2016年06月15日

【ステープルズ】、一部で当日配送を開始!国民大衆の暮らしを豊かにするでは勝てない?

160615ステープルズ
■オフィス・スーパーストア最大手のステープルズは14日、一部地域で当日配送を始めた。アマゾンのプライムナウなど、スピード競争になっているラストマイルに対応していく。ステープルズ・ラッシュ(Staples Rush)は午後3時までに注文すると当日の午後7時までに届くサービス。すでにサービスが開始されているニューヨークやボストン、ダラスなどの一部地域に加え、シカゴやヒューストン、ロサンゼルス、サンフランシスコ、シアトルも対象となる。ただ、対象地域であっても利用者はジップコード(郵便番号)を入力して、当日配送が可能かどうかを確認しなければならない。サービスは月曜日〜金曜日となっており土曜日や日曜日、祝日のサービスはない。当日配送の対象品目は店舗で取り扱っている数千品目とする一方、注文品の重量は70ポンド(31キログラム)以下と限っている。手数料は今のところ14.99ドルとなっており、テスト展開であるため将来的に手数料の変更もあり得るという。なお、法人客を対象にしたステープルズ・ビジネス・アドバンテージにも当日配送を展開するとしている。
 ステープルズは先月、同業で第2位のオフィスデポとの買収を断念することを発表した。連邦取引委員会(FTC)が昨年12月に仮差し止め請求を出し、また連邦地裁もこれを支持したことにより、買収を断念したかたちだ。また同社は先月末、CEOのロン・サージェント氏が6月14日の株主総会後に退任すると発表している。

⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。後藤はこれまで多くの経営者と仕事をしてきました。たたき上げで多店舗展開で成長し、大手チェーンストアに育てた経営者もいます。これらの成功した創業経営者に共通する資質として、決裁スピードの速さがあります。「即断・即決・即実行」のスピード経営。悪く言えば「せっかち」です(笑)。経験的にいっても後藤にコンサルティングを依頼するのも決断が早い人が圧倒的です。で、このスピードが企業の成長にさらに大きな役割を果たすとみています。仮に間違った判断をしても、微細な改善から小さな問題まで取り組みが俊敏なので大きな痛手にはならないのです。企業トップに「決断したら、すぐにやる」瞬発力があると、周囲の人も先回りして動きやすい利点があります。ただ、日本の5年〜10年先をいっているアメリカを見ると、小売業は今までにない、違う方向へ向かっています。過去からの延長線上に、アメリカ小売業はありません。
⇒したがって方針転換もこれまでにないベクトルになる可能性が高いのです。つまり、経営者がそれまで培ったモノサシを使って、物事を決定できなくなっているのです。モノサシとは成功体験。一つの事例として当ブログで頻繁に挙げているのがチェーンストア理論です。チェーンストアは多店舗展開することで売上や利益が伸び成長を維持できたのですが、Eコマースの台頭でこのセオリーが破たんしているのです。チェーンストアの目的として言われていた「国民大衆の暮らしを豊かにする」という理論が、アメリカでは通用しなくなっているのです。なぜならモノあまりの時代となり、モノによる豊かさが実現できているからです。一方、店舗を持たないアマゾンの品ぞろえは億単位にも上っています。また豊かさを提案するチェーンストアの役目も、ネット上の無限におよぶ情報量で霞んでしまっています。わざわざチェーンストアに行かなくてもモノが買え、購入決定に必要なコンテンツも顧客の声からレビュー動画とネットで増え続けています。

⇒チェーンストア経営者の多くが「とにかく店舗数を増やすこと」に集中できました。100店舗よりも200店舗、300店舗展開とするならメーカーに対しても価格交渉力が発揮できたからです。しかし今、メーカーは多店舗出店に対して懐疑的な目を持っています。リアル店に行くしか購入先がないようでは、お客は買わないのです。物心ついたころからアマゾンがあったミレニアム世代は、スマホで検索して買えないのなら買いません。したがってメーカー側もチェーンストアがどの程度、オムニチャネル化を進めているのか査定してきます。いくら店舗数を増やしても、オンラインで購入したもの宅配できなかったり、お店で受け取れないのでは、流通とみなされないのです。チェーンストアもオムニチャネル化されないと偏ったモノの流れで流通業と言えないのです。オムニチャネル化される流通を考えれば、チェーンストアも以前ほど価格交渉力を持たなくなっているのです。チェーンストアのローコスト経営も、オムニチャネル化で以前のロジックも成立しません。

⇒オムニチャネル化の「BOSH」「BOROS」「BORIS」「BOPIS」「BOSS」「BODFS」ステップではリアル店舗が増えれば増えるほど店の負担も増えていきます。例えばオムニチャネル化で最も重要な「ボピス(BOPIS:Buy Onlin Pick-up In Store)」は、店スタッフは通常業務とは別にピッキングをしなければなりません。ピッキングした商品をお客がピックアップするまで、預からないといけません。これまでのチェーンストアのシステムとは別のシステムを導入しなければならないし、店内に保管する場所も確保する必要があります。また店から宅配する「ボドフス(BODFS:Buy Online Deliver From Store)」が増えれば、多店舗展開によるローコストオペレーションが実現できることも難しいでしょう。で、ローコストが実現できないことを口実に「ウチはやりません」「ウチはできません」ではアマゾンに勝てません。さらに当日宅配でスピードや手数料でオンライン専売ストアに劣るなら存在意義も問われます。
 チェーンストアがなくなることはありませんが多店舗展開による「経済の民主主義」から「(買い方や受け取り方法、コンテンツまで)選択の民主主義化」と役割は変わります。
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