金星特急の旅から8年。7歳になった桜は成長と共に、写真すらない「母親」という存在についての想いを巡らせていた。錆丸は悩んだ末、自身と金星とのことを知ってもらうため、夏休みを利用して金星特急の道のりを辿る旅を企画する。砂鉄とユースタスに桜を預けて先行してもらった錆丸は、単身出国して当時お世話になった人々を尋ねつつ、最後の到着地であるグラナダへと向かい……。(「花を追う旅」)
祝・続篇連載決定!ということで、シリーズ久々の新刊となる番外篇が登場。2013年に刊行された外伝以降のエピソード2作(「小説Wings」2018〜2019年掲載分)と、書き下ろしの「柔らかい繭」が収録されている。
桜が成長していく中で、どうしても避けて通れないのが「母親」問題。本人たちは気にしていなくても、周囲からの反応によって、桜も気にせざるを得ないし、やはり大半の友人たちには二親がいるのが当たり前という状況となっては、口には出さなくても「母親」を求める気持ちが募るのは仕方ない。今回の外伝では、いかにして桜に「母親」という存在との折り合いをつけさせるのか、というテーマが常に横たわっていたように思う。そしてそのことは桜だけでなく、「母親」という存在にあまり縁がない錆丸やその周囲の人々にも同じ問題を突き付ける。突然「父親」になってしまった無名のこと、夏草の故郷のこと、ユースタスとふたりの「母」のこと――桜のことだけではないだろうが、彼らがそうやってなんらかの区切りをつけられたことはよかったと思う。
そしてもうひとつ、書き下ろし短編でついに発露したのが、桜の異能(?)問題。なにせ母親が母親だけあって、錆丸がかねてから懸念していた通り、ここにきて桜がただ人ではない(かもしれない)ということがはからずも証明されてしまう。桜のためを思って周囲があれこれと悩む中、ユースタスが怒りをあらわにするシーンはなんとも意外だが、一方でユースタスだからこそ――桜を取り巻く大人たちの中で、ほぼ唯一の女性である彼女だからこそ出てきた意見なのかもしれない、と納得したり。
◇前巻→「金星特急・外伝」
















