phantasmagoria

読んだ本のこと、それ以上に買った本のこと、ときどきライブのことを書き散らかしてみたりする。 (当ブログは全文無断転載禁止です)

カテゴリ: 山本瑤


旅行などで家族が出払っている隙を見計らい、千鶴が電話を掛けたのは出張シェフサービス「エデン」だった。やってきた出張シェフの青年・海斗は千鶴の「洋食」というリクエスト通りにハンバーグを作ってくれるのだが、千鶴にはどうしてもその「美味しさ」がわからずにいた。いったいなぜそうなってしまったのかもわからないまま、再び海斗を呼んだ千鶴だったが……。

出張シェフサービス「エデン」からやって来る青年たちの料理のおかげで、悩みを抱えていた女性たちが救われていく姿を描く、短編連作集第2弾。

ある日突然料理の味がわからなくなってしまった千鶴、母が死んだことに屈折した想いを抱える芽衣子、美しく仕事もできる「自分」そのものにコンプレックスを抱える砂羽、そして別れた夫に引き取られ外国に行ってしまう娘との「最後の食事」に悩む翔子――彼女たちの抱える問題や悩みを解決するのはもちろん、「エデン」のシェフである海斗、悠然、右京、そして相馬。彼らの料理とさりげない言葉は、かたくなだった彼女たちの心を解していく。彼らにしてみればただ当たり前のことを言っているだけのかもしれないが、その料理は彼女たちひとりひとりを想って作られたもので、だから彼らの言葉もその料理と同じように、彼女たちのささくれた心に寄り添ってくれるのだ。食べることは生きること――前巻もそうだったが、そんなことをしみじみと感じさせられる作品だった。


◇前巻→「エプロン男子 今晩、出張シェフがうかがいます」


激務続きなうえ憧れの先輩にアイディアを酷評され、さらに恋人にも浮気されフラれたデザイナーの夏芽。食事も喉を通らず、部屋はゴミ溜めのような有様で、心身ともに疲れ果てていた夏芽は、以前顧客から渡されたとあるカードを思い出し、発作的にその番号に連絡を取ったのだった――その相手は「エデン」という出張シェフのサービス。やがて夏芽の部屋にやってきたのは、宇和島海斗と名乗る、男らしい外見とは裏腹に花柄エプロンがよく似合う(?)長身の青年。海斗は夏芽の様子を見るなり、リクエストされたものとは違う料理を作りたいと申し出て……。

紹介制の出張シェフサービス「エデン」を軸にした心温まる連作集。前半は顧客である夏芽の視点から、後半はオーナーである倉木相馬の視点から、「エデン」のメンバーであるシェフたち、そしてその顧客となった女性たちが「食事」に救われていく様子が描かれてゆく。

海斗の作った食事に感動した夏芽は、その後も「エデン」を利用。そのつど違うシェフたちが現れるのだが、みんなして美形なうえ料理の腕ももちろん完璧で、そしてそれぞれの信念に基づいて料理をしているということがわかる。とっつきにくそうだが優しい海斗、女性をもてなすのがうまい専門学校生の右京、その名の通りの心の広さを見せる僧侶の悠然、そしてオーナーであり家具職人でもある、「食べる」ということの意味を誰よりも大切にしている相馬。彼らの料理だけでなく、そのスタンスも影響して、前半では夏芽が救われていくさまが、そして後半でも様々な顧客たち――家族から顧みられない主婦、母親に捨てられた女子中学生、右京に執着する女性――を彼らが救っていくのだが、それは同時に、彼ら自身をも救うことに。愛情の込められた食事を、誰かと一緒に食べる。それだけのことで、崩れていたバランスが整うこともある。人間そのものをかたちづくる元になるものだからこそ、ただなんでもいいのだから食べるというのではなく、おいしく食べるということが必要なのだ。タイトルからなんとなく逆ハー系のようなものを想像していたがまったくそんなことはなく、どこかほっとさせられるような作品だった。


