもロマンチックな感じではあるのだが、蓮華の出雲に対する当初の印象は最悪のひとこと。軟派で軽薄で、蓮華のように復讐心のみで生きているわけではなさそうな態度に、蓮華は苛立ちを隠せない――それはおそらく彼の性格だけでなく、彼が許嫁であった浅沙によく似ていたからかもしれない。しかしそんな蓮華の頑なな心の中に、あっさりと出雲が入りこんできたのもまた確か。軽薄なようでいて、それでも蓮華の心の機微を見抜いて接してくる出雲の存在を認めたことで、蓮華の心は次第に解かれてゆく。

……というその流れは悪くないのだが、思ったより展開が拙速すぎたのがちょっと残念だったりする。タイトルに「始まり」とはついているが、実際は1巻完結なのだろうか……。できれば浅沙に対する想いとの間で葛藤などしつつ、もう少しふたりの関係の変化をじっくり描いてほしかったも気もする。続編があるならそのあたりにも期待したい。

ガラクタ伯爵の婚約 人形の花嫁の欠けた心 (一迅社文庫アイリス)ガラクタ伯爵の婚約 人形の花嫁の欠けた心 (一迅社文庫アイリス)
瑞山 いつき

一迅社 2014-06-20
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ハートワームス伯爵家の令嬢・セラフィーナは、兄であるレイモンドが作った借金の返済のため、「ガラクタ伯爵」と揶揄されている、人形師にしてナトロライト伯爵家の当主・アダムと結婚することに。常に側に置いていた自動人形のアリーセを伴ってナトロライト領へと向かったセラフィーナだったが、道中で謎の自動人形に襲撃され、アリーセが破壊されてしまう。さらに、ナトロライト城に到着したセラフィーナの前に現れたのは、美しい容姿とは裏腹に、なぜか女物のドレスをまとったアダム。彼は無表情のセラフィーナにいきなりキスしたかと思えば人形呼ばわりし、さらに寝台に押し倒してくる始末。その場は乱入してきた家令によって事なきを得たセラフィーナだったが、翌日からもアダムは口を開けば辛辣な言葉をかけてくるし、ほとんど自室にこもって顔を合わせることもほとんどないという状況。自分を妻にと要求してきたのはアダムのはずなのに、とセラフィーナは戸惑うしかなく……。

家族のためにと完璧な淑女たろうとするあまり人形のようになってしまったセラフィーナが、変人と名高い青年伯爵・アダムと出会ったことで、ふたりそろって次第に人間らしい感情に目覚めてゆく、不器用なラブファンタジー作。

ヒロインのセラフィーナは家族のために自分の感情を押し殺すような性格。そしてアダムはその逆で、他人の気持ちに鈍感なうえ、何事も率直に表に出してしまうような性格。それゆえにふたりの出会いは(少なくともセラフィーナにとっては)最悪だったし、その後の会話も感情もなかなか噛み合わない。一時はどうなる事かと思ったが、いくつかの事件や騒動を経て、お互いの性格や背景を理解し、同時にそれぞれが抱えていた問題にもきちんと目を向け解決し、寄り添い合うようになっていくふたりの関係の変化がとてもよかった。

そしてよかったと言えば、そんなふたりを見守っていた家令のバートランドと、自動人形である侍女のシェリーの存在。まともにコミュニケーションを取れないアダムをフォローしつつ、時には厳しい「教育的指導」(笑)を行ったり、心細さを覚えるセラフィーナを励ましたりして、ふたりを繋ぎ支えていたのがこの両名。その働きには思わず「GJ!」と言わずにはいられなかった。そんな感じで脇を固めるキャラクターたちもなかなか濃い面子だったりするし、両想いになって初めて動揺し始めるアダムの様子があまりにも初々しく微笑ましすぎるので、ふたりの今後もぜひ見てみたい。

初恋相手は前世で聖女! ~エヒト・サーガ~ (ビーズログ文庫)初恋相手は前世で聖女! ~エヒト・サーガ~ (ビーズログ文庫)
瑞山いつき

KADOKAWA/エンターブレイン 2014-05-15
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幼なじみにして初恋の相手、そして前世では敵であった聖女の生まれ変わりの少女・ミアのおかげで、魔王としての覚醒を免れたフィン。そんなミアへの想いは日に日に募る一方なのだが、なかなかそれをはっきりと伝えることが出来ないでいた。そんな旅のさなか、ようやく王都にたどり着いた一行。そこでフィンたちは、勇者の生まれ変わり(しかも現在妊娠中)であるジョイスの夫・ローマンと出会う。元は警備隊の隊長で現在はケーキ屋だというローマンの店に向かうことになったフィンたちだったが、その道中で「魔王が出た」という叫び声が聞こえ……。

