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大晦日までの数十日間のみ開かれ、手に入らないものはないとまで言われる異形の市――「細蟹の市」を巡る幻想シリーズ3部作、完結編。今回は市の護り手「赤腹衆」筆頭であり、現在の「細蟹」と浅からぬ因縁を持つ青年・サザが物語の軸となっていく。
織女が殺された事件を皮切りに、これまで繰り返し開かれてきたはずの市は、崩壊の一途を辿る。「若返りの水で作られた酒」を求める男。細蟹を殺すことだけを望むメトメ。自己再生能力の研究に取りつかれた人形師。そして暗躍する「赤毛の男」。市に潜む謎の双子は、すべてサザが原因なのだと、繰り返し、歌うように告げる。女がなるべき赤腹衆の筆頭に、男であるサザがなったことが全ての元凶なのだと。「繰り返し」を続けてきたこの市で、確かにサザの存在はそれを絶ち切る要因となった。そしてそのサザが願ってしまった唯一の願い――あらゆるものが手に入るはずの市で、手に入れられなかったたったひとつの願いが、すべてを狂わせてゆく。
繰り返しを旨とするこの市で、ひっそりと息づいていたたったひとつのその願い。それを叶えることは不可能――の、はずだった。それでも捨てることの出来なかったその願いは、ついに叶ってしまう。白い糸の降り積もる世界で、真っ赤に咲いたささやかな願い――その花の持ち主は一体誰だったのだろうか。そして、代償として差し出されたものは一体何だったのだろうか。サザと細蟹――あるいはカンナとまこと。ふたりが見ているものがなんなのか、向かう先はどこなのか。あまりにも茫洋としたこの結末は、揺らぎ続けるこの物語にふさわしい幕引きだと、そう思う。
◇前巻→「宵鳴」













