phantasmagoria

読んだ本のこと、それ以上に買った本のこと、ときどきライブのことを書き散らかしてみたりする。 (当ブログは全文無断転載禁止です)

カテゴリ: 福田和代

東京ホロウアウト
福田 和代
東京創元社
2020-03-19

2020年7月、オリンピック開催を間近に控える東京で、宅配便の中に青酸カリを発生させる装置が混入されるという事件が発生。その犯人として浮上したのは、トラックの長距離トラックドライバーである浜口義三だった。同じドライバーとして浜口と仲良くしていた世良隆司は、事件の直前に浜口と会い、今度飲みに行く約束をしていただけにショックを隠せない。世良はドライバー仲間である本郷恵津美と共に、行方をくらました浜口の足取りを追うことに。しかしようやく浜口を見つけ、自首させたのも束の間、同じ手口の事件がまたしても発生。他にも線路での土砂崩れや高速道路での火災といった事故が相次ぎ、日に日に都内のスーパーやコンビニから食料品が消えてゆくのだった……。

2018〜2019年にかけて雑誌「ミステリーズ!」にて連載されていた長編小説。東京オリンピックを目前に控えた東京で、物流網を狙ったテロが発生するというサスペンス作品となっている。

ひとくちに「物流」と言っても、改めて考えるとその内容は様々。主人公の世良は商品を拠点から拠点へと運ぶ長距離ドライバーだが、宅配便を運ぶのも、ごみを運搬するのも、すべて「物を運ぶ」という点では同じ。本作ではそういった物流網を寸断させるというテロが発生。そのため、現実世界でもしばしば見られる「買い占め」が起きてますます品薄が深刻化したり、ごみが片付けられず街が荒れ、あるいは仕事ができないといった影響も。特に東京は様々な物が周囲から――日本全国、あるいは世界中から――集まってくる場所だけに、これを押さえられると生活がままならないのだという現実がリアルに迫ってくる。しかも時期が時期だけになおさら。

そんな事態の中心に最も近い場所にいたのが、一介の長距離ドライバーである主人公の世良。やがて世良は、警察官でオリンピック総合対策本部の警備担当を務める弟の梶田と連携を取りながら、はからずも事件の真相を追うことになる。ドライバーの中では比較的若いとはいえ、大変な仕事であるにも関わらず、彼が高校卒業後すぐにドライバーになった理由、そして今もこの仕事に誇りを持っている様子が見て取れるのがなんとも素晴らしいし、本作で描かれた事件からは、「物流」というシステムについて考えさせられる点がたくさんある。現実ではオリンピックは延期になったがそれはそれとして、まさに今、広く読まれてほしい作品だと思った。


VIP専門の警備会社・ブラックホークの特殊警備隊にこのたび依頼されたのは、警察のトップである警察庁長官の速水の警護だった。身内であるSPを退けての依頼、さらに「対象の命ではなく自由を守ること」という指示に首を傾げながらも、最上は任務に就くことに。しかし速水を家に送り届けて早々に、執事が殺されていることが発覚。時同じくして警察が近付いていることを知った速水は、すぐさまこの場から逃げるよう、最上たちに指示するのだった。一方、公安第五課の寒川は、この殺人事件の捜査に関わることに。その場に居合わせたメイドは、速水が執事を殺したのだと証言するが、寒川が独自に調べを進めた結果、速水が犯人たり得ない事実が明らかに。しかし課長はその証拠をあっさり却下。このことがきっかけで、寒川はこの事件が仕組まれたものであると確信し……。

「ブラックホーク3部作」完結編となる書き下ろし長編。警察庁長官の殺人疑惑をめぐり、公安とブラックホークが対立するという展開に。

今回は「敵の敵は味方」ということで、警察――というより〈旭光〉なる組織が作り上げた監視システム〈ケルベロス〉を潰すために、ブラックホークとクーガが共闘するというまさかの展開に。クーガのトップであるマギの指示のもと、由利が最上たちと同行するのだが、わずかとはいえふたりがプライベートな話ができてよかったと思う。これですべてのわだかまりが溶けたわけではないし、ブラックホークとクーガという関係が変わるわけでもない。しかしそれぞれに信じるものがあり、そのために戦っているということをお互いに理解できたということだけでも救われるような気がする。

それにしても今回、ついに〈旭光〉という組織が何を目指し、どのような状態で存在しているのかが判明したのだが、読み進めながら現実の状況を思い起こすにつけ、これが絵空事とは決して思えなくなってくる。そのものでなくとも、その片鱗のようなものは確実にどこかに存在していて、いつか〈ケルベロス〉のようなものができるのではないだろうか、と。そういった意味でも、私たちも最上や由利のように、自分が信じるものをきっちり据え、守っていかなければならないのだと思わされた。


