
■ウォール・ストリート・ジャーナル紙は9日、ネット通販最大手でオンライン専売ストアのアマゾンが初の実店舗をオープンする計画があると報じた。関係筋の話として報じたことによると、出店場所はニューヨーク・マンハッタンのエンパイア・ステートビルと向かい合う34番地に面したところで、近くにはメーシーズやユニクロ、ZARAもあるショッピング街だ。テスト展開としている新店舗は、年末商戦に向けて開店する見込みという。小型店舗となるためキンドルなどの販売商品は限定的となる。サービスではネットで購入した商品の当日受渡しや、交換や返品なども行うとしている。
マイクロソフトも先月、ニューヨーク5番街に「マイクロソフトストア(Microsoft Store)」の旗艦店をオープンすることを発表した。アマゾンも店舗をショールームにして売れ筋となっている同社のキンドルシリーズを展示することで顧客にアピールする狙いがあるようだ。
トップ画像:アマゾン実店舗の出店先として報じられた34番街のエンパイアステートビルの真向かい。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。アマゾンはオンライン専売ストアとして実店舗展開を避けてきました。というのも店舗をもたないことによる、税制面でのアドバンテージがあったからです。数年前まで、多くの州では、州内に店舗やオフィスなど「物理的な所在」がなければ、消費税を課されなかったのです。カリフォルニア州でもアマゾンで税(8〜9%)抜きで商品が購入できたのです。不公平競争ということでカリフォルニアでも法律が変わり、オンライン専売ストアにも課税されるようになりました。それとともにアマゾンはカリフォルニア州内に「物理的な所在」となる物流倉庫の建設を加速させています。物流拠点から消費者までの「ラストマイル」で、宅配スピードのアップを図るためです。ラストマイルでの競争になると多店舗展開しているチェーンストアが有利になります。で、アマゾンがやったことは、セブンイレブンなどの店舗内にアマゾンロッカーを設置したのです。
⇒それでもエントリー記事にあるような店舗展開をアマゾンは避けてきました。昨年末にはいくつかモール内にキンドル用のポップアップストアを出店していました。ポップアップストアですから、年末商戦向け期間限定の臨時店舗です(店舗というよりはキンドルの展示会場といったほうが正しかったかもしれません)。アマゾンがポップアップではなく実店舗を展開していくようになると、アマゾンのビジネスモデルを変更しなければなりません。コスト構造が変わるからです。店舗展開では店の維持費や人件費など運営コストが高くつきます。アマゾンのような倉庫運営とはコスト構造が異なります。しかし、店舗をもたないことによる「見えない損失」も増大しています。それはマーケティングコスト。お客と接する「面」となるお店がないことで、例えばキンドルなどアマゾンが開発した製品を効果的に見せることができないのです。
⇒アップルのアイフォン6が発売された時、お客は徹夜で並び、長い行列をつくりました。発売と同時にスタッフとハイタッチしながら店に入っていき、嬉しそうに買っていました。お客のワクワクした表情が絵になるのです。それがニュース映像として流れます。アイフォン6が人の言の葉に乗って広がります。これもマーケティングです。アマゾンは自社開発で初となるスマートフォンのファイアフォンを7月末に発売しました。ファイアフォンの発表は大々的に行いました。が、お客が嬉しそうに買っていく「発売日の絵」はありませんでした。店を持っていないので、アイフォン発売のようなインパクトがなかったのです。気づけばYouTubeにファイアフォンのレビュー動画が上がっていました。目の肥えたユーザーによる批評ですから辛口です。結局、「あまりよくないらしいよ」という話が広がっていっただけでした。これが店をもたないことによる「見えない損失」です。
⇒アマゾンは見えない損失に気づいたのではと思います。アマゾンでは電子書籍リーダーの「キンドル」やタブレット端末の「キンドルファイア」、セットトップボックスの「ファイアTV」、スマートフォンの「ファイアフォン」などの自社製品が増えています。アマゾンは今後もこれらの新モデルを発表するでしょうし、例えばウェアラブル端末も出してくると思います。自社製品を見て触って感じて比べてもらえるような、マーケティングの拠点となる実店舗の必要性を感じているのでしょう。アマゾンCEOのジェフ・ベゾスは、アイフォン6での狂乱の発売を、悔しい思いで見ていたと思います。「ウチにも新モデルが発売されるたびに絵になるようなお店が欲しい!」と。お客の喜ぶ顔に勝る宣伝はありませんからね。アマゾンは小型店を出店してテストをしながら、いずれ大型となる旗艦店出店も考えているはずです。
競合の実店舗をショールーミング化した張本人がショールームを作るとは皮肉なことです。が、時代とともに戦略も変わり続けるものです。
Posted by usretail at 03:33│
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