2013年04月29日

【ウォルマート】、知られざる全米小売業協会(NRF)との44年の確執!加盟の背景は?

130429NRFキャンペーン
■世界最大の小売業界の団体は、1万社以上の会員をもつ「全米小売業協会(NRF:National Retail Association)」だ。そして世界最大の小売企業はウォルマート。ウォルマートは現在、NRFの会員となっている。あまり知られていないのだが、ウォルマートはつい最近までNRFの会員ではなかったのだ。実は両者には44年間の確執があった。
 NRFが「全米小売商協会(NRMA:National Retail Merchants Association)」と名乗っていた1969年、ウォルマート創業者のサム・ウォルトン氏が政治的な影響力をもつ同団体に加盟しようとした。当時のウォルマートの年商は約3,000万ドル(約30億円)、今の物価水準では年商1.9億ドルだろう。ウォルトン氏がNRMAの本部のあったニューヨーク市にわざわざ訪れたものの、加盟が却下されてしまった。伝えられているところでは、却下はウォルマートがディスカウントストアだったから。NRMAの役員企業にはデパートメントストアが多く、ディスカウトストア業態を邪道とみなしていたのだ。これに腹を立てたウォルトン氏は同年、Kマートやターゲット、ジェームズウェイ(Jamesway)、カルドア(Caldor)、ブラッドリーズ(Bradlees)、エイムズ(Ames)らと「量販店協会(MRI:Mass Retailing Institutes)」を立ち上げた。MRIは2004年に「小売業リーダー協会(RILA:Retail Industry Leaders Association)」となり、ロウズやセーフウェイなど会員企業数が200社以上となっている。2009年には全米小売業協会との合併の話し合いがなされたものの、医療保険制度を巡って対立し、結局、合併は失敗に終わっている。

トップ画像:全米小売業協会(NRF)が行っている小売業界イメージ向上キャンペーンの「これが小売りだ!(This is Retail)」。ウォルマートも企業イメージの向上を目指している。これも、44年間の確執を経て、ウォルマートがNRFに加わった理由の一つだ。
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⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。ウォルマートが全米小売業協会(NRF)に加盟した理由はズバリ、政治的影響力をさらに高めるためです。すでにウォルマート自体が潤沢な資金を背景に政治的な影響力を発揮しています。ただ、大企業で影響力をもつがゆえに、ウォルマートの企業イメージが悪いのです。巨大企業が一人で暴れているような感じですかね。で、ある意味、隠れ蓑がほしかったと。一方で全米小売業協会は世界最大の小売業団体ですが、資金面でロビー活動は十分といえるほどおこなっていません。NRFの会員には、クリーニング店や自転車の修理屋さんのようなパパママストアが数多くいます。ウォルマートがNRFに加盟することにより、彼らの代表のように大義名分をもち、影響力を発揮できるというわけです。直近ではオンラインストア業者にも課税する「市場公正法案(Marketplace Fairness Act)」とかありますから。
 それからNRFが最近行っている小売業界のイメージ刷新キャンペーンにもウォルマートがのっかりたいとの思いがあるのです。

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