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読んだ本のこと、それ以上に買った本のこと、ときどきライブのことを書き散らかしてみたりする。

カテゴリ: 多崎礼


ヴィンセントが女王の間諜であったということが判明し、女王にルークの居場所が知られていることに懸念を抱くロイス。しかし当のルークは女王のためならその命を賭すことも辞さない構えを見せており、ロイスは頭を悩ませつつも、ルークの身分偽装などの策を密かに講じ続けていた。そんな矢先、ギィに樹木化薬の調合の依頼が入る。ロイスはルークとティルダを伴い材料の調達に向かうが、ルークは依頼人がそれを何のために使うつもりなのかしきりに気にしていて……。

血の特性と能力に支配された世界で、行方不明の娘の行方を追う男と、彼の前に現れた王子との運命が交錯するスチームパンク探偵譚、第2弾。

まったく顧みられていないとしても、母親である女王のためにすべてなげうつ覚悟を決めているルーク。ロイスにとってルークには、死んだ後まで女王に利用しつくされた妻グローリアの姿が、そして行方不明の幼い娘ミリアムの姿が重なっていたのだろう。しかし血の運命はロイスとルークをあっと言う間に追い詰め、どうしようもない決断を強いてゆく。

明かされた真相はあまりにも残酷で、普通の人間であれば立ち直れない程の絶望が描かれていくのだが、しかしその真相そのものが逆にロイスを救うことにもなる。血と霧に覆われたこの世界にも、確かに一条の希望の光が差し込んだと言えるような結末が印象的だった。このエピソードはひとまずここで完結となっているが、ロイスあるいはその周辺の面々のその後を見てみたい。


◇前巻→「血と霧1 常闇の王子」


血が有している能力による階級制度に支配されている都市国家ライコス。その最下層にある唯一の酒場「霧笛」で探索者をしているロイスのもとに舞い込んだのは、ルークという行方不明の少年を探すことだった。その両親だと名乗る依頼人の男女が嘘をついているうえ、肝心な事情を一切明かさないことを理由にロイスはその依頼を断るが、その男女は王家からの使いと名乗る女性を伴って再び現れる。ルークは女王シルヴィアの20番目の子供であり、護衛や監視の目をすり抜け、密室状態の離宮から忽然と姿を消したのだという。その状況や境遇が自身の抱える事情によく似ていることに気付いたロイスは、しぶしぶこの依頼を引き受けるが……。

その血があらゆるものを支配する世界で、主人公が陰謀と過去の因縁に絡め取られてゆくスチームパンク探偵譚1巻。

元は名門の一族の出だと思われるのに、最下層で探偵業を営んでいる主人公のロイス。そんな状況だということはもちろん訳アリな人物なのだが、物語が進むにつれわかってくるのはその辛い過去。妻をその「血」のせいで亡くし、なおかつその忘れ形見である娘のミリアムは幼い頃に失踪しており、その行方を探すために現在の仕事に就いているというのだからもうかける言葉も見つからない。そんな男の前に現れたのは、母親に道具としてしか扱われず、愛情に飢えている少年王子・ルーク。第1話でそのルークを見つけ出し連れ帰ったロイスだが、その過程でルークに懐かれてしまったからさあ大変。舞台設定や主人公の過去だけ見るとハードボイルドな展開になるかと思いきや、そんなルークとの接し方に悩むロイスという図が挟まってくるのがなんとも微笑ましい。

しかしそんなロイスとルークとの心温まる(?)関係の進展とは裏腹に、ロイスのもとに持ち込まれる依頼は次第に王族とは不可分のものになってゆく。以前は王族と関係があったが、今はその縁を断っているロイス。しかしルークと関わることで、再び彼はルークを取り巻く王族との因縁に巻き込まれていくことになりそう。それはすなわち、彼が自身の過去と再び向き合うことに繋がってくる。忘れたいことではないのだろうが、思い出せば要らぬ傷が開かないとも限らない。ルークとの関係も良好なだけに、今後はつらい展開になりそうではあるが、しかし一方で、失踪した娘ミリアムへの手掛かりがあればいいのにと願わずにはいられない。

