■ジョンズ・ホプキンス大学システム科学工学センター(CSSE)の集計によると、新型コロナウイルスの感染者数が世界最多となったアメリカで27日、10万人を超えた。
特に感染者が多いニューヨーク州では感染者が27日時点で前日から7,377人増え4万4,635人となったのだ。
拡大感染を防ぐため米国ではニューヨークを含め23州で外出禁止令が出されている。
外出禁止令では買い物や通院、ウォーキングなどの運動(他者とは約2メートル距離を保つ)など必要不可欠な場合を除き、屋内での退避を義務付けられている。
多くの場合、出かけられる場所は食品スーパーに限られてしまうことになる。しかし皮肉にも人気があり集客力が高いため感染者が急増するホットスポットになっているスーパーがある。
カルト的な人気を誇るスーパーのトレーダージョーズだ。トレーダージョーズはこれまで店舗スタッフの感染が判明、もしくは感染の疑いがあることで10店舗を臨時休業にした。
目立って多いのがニューヨーク・マンハッタンでチェルシー店(675 6th)、ソーホー店(233 Spring)、アッパーウエストサイド店(2073 Broadway)、ユニオンスクエア店(142 14th.と138 14thのワインストア含む)で従業員に感染者が判明し、店内の消毒作業で一時休業となったのだ。
他にもニューヨーク・ロングアイランドのプレインビュー店、ニュージャージー州ミルバーン店とフローハム店、メリーランド州エルクリッジ店で従業員の陽性反応が確認され臨時休業となった。
西海岸ではシアトルにあるユニバーシティ・ディストリクト店、カリフォルニア州ベーカーズフィールド店でスタッフが新型コロナウイルスに感染し一時的に店を閉め消毒作業を実施した。
これらの多くの店舗では全ての消毒作業が完了し、顧客が安心して買物できる環境になったことで営業を再開している。
チェルシー店やソーホー店では複数のスタッフで感染が確認されたことから、店内での感染が疑われている。
なぜトレーダージョーズで感染が起こるのだろうか?
人気のあるスーパーであると同時にトレーダージョーズの商品の9割がプライベートブランド(PB)であるのが理由の一つだ。
トレーダージョーズのPB商品は値段が安い上、品質もよくナショナルブランド(NB)や他のスーパーのPBでは代替品にならないのだ。
トレーダージョーズでしか買えないということで感染者さえ集客している可能性がある。
店舗の大きさも従業員に感染する理由の一つになる。トレーダージョーズでは現在、お客の入場制限を行っている。1,000坪以上ある一般的なスーパーと違ってトレーダージョーズは300坪と狭い。
入場制限を行い他のお客と一定の距離をおいても店内の買い物では限界がある。品薄や品切れで在庫の確認でお客から声がかかることもしばしばだ。店内の狭い通路では飛沫感染するリスクも高まる。
トレーダージョーズの従業員に感染者が相次ぐ最大の理由は同社のコアバリューにあるのかもしれない。
トレーダージョーズのコアバリューの一つに「実店舗こそブランド(The store is our brand)」があり、ネットスーパーへの非参戦を宣言している。
42州に500店舗以上展開するトレーダージョーズではインスタカートと契約しておらず、オンデマンド買物代行&宅配サービス業者の買い物を全面的に禁止にしているのだ。
トレーダージョーズの買い物では宅配に頼ることができず、お客は身体の具合が悪くても店に行かなければならない。
高熱で咳がでて臭覚の喪失という症状があってもトレーダージョーズの商品が欲しければお店に行くしかないのだ。
宅配がないことで感染者もお店に呼び込んでしまう。感染者が殺到すれば狭さからクラスター(集団感染)も起こりやすいだろう。
新型コロナウイルスのパンデミックで食品スーパーの売上はかつてないほどの伸びを見せている。しかしトレーダージョーズの店内で働くことは命がけになるのかもしれない。
トップ画像:従業員に新型コロナウイルスの陽性反応がでて現在も休業しているトレーダージョーズ・アッパー・ウエストサイド店。宅配禁止で従業員の感染リスクを高めている?
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