2020年7月、オリンピック開催を間近に控える東京で、宅配便の中に青酸カリを発生させる装置が混入されるという事件が発生。その犯人として浮上したのは、トラックの長距離トラックドライバーである浜口義三だった。同じドライバーとして浜口と仲良くしていた世良隆司は、事件の直前に浜口と会い、今度飲みに行く約束をしていただけにショックを隠せない。世良はドライバー仲間である本郷恵津美と共に、行方をくらました浜口の足取りを追うことに。しかしようやく浜口を見つけ、自首させたのも束の間、同じ手口の事件がまたしても発生。他にも線路での土砂崩れや高速道路での火災といった事故が相次ぎ、日に日に都内のスーパーやコンビニから食料品が消えてゆくのだった……。
2018〜2019年にかけて雑誌「ミステリーズ!」にて連載されていた長編小説。東京オリンピックを目前に控えた東京で、物流網を狙ったテロが発生するというサスペンス作品となっている。
ひとくちに「物流」と言っても、改めて考えるとその内容は様々。主人公の世良は商品を拠点から拠点へと運ぶ長距離ドライバーだが、宅配便を運ぶのも、ごみを運搬するのも、すべて「物を運ぶ」という点では同じ。本作ではそういった物流網を寸断させるというテロが発生。そのため、現実世界でもしばしば見られる「買い占め」が起きてますます品薄が深刻化したり、ごみが片付けられず街が荒れ、あるいは仕事ができないといった影響も。特に東京は様々な物が周囲から――日本全国、あるいは世界中から――集まってくる場所だけに、これを押さえられると生活がままならないのだという現実がリアルに迫ってくる。しかも時期が時期だけになおさら。
そんな事態の中心に最も近い場所にいたのが、一介の長距離ドライバーである主人公の世良。やがて世良は、警察官でオリンピック総合対策本部の警備担当を務める弟の梶田と連携を取りながら、はからずも事件の真相を追うことになる。ドライバーの中では比較的若いとはいえ、大変な仕事であるにも関わらず、彼が高校卒業後すぐにドライバーになった理由、そして今もこの仕事に誇りを持っている様子が見て取れるのがなんとも素晴らしいし、本作で描かれた事件からは、「物流」というシステムについて考えさせられる点がたくさんある。現実ではオリンピックは延期になったがそれはそれとして、まさに今、広く読まれてほしい作品だと思った。