神殺しの救世主
多崎 礼
KADOKAWA/角川書店
2015-07-01

アエテルヌス王国とオールード連邦との長年の戦争により荒廃したその世界には、ひとつの神話があった。いわく、創造神の命数が尽きる時に邪神が現れる、しかし同時に神が救世主を遣わし、5人の守護者と共に邪神を倒し、新たな世界たる約束の地への扉を開くのだ、と。医者を目指す少女・ノトはある日、アエテルヌス王家に代々仕える「宮廷預言者」である義兄・ホリディの失踪を知らされる。彼の真意を悟ったノトが実家へ戻ると、ホリディはノトあてに最後の預言を残していたのだった――それはかの終末神話の幕開けを告げる預言。守護者のひとり「運命」としての役割を課せられていたノトは、預言に従い他の守護者たちを探し始めるが……。

作者初の単行本での刊行となる新作は、滅びの危機に瀕した世界を救おうと立ち上がった人々の、決断の物語。

世界の終末、邪神と救世主、そして世界を救うための仲間探し……と、ファンタジーの王道とも言えるガジェットが多数出てくるが、一筋縄ではいかない展開になるのがこの作者ならではといったところ。いかにも容易く仲間たちが見つかり、救世主も現れ、あっさり世界は救われるのかと思いきや、本当の物語はそこから始まるのだ。「運命」の守護者たるノトに課せられた本当の使命、そして隠されていたこの世界の秘密。次々と明かされる謎に息つく暇もないほどに、読んでいるこちらも主人公のノト同様に翻弄されることになる。

そんな苛烈な物語の中で同時に語られるのが、ノトという少女のこと。先代の宮廷預言者・トレスの養い娘であったノトには幼い頃の記憶がなく、そのためか人間の持つ「感情」を理解できずに生きてきた。笑うことも泣くこともできず、ただ正しいことだけを遂行してゆく、機械のような少女。しかしそんな彼女が、守護者となった仲間たちと一緒に過ごすうちに、これまでに抱いたことのなかった衝動にかられるようになる。豪快で気さくな傭兵のイル、復讐のために生きる異能修士のライジャ、そして死を希求する敵国の英雄・グレイッシュ。ノトは彼らの生き方を変え、そしてノトもまた、彼らの存在によって変えられてゆく。しかし守護者たちには、世界の救済と引き換えに死の運命を課せられていた――それを知っていたノトは、彼らの死を拒もうとし、自身の運命との間で板挟みとなる。そんなノトの苦悩、そして訪れる結末にはただ胸がいっぱいになる。「生きる」という、言葉にすればただそれだけのことがこんなにも困難で、しかし幸せなことなのだと、考えさせられるような物語でもあった。

八百万の神に問う1 - 春 (C・NOVELSファンタジア)八百万の神に問う1 - 春 (C・NOVELSファンタジア)
多崎 礼

中央公論新社 2013-04-24
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傷付き疲れ、行くあてのない者たちがたどり着く場所――それが楽土。そこでは言葉を操り物事を調停する「音導師」に助けられながら、人々は穏やかに暮らしていた。サヨは里長の息子であるカンナミに見出され、ナナノ里の専属音導師として働いていたのだが、ある時、里長のショウギが新たな音導師を連れてくる。その人物――イーオンがサヨも憧れる高名な音導師「シン」であること、そしてショウギが自分を差し置いてイーオンを専属音導師に取り立てようとしていることにショックを受けるサヨ。数々の伝説に反して傲岸不遜な態度のイーオンに腹を立てたサヨは、イーオンに対して音討議を申し込むが……。