天涯孤独の少女・マージことマルゴットは、幼い頃に錠前師のトマスに引き取られることに。長じてトマス亡き後、新米錠前師として心機一転働き始めた頃に、アレックスと名乗る青年がマージを訪ねてやって来る。「鉄道王」アンブローズ伯爵家の当主だという彼は、破格の報酬を提示し、マージにある金庫を開けるよう依頼する。それはアンブローズ伯爵家と共に鉄道事業を成功させたエインズワース侯爵家に残されたもので、中には亡き老侯爵の遺言状が入っており、鍵を付けたのはかつて侯爵家に勤めていたトマスだったのだ。しかも遺言で、錠前師はトマスかその子供でないとだめなのだという。怪しい話だとは分かっていたが、破格すぎる条件、そしてそこに秘められた「謎」が気になったマージは、その依頼を引き受けることにするが……。

好奇心旺盛な錠前師のヒロインが、とある屋敷に秘められた謎を解き明かすことになるスチームパンク・ミステリ。

幼い頃からやんちゃで好奇心が強く、「やってはならないことをやるのが日課」というとんでもないヒロインであるマージ。トマスに引き取られて育てられ、また大人になったことで分別はつくようになったものの、その好奇心は健在。だからこそ怪しさ爆発というか裏がありまくるとしか思えないアレックスの依頼を受けることになるのだが、物語が進むにつれ、マージにもなにか隠された(というより本人が忘れてしまっている)謎があるということが明らかになってくる。ただ巻き込まれたわけではなく実は当事者だったという状況の中で、それでもマージは自分の信念に基づいて鍵を開け、そこに秘められた謎を解いていくという展開がなんとも清々しい。

そしてそんな彼女を見守り、支えているのがアレックス。軽口を叩き、身分差などおかまいなしに、つかず離れずといった距離感でマージを構うアレックスだが、そんな彼がこれまで抱き続けていた想いについて考えるとなかなかぐっとくるものがある。ふたりはいいカップルになるんだろうな、というラストがとてもよかった。


寝具販売店「シボラ」の女性店員・阿形砂子は、他人の夢が視えてしまうという能力を持っていた。そんな彼女の前に、九条桜舟という男性が現れ、彼女をスカウトしようとする。催眠療法士であるという桜舟は、カウンセリングだけでは治療しきれないクライアントに対し、その深層心理から悩みの原因を探るために、砂子のような能力者――「貘」を探しているのだという。最初はその誘いをきっぱり断った砂子だったが、先日シボラを訪れた女性客・長谷亮子が桜舟のクライアントのひとりであり、治療の際に砂子の同席を望んでいるのだと聞き、桜舟のクリニックへと向かうことに。するとそこにいたのは桜舟だけでなく、「貘」として彼の手伝いをしている3人の男性たちも。戸惑う砂子に桜舟は、短期契約ということで、しばらく住み込みで治療の様子を見学することを勧めてきて……。

「催眠療法士」桜舟と、他人の夢を読み取り接触することのできる「貘」砂子が、人に言えない、あるいは自分ですら分かっていない心の不調を取り除いてゆくサイコロジカル・ミステリ。

なんといっても興味深いのはやはり「貘」の存在。砂子は対象の夢を視たことはあっても、実際にそれに触れた子はなかったため、人に言えない――どころか自分ですら分かっていない心の不調を取り除くため、人に言えない――どころか自分ですら分かっていない心の不調を取り除くため、桜舟の口からそんな存在について聞かされても半信半疑(まあこれは、砂子の桜舟に対する第一印象があまりよくなかったからかもしれないが)。しかし桜舟のクリニックで副業よろしく働く「貘」の面々――中学生の雪哉、カリスマスタイリストの蓮司、サラリーマンの内藤の、そして桜舟自身の「仕事」を目の当たりにして、砂子の考え方は変わってゆくことになる。砂子の動揺や疑念が読者のそれとリンクしているので、不思議なストーリーながらもすっと入ってくる印象がある。

その能力ゆえに母親と疎遠になり、自分に自信を持てないでいた砂子だったが、桜舟のクリニックの面々やクライアントたちと接するうちに、少しずつ前向きに変わっていく姿がとてもいい。とはいえまだまだこれからといったところだし、桜舟だけでなく「貘」の3人にもなにやらいわくがありそうなので(元は3人とも桜舟のクライアントだったらしいが……)、そのあたりをぜひ読んでみたい。