前世絡みのラブコメファンタジー、ボーナストラック的な完結編。
エヒト神による審判――100年に1度行われるという魔王と勇者の戦いにおいて、今回は人間側の勝利となった。けれどフィンが魔王として覚醒しなかったため、その魂と記憶を持ったまま生きているという、これまでにない結果となってしまう。そこでフィンが今後、「魔王」として害されることのないよう、教会本部のある王都へと向かうことになるのだが、そこで勃発していたのはニセ魔王騒動。本物の魔王には全く及ばない程度の強さではあるものの、毎回違う人物が魔王を名乗って魔物を召喚し、騒ぎを起こしては消えていくという奇妙な事件。そこでフィンたちは、ジョイスの夫・ローマン(かなりいかついけど妻を絶賛溺愛中)の経営するケーキ屋を拠点として、真犯人を追うはめに。

魔王騒動はさておき、今回の物語はフィンの視点で進んでゆく。したらばもうとにかく、フィンがなんというか乙女すぎてまあ大変(笑)。ミアのことが好きで好きでたまらなくて、近寄る男たちを警戒しまくったり、かと思えば無邪気なミアの行動にいちいちドキドキしてみたり。ミアがわりとしっかり者なので、フィンの乙女ぶりが余計に際立つ感じ。しかもそんなフィンの目的は、ミアと想いを通じ合わせ、ロマンチックなシチュエーションでキスをすること。……乙女か!
まあそれが叶ったかどうかは読んでいただければわかるということで……一応長身、しかも戦闘系キャラという、男性らしい外見にも関わらず、この中身はいったいなんなのか……(笑)。


◇前巻→「幼なじみは前世で魔王!〜エヒト・サーガ〜」

世界最後の魔法使いの最後の恋 (一迅社文庫アイリス)世界最後の魔法使いの最後の恋 (一迅社文庫アイリス)
瑞山 いつき

一迅社 2013-07-20
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翼猫の魔力を使い、人の言葉と姿を「言魂」に変えて届ける不思議な職業「再生屋」。サラも翼猫に選ばれ、「再生屋」として働く少女だが、自身の将来――家業を継ぐこと、そして同僚との結婚を望まれていること――がなんとなく決められていること、そして今の仕事にやりがいが感じられないことに悩んでいた。そんなある時、サラは空から王城に落ちて来た謎の少女の言葉を伝えるため、齢200を超えるという、この世界で唯一にして最後の魔法使い・ウィアードの元へ向かうことに。最初はウィアードの冷淡さに悪印象を持っていたサラだったが、彼と接するうちに、意外な一面も見えてきて……。

将来に見えないレールを敷かれていることが不満な少女・サラと、世界で最後の魔法使いとして孤独をかこつウィアードとの運命のラブロマンス。

前述の通り、現状に不満を持ちつつも、それを打破できる事柄も見つからなくて、ただ従容と日々を過ごしているサラ。しかしそんな彼女の日々は、ウィアードと出会ったことで一変する。200歳を超えるという、この世界で唯一にして最後の魔法使い・ウィアードは、最初こそ冷淡で傲岸不遜気味ではあったものの、実は動物好き(けれど動物には逃げられる)だったり、仕事中にうっかり涙をこぼしてしまったサラにさりげない気遣いを見せたりするなど、実は優しい面も。さらに年齢ゆえの老獪さ、あるいは大人な一面を見せたかと思えば、逆にサラの何気ない一言で泣きだしてしまうような子供っぽい一面もあったりして、なんというかこれは母性本能をくすぐるパターンなのかもしれない(笑)。

そんな感じで、お互いに欠けている部分をうまい具合に補い合うふたりは、運命のごとく惹かれあってゆく。だがそんなふたりの前に降りかかったのは、空から落ちてきた少女・イリスからの依頼。イリスの住む別の世界の危機が、サラたちのいる世界に襲いかかってくることで、ふたりは否応なしに世界存亡の危機に巻き込まれることになるのだが、それを解決したのもまあ愛の力ということでごちそうさまでしたー!