新シリーズは「楽土」と呼ばれる特殊な世界で、言葉を操り神に是非を問う和風ファンタジー。
サヨが出会った憧れの音導師・イーオンはとにかく酒好きで、ともすれば飲むか寝るか温泉に浸かるか、的などうしようもない女性。抱いていたイメージを打ち砕かれた上、自分の存在意義を脅かすことになるイーオンに対して敵意を見せるサヨだが、次第に彼女の行動や言動、そして考え方を認めざるを得ない展開に。それはすなわち、サヨ本人が自身を――音導師として、そしてひとりの人間として見つめ直すことに繋がってゆく。

まだ始まったばかりの新シリーズということで、今回はイントロダクション的な「出会い」の春の巻。「楽土」と外の世界との関係、音導師の能力、ナナノ里に流れ着いた「名無しの少年」の正体など、いろいろと気になる事柄が提示されたところでつづく。というわけで次巻、「成長」の夏の巻が今から楽しみ。

夢の上 - サウガ城の六騎将 (C・NOVELSファンタジア)夢の上 - サウガ城の六騎将 (C・NOVELSファンタジア)
多崎 礼

中央公論新社 2012-04-24
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ケナファ騎士団の第4士隊長・シャロームが任務に対する報償としてもらったのは、「世界で一番速い馬」と呼ばれるほど脚力の強い馬だった。かねてからその馬を狙っていた第5士隊長のハーシンはそれを譲ってほしいと懇願するも、あっさりはねのけられる。理由を問うハーシンに対し、シャロームは亡くなった実姉にまつわる自身の過去を語り始めて……。(「世界で一番速い馬」)

全3巻で完結したファンタジー作品「夢の上」の番外編となる連作短編集。アライスを支えたケナファ騎士団、その6人の士隊長それぞれにまつわるエピソード6編が収録されている。
姉との過去から速い馬を求めるシャローム、盗賊団の一員だったハーシン、神聖医師として将来を嘱望されていたトバイット、大山猫を「姉」として育ったイヴェト、障害を抱えた弟の身を案じていたラファス、そしてデュシス人にも関わらずサマーアで騎士となったアーディン……それぞれにいろいろな過去があり、現在に繋がっている。彼らは生まれた場所も身分もなにもかもが違うけれど、それでもケナファ騎士団に集い、そしてアライスと共に歴史を、世界を変えていく。ちいさな偶然の積み重ねが作った大きな流れ――その物語の大きさにはただただ驚かされる。


◇本編→「夢の上1 翠輝晶・蒼輝晶」

夢の上3 - 光輝晶・闇輝晶 (C・NOVELSファンタジア)夢の上3 - 光輝晶・闇輝晶 (C・NOVELSファンタジア)
多崎 礼

中央公論新社 2011-05-25
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地下牢に捕らわれたアライスの前に現れたのは歴史学者と名乗る老人だった。彼はアライスに、死刑の前にこれまであったことをすべて話してほしいと言う。最初はそれを拒んだアライスだったが、これまで彼女が抱いてきた「夢」を――その真実を誰かに知ってほしいと思い、語り始める。それは幼い頃から、これまでの記憶――もうひとりの光神王候補・ツェドカとの楽しかった日々。ツェドカと接するうちに突きつけられた、自分が女であり、性別を偽らねば生きていけないことに対する絶望と焦燥。父王に認められない悔しさ。母ハウファの死と逃亡生活。イズガータの元での騎士修行。そして挙兵し、今ここに罪人として囚われていること。これまでの日々の中で、彼女が抱き、育み続けてきた「夢」はいったいなんだったのか……。