ルブラン王国の第3王女でありながら、その容姿と性格から魔女と忌み嫌われているエミリエンヌ。国王から追放処分を受けたエミリエンヌは、「氷狼公」と呼ばれ恐れられている辺境伯・ラファエルの婚約者として、魔術の国・ドライデン王国へと向かうことになる。だがこれまで何人もの婚約者を叩き出してきたというラファエルは、エミリエンヌのことも同様に拒絶。魔女と呼ばれるドライデン女王・クララに会うという目的のため、また生来の負けず嫌いに火がついたため、エミリエンヌはなんとしてもラファエルから自分に求婚するよう、あの手この手を使って迫ってゆくが……。

お互いに性悪すぎるふたりが出会い、いつしか恋に落ちてゆく……のかコレ?と言いたくなるようなラブコメディ。

まあ性悪すぎるというのはある意味ポーズで、ふたりともいろいろとこれまでにあったがゆえに、他人の愛情を受け入れられないというのが真相。そんな似た者同士の二人だからこそ、いつしか惹かれあってゆくのだが、やっぱりその難儀な性格のせいで、自身の想いを素直に認められずに堂々巡り……という展開に。特に厄介なのがエミリエンヌの方で、故郷ではその容姿だけで魔女として忌み嫌われ、唯一自分を認めてくれた叔母も魔女狩りで亡くしているという経緯があるからこそ、周囲に心を許せず、なおかつ他者からの好意に滅法弱いのだろう。そして、自分にも自身を持てないのだ。

そんな彼女がラファエルと接することで少しずつ変わり始め、同時にラファエル本人も変えてゆくさまは見ていて清々しく、まさに「恋は世界を変える」といった結末に。これまでエミリエンヌをとらえていた呪縛から、彼女が完全に解き放たれたわけではないだろうが、これからラファエルと共にどう変わっていくのか、もっと見たくなってくる。特にラファエルの方は完全にデレたようだし……(笑)。

鏡の国の結婚式 (鏡の国シリーズ) (コバルト文庫)鏡の国の結婚式 (コバルト文庫)
山本 瑤

集英社 2012-06-01
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魔王のもとに通じる鍵を手に入れたティファニーたちは世界の中心の森へと向かう。だが濃い霧の中でティファニーは魔王と遭遇し、そのまま連れ去られてしまう。魔王に導かれたティファニーが視たのは、魔王を倒そうとするエディスがシリンと対峙する姿。そして、シリンと魔王の母がかつてルーダンと交わしたという契約の真実だった……。

シリーズ9巻、これにて完結。
神は善で魔王は悪――そんな単純なものさしでは測れないのがこの鏡の国。善悪の基準は各々が心に抱く「美しさ」そのもの。何をもって美しいとするかで、あらゆるものの価値はたやすく変わる。ティファニーもシリンも、それぞれが「美しい」とするものを――ゆるぎない信念と価値観をもって魔王と、そして神と対峙し、自分たちの運命に立ち向かおうとする。迷い、苦しみ、絶望を味わいながらも、ふたりを支えていたのは互いへの想いであり、願いでもあった。そんなふたりがたどる道、そして未来はやっぱり美しい――そう思える結末だった。


◇前巻→「鏡の国の魔王」

鏡の国の魔王 (鏡の国シリーズ) (コバルト文庫)鏡の国の魔王 (鏡の国シリーズ) (コバルト文庫)
山本 瑤

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魔王の住まう森に向かう前に、ティファニーはエディスの後を追い、彼の知人である騎士・イアンテの祖国であるワロキエに向かうことに。だがそのさなかも、気になるのは置き去りにしてきたシリンのことだった。その頃シリンは、父親が遣わした美女たちに囲まれて酒浸りの日々。だがそれはポーズに過ぎず、頃合いを見計らったシリンはクインシーに頼み、インドラのもとへと向かう。望みはただひとつ、失われた「王太子妃」についての記憶を取り戻すことで……。

