祖母が残した蔵の着物も残り1枚となっていた。「桜の園」と名付けられていたその着物の持ち主「野々宮英子」は、書置きを残して失踪した野々宮家の女性――鹿乃たちの曽祖父の妹。祖母・芙二子が生まれる前に英子は失踪していたはずだが、なぜか芙二子は彼女と会ったことがあるような口ぶりで、「山で神隠しに遭った」と知人に話したことがあったという。英子が残したとされる和歌の書付――吉野山の桜が題材のものばかり――、そして野々宮家が吉野の山に土地を持っていることを知った鹿乃は、管理人のもとへ話を聞きに行くが……。(「散りて咲くもの」)
人の縁を繋ぐアンティークミステリ連作、シリーズ7巻にして完結編。
蔵に残っていた最後の2点――祖母の友人から預かった帯、そして失踪したという野々宮家の女性の着物の謎を解いた鹿乃。特に後者については、なぜ鹿乃や祖母が不思議な着物の謎を解くことができたのかというシリーズ最大の核心へと迫ってゆく。そしてラストエピソードとなる表題作「白鳥と紫式部」には、蔵のものではない、新たな「不思議な着物」が登場することで、本編と、鹿乃の兄・良鷹がメインの短編群を繋ぎ、未来へと向かう鹿乃たちの姿が描かれていく。
前巻で鹿乃と慧は想いを通じ合わせ、晴れて恋人同士に。しかしその一方で、なにやらモヤモヤしているのが鹿乃の兄にして慧の友人である良鷹。なまけ癖はあるものの、基本しっかり者の兄というスタンスだった良鷹が密かに抱えていた屈託をも、やさしくほどいてゆく結末がとても印象的だった。そして着物を未来へと受け継ぎ、守っていこうとする鹿乃の決意もまた。
◇前巻→「下鴨アンティーク 暁の恋」















