phantasmagoria

読んだ本のこと、それ以上に買った本のこと、ときどきライブのことを書き散らかしてみたりする。 (当ブログは全文無断転載禁止です)

カテゴリ: 三川みり


槌瑤詫美を攫った人物を特定するため、理美発見の際にその場に居合わせた考仁と蓮佳を宮城へと連行する。しかし考仁は知らぬ存ぜぬを通し、蓮佳も理美を拾ってからの経緯は説明したものの、考仁の仕業であることは口にしなかった。そして理美もまた、考仁を失うことが槌瑤砲箸辰涜腓な痛手になると考え、真実を隠そうとする。納得できないものの、一時は理美の説明を認めて場を収めようとした槌瑤世辰燭、その直後に考仁が彼を軽んじるような策を講じていたことが判明し、怒りが再燃。その結果、考仁は宰相の位を辞すると宣言し、周家の別邸へと移ってしまうのだった。それを知った理美は、自分が考仁を説得するから、と周家の別邸へと赴くが……。

食で人の心を繋ぐ中華風ファンタジー第9巻――なのだが、その「食」への信頼が揺らいでしまうという展開に。

前巻で考仁の青春時代を想起させる料理を饗したものの、その心を完全に動かすことができなかった理美。自身のしたことを認めないまま隠居に踏み切り、さらにどれだけ理美が言葉を尽くし、食事を作っても、ほとんど心動かされるのない考仁を前にして、理美はひたすら悩み続ける。しかし、何も思いつかない状態でも、彼女は諦めることはない。そんな彼女を支えるのは姉斎宮の言葉であり、そして今、この国で自分に居場所をくれた槌瑤燭舛悗料曚い任發△襦守るべきものを持つ者はこれほどにも強いのかと、改めて感じさせられる展開だった。

そんなこんなで、理美の尽力によって考仁と朱西の「親子のすれ違い」もなんとかカタがつき、これですべてうまくいくはず――と思っていたが、そううまくいくはずもなく。朱西が鳳家当主として、あくまでも「陛下のため」として槌瑤鬚覆追い落とそうとする動きを見せていることが判明したことで、理美は絶望を深めることに。いったい彼は何を求めているのか――明確な狙いがまったく見えないまま、今巻は幕を下ろす。神龍である珠ちゃんが視ていたのは、果たして槌瑤伴訐召里匹舛蕕世辰燭里世蹐Δ。


◇前巻→「一華後宮料理帖 第八品」


理美が五龍共々行方不明となった。槌瑤麓ら探したい気持ちを懸命に抑え、皇帝としての職務に没頭する一方、丈鉄に捜索を命じる。一方、朱西は犯人が周考仁であると考え、利害が一致した丈鉄と共に彼の周辺を探ろうとするのだった。その頃、理美は考仁が管理している廃墟に閉じ込められていた。五龍と引き離してから始末すると告げられた理美だったが、その前に現れた呂蓮佳と名乗る女性に保護されることに。彼女が高位の官吏だと判明したため、自身の正体を明かせない理美だったが、なぜか彼女はそのまま屋敷に置いてくれるようで……。

料理で人の心を繋ぐ……はずが、いつの間にか王宮内の御家騒動やら権力争いやらの渦中に身を投じるはめになる、中華風ファンタジーシリーズ8巻。

引き続き今巻も、宰相・周考仁と、鳳家当主となり暗躍する朱西の親子喧嘩(?)に巻き込まれっぱなしの理美。とはいえここにきて強硬手段に出るあたり、考仁の方も冷静ではいられない様子。そのあたりを解き明かしてくれるのが、今巻で偶然にも理美を助けてくれた女性官吏の蓮佳。かつて考仁、そして朱西の実父である青修とは友人であった彼女によって語られるふたりの関係が、現在の考仁の行動基盤に大きく影響していることがわかるという展開に。

とはいえ考仁は皇帝派の最大勢力であるがゆえに、理美誘拐の犯人として彼を弾劾できないというジレンマ。朱西も皇帝派の勢いを削りたいわけではないため、それぞれが思うように動けず、事態はこんがらがるばかり。そんな中、思いがけず朱西とふたりきりになった理美が彼を問い詰めるシーンには思わず息を飲まされる。今回のことで、朱西の目的があらかた見えてきたような気もするが、もしその予想――もちろん理美の「期待」とは結果的に異なってしまうであろうが――が当たっていれば、それはそれでろくなことにならないような気がして頭が痛い。さらには伯礼が祥飛のため、再び鳳家前当主の寧孫に近付こうとしているのもマイナス要素としか思えない。ラスボスがなんとなく見えてきたものの、肝心な部分はまだ解決しないまま。次巻で少なくとも、考仁と朱西親子のわがたまりだけでも解ければいいのだが。