幼なじみは前世で魔王! ~エヒト・サーガ~ (ビーズログ文庫)幼なじみは前世で魔王! ~エヒト・サーガ~ (ビーズログ文庫)
瑞山いつき

KADOKAWA/エンターブレイン 2014-01-14
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100年ごとに行われる、エヒト神による人類に対する審判――それが〈エヒトの審判〉。前回の審判で世界を救った聖女ユーディットの生まれ変わりであるミアは、今生では劇作家を夢見る普通の少女。前世の情景を夢で見ては、それをネタに劇作家である父に脚本にしてもらっているが、いつかは自分で脚本を書くため、日々情報収集に勤しんでいた。だがそんな彼女の幼なじみである青年・フィンは、実は前世ではユーディットと敵対していた魔王の生まれ変わりであった。それゆえの呪いをその身に秘めているフィンだったが、ミアの溺愛ぶりによってなんとか抑えられていた。そんなある日、ミアはネタ探しと称して聖地巡礼の旅に出ることに。護衛としてフィン、そして前世ではユーディットの仲間だった盗賊の生まれ変わりである青年神官・クリストフを伴って出かけたミアは、その道中で魔物に襲われる。だがそこに現れたのは、またしてもユーディットの仲間であった勇者の生まれ変わり・ジョイスと、不老不死の賢者・レーツェル。ふたりはすでに、今回の〈エヒトの審判〉が始まっているため、審判に勝つために必要な〈聖杯〉を探す旅を始めているらしく……。

世界を救うため、勇者の生まれ変わり御一行が、魔王の生まれ変わりを伴って旅を始める、シリアス半分ラブコメ半分なファンタジー作。

良くも悪くも女子というか、夢見る乙女かと思えば妙に現実的な面があったり、かと思えば楽観的だったりで、行動力は人一倍なヒロイン・ミア。聖女の生まれ変わりということで、前世の自分と今の自分を引き比べてみたり、色々とコンプレックスがあったりもするのだが、そんな彼女を支えているのが幼なじみのフィン。そのフィンも魔王の生まれ変わりということで呪いを抱えていたり、家庭の事情だったりで孤独に苛まれる幼少期を過ごしていたが、ミアが手を差し伸べたことで救われ、いまやどう見ても彼女に絶賛片想い中なのだが、いかんせんそのあたりがミアはまだよくわかっておらず、ふたりの好意はすれ違い。ミアはフィンのことを溺愛しているにはいるのだが、それはどちらかといえば男女の云々ではなく愛玩動物に対するそれで、ムツゴロウさんばりのなだめ方でフィンに愛情を示すのだが、まあなんというか年頃の男子にそれはキツかろう……と、つい生温かい目で見てしまう(笑)。まあミアがどこまで「わかっていない」のかは微妙なところで、引き際を考えていたりするあたり、フィンに対する一連の態度は、実は計算なのかも?とか思ったり思わなかったり。

という感じで、前世関連のエピソードはわりとシリアスなのだが、ミアとフィンを並べてしまうと妙にコメディチックになってしまう本作。〈審判〉に関するあれこれはひと段落したようなのだが、ふたりのその後が気になるので、ボーナストラック的にもう1冊くらい続編を読んでみたい気も。あと、色々と隠し玉が多すぎる勇者の生まれ変わり・ジョイスもなかなか気になるので(笑)。

闇は暁に恋を語る (ビーズログ文庫)闇は暁に恋を語る (ビーズログ文庫)
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エンターブレイン 2013-04-15
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封石師として初仕事をこなしたフィーネは、晴れて半妖魔であるアレスシアスとも契約を交わし、相思相愛の関係に。だがその才能ゆえに「見習い」扱いされなくなってしまったフィーネは寮を追い出されることになってしまう。資金稼ぎも兼ねて仕事を探しに行ったフィーネに与えられたのは、夏にも関わらず雪に閉ざされたという村の調査と解決というものだった。あからさまに厄介な依頼内容に顔をしかめる師匠・トリスタンと共に、フィーネはその村・ラヴィーネに向かうことに。そこでふたりは、村近くの山に天候を操るクロケルという妖魔が棲んでいること、これまでは良好な関係を築いていたのに、ある時から彼を訪ねていった人々が次々と行方不明になったことを聞かされ……。