◇前巻→「ゼロデイ 警視庁公安第五課」


警視庁が持つ様々な犯罪関連データを収めたデータセンターがハッキングされたうえ出火。メインセンターとバックアップセンターを同時に襲ったその「事件」により、警察の各種捜査は停滞を余儀なくされるのだった。そんな中、デジタルデータが苦手で、昔ながらのやり方で捜査を続ける公安第五課の寒川警部補のもとに配属されたのは、国家一種に合格した新米エリート警部補・丹野だった。いくつか現場を回るうちに、時折反発しつつも熱意やエリートらしからぬやる気を見せる丹野を気に入り始めた寒川。そんな中、例のデータセンター火災が、最近組織され名を挙げ始めたテロリスト集団「空牙(クーガ)」のトップである「マギ」の仕業であるとして、寒川は捜査を開始。一方その頃、東洋郷工務店という大企業に「マギ」からの脅迫メールが届く。当初は聞く耳を持たなかった八木原社長だったが、「マギ」が示唆したある単語を耳にした途端に態度を一変。ボディガードを多数雇い、マギの誘いに乗るふりをして彼らと対決しようとするが、それもすべて「マギ」の思うつぼで、逆に窮地に立たされた上、同行していた副社長を死なせてしまう。八木原は「マギ」に対抗するため、「マギ」が示唆する15年前の事件の関係者を呼び集め……。

とある企業のトップたちが15年前に起こした事件を巡って「クーガ」と対峙する中、地道な捜査で真相に迫ってゆくふたりの刑事の姿を描くミステリ長編。作者曰く「標的」に続く《ブラックホーク3部作》の第2弾であるとのこと。ただし今回は「標的」よりも過去のエピソード。ちなみに作中で「スーパー・ガード法」が成立し、ブラックホークの妹尾や円道が登場するというシーンも。

昔ながらの「現場百回」な刑事・寒川と、この先どんどん出世していくであろうエリート候補の新米刑事・丹野はなかなかいいコンビ。最初は年の差・キャリアの差もあってうまくいくか不安な面もあったが、丹野が思いのほかガッツを見せる人物で、ふたりははからずも八木原たちと「クーガ」の本当の関係に肉薄していく。義賊気取りのテロリスト集団という印象だった「クーガ」だったが、八木原たちのほうがよほど悪どいとしかいいようがない人々で、確かに本作を読むと、作者があとがきで語る通り、「クーガ」の印象が変わってくる。

しかしやはりここでも寒川は、最上のように「正義」とは何かを疑うことになる。最上は正義を疑うことを自身に誓ったが、寒川はそうも言いきれないやりきれない結末を迎えることになる。事件は一応解決したがおびただしい死を目の当たりにする寒川。そして八木原たちに下された鉄槌。いったい何が起こっていた――いや、起こっているのか。それはきっと、本作より数年後の物語である「標的」のその裏でも続いていたに違いない。現在準備中だという第3部で何が語られるのか気になるところ。

標的 (幻冬舎文庫)
福田 和代
幻冬舎
2015-02-10

事件を起こし資格を剥奪された元ボクサーの最上光一をスカウトしたのは、政治家や実業家といったVIP専門の警備会社「ブラックホーク」だった。試用期間も終わりに近づいたある日、最上が警護することになったのは、国内有数のロボットメーカーに所属する研究者・山野辺。何者かが山野辺の持つ技術やノウハウを狙い、会社から引き離そうと脅迫しているというのだ。社運を賭けた新型ロボットのお披露目を控え、神経質になる山野辺を24時間体制で警護していた最上たちだったが、移動中に黒ずくめのライダーに狙撃されてしまう。ライダーの正体が、大手企業を狙う金目当てのテロリスト集団「空牙(クーガ)」ではないかと考えた最上たちは、いっそう警備を強めるが……。

治安の悪化に伴い可決された「スーパー・ガード法」により、民間の警備会社も銃火器を含む武装が可能になった近未来の日本で、訳アリなVIPたちを警護する「ブラックホーク」、その中でも特にエリート集団である特殊警備隊の活躍を描くミステリ長編。

「ブラックホーク」警備部の中でも9名のみが抜擢される「特殊警備隊」の一員となった最上は、なにかとクセのある仲間たちと共に任務に従事することに。警護する相手は名だたる企業の上層部ばかりだが、警察に助けを求めないということは、彼には後ろ暗い「なにか」が隠されているということ。そしてそういった企業は「クーガ」なるテロリスト集団の標的となり、必然的にブラックホーク対クーガという図式になっていくという展開に。さらに最上が入隊する前に殉職した特殊警備隊員・円道の死の謎や、クーガのナンバー2である「フラッシュ」が、最上のかつての親友――彼が起こした「事件」に関わり服役していた元ボクサー・由利であることなどが絡み合い、その図式も物語が進むにつれどんどん複雑化していく。その中で最上は自問することになるのだ――「正義」とは何なのか、と。