クライマックス直前!の8巻では、とにかくティファニーもシリンも、互いのことを想って動き続ける。
シリンを魔王に会わせたくない一心で記憶を消させたティファニーだったが、シリンの代わりにエディスが魔王のもとへ向かってしまったからさあ大変。さらに自身の選択が、シリンが魔王と対峙するという選択肢を奪ってしまったことに気付いてしまう。殺すか殺されるか……ということはともかくとして、自分の片割れが魔王であることが負い目であり後悔であり、そのために悩み続けてきたシリン。魔王と対峙することがなくなれば、その悩みが解決されることもありえない。相手のことを想うあまり、大切なことに気付けなかったティファニーは後悔しはじめるのだが、それはシリンも同じだった。

エディスもそうだが、結局のところシリンもティファニーが何者か、とっくの昔に気付いていたのだろう。忘れていたのを思い出したのか、それとも元々忘れていなかったのか――インドラの魔法を、ふたりのティファニーに対する想いが越えたということなのだろうが、エディスはともかく、そこでシリンがとった行動があまりにもあまりすぎる。つまるところ、彼の選択はティファニーと同じで、だとしたらティファニーが救われることはありえない。ふたりがそのことに気付いてくれることを祈って、最終巻を待ちたい。


◇前巻→「鏡の国の灰かぶり姫」

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山本 瑤

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魔女インドラの術で、鏡の国の人々すべての記憶からその存在が消えてしまったティファニー。そんな中、なぜかティファニーのことを覚えているままであったクインシーは、投獄されていた彼女を助け出したものの、そのまま自身の領地である森の中に閉じ込めてしまう。森から出たければ精霊たちの力を借りてみろ、と言われ奮闘するティファニーの前に現れたのは、ワロキエの騎士でエディスの友人だという青年・イアンテ。彼は魔王討伐に向かったエディスを追っているのだという。ティファニーはエディスがその道中で彼女の記憶を失い、そのまま行方不明になっていることを知り、イアンテと共に森を脱出しようとするが……。

シリーズ7巻、愛するシリンのために自ら身を引いたティファニーが孤軍奮闘……と思いきや、意外な救いの手が現れるの巻。

イアンテは精霊に好かれているがゆえに、インドラの術にかからなかったという不思議な体質(?)の持ち主。そのため事態をおおむね把握していて、なおかつ自由に動くことのできるほぼ唯一の人物。なんとかクインシーの森を抜け出し、イアンテと共にエディスを追うことにしたティファニーだったが、そのエディスが魔に魅入られていたからさあ大変、という展開。

結局今巻ではシリンもエディスもティファニーを思い出すことはなかったが、それでもふたりともなにか引っかかるというか気になるというか、惜しいところまで来ているのは確か。そのじれったい感じは嫌いではないが、できれば早くどちらかに(でもどちらかといえばシリンに)思い出してもらいたいところ。


◇前巻→「鏡の国の仮面舞踏会」

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山本 瑤

集英社 2011-06-01
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鏡の国の王太子・シリンとついに両想いになったティファニー。だが「両想い」という経験自体が初めてのティファニーは戸惑いを隠せず、ついぎこちない態度をとってしまうこともしばしばだった。そんな彼女を愛おしく思いながらも、シリンは自らの運命について思いを巡らす。それはティファニーの「命の焔」を奪った憎むべき敵であり、双子の片割れでもある魔王のこと。魔王とシリンが双子として生まれたのは、ふたりの母親が「ルーダンの理」――神との契約を破ったからだ、とかつて魔王は告げた。そしてシリンが魔王を殺しにやって来た時、その内容がわかるのだとも。しかし魔女インドラは言う――シリンが魔王を殺しに行く時、それはすなわちシリンが死ぬ時なのだと……。

やっと両想いになったのに、これはあんまりだ!なシリーズ6巻。
互いの気持ちが通じ合ったのも束の間、なかなかそこから先に進めないティファニーとシリン。というのも、肝心な時にティファニーが眠ってしまうから。シリンと両想いになって安定したはずなのになぜ、と訝しむシリンたち。けれどティファニーは無意識のうちにその理由を識っていた。ふたりの関係が今以上に密になったその時に魔王が何か仕掛けてくるのだと、無意識下で本能的に察知していたからこそ、眠ってしまうティファニー。では魔王は一体、何を待っているのだろうか。そして魔王が告げた、王妃が破った理とは一体何なのか。