妖魔と共存できる世界を作るために世界征服を目論む少女・フィーネと、彼女を溺愛する半妖魔・アレスシアスのバカップルぶりに目も当てられない(笑)シリーズ2巻というかボーナストラックというか完結巻。

妖魔と共存していたはずの村で起きた異変を探ることになったフィーネだが、その中で彼女は、改めて自分とアレスの関係を見つめ直す。いくら人間と同じ外見をしていても、いくら自分のことを愛していてくれているとしても、アレスは人間ではなく妖魔。ゆえにそのメンタリティは、彼女のそれとは似て非なるもの。ならば、自分の「好き」とアレスの「好き」はいったいどれほど似ていて、どれほど違うのだろう、と。
一応の答えは出たのかもしれないし、根本的な部分は解決していないかもしれないけれど、それでも今回の事件を通じて、その溝を埋めることはいつかできるのだとフィーネが希望を持てた――というよりは、信じ続けようと思えた、その結末はとてもよかったと思う。
あとまあ、とりあえず始終ツッコミ役に回らざるを得なかったトリスタンは今回もお疲れさま、ということで(笑)。


◇前巻→「暁は闇に恋をする」

暁は闇に恋をする (ビーズログ文庫)暁は闇に恋をする (ビーズログ文庫)
瑞山いつき

エンターブレイン 2012-11-15
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幼い頃に出会った半妖魔のアレスシアスにずっと片想い中のフィーネ。ようやく「封石師」となったフィーネは、自身が子供の頃に封じたアレスを解放し、改めて契約を結ぼうとする。だが10年ぶりに再会したアレスはなぜかよそよそしく、彼女ときちんと向き合おうとしてはくれなかった。そんなアレスを伴い、フィーネは師匠である素行不良の凄腕封石師・トリスタンと共に、任務としてとある鉱山へ向かうことに。そこでは立て続けに封石師が行方不明になっているらしく……。

ビーズログ文庫では初登場となる作者の新作は、「恋人バカな半妖魔と腹黒美少女のラブファンタジー」ということになっているが、まさにその通り。最初はなぜかアレスがフィーネを避け続けているせいで「どこが恋人バカ?」と思ってしまうのだが、物語が進むにつれ「……ああー……!」と納得することうけあいな展開に。女たらしで素行不良、どちらかといえば奔放な行動で周囲からツッコまれるはずの師匠・トリスタンでさえ、このふたりに対してはツッコむことしかできなくなるという恐ろしさ。ふたりが本格的に両想いになってからのバカップルぶりがすさまじいのだが、ここまでくるといっそすがすがしいので、またこのふたり(+師匠)の掛け合いを見てみたい気も。

眠れない悪魔と鳥籠の歌姫 (一迅社文庫アイリス)眠れない悪魔と鳥籠の歌姫 (一迅社文庫アイリス)
瑞山 いつき

一迅社 2012-03-17
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闇オークションにかけられた盗賊団の娘・ニーナは、しかし競りにかけられる直前、軍人のふりをして会場に紛れ込んだ青年・アルドに連れ去られてしまう。訳あって悪魔をその身に宿しているアルドは、それを祓うためにニーナの力――精霊使いである彼女の歌声が必要なのだという。口調は慇懃ながらも尊大なアルドの態度に反発しつつも、ニーナは彼のために歌ってやることに。悪魔を祓うことはできなかったが、一緒に暮らしていくうちに、少しずつ互いに心を通わせ始めるニーナとアルド。しかしアルドを悪魔憑きにした総督の追手が近付いていて……。

アイリスでの2作目は、気の強い歌姫と慇懃無礼な悪魔憑きの青年が、枕代わりだいや違うと仲良く反発し合うファンタジー作。
とにかく口調は丁寧なのに、どこまでも口と性格の悪いアルドは、ニーナを力づくで拘束して歌を歌わせることに。出会いから何から最悪としか言いようのない状況を、負けん気の強いニーナが甘んじて受け入れるはずもなく、口を開けばイヤミの応酬。けれどアルドはニーナに必要以上の無体を強いることはなく、それに気付いたニーナもいつしか彼に惹かれるようになる。そうなってくると、アルドのイヤミな口調は相変わらずのように見えるけれど、ニーナのことを想いながらも素直になれない感じが漂ってきて微笑ましいことこの上ない。話はきれいにまとまっているから単発ものなのだろうが、このふたりの今後を見てみたい気も。