◇前巻→「一華後宮料理帖 第七品」

君と読む場所 (新潮文庫nex)
三川 みり
新潮社
2019-02-28

鈴川有季は職場体験で図書館の手伝いをすることになった。森田麻友という別のクラスの女生徒も一緒に実習をすることになっているのだが、彼女は保健室登校をしているのだと聞かされる。不安を抱えつつ、七曲老人の家のそばを通った有季は、気弱そうな少女が例の「自動販売機」にお金を入れるところを目撃。いつものように七曲が10冊の本を押し付けようとするが、彼女は噛みつくような叫び声を上げ、七曲が驚いた隙に逃げ出してしまうのだった。その2日後、実習のため向かった図書館で有季を待っていた「森田麻友」は、先日七曲を撃退(?)した例の少女で……。

尾道を舞台に、本に興味を持ち始めた中学生と本を偏愛する老人の間で繰り広げられる攻防(?)を描くシリーズ第2弾。今回は人見知りの激しい読書好き女子・麻友も加わってますますにぎやか(?)な展開に。

有季と麻友との距離を縮めるきっかけをつくってくれた山本周五郎の「さぶ」。図書館への本の寄贈を巡り、同じ本好きであるはずの七曲と司書の利香子が反目しあう状況を解決してくれたサリンジャー「ライ麦畑でつかまえて」。亡き母の追悼に来たと言いつつどこか様子のおかしい男性に七曲が渡そうとした、平野啓一郎の「空白を満たしなさい」。そして過去の事件を暴かれたせいで引きこもってしまった七曲を救ったのは角田光代の「さがしもの」。

最初の3冊は七曲や利香子の言葉や行動がきっかけとなって有季が手にした作品だが、最後の1冊はたまたま見つけて、そして七曲に「読んでほしい」と強く想った作品だった。誰かに勧められてばかりだった有季が、自分の読書体験をもとに「誰かに読んでほしい」と思えるようになったという、そのことだけでもうぐっとくるものがある。まして最後の最後で、七曲の「終活」を積極的に手伝おうと考え始めるところなんて余計に。もし続編があれば、有季のアイデイアがどうなるのかが気になるところ。


◇前巻→「もってけ屋敷と僕の読書日記」


崑国にとって「麒之月」は年に一度のみ外交に専念する月であり、各国からの使節が次々と訪れる時期。槌瑤麓訐召箸劼箸泙叉拈錣掘束の間の平和が訪れたかのように見えた。そんな中、西沙国からグルザリ・シャー率いる使節団が訪れる。正式な国交樹立の可能性を前に万全の態勢で彼らをもてなそうとする槌瑤燭舛世辰燭、そこに同行していたのは西沙国皇帝のひとり娘であるアーシャだった。これを知った周考仁を始めとする高官たちは、国交樹立の盟約として西沙国がアーシャを槌瑤鵬任せるようとしているのではと考え、理美の皇后内定を取り消そうとする動きを見せ始め……。

料理で人の心を癒す少女・理美をめぐる中華風ファンタジー7巻。今回は理美の進退がまたしても問われようとする展開に。

官吏たちは国のために槌瑤肇◆璽轡磴虜Оを目論み、当人たち――槌瑤藩美は完全に置いてきぼり状態。以前の槌瑤任△譴个弔辰僂佑討い燭任△蹐Δ、皇帝としての自覚を深めた今となっては、アーシャとの婚姻が自分の立場を固め国を富ませる最上の方法であると理解してしまっているがゆえに、その苦悩は深まるばかり。一方、槌瑤鮖戮┐襪燭瓩房分の恋心を押し殺した理美にとって、皇后内定が取り消されるということは、彼女の存在意義だけでなく行き場すら失ってしまうことを意味する――皇后内定を受けると決めた時から、彼女は崑国人の「理美」であり、和国人の「理美」はもう存在していないのだから。しかし、動揺を隠しきれない理美を支えたのは、皮肉にも敵となってしまった朱西だった。

