軽井沢での事件を解決した直後、悠貴は美久に対し、一方的に「エメラルドの探偵」としての解雇を告げ、そのまま姿を消す。喫茶エメラルドにももちろん現れないし、真紘も何か知ってはいるようだが、時ヶ瀬家に戻ったということ以外、美久に対しては何も語ろうとはしなかった。理由を知りたい美久は慧星学園に乗り込んで問いただそうとするが、悠貴はすげなく美久を追い返そうとする。そんなタイミングで現れた百々花は、「エメラルドの探偵」への依頼を持ち出してくる。無視を決め込む悠貴に憤慨し、美久は自分が依頼を受けると宣言。さらに、この依頼を解決出来たら、真実を語るよう悠貴に約束させるが……。
悠貴の突然の変節に衝撃を隠せないシリーズ11巻。クライマックス直前ということで、今巻では悠貴にまつわるいくつかの謎が解けつつも、ここにきて最大の謎が現れるという展開に。
前半は百々花が持ち込んできた、他校で起きたタイムカプセル紛失事件の謎を、美久が単独で解くという展開に。悠貴の心変わりに動揺しつつも、なんとかこの事件の解決を糸口にその真意に迫ろうとする美久。しかし事件は解決したものの、その終盤で現れた悠貴の態度は冷酷極まりないもの。美久のことを徹底的に拒絶し、どんな言葉も届かない状態となってしまった悠貴に、美久は絶望を隠せない。しかしそのタイミングで現れたのは聖。彼のおかげで、美久は「悠貴」という最大の謎に挑むことになるのだ。
これまで悠貴の助手として活躍してきた美久だったが、今度は聖を助手に従え、最大の謎に立ち向かう様はなんとも頼もしい。聖だけでなく、過去の依頼人も言っていたのが、「エメラルドの探偵」は悠貴と美久のふたりを指すのだということ。自分を見失っているとしか思えない今の悠貴が、以前の「エメラルドの探偵」に戻るには、美久の存在が不可欠。以前、悠貴に電話をかけてきた「稀早」の正体も判明し、不安要素はどんどん増えていくが、けれど美久ならきっとなんとかしてくれると、そう信じたい。
◇前巻→「オーダーは探偵に 謎解きいざなう舶来の招待状」