
■世界最大の小売業界の団体は、1万社以上の会員をもつ「全米小売業協会(NRF:National Retail Association)」だ。そして世界最大の小売企業はウォルマート。ウォルマートは現在、NRFの会員となっている。あまり知られていないのだが、ウォルマートはつい最近までNRFの会員ではなかったのだ。実は両者には44年間の確執があった。
NRFが「全米小売商協会(NRMA:National Retail Merchants Association)」と名乗っていた1969年、ウォルマート創業者のサム・ウォルトン氏が政治的な影響力をもつ同団体に加盟しようとした。当時のウォルマートの年商は約3,000万ドル(約30億円)、今の物価水準では年商1.9億ドルだろう。ウォルトン氏がNRMAの本部のあったニューヨーク市にわざわざ訪れたものの、加盟が却下されてしまった。伝えられているところでは、却下はウォルマートがディスカウントストアだったから。NRMAの役員企業にはデパートメントストアが多く、ディスカウトストア業態を邪道とみなしていたのだ。これに腹を立てたウォルトン氏は同年、Kマートやターゲット、ジェームズウェイ(Jamesway)、カルドア(Caldor)、ブラッドリーズ(Bradlees)、エイムズ(Ames)らと「量販店協会(MRI:Mass Retailing Institutes)」を立ち上げた。MRIは2004年に「小売業リーダー協会(RILA:Retail Industry Leaders Association)」となり、ロウズやセーフウェイなど会員企業数が200社以上となっている。2009年には全米小売業協会との合併の話し合いがなされたものの、医療保険制度を巡って対立し、結局、合併は失敗に終わっている。
トップ画像:全米小売業協会(NRF)が行っている小売業界イメージ向上キャンペーンの「これが小売りだ!(This is Retail)」。ウォルマートも企業イメージの向上を目指している。これも、44年間の確執を経て、ウォルマートがNRFに加わった理由の一つだ。