どこまでも続く白い砂漠のその果てに、鎖で戒められた無機質な白い塔が立っている。その塔は、あらゆる知識を収めた「叡智の図書館」への入口。図書館への道を開こうとやってきた旅人は、その塔の守り人たる乙女の彫像に語り掛けられる――これから彼女が発する問いに答えること。逃げても、答えなくても、間違えても死あるのみ。乙女像のひとつめの問いに対し、旅人は携えた黒い石板を使い、ある物語を彼女に見せる。それはアハートという女戦士の数奇な運命の物語だった……。
2016〜2018年に「小説BOC」にて連載されていた連作短編の書籍化。「叡智の図書館」なる存在をめぐり、喋る石板を携えた旅人・ローグと、槍を手にした乙女との問答が、やがてふたりの正体を明らかにしていく。
乙女の提示する「謎」は一般的な問題ではない。最初はそれらしいというか、目的の見えないあやふやな質問だったが、次第にそれは彼女の存在そのものを問うような内容となっていく。そしてその問いに対し、ローグの持つ石板がふたりに見せる物語は実に様々。閉鎖的な一族の女戦士が、服従すべき女王への忠誠を揺らがせた理由。貧しい絵描きの少年が、依頼人の家で盗みを働いた上に使用人を刺した事件の真相。神に選ばれし7人の巡礼者たちの中に混ざった裏切り者は誰なのか。隣国に攻め入られた小国の王が召喚したモノは。昔の悪い仲間にそそのかされそうになった錠前職人の胸に去来するものとは。……等々、一見何のつながりも関係もなさそうな物語から、ローグは乙女の問いかけに対するヒントを得て、それを答えてゆくのだ。
答えを得た乙女は、いつしか彫像から人間の姿に転じ、さらには人間らしい感情を習得してゆく(なんとジョークまでとばす!)。しかしそれは、彼女に新たな苦しみを与えることになる――彼女の「正体」という名の苦しみを。彼女の「過去」は後悔と諦念、絶望に満ちている。しかしローグと出会い、10の謎を解くことで、彼女の未来にも光が射すというラストにはあたたかな気持ちにさせられる。帯であざの耕平が「物語賛歌です」と書いているが、同時に「人間賛歌」でもあるのだろうと思う。ヒトはまだ、信じるに足る存在だと彼女が認めてくれてよかった、と。

















