2006年12月
2006年12月31日
2006年12月24日
逆襲のメイド喫茶
登場人物
・フィル:中の人などいないっ。
・後輩A:第二回メイド喫茶来訪の旅に参戦した後輩。今回のスポンサー。
・後輩B:メイド喫茶の常連にクラスチェンジしていた。
それは、酒の席で降って沸いた出来事だった。
後輩A「フィルさん、クリスマスは暇ですか?」
聞くまでもない。
というか、先日クリスマス中止のお知らせを受けていたので冷静にクリスマスなどない、都市伝説だよ、と優しく諭すわけだ。
後輩A「じゃあ、Bさんにメイド喫茶に連れて行かれそうなんで道連れにさせてください」
Yes
→No
何が楽しくてそんな日にいかなーならんのか。
きっぱりとフィルはきっぱり断った。
後輩A「じゃあ、今回は俺がおごりますんで来てくれません?」
→Yes
No
いや、無料なら行くよ。後輩Bが豹変するらしいから。
と、その場のノリで言ってはみたもののいざとなると怖いもので手が震えます。
当日。
入り口で躊躇するわしを尻目に後輩Bは平然と我が家に帰るかのごとく堂々とメイド喫茶へ。
後輩Aに促され、なんとか入店。
ドアを開けるとサンタさんがお出迎え。
「いらっしゃいませー」
そ、そうだよな、メイドじゃないからお帰りなさいませじゃないもんな。
どうでもいいことに感心しつつ席をご案内。
・・・前(9月30日)と同じ席か・・・。
着席すると常連さんらしき人がカラオケを始める。
なかなかうまかったので拍手すると、後輩Aから「ノリノリっスネ」と、お褒めの言葉をいただく。
そんなこんなで注文Time!
「キープしてたボトルっ」
「梅酒ロック」
「車なんでウーロン茶」
しばらくは後輩Bを観察する。
彼は普段はなかなか切れ味のあるピニーさん風味の荒れ球直球派なのだが、デフォルトで頬が緩む。指摘すると一瞬元の感じに戻るのだがすぐににやけ顔になる。
そんな感じで後輩AとしばらくBをいじって楽しんでいたのだが、Bの華麗なる反撃が始まる。
B「Aさん、百式行って見ませんか?」
A「百式?ユリア?」
B「いや、カクテルなんですけど。客殺しって言われてます」
A「ほう?」
微妙に断っているものの、Bのごり押しで客殺しと呼ばれる百式が注がれる。
(色が金色なので百式だそうです)
注文すると、サンタもどきが一瞬「いいんですか?」という表情になったが、常連であるBの注文だったためそのまま持ってくる。
Aは「結構きついな、けどこれなら3杯はイケル」
と強気な発言。
この間のBGMは前回とは雲泥の差で結構うまいカラオケ。
が、そんな平穏はすぐに打ち破られることになる。
サンタもどき「0時からメイドのショーを行うので以後カラオケは出来ませーん」
なんだよ、ショーって・・・Aと目が会い、必死で笑いをこらえる。
くっだらない手品でもやってのけるのか、などと予想していたのだが、全然甘かった。
サンタもどきさんから一言+カラオケ(しかもヘタクソ)。
シャンパンタワー。
・・・このやるせなさにもだえた時蘇る友人の声。
(あー、あれだ。友達の高校とかの文化祭に行ったらそいつのクラスの出し物がメイド喫茶だったと思うと丁度いいぞ)
文化祭と思えばましか。
まあヘタクソなのも歌の上手さに価値があるわけじゃなし。
超好意的に見ればこの場所でのキャラクター性を最大限活かすチョイスをしたのだろう。
そう考えると歌の前の一言で「24日にメイド喫茶に来るなんて哀れな奴らだな、ヒャッホー」みたいな発言をしてた娘もまあそういうキャラなのか、と頑張って思えるんじゃないかなーなどと思ってみたりするわけで。
けどまあ薄々、24日にメイド喫茶はありえねーよなぁ、と気付いてはいたもののそれを抑え込んで来てる身にはそれなりに痛いセリフなわけで。
そんな感情とは別に戦場はすでに動いていた。
後輩Aの「メイド長って響きは好きだなー」という発言を耳にしたこのメイド喫茶のメイド長好きのBが「新参者がいい気になるな!」とばかりに計略を発動させる!