企業を脅迫して金を巻き上げる「クーガ」は一見すると「悪」のように見えるが、一方で彼らは巻き上げた金の一部をスラムで暮らす貧しい人々に分け与えているという。そして彼らが標的とするのは、後ろ暗い方法で儲けている――つまり彼らの付け入る隙がある――企業ばかりなのだと。クーガの主張を受け入れてしまえば、金を積まれれば悪事を働く企業でも守っているブラックホークこそ「悪」なのではないか――と。根がまっすぐな最上だけに、動揺は激しくなる一方。しかも相手がかつての親友でしかも負い目を抱えているとあってはなおさら。そんな彼の揺らぐ気持ちはよくわかる。だからこそ自分が「正義」かどうかを簡単に断じることなく、常に疑い続けると誓う彼の姿勢がなんとも清々しい結末だった。

東京ダンジョン (PHP文芸文庫)
福田 和代
PHP研究所
2016-11-09

東都メトロで保線作業員として働く的場は、ある日の作業中、トンネル内でいるはずのない人影を目撃。それと前後して、ネット上では地下鉄の駅や線路周辺に潜伏する「地底人」の噂が流れていることを知るのだった。そんな折、実家で母親から、弟の洋次の様子がおかしいと相談を受ける的場。営業職として就職したものの、厳しいノルマ競争で体調を崩して退職していた洋次が、過激な発言で有名な経済学者・鬼童征夫のセミナーに足しげく通っているというのだ。弟を心配する的場もセミナーに参加してみたところ、その発言の過激さに驚きはしたものの、内容はしごくまっとうなものだったので、特に問題はないと判断。しかしその数日後、鬼童の勉強会に参加していた洋次が何者かに襲われて重傷を負う。しかも意識を失う直前に、洋次は的場への謝罪を口にしていたというのだ。鬼童のセミナーと何らかの関係があると考えた的場は、見舞いにやってきていた青年・朝宮に接触し、内部を探ろうと考えるが、朝宮の方もなぜか的場を勉強会に参加させようと熱心に誘ってきて……。

複雑化した東京の地下を標的とした陰謀を描くサスペンス長編。

最終的には「地下鉄がテロの標的に!?」ということで混乱が起こる中、的場がそれを食い止めるという展開になるのは予想できたのだが、そのテロを起こそうとした理由とその顛末にはなんとも驚かされる。鬼童や朝宮たちは経済学から世界を理解し、停滞かつ悪化の一途をたどる日本の状況をなんとか打破しようと考えるエリートたちだった。乱暴ではあるが、端的に言ってしまえば的場とは正反対に位置する存在。しかし的場はそんな彼らの言葉に正しく理解を示し、そして彼らもまた、的場の仕事や生き方に共感を示すのだ。

若者たちが自分たちの置かれた現状を憂い、声を上げるために暴力に訴える……というのは、先日読んだ「ハイ・アラート」にも通じるものがある。しかし本作では、テロ行為はあくまでも注目を集めるための手段であり、目的ではない。「裕福なエリート大学生たちの机上の空論」と断じることは可能だが――むしろ最初はそうとしか思えなかったが――、すべてをやり遂げた彼らの背中には、それだけで終わらせることはできない意志が秘められているようにも見えてくる。閉塞化した現代における「革命」というのは、こうしたかたちでないと実行できないものなのかもしれない。

星星の火2
福田 和代
双葉社
2017-09-20

女子高生が自ら主導している売春組織を摘発した上月は、以前そこで働いていた「メイラン」という中国人女性が、中国人向けに同じ仕事を始めているらしいという情報を得て捜査を始める。程なくしてメイランの家を突き止めた上月たちだったが、メイランは行方不明となっており、売春組織のメンバーと思われる少女たちが残されていた。リーダー格の王姫はなかなか口を開こうとしなかったが、メイランの行方を心配する他の少女の証言により、彼女が借金を抱えており、失踪前に〈赤い虎〉と名乗る何者かと連絡を取っていたことが判明する。しかし上月班の面々、そして城の中国人ネットワークをもってしても、〈赤い虎〉の情報はいっこうに集まらないのだった。そんな中、城は知人の運送業者・傳の会社で、以前取り調べを行ったこともある元振り込め詐欺犯の青年・学智と再会する。学智が改心し真面目に働いていることに安心する城。しかしその一方で、傳が巻き込まれた金銭トラブルを収めるため、学智は幼馴染の啓天に助けを求めることに。実は啓天こそが現在の〈赤い虎〉のリーダー的存在で、学智は否応なしに〈赤い虎〉に関わることになってしまい……。

