エチオピアと国境線を争っている砂漠の小国・E国にはこれといった資源がなく、唯一の観光資源かつ産業はカジノのみ。砂漠にそびえたつカジノ・タワーはいまだに建設途上で、最上階にいるこの国の最高権力者に勝つことができれば、この国を手に入れることができるのだという。日本人の龍一ことルイは、ある目的をもってこのカジノ・タワーへ挑もうとするが……。
2020年に雑誌「すばる」に掲載された中編は、作者お得意のギャンブルもの。
主人公は向こう見ずなギャンブル狂とかそういうわけではない。目的はただ「勝つ」ことではなく、一国を手に入れること。仲間を集め、様々な搦手を使いつつ、確実に「勝ち」を狙っていくルイだが、とはいえその過程すらもまるで博打のようなものなので、読んでいるこちらとしては二重にハラハラさせられることになる。
タイトルにもなっている「黄色い夜」というのは、激しい砂嵐の内部に閉じ込められている状態のこと。視界ゼロとなる激烈な空間、そしてその中でも神への祈りを欠かさない人々を見て、ルイはひとつの理想をそこに見出していたのかもしれない。やがてタワーへの「挑戦」を終え、日本に残していた彼女・スミカの近況を目の当たりにしたルイは、ある言葉を彼女に向けたのだという。かつて砂嵐の中で彼が見たものは、まだその手に留まっているのか、それとも指の間をすり抜けてしまったのか――明示されなかったその「言葉」の行方もまたわからないままだが、そこにもやもやとした感情は不思議と残らなかった。