B「Aさん。さっきの百式まだいけるって言ってましたよね。もういっぱい行きましょうか。すいませーん、百式さっきより濃い目で」
Aの返事を聞かずにすかさず注文。
注文すると、サンタもどきが一瞬「ほんとにいいんですか?」という表情になったが、常連であるBの注文だったためそのまま持ってくる。
わしは運転もあるし日付が日付なので検問とかあるといやなのでウーロン茶を飲んでいたわけだが、さっきの百式はそれよりはるかに薄い、きれいな金色だったのが、ウーロン茶より毒々しい黄色というか黄土色っぽい飲み物がAの前に置かれた。
Aは仕様がなく飲んだわけだが。
それからのAは面白かった。
知り合いが見ている関係で詳しくは書けないが今まであまり聞けなかった恋愛観等を聞けた。
BはBでメイドが来るたびに褒める姿勢は成長したなぁと簡単しきりで面白かった。
結局Aが数を数えられなくなりかけたので退店することにしたわけだが・・・。
今回もメイド喫茶の何が面白いのか分からなかった。
次の機会はないと信じている。
続きを読む
・フィル:中の人などいないっ。
・後輩A:第二回メイド喫茶来訪の旅に参戦した後輩。今回のスポンサー。
・後輩B:メイド喫茶の常連にクラスチェンジしていた。
それは、酒の席で降って沸いた出来事だった。
後輩A「フィルさん、クリスマスは暇ですか?」
聞くまでもない。
というか、先日クリスマス中止のお知らせを受けていたので冷静にクリスマスなどない、都市伝説だよ、と優しく諭すわけだ。
後輩A「じゃあ、Bさんにメイド喫茶に連れて行かれそうなんで道連れにさせてください」
Yes
→No
何が楽しくてそんな日にいかなーならんのか。
きっぱりとフィルはきっぱり断った。
後輩A「じゃあ、今回は俺がおごりますんで来てくれません?」
→Yes
No
いや、無料なら行くよ。後輩Bが豹変するらしいから。
と、その場のノリで言ってはみたもののいざとなると怖いもので手が震えます。
当日。
入り口で躊躇するわしを尻目に後輩Bは平然と我が家に帰るかのごとく堂々とメイド喫茶へ。
後輩Aに促され、なんとか入店。
ドアを開けるとサンタさんがお出迎え。
「いらっしゃいませー」
そ、そうだよな、メイドじゃないからお帰りなさいませじゃないもんな。
どうでもいいことに感心しつつ席をご案内。
・・・前(9月30日)と同じ席か・・・。
着席すると常連さんらしき人がカラオケを始める。
なかなかうまかったので拍手すると、後輩Aから「ノリノリっスネ」と、お褒めの言葉をいただく。
そんなこんなで注文Time!
「キープしてたボトルっ」
「梅酒ロック」
「車なんでウーロン茶」
しばらくは後輩Bを観察する。
彼は普段はなかなか切れ味のあるピニーさん風味の荒れ球直球派なのだが、デフォルトで頬が緩む。指摘すると一瞬元の感じに戻るのだがすぐににやけ顔になる。
そんな感じで後輩AとしばらくBをいじって楽しんでいたのだが、Bの華麗なる反撃が始まる。
B「Aさん、百式行って見ませんか?」
A「百式?ユリア?」
B「いや、カクテルなんですけど。客殺しって言われてます」
A「ほう?」
微妙に断っているものの、Bのごり押しで客殺しと呼ばれる百式が注がれる。
(色が金色なので百式だそうです)
注文すると、サンタもどきが一瞬「いいんですか?」という表情になったが、常連であるBの注文だったためそのまま持ってくる。
Aは「結構きついな、けどこれなら3杯はイケル」
と強気な発言。
この間のBGMは前回とは雲泥の差で結構うまいカラオケ。
が、そんな平穏はすぐに打ち破られることになる。
サンタもどき「0時からメイドのショーを行うので以後カラオケは出来ませーん」
なんだよ、ショーって・・・Aと目が会い、必死で笑いをこらえる。
くっだらない手品でもやってのけるのか、などと予想していたのだが、全然甘かった。
サンタもどきさんから一言+カラオケ(しかもヘタクソ)。
シャンパンタワー。
・・・このやるせなさにもだえた時蘇る友人の声。
(あー、あれだ。友達の高校とかの文化祭に行ったらそいつのクラスの出し物がメイド喫茶だったと思うと丁度いいぞ)
文化祭と思えばましか。
まあヘタクソなのも歌の上手さに価値があるわけじゃなし。
超好意的に見ればこの場所でのキャラクター性を最大限活かすチョイスをしたのだろう。
そう考えると歌の前の一言で「24日にメイド喫茶に来るなんて哀れな奴らだな、ヒャッホー」みたいな発言をしてた娘もまあそういうキャラなのか、と頑張って思えるんじゃないかなーなどと思ってみたりするわけで。
けどまあ薄々、24日にメイド喫茶はありえねーよなぁ、と気付いてはいたもののそれを抑え込んで来てる身にはそれなりに痛いセリフなわけで。
そんな感情とは別に戦場はすでに動いていた。
後輩Aの「メイド長って響きは好きだなー」という発言を耳にしたこのメイド喫茶のメイド長好きのBが「新参者がいい気になるな!」とばかりに計略を発動させる!