中国人の起こす犯罪に刑事と通訳捜査官がタッグを組んで挑む警察小説シリーズ第2弾。

今回のターゲットは中国人同士のトラブルを内々に解決するグループ〈赤い虎〉――とだけ書くと中国人の互助組織のようで聞こえはいいが、実際は日本の法律を無視し、非合法な方法で暴力的または金銭的に解決しようとするならず者集団に他ならない。中国人たちは稼いだ金を故郷の一族に送金することが大きな目的だからして、トラブルに巻き込まれてそれができなくなったのであれば、犯人にリスクの高い仕事をさせたりその一族を利用したりして稼がせた金を送ってやれば問題はなくなる――というのが彼らの言い分。警察に突き出してしまえば、法で裁かれたとしても、送金が止まることに変わりないのだから意味がないのだとも。確かに一理あるように見えなくはないがもちろん正しいやり方ではないし、もちろん日本の警察がそれを看過することはできない。しかし中国人たちは〈赤い虎〉のやり方に賛同しているからこそ、彼らを売ろうとはしないのだ。

上月や城、そして実際に日々街をパトロールしている警官たちは、中国人たちが「見えない」と感じてしまう――中国人たちはより強く連携して内にこもり、そうして刻々と変化し続ける街にひっそり溶け込んでゆくのだ。まさに今回の問題は、そんな中国人たちの閉鎖的なコミュニティ化がもたらしたものに他ならない。だからこそ対話が、言葉が必要なのだという城の想いには共感させられる。言葉の壁は確かにあるけれど、乗り越えることはできる。それさえ取り払ってしまえば、相手は同じ人間のはずなのだから。

ちなみに今回も城家の事情は一進一退。凛子は自分の店を出すことになったのでますます帰ってくる気配はなく、さらには城本人も近所に住むシングルマザー・伊森に付きまとわれる(再婚相手としてロックオンされている!?)というまさかの展開に。ここでもやはり大切なのは「言葉にして、相手に伝える」ということだったりするのがなんとも。


◇前巻→「星星の火」

ハイ・アラート (徳間文庫)
福田 和代
徳間書店
2013-03-01

東京都内で連続爆破テロが発生――「十二神将」と名乗るグループによるこの犯行は、最初はアルタ前や丸ビルといったランドマーク的な建物の付近で小規模な爆破を起こすという、どちらかといえば愉快犯的なものだった。しかしある時、標的が過去に不祥事を起こした企業に変わり、使用されている爆発物も以前より威力の大きいTNT爆薬へと変えられ、そしてついに初めての死者を出してしまう。この時、現場付近のビルから逃げ出す不審な男女が目撃されており、警察はこの男女の行方を追おうとしていた。一方、かつて高石という老人と手を組み、運び屋のような裏稼業に携わっていた田代は、そのさなかに知り合ったペルー人の青年・ミゲルを兵庫の自宅に迎え入れていた。警官であるミゲルは2週間の休暇を利用し、日本に出稼ぎに来たまま行方不明となっているいとこのサンチョと、その友人であるファンを探しに来たのだという。神戸の人材派遣業者「ヒューマン・プロ」の仲介により、ふたりは大阪の工場で働いていたとのことだったが、このふたりを含むペルーからの出稼ぎ者は全員工場を辞めており、しかも「ヒューマン・プロ」の社長である雑賀は行方不明となっていた。ふたりは雑賀の行方を追い始めるが……。

都内で起きた連続爆破テロと、神戸での人探しが意外なところで結びつき、真相へと繋がってゆくサスペンス長編。

爆破テロをもくろむ「十二神将」の面々、そんな彼らに標的を指示する原田、出稼ぎ者のサンチョとファン、裏稼業から「引退」してスポーツクラブを営む田代、そしていとこを探しに来日したミゲル――彼らが折に触れ感じるのは「現実」との距離感、あるいは肌触りともいうべきか。生きている実感と言い換えてもいいのかもしれない。ただ生活をするだけでは得られない充足感を、彼らは心のどこかで求めている。その発露が田代やミゲルにとっては人探しであり、「十二神将」にとっては爆破テロだったのだろう。時代が流れ、多様化しつつもどこか停滞している社会の中には、少なからず彼らのような存在がいるのも確か。なぜこんなにもこの世界には救いがないのか――そんな叫びが行間から聞こえてきそうな物語だった。


2010年、夏――埋立地であった豊洲は日に日に人の集まる都市へと成長を遂げつつあり、深川署生活安全課に所属する女性刑事・岩倉梓は、その流れを肌身で感じつつあった。そんな彼女が後輩の佐々と共に向かったのは、まだ新しいタワーマンションの一室。ゴミであふれかえった部屋にたったひとりで残されていたのは、5歳のやせこけた女児だった。まもなくして女児の兄である8歳の少年・透也が銀座で保護されるが、ふたりの母親である宮崎奈津子は行方不明のまま。透也は銀座でホステスとして働いていた奈津子を探しに行っていたというが、すでに奈津子は銀座では働いておらず、その足取りは杳としてつかめないでいた。元同僚から奈津子のmixiのアカウントを聞き出した梓は、佐々から彼女にメッセージを送らせて接触を試みるが、その後、渋谷のホテルで奈津子の遺体が発見され……。(「第一話 橋向こうのかぐや」)