ワガママなじゃじゃ馬娘――という一言では片付けられない、複雑な生い立ちを持つアーシャと、皇帝である槌瑤筺峺ゾ緝福廚箸靴屯孫颪砲笋辰討た理美とは、どこか似た部分がある。しかし理美たちと違って「責任」を軽んじるアーシャは大問題を起こしてしまうのだが、そこで理美を手助けしたのはこれまた朱西。互いに「敵」だと割り切った態度を取ろうとしても、やはりふたりは心の片隅で相手のことを想ってしまう。そのすれ違いがなんとも切ない。そもそも一方的に理美に敵対しようとしている朱西だが、その裏では彼女を守ろうとする動きを取り続ける。敵と言いつつ、実際は理美や槌瑤里燭瓩貌阿い討い襪里任蓮△隼廚錣兇襪鯑世覆ぜ訐召虜8紊瞭宛にも注目したい……ところだが、一方でその朱西の養父・考仁の動きがきなくさい方向に。理美を過剰に危険視している彼のとった行動が、彼女をさらなる危機に追いやってしまう結末には驚きを隠せない。周親子の軋轢はなぜここまで深くなってしまったのだろうか。


◇前巻→「一華後宮料理帖 第六品」


朱西が鳳家当主となった――それはつまり、皇帝である槌瑤氾対することと同義だった。その影響で理美の立后式は延期。槌瑤汎韻犬、理美もまた朱西の真意が読めず、動揺を隠せないでいた。そんな中、「鄙の仁者」として人気の高い県吏・関朝雲が宮廷に現れ、向こう1年の徴税を拒否すると宣言。事前に有力商人・馬維順から地方県吏の専横の噂を聞かされていた槌瑤呂發舛蹐麋身し朝雲を捕らえようとするが、それを押しとどめたのは朱西だった。彼は槌瑤琉娶に真っ向から反対する姿勢を見せ、朝雲の身柄を一時預かることで事態をいったん収拾させるのだった……。

食で人を繋ぐ中華風ファンタジー、混乱と動揺の6巻。

朱西が鳳家の人間となったことで、理美以上にショックを受けたのは槌堯最も信頼していた臣下の裏切りともいえる行為――さらには槌瑤后にと望む理美までも望まれてはもう何を信じたらいいか、という槌瑤竜せちもわかる。しかしそのおかげで見えてきたものがあったのも確か。今の槌瑤砲肋翕瓦簀賣蕕世韻任覆、理美や四夫人もいる。そのことに気付かされた槌瑤、水面下で暗躍する朱西に真っ向からぶつかり、さらには朝雲を説き伏せるまでに成長したというのはなんだか感無量。

とはいえやはり気になるのは朱西の動向と真意。理美もここにきてようやく朱西と袂を分かつ決意を固めたようだが、朱西の言葉をどこまで額面通り取っていいのかどうかには、やはりまだまだ疑問が残る。鳳家を完全掌握しようとしているというのはわかるのだが、その先にあるのが本当に皇帝位と理美の奪取なのか、それとも別の理由があるのか……敵に回せば恐ろしいという事実を今巻で目の当たりにさせられただけに、まだまだ彼の動向からは目が離せない。


◇前巻→「一華後宮料理帖 第五品」


尾道で暮らす男子中学生・鈴川有季が見つけたのは、どう見てもただの木箱でしかない「本の自動販売機」だった。興味本位で100円玉を投入すると、中からジャンルのバラバラな10冊の本と、それを差し出した老人が現れる。七曲と名乗るその老人は、これまで集めてきた愛書を、死ぬまでに自分がこれと認めた人物に渡したいと考えてこの「自動販売機」を始めたのだという。渡された本の中には少女漫画などもあったため、それらを部屋に置いておきづらい有季は返品しようとするが、それなら蔵書の中から自分で選んだ10冊と交換するのであればいい、さもなければ家にエロ本を大量に送り付けるとまで言われてしまい……。

雑誌「yomyom」に掲載されていた作品の文庫化。本が好きすぎる老人と出会い、勧められるがままに本を読むことで日常が少しずつ変わり始めるという、タイトル通り「読書日記」な連作集。