B「Aさん。さっきの百式まだいけるって言ってましたよね。もういっぱい行きましょうか。すいませーん、百式さっきより濃い目で」
Aの返事を聞かずにすかさず注文。
注文すると、サンタもどきが一瞬「ほんとにいいんですか?」という表情になったが、常連であるBの注文だったためそのまま持ってくる。
わしは運転もあるし日付が日付なので検問とかあるといやなのでウーロン茶を飲んでいたわけだが、さっきの百式はそれよりはるかに薄い、きれいな金色だったのが、ウーロン茶より毒々しい黄色というか黄土色っぽい飲み物がAの前に置かれた。
Aは仕様がなく飲んだわけだが。
それからのAは面白かった。
知り合いが見ている関係で詳しくは書けないが今まであまり聞けなかった恋愛観等を聞けた。
BはBでメイドが来るたびに褒める姿勢は成長したなぁと簡単しきりで面白かった。
結局Aが数を数えられなくなりかけたので退店することにしたわけだが・・・。
今回もメイド喫茶の何が面白いのか分からなかった。
次の機会はないと信じている。
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2006年12月06日
ウサギ狩り
いまさらですが、新しい町にいってきますた。
で、どうせだからクエストでも受けてこようかなぁと思ったわけですよ。
とりあえず情報サイトでパパパッと調べてNPCに会いに行きますた。
幼女
「竜王様が病気でかわいそうだからスノーピカの肝を20個持ってきて」
おうおう、まかしときな。
スノーピカの肝20個ね、ふむふむ。
・・・肝!?
このとき、僕はスノーピカを漠然と大型の醜悪なモンスターと思っていたわけです・・・。
続きを読む
で、どうせだからクエストでも受けてこようかなぁと思ったわけですよ。
とりあえず情報サイトでパパパッと調べてNPCに会いに行きますた。
幼女
「竜王様が病気でかわいそうだからスノーピカの肝を20個持ってきて」
おうおう、まかしときな。
スノーピカの肝20個ね、ふむふむ。
・・・肝!?
