ホテル王の娘として生まれた美緒だったが、両親の仲が冷え切ったまま父は死に、母はそんな父に似た美緒を憎んでいた。愛情に飢えていた美緒が初めて好きになったのは、お目付け役である板垣の友人・伊織。ふたりはたちまち恋に落ちるが、娘を自分の駒としたい母親によって、伊織がバイトをクビになったうえ奨学金を打ち切られそうになっているという事実を知った美緒は、一方的に伊織に別れを告げ、逃げるようにアメリカへと留学するのだった。しかし帰国し就職してから2年が経った頃、実業家として成功した伊織が美緒の前に現れ、美緒のことを金で買ったと宣言。母の会社の経営はこの数年ですっかり傾いており、伊織はその援助と引き換えに美緒との結婚を認めさせたのだという。しかし結婚後、償いの気持ちも込めて美緒がどんなに尽くしても、伊織は冷たい態度で彼女を詰るばかりで、ついには一方的に離婚を切り出すのだった。心のどこかでほっとしつつも伊織への愛情が冷め切らないことに苦悩する美緒だったが、その直後に事故に遭って大怪我を負ってしまう。しかも驚いて見舞いに来た伊織に対してだけ、なぜかまともにしゃべれなくなってしまったのだ。やがて従兄の征の援助もあり、伊織から逃げひっそりと新生活を始めた美緒だったが、なぜか伊織は彼女の居場所を突き止め、「お前が欲しい」と懇願してきて……。
お互いに好き合っているにも関わらず、不幸な勘違いが重なってすれ違い続ける夫婦の行方を描くラブロマンス。
この手のすれ違いは「ちゃんと言いたいことを言っておけばこんな問題は起きなかったのでは……?」のひとことに尽きるのだが、もちろんそう簡単に行くはずもなく。特に母親に抑圧され続けていたため身を引くしかなく、また生来の優しい性格のために伊織にどんな仕打ちをされても逆らうことができなかった美緒が、自分の感情をすべて胸の内に秘めてしまうのは仕方ないことで、だからこそ伊織相手にだけ失語症になってしまうというまさかの展開に。これだけでも可哀想なのに、伊織は伊織でこれまた美緒のことが好きすぎるけど口より先に手が出るタイプになってしまったからさあ大変。冒頭の再会シーンが強烈すぎただけに、次第に伊織がかつての心優しい青年に戻っていくというそのギャップに多少戸惑いつつも、結果としてはふたりがようやくわかりあえたのでよかったねということで。
しかし個人的に気になるのは美緒の従兄である征の存在。その美貌や肩書(元華族で超エリート)もあってモテモテなはずなのに特定の相手は作らず(告白されたら付き合いはするが続かないし自分から告白することは皆無)、昔から常に美緒のことを気にかける「博愛主義者」なのだが、実は美緒の見えないところであれこれ手をまわしているということも判明。しかしそれが美緒のためになっていることもあれば、彼女を結果的に傷つけていたということもあるので、ただの溺愛ではなさそうな雰囲気。彼女が幸せになってくれればそれでいい、ということだろうが、どこか歪みすら見えるその愛情表現が気になって仕方ないので、難しいだろうが彼にも美緒以外の相手と幸せになってほしいなと思ったり。まあそうなるとその相手が大変なことになりそうだけど……(笑)。