「自動販売機」に100円を入れてしまったことで七曲老人にロックオンされてしまった有季は、以後なんやかやと理由を付けられ、どんどん持ち帰る本のノルマが雪だるま式に増えていくという状況に。しかも好きな本を選べと言いつつ乱歩に手を出そうとしたら怒り出したり、シリーズものは全巻で1冊分とカウントしたり(危うくグイン・サーガやローダンシリーズに手を出しそうになっていた)、ノルマの増やし方も1冊単位ではなく倍数にしていくのだからたまったものではない(笑)。

とまあそんな破天荒すぎる老人だが、彼が勧めてくれる本を読む中で、有季は自分やその周囲の人々が直面している問題の、その解決策のヒントを知らず知らずのうちに得ることに。文字通り、彼が本を読むことで世界が広がっていくのだ。七曲の本のチョイスが本人の言うとおりに偶然なのか、それとも狙っているのかはわからないが、個人的には後者であったらいいなと思う。七曲もなんだかんだ言って有季のことが気に入っているようなので、いつか七曲の蔵書を家ごと譲り受けるという結末がなんとなく見えてくるような気がした(笑)。


朱西の出生の秘密を知った理美は、彼を守りたい一心で槌瑤竜畉Г鮗け、皇后になる決意をする。それからというもの、立后の準備に追われ、料理をする暇も与えられない理美。そんな折、和国人である理美の立后に反対する官吏たちが意見書を提出し、槌瑤鯒困泙擦襪海箸法さらに立后の儀式にあたり、講師として理美のもとにやってきたのは朱西だった。互いへの想いをむりやり封じ込めながら、表面上は講師と生徒として振る舞うふたりだったが、どうしても心のどこかで相手のことを気にしてしまう日々。そんな中、丈鉄は朱西が夜になるとたびたび姿を消していることを知らされる。その行き先は彼の亡き父の実家でもある鳳家だった。理美もまたその事実を知り、彼の真意を確かめようと試みるが……。

料理でひとの心を繋いでゆく中華風ファンタジー、急展開の5巻。

想い合うふたりが立場上それを「なかったこと」にせざるを得ないというだけでもつらいのに、さらに理美が完全に朱西の手の届かない存在――皇后になるという展開にはもうなんと声を掛けたらいいか……という感じ。しかし朱西のために槌瑤某圓そうと考える理美とは裏腹に、朱西の方にはなにか思惑がありそうで……という不穏な流れに。そのとばっちりで、朱西父の密偵として動いていた丈鉄がいろいろとピンチになり、今回は彼の存在やその過去にクローズアップしていくことに。飄々としていて、どこかつかみどころのなかった丈鉄が、どんな思いで槌瑤篌訐召叛椶靴討い燭、そしてふたりが丈鉄をどれほど信頼していたか――はからずも3人の絆が垣間見えるエピソードにはほっとさせられる。

理美を巡る宮廷内の陰謀にもになんとかカタが付き、とうとう理美も正式に皇后になってしまうのか、と思っていたら終盤でそれをひっくり返したのはやはり朱西。彼が何を思って行動していたのか、そして本当に彼の目的は言葉通りのものなのか――槌瑤詫美の心情を慮り切れていないところがあったりするので、関係性という点ではやはり朱西に軍配が上がりそうだが、しかし今回の行動が理美の気持ちにどう影響するかはまだわからない。こじれまくった三角関係はどう転ぶのだろうか。そして珠ちゃんの動向やいかに。


◇前巻→「一華後宮料理帖 第四品」


お互いに恋心を封じることに決めたものの、理美はまだ朱西への想いを捨てきれないでいた。さらに皇帝・槌瑤ら皇后になってほしいと乞われたことも混乱に拍車をかける。そんな折、神獣である珠ちゃんの様子がおかしいことに気付いた理美。朱西の勧めで、神気に満ちているという旧都・氾因に向かうことになった理美だが、五龍と皇帝が離れることに懸念を示した槌瑤砲茲辰董皇帝の休養という名目で理美だけでなく槌瑤篁揺弯諭伯礼まで同行することになるのだった。しかも到着早々、興味本位で四夫人のひとり・余淑妃が、井戸の底に沈められた、古い鏡の入った謎の箱を拾い上げてしまう。それ以来、理美は「麗春」と名乗る女性の夢を見るようになる。さらに同じころから、急に槌瑤梁猟瓦悪くなるが、原因が特に見当たらず……。

