小学3年生の重田ミドリは、両親の別居に伴い、父親の広と共に、カメラマンの源三の家に居候している。転入したばかりの小学校では、女子グループのリーダー的存在・しいねにそれとなく牽制され、時にはイジメのような対応をされているミドリだが、広と源三と暮らす日々はそれなりに楽しんでいた。けれど3人を取り巻く環境は日々変化していく――母親・貴美子との関係、進まない離婚話、そして広と源三の「関係」……。
「おとな」に近付きつつある「こども」ミドリと、その周囲の人々の関係から、「普通」とはなにか、「家族」とは何かを問いかける連作集。
両親が離婚寸前であること、その理由が源三であること――その事実を目の当たりにしつつあるミドリ。兄のような存在である源三がゲイであり、そんな源三に広が一目惚れしてしまった、そのことが重田家をばらばらに引き裂いていく。貴美子と広がそれぞれメインに据えられているエピソードを読むと、このふたりの夫婦関係もどこかいびつなものがあり、源三の登場によってふたりは否が応でもそれを直視せざるを得なくなる。当人たちはそれでもいいだろう。しかしミドリはどうなるのか――どうしたらいいのか。
「家族」というのは父親と母親、そしてその子どもで成立するもの――という価値観は旧弊である、と言い切れる世の中であればだれも苦労はしないのだが、あいにくそうではないため、ミドリたちは本人たちが望まないのに、周囲のせいでその苦しみを背負わされることになる。特にミドリはそういった価値観を身につけている途上にあるがゆえに、その「状態」に名前を付け、きちんと受け入れるための心の準備でできていないうちに、無理やり直視せざるを得なくなってしまうのだ。物語のラストで、ミドリが今後どうなるのかは明示されていない。けれど男たちはミドリを受けとめることを決めた。それにミドリが応じるかどうか、そしてどちらにしても彼女が幸せになれるのかどうか、それは誰にも分からない。どちらを選んだにしても後悔するかもしれない。けれどそんなどうしようもない世界を生きることこそが、ひとつの「答え」なのかもしれない。