叶わなかった夢の残滓を辿る物語、最終巻。最後に語られるのは、世界を支えると言われる光神王のふたりの跡継ぎ、アライスとツェドカの物語。

光神王の実子でありながら、ふたりはそれぞれの理由で父王を憎み、復讐のために次の王になろうとする。アライスは力で、そしてツェドカは頭で。そんなアライスの夢は光輝晶に、ツェドカの夢は闇輝晶となり、「夜の王」の御前で解放される。ふたりの――そして、影使いのアイナ、イズガータの副官であるアーディン、アライスの母ハウファ、アライスの親友ダカールの、それぞれの物語を聞いてきた「夜の王」は誰なのか。同時に、この「夢」を語っていたのはいったい誰なのか。このふたつがついに明らかにされる。

これまで断片的に語られてきたエピソードがあっという間に縒り合わさって、ひとつの大きな流れとなって現れるラストは圧巻、のひとこと。「夜の王」はたくさんの想いをその腕に抱え、夜明けを迎えて歩き始める。ラストで同時に明かされた「夢の上」というタイトルの意味も素晴らしい。一片の隙もなく紡がれた物語の幕引きには、ただただ拍手を送りたいと思う。次回作にも期待大、ということで。


◇前巻→「夢の上2 紅輝晶・黄輝晶」

夢の上〈2〉紅輝晶・黄輝晶 (C・NOVELSファンタジア)夢の上〈2〉紅輝晶・黄輝晶 (C・NOVELSファンタジア)
多崎 礼

中央公論新社 2011-01
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影使いを匿っていることが聖教会に知られ、アルニール領は滅ぼされた。生き延びた領主の娘・ハウファは、父の主君であったケナファ候に引き取られるが、候のひとり娘・イズガータの身代わりとなって光神王のもとへ嫁ぐことになる。自分の意志で、望まぬ結婚に向かう理由――それはすべて復讐のため。だが光神王はハウファの復讐心を見抜いたうえで告げる。自分を倒すためには、世継ぎを産むことが必要なのだ、と……。

彩輝晶と呼ばれる石に秘められた人々の想い――「夢」をほどき、紡がれるのはある女の復讐譚、そしてある男の後悔の記憶。
「紅輝晶」は、光神王に復讐を誓うハウファが、いかにしてアライスを生んだかという物語。そして「黄輝晶」は、生まれながらの「影使い」であったダカールがアライス――シアラと出会い、自身の力を自覚してゆく物語。

強い復讐心でもって生き続けてきたハウファだったが、アライスを産んだことで変化してゆく。そんな彼女をずっと支え続けてきたのが、光神王に嫁ぐ際、侍女として付いてくることになったアルティヤの存在。ハウファに忠実で、田舎女にしか見えないのにどこか聡いところがあるアルティヤだったが、その正体が判るラストにはとにかくびっくり。ハウファの最期とあいまって、涙なしには読めなかった。

そしてダカール。自身の裡にある「もうひとりの自分」――「影」の存在を認めまいと生きてきたダカールだったが、女だてらに騎士になりたいというシアラの存在によって、少しずつ彼も変わってゆく。ずっと「影」に関わらずに生きてきたダカールは、シアラのためにその力と向き合おうとする。けれどシアラの抱える事情はあまりにも重く、ダカールひとりではどうすることもできないもの。わかっていても、絶望してもなお、それでも彼は夢を見る。ダカールの最後の叫びは、祈りは、果たして叶ったのだろうか。

目の前に選択肢があるのならば、いずれかを選ばねばならない。それはつまり、選べなかった方を切り捨てねばならないのだということ。切り捨てられた可能性が彩輝晶となって残るのだと「夢売り」は告げる。残るふたつの夢――「光輝晶」と「闇輝晶」に秘められた想いはいったい誰のものなのだろうか……。