料理人の主人公が王宮で起きる問題を解決してゆく中華風ファンタジー、三角関係がますますこじれる第4弾。

今回はうっかり怨念の封じられた箱を開けてしまったことで、それぞれの本心があぶり出されるという展開に。箱を開けた理美と、彼女を慕う朱西&槌瑤砲修留洞舛出るのは仕方ないとして、鳳徳妃と伯礼は完全にもらい事故のような気もするが(汗)、しかしそのことでふたりの秘めている想いまでもが浮き彫りに。このふたりはこのふたりでかなり胸の苦しくなるような関係ではあるが、やはり最後の最後まで尾を引くのは(そしてもちろん解決しないのは)理美と朱西の恋心の行方だった。

お互いに忘れようとしながらも、やはり忘れることができないふたり。かつて恋人と引き裂かれ、皇帝に嫁ぐことになった女性の物語を自分の境遇に重ねる理美は、ついにある決断を下す。一方、朱西は自身の出生の秘密を図らずも知ることとなり、ますます悩むことに。理美の決断は立場上致し方ないことではあるが、これを受けとめきれない朱西がどう出るのか、不安はますます募るばかり。朱西を密かに監視していた丈鉄の心変わり――主である朱西の父に、朱西が自身の出自をまだ知らないと嘘をついたこともどう影響するのか、気になって仕方ない。


◇前巻→「一華後宮料理帖 第三品」


崑国が長年国交を開こうと尽力してきた西方の帝国・西沙。ようやくその努力の甲斐あって、先方から使節がやって来るというところまでこぎつけたのだが、来訪するのは皇帝ではなくその弟だという。それだけでも皇帝である槌瑤砲和僂難いことだったが、官吏たちはそれでも使節を受け入れるべきと主張。そこで槌瑤呂靴个蕕の間、朱西を相談役に、そして理美を朱西の代わりの夜食係にするよう命じるのだった。研究から離れることになりがっかりする朱西とは対照的に、やる気を出す理美。しかし最初の夜、槌瑤北訖を供し話をしているうちに組み敷かれ、さらにその場面を朱西に見られてしまう。その夜は結局何もなかったものの、互いに相手への気持ちを自覚し始めていただけに、ぎくしゃくしてしまう理美と朱西。そうこうするうちに西沙国の使節がやって来るが、王弟だというシャーは槌瑤箸硫饕未鬚里蕕蠅らりとかわし続けているようで……。

料理で人の心を取り持ち問題を解決してゆく中華風ファンタジー3巻。今回はついに三角関係が本格的に始動!?ということで。

理美も朱西も互いへの想いをついに自覚!ということではあるが、もちろん理美は後宮の人間であるし、朱西は皇帝の臣下であるからして、ふたりが結ばれるというのはかなり困難な話。しかも時同じくして、槌瑤諒も理美への想いを募らせていくのだからさあ大変。しかし槌瑤自分の権力を盾に理美に無体を強いるような人物ではないので(1巻の頃だったらそうなってただろう……)、誰に肩入れするのもなんだかツライなあ、というのが率直な感想だったりする。まあ基本的には主人公カップル成就賛成派なので、理美には朱西と幸せになってほしいとは思うのだが。

それにしても今巻でも目立つのは、前巻に引き続いて目覚ましい成長ぶりを見せる皇帝・槌堯K粗でこそ癇癪を起こしかけてはいたものの、周囲の意見をきちんと聞くようになったし、理美に無理強いしないし、四夫人たちにも自ら足を運んで助力を乞うなど、1巻での暴君ぶりなどどこへやら、といった感じ。名実ともに立派な皇帝となりつつあってひと安心――と思っていたのだが、なにやら裏で怪しげな動きが垣間見えるように。丈鉄や伯礼はある程度状況を把握しているようなのだが、その焦点となるのは朱西。ラストの不穏な雰囲気がとても気がかりで仕方ない。


◇前巻→「一華後宮料理帖 第二品」


食学博士である朱西の研究を手伝いつつ、五龍の様子を見せるため皇帝・槌瑤里發箸愼参するという日々を送っている理美。そんな彼女に下されたのは、後宮で最も位の高い4人の妃嬪――「四夫人」のための夜食作りだった。新皇帝の寵愛を得るに当たって重要な意味を持つ儀式「明来告地」を控えている彼女たちを落ち着かせるための措置だという。容貌も性格もまったく違う4人の対応に戸惑いつつもやる気を見せていた理美だったが、その矢先に儀式で使われる宝珠が何者かに盗まれてしまう。後宮内で権勢を誇る和国嫌いの内侍監は、理美が和国人という理由で彼女を捕らえようとして……。