シリンが自分の運命を知ったのと同じ頃、ティファニーもシリンの行く末を知ってしまうことになる。愛する者が死ぬのは、自分のせい――そう考えたティファニーはインドラに頼み、王妃が主催する仮面舞踏会の夜に、ある行動に出る。せっかく両想いになったというのに、あまりにもあまりなその決意に涙が出そうになる。ふたりが再会して、再び両想いになれる日はくるのか……いや、きてくれないと困る。


◇前巻→「鏡の国の眠り姫」

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集英社 2011-02-01
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鏡の国の王太子・シリンの双子の片割れでもある禁忌の存在――魔王に「命の焔」を奪われてしまったティファニー。そうなってしまえば最後、その者は短命に終わるという。そのことを本人に隠して、シリンは必死に解決策を探っていた。かつて魔王に「命の焔」を奪われながらも天寿を全うしたという女性・アリースの存在を調べるうち、彼女が長生きできたのは、彼女が花の精霊の生まれ変わりであり、恋人と強い結びつきがあったためだということが判明する。そこでシリンはティファニーに恋愛をしないか、と持ちかけるが、それが王太子としての義務感からの発言だと考えたティファニーは彼を拒絶して……。

シリーズ5巻、のっけから盛大にすれ違うふたりにやきもきしてしまうことこの上なし、ということで。
実は両想いなはずなのに、互いにそれを口に出せず、意地をはり続けるふたり。シリンはあれだけ経験豊富的なところを見せておきながらも、肝心のティファニーの気持ちにまったく気付いていない様子。そしてティファニーもまた、シリンのつっけんどんな態度から、彼が自分のことを想っているとはつゆほど思わず、だからこそ自分の想いを伝えることができないまま。さらに「命の焔」を奪われたことで、知らず知らずのうちに言いようのない不安な思いにとらわれ、心を弱らせてゆくように。

そんな彼女につけこむ……というと人聞きは悪いが、シリンが彼女を救う手掛かりを探したり、先の事件で大ダメージを負ったかつての恋人・ロゼラインの元に通ったりするあまりティファニーを放置しているせいで、エディスがティファニーに接近。自分に正直に生きることにしたエディスは、懸命にティファニーを励まそうとする。で、それを見てシリンが嫉妬するものだからさあ大変。いくらシリンが嫉妬しても、ティファニーはなぜシリンがイラついているのかがわからなくて、ふたりの気持ちはますますすれ違い。もういったいどうしたらいいの……と、見ているこっちまで泣きたくなってくる。

まあでも今回、そんなすれ違いにもようやく終止符が打たれたのは重畳、の一言。よかったねティファニー……!
まだ「命の焔」問題は完璧に片付いてはいないし、完璧に失恋してしまったエディスがどうなるかも気になるところではあるけれど、それより、ついに両想いになったふたりが今後どうなっていくか、そっちの方がく気になってたりして(笑)。


◇前巻→「鏡の国の恋人たち」

鏡の国の恋人たち (コバルト文庫)鏡の国の恋人たち (コバルト文庫)
山本 瑤

集英社 2010-10-01
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本心では互いに惹かれ合っているのに、それを相手に伝えられないままの王太子夫妻。そんなふたりを見かねた国王は、ふたりを離宮に送り出すことに。ひとりしか侍女のいない離宮で、ふたりは喧嘩しながらもそれなりに仲良く過ごしていた。だがそんな中、ティファニーは黒い鏡を見つけてしまう。そこに映っていたのは、亡くなったはずのティファニーの父親の姿で……。

シリーズ4巻。
お互い素直になれないティファニーとシリンは、離宮でふたりきりになっても相変わらず。自身の想いには確実に気付いているのに、それを相手に伝えることがどうしてもできないでいた。さらに相手も自分のことが好きだと思っていなかったりと、やっぱり似た者夫婦なふたり。けれどそんなところにつけ込んでくるのが、シリンの双子の片割れだという「魔王」。