◇前巻→「夢の上1 翠輝晶・蒼輝晶」

夢の上〈1〉翠輝晶・蒼輝晶夢の上〈1〉翠輝晶・蒼輝晶 (C・NOVELSファンタジア)
多崎 礼

中央公論新社 2010-09
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イーゴゥ大陸の空を覆う巨大な時空晶――これを「光神サマーア」と呼び、崇めるサマーア聖教会。だがその実態は、このサマーア神聖教国の中枢であり、平民から重税を取り立てる非道な集団。そんな教会の圧政に耐えつつ暮らしていた地方領主の娘・アイナは、十諸侯のひとつツァピール家の長男・オープに見初められ、結婚することになる。互いに慈しみ合うふたりだったが、騎士としての任務中、オープが「死影」と呼ばれる化け物に取り憑かれてしまい……。

久々の新シリーズ!は、デビュー作「煌夜祭」と同様、語り部によって紡がれる物語。「彩輝晶」に秘められた、6つの「夢」が語られていく。

「死影」を操る、人々に忌まれる存在「影使い」となってしまったオープとアイナ夫妻のエピソード「翠輝晶」では、ふたりの絆、そしてサマーア神聖教国の抱える問題が描かれていく。オープの一目惚れから始まったふたりの関係はとても穏やかで、過酷な運命に襲われてもなお揺るがないその絆がとてもまぶしい。いいことばかりではないけれど、ふたりだから乗り越えられる、そんな絆、信頼。

そんなふたりを襲った数奇な運命は、第2エピソード「蒼輝晶」に繋がってゆく。
「翠輝晶」にも登場した女騎士イズガータ――その側近である、元旅芸人・アーディンの「夢」。イズガータの側でずっと彼女を見つめてきたアーディンの想いを絡めつつ、ここでも教国の持つ根深い問題が浮き彫りにされていく。

「夜の王」に、彩輝晶に宿る「夢」を語る「夢売り」。そこに封じられているのは、叶うことのなかった夢だという。アイナの、そしてアーディンの物語は叶わなかった夢なのか――本物の記憶なのか、誰かの作り話なのか、判然としないこの物語がどう結実するのか、続く4つのエピソードがとても楽しみ。

〈本の姫〉は謳う 4 (4) (C・NovelsFantasia た 3-5)〈本の姫〉は謳う 4 (4) (C・NovelsFantasia た 3-5)
多崎 礼

中央公論新社 2008-09
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レッドの策略で圧政下にあるバニストンに潜入したアンガスたちは策を講じ、なんとかふたつの文字を回収、バニストンを解放する。しかし解放にわく人々を絶望に突き落とすかのように街のあちこちが爆発、多数の死傷者が出る。これこそがレッドの狙いだったのだ、と気付いたアンガスは彼への憎しみに塗り潰されてしまう。浮島であるラティオ島に単身乗り込もうとしたアンガスに、レッドの兄であるジョニーもまた随伴し、共に島へ向かうことに……。
一方、過去の物語。「俺」――アザゼルは、初代アザゼルの記憶、その罪と贖いの過程を知る。ツァドキエルと死闘を繰り広げ、ガブリエルの助力でからくも勝利したアザゼルだったが、そのことを知らないリグレットは絶望に支配されたまま歌ってしまい……。

現在と過去を同時に進行させる物語は「現在」に収束していき、ついに完結。
最後まで貫かれていたテーマはやはり「希望」。希望を捨てない生き方がすべてを救う。それがどれほど大切なことか、そしてたやすく絶望に裏返ってしまうそれをどうやって持ちつづけていくか。――そんなことを考えさせられる作品。読み応えもある、とてもいいシリーズだった。次作ももちろん期待。

〈本の姫〉は謳う 1 (1) (C・NovelsFantasia た 3-2)〈本の姫〉は謳う 1 (C・NovelsFantasia た 3-2)
多崎 礼

中央公論新社 2007-10
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〈本の姫〉は謳う 2 (2) (C・NovelsFantasia た 3-3)〈本の姫〉は謳う 2 (C・NovelsFantasia た 3-3)
多崎 礼

中央公論新社 2008-03
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〈本の姫〉は謳う 3 (3) (C・NovelsFantasia た 3-4)〈本の姫〉は謳う 3 (C・NovelsFantasia た 3-4)
多崎 礼

