2205年の日本――だけでなく世界は、「タイタン」と呼ばれるAIによってあらゆる問題が解消され、人々は働くことなく自由に生きていた。そんな中、心理学を「趣味」とする内匠成果のもとに、ナレインと名乗る男が現れる。彼はいまや数少なくなっている「就労者」――「仕事」をする人物であり、なかば脅迫めいたやり方で成果に「仕事」を与えるのだった。それは北海道の第二知能拠点にある「タイタン」――12あるAIのうち2番目に生み出された「コイオス」が機能不全を起こしたため、その一部を「人格化」して抽出し、カウンセリングを施してその理由を探るというもので……。
2019〜2020年にかけて「メフィスト」に掲載された作品の書籍化。「仕事」から解放された世界で、「仕事」とは何なのかを探るSF長編となっている。
様々なリソースが常に不足しているからこそ、人々は働き、その対価でもってリソースを分配する。であれば、供給が十分であり、それを公平に分配できるのであれば、そもそも対価を得る必要はな い――「タイタン」は人間が行っていたあらゆる「仕事」を肩代わりし、その対価として得ていたあらゆるものを無条件で与えてくれる。それはユートピアであり、一方でディストピアなのかもしれない。
そんなふうに完全ではないにしろ、ほぼ完璧な「理想」の世界において、その根幹である「タイタン」自身が「仕事」というものに疑問を抱き、「仕事」を経験したことのない成果と共にそれを考えていくという展開がなんとも面白い。
「コイオス」と一緒に過ごした日々の中で、あるいは彼女とは正反対の立ち位置にあったナレインとの関係の中で、成果はあるひとつの答えを選ぶこととなる。それはどちらかといえば感傷的なもので、世界の在り方にある意味で逆行しているのかもしれない。それでもただ流されるままに「自由」を謳歌していた時の彼女と、いまの彼女とは確実に違う。成果だけでなく、読んでいるこちらもまた、「仕事」とはいったい「何」なのか、考えさせられる作品だった。








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