献上品として隣国に送られた皇女が、料理を通して様々な問題を解決してゆく中華風ファンタジー第2弾。

一応後宮所属の女官という立場ながら、相変わらずのマイペースぶりを発揮している理美。そんな彼女が今回相対するのは後宮最高位の妃嬪たち。もちろん一筋縄ではいかない曲者ぞろいな上、いろいろと事情を抱えているということで、理美は手探りで彼女たちに接しつつ、彼女たちに本当に必要な食べ物が何かを考えることに。さらにそこに加えて宝珠泥棒の濡れ衣を着せられ、朱西に庇われ猶予を貰えたものの、真犯人を見つけられなければ自分だけでなく朱西にも累が及ぶということでさあ大変。今回も大きなトラブル(命の危険含む)で、彼女の立場の不安定さが改めて際立つという展開に。

そんな中、彼女を陰ながら助けてくれるのはまさかの槌堯四夫人のために滞在している宮にしばしばお忍びでやってくるのだが、本人は「五龍を確認するため」と言い張りつつ眠る理美の側で一夜を明かしたり、理美から「お願い」があると言われて期待してみたり(結局その「お願い」は四夫人に関わるものだったが)、とにかく理美本人が気になって仕方ない様子。一方で朱西も理美に惹かれる自分に気付いたものの、理美が皇帝のものだという事実との間で板挟みに。こんな感じですばらしすぎる三角関係が完成したのだが、もちろん周囲(伯礼とか丈鉄とか)は槌瑤里燭瓩忘を講じる素振りを見せ始めているので、今後の進展がものすごく気になるところ。


◇前巻→「一華後宮料理帖」

一華後宮料理帖 (角川ビーンズ文庫)
三川 みり
KADOKAWA/角川書店
2016-06-30

神、そして姉である斎宮のための料理を作る「美味宮」であった和国の皇女・理美は、崑国の皇帝即位の貢物としてその後宮へと送られることとなった。その際、故郷から持ってきた漬物壺を奪われそうになった理美だったが、食学博士である青年官吏・朱西の口添えで事なきを得る。朱西への感謝と再会を願いつつ、女官の位を授けられた理美は、慣れない異国での後宮女官暮らしに勤しむことに。しかしある日、突然「皇帝不敬罪」とされ捕らえられてしまう理美。官吏から和国からの貢物である食材に難癖をつけられ、あわや斬首されそうになった理美を再び救ったのは朱西だった。朱西の取りなしにより7日間の猶予を与えられた理美は、その食材を使い、皇帝・槌瑤「おいしい」と思える料理を作ることになり……。

新作は作者初の中華風ファンタジー。料理好きな皇女が、持ち前の明るさとその料理の腕で、異国での後宮暮らしで立ちはだかる難題をくぐり抜けていくことに。

故国では皇女とはいえど、母親の身分は低く後ろ盾もなく、行き場がなさすぎて「美味宮」という廃れていたお役目――つまり料理人をしていた主人公の理美。しかし唯一の心の拠り所だった姉斎宮からも引き離され、漬物壺ひとつ持ち他国の後宮に送られるというのだからかなりハードモードな半生。しかしそのちょっと抜けた性格のせいもあってか、次々降りかかる難題にもめげずに精一杯対処しようとするその前向きさがなんとも眩しい。

とはいえそんな理美を取り巻く男性たちはクセのありすぎる人物ばかり。理美が仕えることになった若き新皇帝・槌瑤話撒い芭箙鵝後宮にも寄り付かず、理美にもすぐ死刑を言い渡すまさかのキレっぷり。そんな理美を助けてくれた朱西は理知的で優しい青年ではあるが、研究熱心すぎてどこかズレているし、美貌の宦官・伯礼は何らかの思惑を抱えて理美の周辺をうろつく始末。恋模様という点ではいったいどこに行くのかよくわからないが、現時点では朱西が大きくリード。朱西の方も理美のことが後からだんだん気になりだしてきたので(遅い・笑)いい感じかなと思いきや、ネックになるのはやはり、理美の身分が「後宮の女官」――すなわち名目上は皇帝のものであるということ。槌瑤眩衒僂錣蕕困梁崚戮世、今回の事件を経て理美のことを認めているようなので、続編があればこのどうしようもない三角関係がどうなるのかに期待。