このとき、僕はスノーピカを漠然と大型の醜悪なモンスターと思っていたわけです・・・。
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2006年12月01日
満員電車
がたんごとん。
眠気を誘うリズムが刻まれる。
家まで約一時間の眠気との戦い。
中学生の頃読んでいた、いわゆるジュニア小説の続編(最終巻)で何とかしのごうと思っていたわけだけれど、どうやら帰宅ラッシュに巻き込まれたらしい。
一駅は何とか読書モードには入れたものの、次の駅で人波に飲まれて泣く泣く断念。
こうなってくると人間観察という名の暇つぶしくらいしかすることがなくなるわけで。
まず前方にはカップルを挟んで扉。右側もカップル。あれ、帰宅ラッシュじゃなかったっけ。後方にはOLさん。左側にサラリーマンらしきおっさん。
前方のカップルは上手いこと彼女のほうを扉に寄せて彼氏が見事に他人からの接触を断つナイスポジショニング。と、感心するも束の間、右手のカップルは満員電車に乗りなれてないのか、彼女のほうがこっち向き。
微妙にやな予感がしたので痴漢冤罪対策に手を他人に見える位置まで上げる。
がたんごとん。
妙な体勢になっているのを自覚しつつ、どうにも出来ないのであきらめつつ耳を澄ます。
本を取り出す時、かばんのチャックを閉め忘れたのに気付き、中身をぶちまけないように祈りつつ。
周囲の状況は、想像通り右手のカップルはラッシュ経験が少ないようで「ありえねー」を連発。それを前方のカップルが聞きながらくすくす笑うといった平和な車内。OLさんもカタカタと携帯メールにいそしんでおり、おっさんは夢の大海原に大航海中。
その中に混じって他人事で周りを見ている自分はなんであるか、という問いを発してみるとちょっと哲学的だなぁと思う僕。
車内は奇妙で完全なヒトカケラになって走る。
がたんがたん。
電車が大きなカーブを曲がる。
そして、僕は、奇妙で完全なヒトカケラが、いかに危ういバランスの上に成り立っていたかを知った。
まるで、これらを支えていた見えない何かが抜け落ちたように。
それは、起こった。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ」
声にならない叫び。
電車が曲がった瞬間、腰の稼動域の限界付近に到達したのだろう。
腰がその体勢を維持することが不可能だと、主張したのだ。
痛い。
とにかく今の体勢はヤバイ。
感覚的に痛みがなさそうな方向に、体をひねる。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ」
逆だ。この方向はもっとヤバイ。
四苦八苦しつつ体勢を戻すと、ようやく周囲の状況も見えてきた。
前方のカップルは彼氏の防波堤が、崩れていた。
曲がった際に人波が人津波になったのだろうか。
彼女さんは座り込んで、彼氏さんは扉にかなり必死の形相で手を突き盾となるべく復活しようと踏ん張っている。彼女のすすり泣く声が聞こえなくもないが、彼氏の盾で何とかなるかなぁと思われる。
右手のカップルは危険な感じになってきた。
「こんなんだったら一本遅らせればよかった、気が利かない」
ということらしい。
また、彼女のほうは安定しないらしくカツカツとヒールが鳴る。
安定しねーなら彼氏に捕まるくらいの知恵を働かせろよと思った刹那のことだった。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ」
彼女のヒールが僕の足の甲にクリティカルヒットした。
「あ、すいません」
・・・謝られたら、まさかもうだめですとはいえない。
釈然としないまま、ぼそぼそと大丈夫である旨を伝える。
乗り換える駅までに二、三度は踏まれることを覚悟した。
ふと、後ろのOLに目を向けると、一瞬目があった。
何か、いやそうな目だ。
念のため手は上にあるとアピールするが、視線は変わらない。
よくよく考えてみると、こっちを見てたんじゃなくて・・・なんか、助けを求めてるようで・・・もしかして隣のおっさんか!
かなり嫌がっていた節が見えていたところを考えると・・・おっさん痴漢!?
現場を取り押さえなきゃいけないんだよな、おっさんめ、なんてことを!