相棒とわたし (f-Clan文庫)相棒とわたし (f-Clan文庫)
瑞山 いつき

三笠書房 2011-11-18
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大地のエネルギーを喰らう「核獣」が頻出するユングリンガ国。エッドとその幼なじみ・ラッセは、核獣を狩る専門家を養成するスノリ準軍学校に共に入学することになる。慣れない学校生活に四苦八苦しつつも馴染んでいくふたりだったが、ある日スノリ市の各所に核獣が同時発生。エッドとラッセもその討伐に加わることになるが、そこでラッセが重傷を負ってしまう。いざという時に身体が動かず、彼を救えなかった自分にショックを受けるエッド。だがラッセの負傷は、ただのそれに留まらず……。

新作はタイトル通り「相棒とわたし」の物語。
長身もあいまってどこか男っぽい少女・エッドと、可愛らしい顔立ちの少年・ラッセ――幼なじみであるふたりは同時によき相棒でもあり、ふたりで両親たちのような戦士となるのが目標。けれどエッドは近頃、この関係がいつまでも続くものかどうか、不安に感じるようになりつつあった。そんな矢先に起きる事件――王制復権派によるテロによって、ラッセが「核獣の王」となる因子を埋め込まれたからさあ大変。エッドは大切な相棒であるラッセを手にかけることができるのか。

女の子の方が成長が早い、とはよく言うし、男女の間に友情はありえない、ともよく言うが、まさにエッドの悩みというのはこのあたりに起因するもののような気も。完璧に自覚したわけではないが、最近男らしくなりつつあるラッセに対して、これまでにない想いをほのかに抱き始めているのは確か。だからこその不調であり、不安なのだろう。
でも女は強し、とも言うわけで、身体を乗っ取られたラッセに対峙する覚悟をいち早く決めたのもエッド。愛しているから私が殺す――とまでは行かないが、最悪そこまで考えていたのも確か。その思い切りの良さがなんともかっこいいし、可愛らしくもある。

ラッセの方はどうなのかわからないが(でもまあ、脈がないわけはないはず)、そんなふたりの微妙な距離感もさることながら、エッドと彼女のルームメイト・マリアとのキャッキャウフフな関係もたいそう可愛らしいので、ものすごく続編希望。

エージェント・コード〜恋の陰謀は執筆のあとで〜 (一迅社文庫アイリス)エージェント・コード〜恋の陰謀は執筆のあとで〜 (一迅社文庫アイリス)
瑞山 いつき

一迅社 2011-04-20
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シルサス帝国の帝国諜報委員会に所属する新米諜報員・ライザは、秘密結社への初の潜入捜査中にしくじって追われるはめに。たまたま建物の近くにいた青年・カルの乗っていた車を強奪しようとしていたライザだったが、それを面白がったカルは小説のネタになるから、とライザの逃走に付いてくることになり……。

アイリスでは初となる新作は、新米スパイ少女とベストセラー作家のアクション&ロマンス!な作品。
その出自からいろいろと負い目を抱えているライザは、同じく諜報員である父や兄・ジェイラスのために諜報員を目指す少女。能力もそれなりにあるし、やる気は十分なのだが、いかんせん知識不足やらその他もろもろの理由で詰めが甘いのも確か。そんな彼女につきまとって来るカルは、諜報員であるライザ以上に鋭い洞察力と判断力を持ち、なぜか銃器の扱いにも長けている小説家。最初はライザをネタ扱いしていたのだが、いつの間にか彼女に対する感情が変わってきたからさあ大変。諜報員としても新米なライザだが、色恋沙汰にも無頓着というか経験ゼロなので、ライザに向かって一直線に想いをぶつけてくるカルに翻弄されっぱなしだったりするのがなんとも可愛らしい。

帝国にテロ行為を働く秘密結社と、そのトップである「魔術師」デューク、そして彼らからライザが強奪した「賢者の石」……様々な謎を追いながらライザとカルは距離を縮めていく。その様子ももちろん楽しかった。の、だが……最後の最後でライザ兄・ジェイラスがいろいろと「やらかして」くれたので、これはもちろん続いてくれるよね?と期待しつつ。

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