ここは神楽坂西洋館 (角川文庫)
三川 みり
KADOKAWA/角川書店
2016-02-25

婚約者の浮気が発覚したショックで、周囲に黙って行方をくらました小野泉。結婚式直前ということで住むところも職もなくなってしまっていた泉に、不動産屋は神楽坂の路地裏にある「神楽坂西洋館」なる下宿を勧めるのだった。家賃の安さやその佇まいに惹かれた泉は入居を決めるが、入居日当日、大家と名乗る青年・藤江から、泉の入居を許可していないと言われてしまう。結局その場で藤江に面談され、入居の許可を得られた泉。初対面の無愛想そうな印象から藤江のことを苦手に想っていた泉だったが、下宿人の平穏を守ろうとしていることや、植物に対する愛情深さを知るにつけ、少しずつその印象も変わってゆき……。

作者初の一般文芸作は、「小説屋sari-sari」にて連載されていた長編小説。緑多き下宿「神楽坂西洋館」に住む人々の日常が優しく描かれてゆく。

婚約者に浮気されて家を飛び出した泉をはじめとして、神楽坂西洋館の下宿人たちはどうもワケありっぽい人ばかり。泉を含めて4人と1親子しかいないのに、なんともバラエティに富んだ面々となっている。そしてそんな下宿の大家である藤江は、無愛想で言葉足らずではあるが、植物を愛しており、それになにより問題だらけの下宿人たちを守ることを第1に考えて大家をしているという、良く言えば大家の鑑だが、悪く言えば「なぜそこまで……」と言いたくなるほどの得体のしれない青年。さらにそんな藤江の知人だという料理人の青年・三島さんも、いつもニコニコしていて藤江の理解者で料理が上手で、という以外にはまったく素性がわからないのだからますます謎、と言わざるを得ない。

最後のひとつを除き、決して派手な問題が起きるわけではないけれど、それでも本人たちにとっては大変な問題を、藤江はその周囲の植物の状態をたよりに解き明かしてゆく。と同時に、泉との距離も少しずつ近付いてゆく。そのスピードはとてもゆっくりだが、それでも確実にふたりの距離が縮まってゆくのがなんとも微笑ましい。続編があればふたりの関係の変化に期待したい……と言いたいのだが、それよりも気になるのは料理人の三島さんのことだったりして(笑)。


次期国王候補としてのお披露目も無事終わったフレデリカは、自身の命を狙っている「カルステンス侯爵」一派の情報をつかむべく、侯爵の城へと向かうことに。侯爵の私室に隠されていた書き付けを見たイザークは、獄死した侯爵の筆跡とは異なることを指摘。以前獄死した侯爵ではない、別の人物が「カルステンス侯爵」を名乗っているのではと推測するフレデリカたちだったが、そんな折、国王が何者かに襲撃され重傷を負ったという報せが届く。さらに時を同じくして、革命により混乱している隣国オレリアンからエーデルクラインに対し会議の申し入れが。フレデリカは次期国王として、六公爵の反対を押さえ、国王代理として会議に赴くことを決める。革命軍の動向を探るため、フレデリカは「グレーテル」としてシュバルツノイマン党の会合へと顔を出すが、そこで党のリーダーの意外な正体を知り……。

下働きの少女と絶賛入れ替わり中の箱入り王女奮闘記、3巻にして完結編。

国王襲撃、そして困窮している隣国革命軍との会談。その流れに作為的なものしか感じられない中、フレデリカは次期国王候補としての自覚を深め、自ら動き始める。これまで隠れ守られるだけだったフレデリカが、身の危険も承知の上で、周囲の力を借りながらも自分自身の足で困難に立ち向かおうとする姿に、彼女の成長ぶりがよくわかる。これが「国王として必要なもので魂が満たされていく」ということなんだな、としみじみ。

また、今回で完結ということで、イザークとの関係にも決着が。往生際の悪かったイザークが、グレーテルの後押しでようやく本音を見せるシーンにはもう何と言っていいか。できれば今後のふたりの姿も見てみたかったけれど――そしてグレーテルの言葉が現実になる場面も見たかったけれど、これにて完結。一気に畳みにきた感はあったけど、おおむねきれいにまとまっていてよかったと思う。