同時に生を享けながらも、魔王となってしまった片割れに対して負い目を感じているシリン。なので、魔王の罠にもあっさりひっかかってしまう。そんな彼をティファニーが身を挺してかばってしまったからさあ大変。さらにそんなティファニーを見て、シリンの異母弟・エディスまでも、ティファニーへの想いを自覚してしまうからさらに大変。

というわけで本格的に三角関係フラグが立ったよ!
……などと浮かれたいのはやまやまだが、魔王に「命の焔」を奪われてしまったティファニーはどうなってしまうのか? そして、今回のティファニーの窮地を救った「草原の魔女」インドラの狙いと過去とは一体? などなど、問題は山積。あと、ティファニーに対する想いを行動に表わしはじめたシリンの動向やいかに(笑)。


◇前巻→「鏡の国の魔法使い」

鏡の国の魔法使い (コバルト文庫)鏡の国の魔法使い (コバルト文庫)
山本 瑤 明咲 トウル

集英社 2010-07-01
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鏡の守護者として鏡の国ルーファスで暮らすティファニーは、いつしか夫・シリンに惹かれ始めたことを自覚していた。しかしシリンにはその気持ちを知られまいと、つい邪険な態度ばかり取ってしまう。そんなふたりの様子を知った国王は、ふたりに「人前では仲良くしなければならない」という勅令を出す。守らなければ離宮行きと言われたふたりは仲良くしようと努めるが、なかなかうまくいかなくて……。

シリーズ3巻、うまくいかないふたりを外野が後押ししてみたら、の巻。
ティファニーはシリンに恋していることは認めたものの、それを告げて拒絶されるのを恐れ、また彼を意識し過ぎるあまり、素直に対することができない。けれどシリンの弟・エディスとなら自然な対応ができる。それはエディスを友人だと思っているからなのだろうが、ティファニーを意識し始めたシリンにはそれが面白くない。そんな水面下の動きがなんとも面映ゆい。

それにしても、もうちょっと、なんか、こう……もう少し歩み寄れば誤解も解けるのでは?とは思うけれど、互いに一歩を踏み出せない頑なさがまたそっくりなふたり。いい夫婦なのだろうけど……。

このままだと平行線っぽいふたりだが、エディスが母親にたきつけられてなにやら思案し始めたので、これからはは彼の出方に注目といったところ。
夫婦を狙う魔王――シリンの双子の弟の手がじりじりと迫りつつある今日この頃だが、そんなことよりふたりの関係の進展を(笑)!


◇前巻→「鏡の国の王太子殿下」

鏡の国の王太子殿下 (コバルト文庫)鏡の国の王太子殿下 (コバルト文庫)
山本 瑤

集英社 2010-03-10
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魔がはびこる鏡の国を救うため、「鏡の守護者」に選ばれた16歳の少女ティファニーはルーファスに残ることに。そんなティファニーを待ちうけていたのは、彼女を見出した先代の守護者の意思による、ルーファスの王太子・シリンとの結婚だった。精霊の気配はおろか、守護者としての能力さえままならないうえ、シリンからはあからさまに「政略結婚」をほのめかされて落ち込むティファニー。そんなある日、シリンは突然、新婚旅行に行こうと言い出す。だがその行き先は、かつて彼の恋人だった女性・ロゼラインがいる町だと知って……。

シリーズ2巻。
どうもそっけないながらも、時折見せる優しさが功を奏したのか――ティファニーは次第にシリンに惹かれていくものの、当のシリンはあいかわらずのマイペース。珍しく自発的に「新婚旅行を」と言い出したかと思えば、行先が元彼女のいる場所とあっては、心中穏やかならざるのも無理はない。その後も数々の心ない仕打ちに胸を痛めるティファニーを見ていると、シリンなんてやつ!と、思ってしまう。
だがストーリーが進むにつれ、シリンも少しずつ変わっていく様子が見られて、それはもうこちらとしてはたまらない展開。それが「新婚旅行」に同行してきた異母弟・エディスのせいであるというのもなんとも。このままこの3人にはこんなふうに突き進んでいただきたい(笑)。