早合点があってはいかんと気を取り直して、おっさんの状況を確認してみる。
・・・僕の左肩におっさんの頭が乗っていた。
軽く肩をかち上げると煌くヨダレ。
うえええぇぇっと思い、強めに肩をかち上げて起こしてやる。
おっさんは一瞬わけが分からない風だったが、とりあえずOLさんに謝ってヨダレを拭いてくれた。
がたん。
ようやく駅に着いた。
人波に乗って、居心地の良かった塊から抜け出す。
結局いい事したような気がするけど感謝はされてない。けど、そーゆーのがなんかいいことしたよなぁ。
そんなこんなで、一日終わったなぁと実感する。
明日はいい日になるといいなぁ。
続きを読む
眠気を誘うリズムが刻まれる。
家まで約一時間の眠気との戦い。
中学生の頃読んでいた、いわゆるジュニア小説の続編(最終巻)で何とかしのごうと思っていたわけだけれど、どうやら帰宅ラッシュに巻き込まれたらしい。
一駅は何とか読書モードには入れたものの、次の駅で人波に飲まれて泣く泣く断念。
こうなってくると人間観察という名の暇つぶしくらいしかすることがなくなるわけで。
まず前方にはカップルを挟んで扉。右側もカップル。あれ、帰宅ラッシュじゃなかったっけ。後方にはOLさん。左側にサラリーマンらしきおっさん。
前方のカップルは上手いこと彼女のほうを扉に寄せて彼氏が見事に他人からの接触を断つナイスポジショニング。と、感心するも束の間、右手のカップルは満員電車に乗りなれてないのか、彼女のほうがこっち向き。
微妙にやな予感がしたので痴漢冤罪対策に手を他人に見える位置まで上げる。
がたんごとん。
妙な体勢になっているのを自覚しつつ、どうにも出来ないのであきらめつつ耳を澄ます。
本を取り出す時、かばんのチャックを閉め忘れたのに気付き、中身をぶちまけないように祈りつつ。
周囲の状況は、想像通り右手のカップルはラッシュ経験が少ないようで「ありえねー」を連発。それを前方のカップルが聞きながらくすくす笑うといった平和な車内。OLさんもカタカタと携帯メールにいそしんでおり、おっさんは夢の大海原に大航海中。
その中に混じって他人事で周りを見ている自分はなんであるか、という問いを発してみるとちょっと哲学的だなぁと思う僕。
車内は奇妙で完全なヒトカケラになって走る。
がたんがたん。
電車が大きなカーブを曲がる。
そして、僕は、奇妙で完全なヒトカケラが、いかに危ういバランスの上に成り立っていたかを知った。
まるで、これらを支えていた見えない何かが抜け落ちたように。
それは、起こった。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ」
声にならない叫び。
電車が曲がった瞬間、腰の稼動域の限界付近に到達したのだろう。
腰がその体勢を維持することが不可能だと、主張したのだ。
痛い。
とにかく今の体勢はヤバイ。
感覚的に痛みがなさそうな方向に、体をひねる。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ」
逆だ。この方向はもっとヤバイ。
四苦八苦しつつ体勢を戻すと、ようやく周囲の状況も見えてきた。
前方のカップルは彼氏の防波堤が、崩れていた。
曲がった際に人波が人津波になったのだろうか。
彼女さんは座り込んで、彼氏さんは扉にかなり必死の形相で手を突き盾となるべく復活しようと踏ん張っている。彼女のすすり泣く声が聞こえなくもないが、彼氏の盾で何とかなるかなぁと思われる。
右手のカップルは危険な感じになってきた。
「こんなんだったら一本遅らせればよかった、気が利かない」
ということらしい。
また、彼女のほうは安定しないらしくカツカツとヒールが鳴る。
安定しねーなら彼氏に捕まるくらいの知恵を働かせろよと思った刹那のことだった。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ」
彼女のヒールが僕の足の甲にクリティカルヒットした。
「あ、すいません」
・・・謝られたら、まさかもうだめですとはいえない。
釈然としないまま、ぼそぼそと大丈夫である旨を伝える。
乗り換える駅までに二、三度は踏まれることを覚悟した。
ふと、後ろのOLに目を向けると、一瞬目があった。
何か、いやそうな目だ。
念のため手は上にあるとアピールするが、視線は変わらない。
よくよく考えてみると、こっちを見てたんじゃなくて・・・なんか、助けを求めてるようで・・・もしかして隣のおっさんか!
かなり嫌がっていた節が見えていたところを考えると・・・おっさん痴漢!?
現場を取り押さえなきゃいけないんだよな、おっさんめ、なんてことを!
早合点があってはいかんと気を取り直して、おっさんの状況を確認してみる。
・・・僕の左肩におっさんの頭が乗っていた。
軽く肩をかち上げると煌くヨダレ。
うえええぇぇっと思い、強めに肩をかち上げて起こしてやる。
おっさんは一瞬わけが分からない風だったが、とりあえずOLさんに謝ってヨダレを拭いてくれた。
がたん。
ようやく駅に着いた。
人波に乗って、居心地の良かった塊から抜け出す。
結局いい事したような気がするけど感謝はされてない。けど、そーゆーのがなんかいいことしたよなぁ。
そんなこんなで、一日終わったなぁと実感する。
明日はいい日になるといいなぁ。
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