◇前巻→「箱入り王女の災難 時間と秘密と天使のワルツ」


ひょんなことから台所番の少女・グレーテルの身体に乗り移ってしまった王女フレデリカ。なんとか元の身体に戻ることが出来たものの、制限時間は1日につき1時間のみということが判明する。そんな矢先、フレデリカの王位継承お披露目のため、園遊会が開かれることに。さらに先の事件を調査していた六公爵のひとり・ミュラー公爵がグレーテルに疑念を抱き、探りを入れてくる。その上、何者かが再びフレデリカの命を狙っているようで……。

箱入り王女の入れ替わり騒動を描くシリーズ第2弾、問題はますます山積みで、の巻。

フレデリカに戻れるのは1日1時間、だというのに「フレデリカ」として表に出なければならない状況になってさあ大変、という展開。しかも(本来なら臣下であるはずの)ミュラー公爵に怪しまれるわ、謎の刺客に狙われるわ、グレーテルの知己であるらしい商人・グスタフと遭遇するわで、全方向で詰んだとしか言いようのない状況。しかしフレデリカは前向きにそれらに立ち向かおうとする。

そんなフレデリカを見守り助けるイザークにもなにがしかの変化が。以前は貴族嫌いが顕著だったイザークだったが、今巻ではフレデリカを積極的に助けようとする。本人は(そしてフレデリカも)グレーテルを想っての行為だと考えているが、読んでいるこちらとしてはどう見てもグレーテルよりフレデリカ本人のためにしか見えないものだからもう。優劣をつけているということではないが、グレーテルのために、というのは言い訳というか、自分に言い聞かせているようにしか見えない状態。身分差のことを考えると難しいだろうが、ふたりの関係の進展にも期待ということで。


◇前巻→「箱入り王女の災難 魔術と騎士と黒猫の序曲」


「エーデルクラインの宝石」と称される、王国の第1王女にして王位継承者・フレデリカは、国王の名代として、得意ではない馬の遠乗りに出かけることに。しかし突然フレデリカの乗る馬が暴走。たまたま居合わせた黒髪の少女とぶつかり、フレデリカは落馬し、気を失ってしまう。が、目覚めたフレデリカがいたのはなぜか王宮の台所。フレデリカは落馬する寸前にぶつかってしまった黒髪の少女・グレーテルの身体に乗り移ってしまっていたのだ。自身の身体が仮死状態で王宮へと戻っていることを知ったフレデリカはその場へと乗り込むが、当然つまみだされてしまう。警備の騎士にあわや殴られそうになった瞬間、フレデリカを救ったのは「地獄の番犬」と恐れられている騎士・イザークだった。グレーテルの幼なじみであるというイザークは、フレデリカをグレーテルの実家に連れて戻る。だが翌日になっても様子の変わらない幼なじみの言うことを信じたイザークは、魔術で死神を呼び出し、フレデリカがどうすれば元に戻れるかを聞きだそうとするが……。

新作はちょっと残念めな姫君が、仮死状態の自分の身体に戻るべく奮闘する、ちょっとコメディチックなファンタジー。

主人公のフレデリカは、見た目こそ楚々として麗しい姫君ではあるが、その中身はオカルトや魔術に興味を持つ、ちょっと変わった箱入り娘。次期女王として周囲の期待に応えるため、日々努力し続けてはいるが、親しい友人もおらず、そもそも幼い頃から両親である国王夫妻と触れ合う機会もないため、自分が孤独であることにすら気付いていないという状態。だからグレーテルとして実家に放り込まれ、そこでグレーテルの両親や近所の人々に親切にしてもらったことにたいそう喜び、感謝する素直さを見せる。そんなフレデリカを見て、貴族に偏見を抱いていた――というより、過去に起きたある事件から恨みすら持っていたイザークも、だんだん彼女に対する態度を軟化させてゆくことに。

そんなフレデリカとイザークのでこぼこすぎる関係も楽しいが、同様に気になるのがフレデリカの親戚でちょっとおつむのユルそうな貴公子・ユリウスと、イザークをして「小悪魔」と言わしめる少女・グレーテルの存在。ユリウスはその天真爛漫すぎる振る舞いの影にいろいろと隠しているし、グレーテルはフレデリカとイザークを振り回しながらも何か抱え込んでいるようだしで、この四角関係(?)がどうなっていくのか気になるのでぜひ続編希望。まあこんなオチなんだから続きますよね?ということで。

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