中央公論新社 2008-06
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かつてこの世界には「天使」と呼ばれる者たちがいた。彼らは「文字(スペル)の精霊」の力を使って世界を保ち、空の上の浮島で暮らしていた。だがある時、ひとりの天使が「文字の精霊」の力を解放したため、あらゆる浮島は地上に落ち、天使は滅びてしまったのだ。――そんな天使の遺跡には「本」という遺産がある。「スタンダップ」という呪文を唱えれば、持ち主に幻影で内容を伝えるという、失われた技術の結晶。しかし、アンガスが持つ本は呪文がなくとも、開くだけで幻影が見える。しかもその幻影――「姫」は、意志を持ち、自ら喋るのだ……。

新シリーズいっき読み。
姫の失われた記憶を取り戻すため、世界に散らばった「文字」を回収するアンガスの旅を描く冒険もの……のようですがちょっと違うような。次第に「文字」を巡る陰謀に巻き込まれていくことに。敵対する賞金首レッド・デッドショットの双子の兄で、カルくてユルい遊び人・ジョニーや、暴漢たちに連れまわされていた謎の少女・セラと一緒に、各地の「文字」によって引き起こされる問題を解決し、仲間を増やしていく。

姫の正体もさることながら、気になるのはアンガスの正体。西部出身者にはありえない銀髪碧眼で、「天使還り」とさげすまれ故郷から逃げ出したアンガス。彼の記憶の中にある、誰のものかわからない――おそらくは天使のものであろう――知識とあいまって、彼と天使の間にどんな関係があるのかが物語の鍵を握っていそう。

そしてこの作品の面白いところは、同時進行でもうひとつ別のエピソードがつづられているところ。アンガスのエピソードと交互に語られるのは、かつての天使の物語。
第13聖域「理性」で生まれた「俺」は、生まれながらにして兄弟殺しの罪を背負っていた。ゆえに天使の意識ネットワークから外され、他の天使たちからは疎まれ、閉じ込められたまま暮らす日々。自由を求めた「俺」は、唯一自分に関わってくれたガブリエルの制止を振り切って聖域から身を投げる。地上で歌姫・リグレットと出会ったことで「俺」の運命は動き出すことに。

3巻まで進むと、次第にアンガスと「俺」の物語がリンクしていき、面白さもひとしお。
全4巻予定なのであと1冊。張り巡らされた伏線がどのように回収・収束していくのかが非常に楽しみ。

煌夜祭 (C・NOVELSファンタジア)煌夜祭 (C・NOVELSファンタジア)
多崎 礼

中央公論新社 2006-07
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王島・イズーを中心としていくつもの島が円を描いて移動していく世界。魔物が現れ人を喰らうという冬至の夜に、仮面で顔を隠し放浪する「語り部」たちが集い、各地で収集したさまざまな伝承を語り合う――それが煌夜祭。
ある冬至の夜、朽ちはてた島主の館跡に、ふたりの語り部が現れた。小夜啼鳥の仮面の≪ナイティンゲイル≫と、頭蓋骨の仮面の≪トーテンコフ≫は、ふたりきりで煌夜祭をはじめる。彼らが語るのはさまざまな島の昔話。魔物と語り部の関係、滅び失われた島、魔物が生まれる瞬間、「役立たず」と名づけられ捨てられた子供の物語。そして、イズーの王位継承に端を発し、世界中を巻き込んだ戦争の真実……。

第2回C・NOVELS大賞・大賞受賞作。出てすぐ買ったものの、なぜか1年間ずっと積んでいたのですが……もったいないことをしていた。
一見すると関係ないようないくつもの物語が、ひとつの大きな物語に収束していく。どんな枝葉もすべてが伏線となっていきます。新人とは思えない緻密さ。とにかくこれは読め!としか言いようがありません。

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