再開発が進み、人口が増えつつある2010〜2011年の豊洲を舞台に、生活安全課の女性刑事・岩倉梓が街で起きる様々な事件を解決に導く短編連作集。

殺人事件などの凶悪犯罪ではなく、「生きている人間を相手にする」生活安全課に所属する梓。第2話までは深川署、第3話からは新設された豊洲署の「セイアン」で、唯一の女性課員である梓に回される仕事は、一見すると地味めなものばかり。後輩の佐々が他の男性課員と共にオートバイ窃盗グループの摘発のような派手めな業務に回されるのを心のどこかで羨み、自分が女だから回される仕事を選別されているのか、と時には疑うことも。しかし彼女の丁寧な仕事ぶりを見ていると、性別の問題ではなく適材適所の結果というのはわかるし、いつしか本人も前向きかつ積極的に自分の仕事に向き合うようになっているのだからよかったなと思う。本人にとっても、相談者にとっても。まあたまに入れ込みすぎる部分もあったりして、上司である八坂にクギを刺されたりもするが、その八坂との微妙な関係性もまたいい。

タイトルの「ゾーン」は、梓が感じた豊洲という街に抱いた印象に由来している。「地域」だった豊洲が「街」に変貌していく様を、梓はその目でしっかりと見守っている。これは警察小説であると同時に、ひとりの女性のお仕事小説でもあり、現代における「街」の成長と変遷を描く年代記的物語でもあるのだと感じられた。

怪物 (集英社文庫)
福田 和代
集英社
2013-05-17

定年を間近に控えた刑事の香西には、他人には言えない秘密があった――それは〈死〉の匂いを嗅ぎとる能力を有しているということ。特に自分の意志に反して死んだ人が、その死に際して発した気配のようなものが、現場から強い匂いとして感じられるのだ。しかしその能力をもってしても、犯人を捕らえられないまま時効を迎えた事件がひとつあり、香西にとって唯一の心残りとなっていたのだった。そんなある日、香西は夫が行方不明になったと訴える女性に遭遇。定年前の最後の仕事とばかりに、香西はその行方不明者・橋爪について調べることに。彼が最後に目撃されたのは、営業先である日本循環環境ラボラトリ。ここの地下には水を使って生ごみを分解処理する施設があるのだという。その内容に興味を持った香西は、研究員の真崎に招かれ、彼の研究室へと向かう。するとそこで香西は強烈な〈死〉の匂いに気付かされる。処理場では人すらも溶かすことが可能だということを聞いた香西は、真崎が橋爪を殺したのではと推測するが、自身の能力以外にその犯罪を立証する証拠が見つからず……。

定年間近の刑事と、謎めいた青年研究者との攻防を描くサスペンス長編。

橋爪という行方不明者の事件、そして香西の負い目となっている未解決事件のふたつが軸となり、絡み合っていくという展開の本作。後者は約10年前に起きた幼女誘拐殺人事件で、香西は容疑者と目されていた大学生・堂島の自宅で、死の「匂い」を確かにかぎ取っていた。しかし懸命の捜査もむなしく、十分な証拠が見つからなかったうえ、堂島の父親が警察上層部の有力者だったため、堂島が容疑者候補から外されたまま事件は時効を迎えてしまっていたのだ。橋爪を殺したのが真崎ではないか、と捜査を進めていた香西のもとに、今度は過去の事件のもうひとりの被害者と名乗る女性から連絡があったことで、こちらの事件も大きく動き出すことになる。そして香西は、刑事として――というよりは人としての「一線」を超えてしまうのだ。

人を殺しているはずなのに顔色ひとつ変えず、香西の追及にも動じないどころか罠を仕掛けさえする真崎。その平然とした態度や振る舞いを見ていると「ああ、タイトルの怪物とは彼のことか」と香西でなくとも感じざるをえない。しかし物語が進むにつれ「怪物」が指し示すものは揺らいでいく。いったい誰が正しいのか――いや、「正しい」とはそもそも何なのか。そんな問いすらも「怪物」はあっという間に壊してしまう。だから物語のラスト、香西が見た真崎の微笑みはとても美しいのだろうなと、ついそんなふうに思ってしまった。

空に咲く恋
福田 和代
文藝春秋
2017-07-07

なまじ顔がいいせいで幼い頃から女子たちの人気が高かったが、いつの間にか女性アレルギーに罹り、家族や高齢者を除く女性たちに近づくことができなくなった三輪由紀。加えて、家業である花火師を継ぐことに抵抗があり、かといってアレルギーのせいで一般企業に就職することも難しいという現状に行き詰ってしまった由紀はとっさに家出し、自転車に乗って新潟県にたどり着く。山古志村のとある無人の民家に管理がてら住まわせてもらい、大家やその近所の人々の手伝いをして暮らす日々を続けていた由紀がひょんなことから出会ったのが、花火師を目指すボーイッシュな女性・清倉ぼたんだった。なぜかぼたんに対してはアレルギーが出ないことも手伝って、何かと声をかけてくれる彼女との距離を縮めていく由紀。そんな矢先、彼女に誘われて観に行った花火大会で、由紀は改めて花火の美しさに気付く。自分も花火を作りたいという思いを抱き始めた由紀は、ついに実家へ連絡を入れるが、もちろん父親はカンカン。さらにぼたんに対しての恋心を自覚した由紀だったが、それと時同じくして、なぜか彼女に対してもアレルギー症状が出るようになってしまい……。

