アザリー、ついでキリランシェロが行方不明になってから4年後。コミクロンはひとり、とある酒場で相棒を待っていたはずだった。しかしそこで彼が目にしたのは、ありふれたごろつきたちの抗争――かと思いきや、掏摸をはたらいた女は「領主」の名を口にする。相棒から《最接近領》の一員になることを提案されていたコミクロンは、この諍いが《最接近領》による面接だと判断し、女を助けそのアジトへと向かうことになるが……。
久々の書き下ろし新エピソードは、作者いわく「隙間編」。これまで書かれた物語の隙間を埋めるような、そしてその中で何かひとつでも間違えれば物語が変わってしまうような、そんなエピソードとなっている、とのこと。今回は本編1巻でアザリー討伐隊に身を投じ、そのまま亡くなった、チャイルドマン教室の一員・コミクロンがメイン。本編1巻の1年前が舞台となっている。
アザリーの魔獣化、キリランシェロの出奔、チャイルドマンの不在――これらはチャイルドマン教室に大きな影を落とし、それはそのまま《牙の塔》の斜陽とも重なっていた。そんな中、コミクロンは「相棒」と信じてやまなかったコルゴンからその正体を聞かされ、さらには彼と共に《最接近領》での任務に従事しないかと誘われていた、そんなタイミングでの物語だという。まあつまるところ彼が巻き込まれたのは「面接」ではなくそのへんの武装盗賊の抗争に過ぎなかったわけだが、コミクロンが敵対することになった盗賊には「オーフェン」と名乗る凄腕のはぐれ魔術士がいて……となると「いやいやいやちょっと待って!」となってしまうのは無理からぬ話。いやそれはわかるでしょ……と思いながら読んでいたのだが、これが思いのほか、お互いに――少なくともコミクロンの方は――わかっていない。まあキリランシェロ→オーフェンについては外見がかなりすさんでいるし(主に目つき・笑)、コミクロンの方も成長してからは美女と見まごうほどの美貌の持ち主になってしまっていので、仕方ない……のかもしれない。
そんな勘違いのせいで死線を潜ったり潜らなかったりするコミクロンだが、そこで彼はあるひとつの決断を下すことになり、それが彼の「運命」を決定してしまうこととなった。彼は彼なりに教室の仲間たちのことを大切に思っていたからこそ、あの結末を迎えたのだと思うと仕方ないことだったのだと諦めざるを得ない。と同時に、そんなコミクロンだからこそ、コルゴンも「相棒」としてそばにいたのかもしれない。さすが隙間編、かゆいところに手が届いたというか、いろんな意味で納得させられるエピソードだった。
◇前巻→「魔術士オーフェンはぐれ旅 プレ編2」