そんなふたりのゆるやかに進展する恋模様ももちろんいいのだが、もうひとつ気になるのが「魔王」の存在。シリンの双子の兄だという魔王は、ティファニーをシリンから奪うため、彼女に囁きかける。シリンのために魔王に遭ったことを隠すティファニーだが、これがいつか凶と出そうな気がしてならない。


◇前巻→「鏡の国の女王陛下」

鏡の国の女王陛下 (コバルト文庫)鏡の国の女王陛下 (コバルト文庫)

集英社 2009-12
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両親を亡くし、親戚の家に居候しているティファニーは、ある日、親しくしている隣家の老婦人・ローズマリーから「魔法の鏡」を見せられる。そこには見たこともないような異界が映し出されており、驚くティファニー。その夜、ローズマリーは急死するのだが、なんと彼女はティファニーに遺産を残していることが判明。受け取りを拒否したティファニーだったが、「魔法の鏡」が売りに出されることを避けたい彼女は、ローズマリーの家の持ち主であり、遺産相続権を主張する女性・アデルと鏡の前で口論になってしまう。そこに突然、鏡の中から男が現れ、ローズマリーの飼い猫もろとも、ふたりを鏡の中に引きずり込んでしまい……。

読みきりかと思ったら、エピローグを見る限りは続きそうなので、新シリーズ1巻ということで。

鏡の向こうに広がっていたのは「鏡の国」ルーファス。かつてこの国の女王であったローズマリーは、魔王の侵略から国を守るため、「天珠の瞳」を持つ者――「鏡の守護者」を探して、魔法の鏡もろとも行方知れずになっていたのだと言う。ティファニーたちをこの国に連れこんだ導師クインシーは、ローズマリーの形見である指輪を持っていたアデルを「鏡の守護者」だとし、ルーファスの王子であるシリンと結婚させようと目論む。女王になる気満々のアデルを横目に、元の世界に戻りたいティファニーは、アデルとの結婚を拒むシリンと共に魔王を探し出そうとするが……というストーリー。

というわけで、魔王を探す冒険ファンタジー的展開を軸に、ティファニーとシリンの恋愛模様が描かれる……のかと思いきや、シリンのやる気のなさ、そしてティファニーの、「月花の守人」シリーズの主人公・ルカ並みのリアリストっぷりのおかげで、なかなか甘い雰囲気にならないのが実にもったいない(笑)。とはいえ、おそらく続きがあるようなので、今後に期待。

月花の守人緑の魔王に愛された娘 (コバルト文庫 や 6-27)月花の守人 緑の魔王に愛された娘 (コバルト文庫 や 6-27)

集英社 2009-07-31
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異世界へ渡る能力を持つ「フユウ」の少女・ルカが今回訪れたのは、森林世界カーネリアン。ルカは女王ラージェリンから、奪われた王の証「契約の指輪」を捜すよう依頼される。指輪を奪ったのはラージェリンの婚約者でもある大公ユージーンで、さらに彼の傍らにはルカと同じくフユウの少女・ヴァレンタインがいた。フユウたちのリーダー的存在であるソリーディアにもヴァレンタインのことを頼まれたルカは、ヨーロッパに行ったというふたりを追うが、そこにいたふたりはまるで恋人同士のよう。ヴァレンタインに陥れられ、世界を隔てる「忘却の川」に落とされたルカは、彼女を見守っているという川の守人・アルディーンに再会するが、彼はこの依頼からは手を引くように言ってきて……。

シリーズ2巻。カーネリアン崩壊の原因や、ユージーンの真意はなかなか意外なもので、二転三転する展開から目が離せない。

さらに気になるのが、ルカを気にかけるアルディーンの存在。ユージーンと手を組もうとしたり、ルカを仕事から遠ざけようとしたり、いろいろと暗躍しているのはいったいなぜなのか?
そもそも、かつて月神であった彼が、なぜ今は川の守人に落とされているのか。
そして、なぜルカに執着するのか。
真実を隠す人の言うことは聞けない、とつっぱねるルカに、アルディーンはついにその真意を話すのだが、今回語ったほかにもまだなにかありそうな雰囲気。けれどそれを聞いたことで、そして今回の事件を通して、どこかアルディーンに惹かれつつあるようで……このふたりが今後どうなるのかとても楽しみ。

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