「別冊文藝春秋」に2016〜2017年にかけて掲載されていた、花火師志望の青年が夢と恋に向かって奮闘する姿を描く青春小説。

幼い頃から女子たちの裏の顔を見過ぎたせいなのか、女性に触れられると呼吸困難やら金縛りやら、とにかくとんでもない体調不良に悩まされるということで、なんというかイケメンの持ち腐れすぎる主人公の由紀。しかもそのせいもあってか自己評価も低く後ろ向きで、まさに「ヘタレ」としか言いようのない性格。しかしぼたんと出会い、花火と再度向き合うことで、少しずつやる気を出すようになってくる。父親が廃業するかもとか、恋のライバルが現れたからとかのハプニングが立て続けに起き、そのたびに一念発起するところを見ると、追い詰められると本領を発揮するタイプなのかもしれない。いずれも遅きに失するということがなかったのでまあよかったが……。個人的には由紀とぼたんの恋路以上に、由紀の有能かつ暴君すぎる姉・京と、由紀のライバルでもある実力派若手花火師・児島の存在感が半端ないので、ふたりのスピンオフとかあればぜひ読んでみたい(笑)。

星星の火 (双葉文庫)
福田 和代
双葉社
2017-08-05

警視庁保安課の上月千里は、警視庁通訳センターに所属する同僚・城正臣を伴い、中国人が経営している池袋の違法パチンコ店の摘発へ向かう。逮捕されたオーナーの李は拳銃を所持していたため、ふたりはその出所とされる梁という中国人の行方を追うことに。一方その頃、城のもとに、別居中の妻・凛子が戻ってくる。なんでも彼女が勤めている美容院に立ち退きを迫る嫌がらせが続いており、店唯一の女性美容師である凛子はストーキングまがいのこともされているというのだ。凛子の頼みを断りきれない城は、並行してそちらの案件の調査も始めるが、そこにも複数の中国人の影が。知り合いの中国人たちによるネットワークに頼りながら両方の捜査を進める中で、城は「竜生九子」なる中国人組織の存在を知り……。

警視庁所属の警官&通訳捜査官のコンビと在日中国人犯罪者たちとの攻防を、彼らの独自のネットワークを織り込みながら描く警察小説。

通訳業務を専門とする警察組織「通訳センター」というものについては本作で初めて知ったのだが、この物語主人公コンビのうち、城はその通訳センターに所属する捜査官。中国語が堪能で、中国人社会にも独自のネットワークを持ち、在日中国人の関わる捜査に携わる際は、それを駆使して犯人を追うというのだからなんともカッコいい。しかしその実態は、美人過ぎる美容師の妻・凛子に逃げられ、男手ひとつで幼い娘を育てることに専念するあまり、自身の見た目は適当すぎる(ってこれは元かららしいが)人物という、そのギャップがなんとなく微笑ましい。そしてそんな彼の相棒役、あるいはブレーキ役ともなるのが、保安課に所属する上月。こちらは絵に描いたようなまっすぐで真っ当で、正義感に溢れたベテラン警官。ともすれば中国人たちに肩入れしがちな城の暴走を止め、堅実に捜査を進めつつも、適切な判断でもって城の独断専行を許容することもあるという、まさに理想の上司といった感じの人物。この組み合わせだけでも読んでいて楽しい。

また、対比されるのはこのふたりだけではない。ふたりとも既婚者であるが、上月の妻・朝子は古き良き警官の妻といった感じで、夫の仕事に理解があり、それを完璧に支える良妻タイプ。一方、城の妻・凛子は絶世の美女で、しかし自由奔放で娘を城のもとに残して家を出て、美容師としてのスキルを磨き続ける女性。そんな凛子の振る舞いを朝子はよく思っていないが、凛子の方はどこ吹く風。そして夫である城もまた、戻ってきてほしいとは思いつつも、自身の仕事にプライドと熱意を持ち、夢のために邁進する彼女を応援したい気持ちもあるという。そんな2組の夫婦関係についてもなかなか興味深かったりする。

そんなふたりが目の当たりにするのは、在日中国人による犯罪と、日本人のそれとはかけ離れた彼らの民族性。彼らの強固な一族意識がふたりの捜査を妨げることにもなるが、それらをかいくぐって真実にたどり着く彼らの手腕には「お見事!」のひとこと。ドライなようでいて、わりと人情に厚かったりもするふたりの活躍をもっと見てみたい。


空自の音楽隊では、年に1度の競技会が行われる。外部からも審査員を招き、演奏技術の向上を磨くことが主な目的である。今回は木管楽器と打楽器の競技会が開催され、サックス担当の佳音だけでなく、パーカッション担当の真弓も参加していた。しかし直前からガチガチに緊張していた真弓は、ステージでも派手に転び、その後の演奏もさんざん。さらに戻ってきた真弓は、佳音たちにある相談をする。それは審査員のひとりが偽者ではないかという疑惑だった。一方、転属先の沖縄から、競技会参加のために立川に戻ってきていた渡会。彼は佳音に勝負を挑み、この競技会で自分が勝ったら、話があるから聞いてほしい、と宣言する。「話」の内容に心当たりがなく、首を傾げる佳音だったが、自分の出番の直前に、渡会が佳音に告白するつもりだと話しているのを聞いてしまい……。(「サクソフォン協奏曲」)

「小説宝石」に2016年に発表された4作を含む、航空自衛隊の音楽隊を舞台にしたライトミステリ連作集、第3弾。

今巻ではついに佳音と渡会の関係に決着が!ということで、冒頭のエピソード「サクソフォン協奏曲」で告白されてから、4件の事件・エピソードを通じ、佳音が答えを出すまでが描かれてゆく。ちなみに告白してきたのは渡会だけではなく、明るく爽やかな後輩の松尾までも便乗告白してきたものだからさあ大変。しかも周囲がやきもきする中、佳音の鈍感力は最後の最後まで炸裂。これまで色恋沙汰に縁がなかったうえ、渡会とは長年の付き合いで気心が知れすぎているせいで、逆に「好き」とか「付き合う」ということの意味が分からず、また渡会との関係にそれらをあてはめることが全くできないという、重症を通り越してどこから手をつけていいのかわからない状態に陥ってしまうのだ。

そんな佳音の戸惑いをよそに、今回も奇妙な事件が連発。真弓が出会った音楽家の秘密、とある漫画家に付きまとう「守ってくれるストーカー」の正体、演奏会のために向かった旅館での幽霊騒ぎ、そして最後は沖縄基地での佳音ストーカー疑惑。これらを佳音や美樹、狩野夫人といった音楽隊の面々が解決してゆくのだが、その中でやはり佳音が意識するのは渡会と松尾の存在。幽霊騒ぎのエピソードで松尾との距離が縮まりかけたかと思いきや、沖縄でのストーカー事件で佳音が気付かされたのは、自分にとって渡会の存在がどれほど大きいかということ。オチには驚かされたが(まさかの展開・笑)、落ち着くところに落ち着いてくれてひと安心といったところ。できれば両想いになったふたりのその後も見てみたいと思った。


◇前巻→「群青のカノン 航空自衛隊航空中央音楽隊ノート2」


14年前、MIT留学中にFBIのシステムに侵入し逮捕された天才ハッカー「プロメテウス」こと能條良明。3年の服役を終えて帰国してからは、在宅でプログラミングの仕事を請け負い、細々と食いつなぐ日々を送っていた。そんなある日、能條は謎の男から、パスポートのICチップ解析を依頼される。その作業自体は能條にとって簡単なものだったが、やがて能條は男の目的がそのチップの偽造であることに気付く。1週間後、男にパスポートを返し解析不可能だったと告げた能條だったが、男は能條の真意に気付いており、彼を脅迫。再び逮捕されることを恐れた能條は、留学時代の知人である「パンドラ」を日本に呼び寄せ、男を逆に罠にかける準備を始め……。(「プロメテウス・トラップ」)

天才ハッカー「プロメテウス」こと能條良明が、FBIの捜査官となった天才オタク青年「パンドラ」ことポール・ラドクリフと共に、米国で暗躍するサイバーテロ組織と対決してゆくサイバーミステリ連作集。

きっかけは謎の男から受けたパスポート偽造依頼。その件で渡米させられた能條は、再会したパンドラにまんまとハメられ、とある会社のシステムを踏み台にしているハッカー探し、ひいてはそのハッカーが所属しているサイバーテロ組織のあぶり出しに協力させられる羽目に。しばらく会わないうちにすっかり日本のアニメオタクと化していた、どこか子供っぽい(実際に大学を飛び級で卒業した天才なので、能條よりは年下)パンドラと、服役の後悔に由来する慎重さでもってパンドラをたしなめつつも、サイバー戦ではその技術を遺憾なく発揮する能條のコンビの微妙な温度差がなんともいい。

テロ組織にさらわれた少年を助けたり、かと思えば逆に拉致されたパンドラを能條が救いに行ったりと息もつかせぬ展開が続くうち、能條はパンドラが彼をアメリカに呼び寄せた本当の目的、そして敵だと思っていたサイバーテロ組織の真意とそのトップの正体を知ることに。これまで信じてきたものが崩れてゆく中、能條が下した決断は英断なのかもしれないし、あるいは悪手なのかもしれない。その善悪は後の歴史が決めること、というのは確かにそうかもしれないが、それでも能條にはパンドラという相棒がいる。そんな絆が垣間見えた結末がとても印象に残った。

広域警察 極秘捜査班 BUG
福田 和代
新潮社
2016-11-22

航空機の管制システムに侵入し、560人が乗った飛行機を墜落させたとして逮捕、死刑囚となった水城陸。身に覚えのない陸は無実を主張するもいっさい認められず、さらに父親は事件の3日後に自殺してしまう。それから10年、その優秀さに目を付けた企業からの依頼を刑務所内でこなしつつ、刑の執行を待つ身となっていた陸の前に現れたのは、環太平洋連合の警察組織である「広域警察」の蛯名だった。かくして広域警察との取引により、「水城陸」は死刑執行されたこととなり、陸は「沖田シュウ」という名前で広域警察の内部に極秘で設置された諜報セクション〈BUG〉の一員となったのだった。そんな陸がこのたび請け負うことになったのは、ブティア博士という数学者の監視。彼は10年前の航空機事故で死んだとされていたが、実は生きており、とあるマンションの一室に潜伏しているというのだ。殺人容疑がかけられているとのことだが、詳細は教えられぬまま、まずは博士の部屋探しから始めることに。そんな中、博士が住んでいるマンションの名義が「水城晋也」――つまり自殺した陸の父親のものであることがわかり……。

2014〜2016年に「yom yom」にて連載されたサスペンス長編。自身に着せられた冤罪を晴らすため、警察組織に立ち向かっていく青年の姿が描かれてゆく。

10年前に死んだはずの人物の追跡から始まり、闇に葬られていた真実が次々と明かされてゆく。陸が表向きは「沖田」として任務を遂行しつつ、警察の監視をかいくぐり外部との通信手段を得、ブティア博士やその協力者と接触し、何度かバレそうになりながらも黒幕を追い詰めてゆく展開は、まさに「手に汗握る」といったところ。ただ、今巻では黒幕を追い詰めはしたものの、まだ陸の冤罪が完全に晴れたわけではないし(そもそも「水城陸」は死刑執行されたことになっているし……)、合間に挿入されていた、ブティア博士が関わっていた仮想通貨の発行云々についても微妙なところで終わっているので、続編が予定されているのだろうか? 個人的にはこれらの問題に加え、〈BUG〉の仲間――特にモデル系美女・マリーの素性なども気になるので、ぜひ続編希望ということで。

バー・スクウェアの矜持 (創元推理文庫)
福田 和代
東京創元社
2016-04-21

大阪府警薬物対策課に所属するベテラン刑事・三田は、最近起きている事件の裏に、彼が通っているバー「スクウェア」のバーテンダー・リュウとその相棒でもある元ボクサー・宇多島の影が見え隠れしていることに懸念を抱いていた。ふたりがなぜ、薬物を取り扱っている暴力団に自ら対抗しようとしているのか――その鍵はリュウの過去にあった。「名無しのリュウ」と自ら嘯く彼に一体何があったのか、三田は事件捜査のかたわら、密かにリュウの素性を調査するが、三田の同僚たちも「スクウェア」とリュウたちの存在に気付き始めていて……。

癖のありすぎる男たちが、薬物事件をめぐり水面下で駆け引きを繰り広げる連作ミステリシリーズ第2巻。

謎だらけ……というよりは何も分からなかったリュウの素性がようやく明かされ、彼が何のために危ない橋を渡り続けていたのかが判明する今巻。明らかになった彼の過去は思いのほか壮絶で、だから宇多島と共に危険も顧みず暴力団に立ち向かっていくのも無理からぬ話とも言える。しかしだからといってそれを実行に移し、刑事である三田を出し抜き続けたリュウには、やはり底知れない部分がある。三田はそれを若さゆえの自信と考えていたようだが、実際のところはそれだけではないような気がする。

この結末を見ていると、どう見てもやさぐれ中年な三田の方が、リュウたちよりもよっぽど素直で正義感にあふれているのだと感じられる(それは刑事だから当たり前かもしれないが)。そして同時に、それゆえに三田はその正義感によってがんじがらめになっているのかもしれない。正義というまっすぐな考えを捨て、利を取って動くリュウたちの姿はかっこいいとは思うが、同時に危なっかしい。その点に関しては三田の言う「若さ」によるものなのだと思う。だが三田も結局、そんな彼らにどうしようもなく惹かれてしまっているのだろう、とも。作者はあとがきで「いったん完結」「(続編を希望する声もあるが、これについては)三田やリュウたちが決めることだ」と書いているが、私も三田やリュウたちのその後をもっと見てみたい。


◇前巻→「バー・スクウェアの邂逅」

このページのトップヘ