■メイシーズが9日に発表した第3四半期(8月〜10月期)決算では、引き続き既存店ベースが前年を下回った。売上高は店舗閉鎖やハリケーンの影響により前年同期比6.1%の減少となる52.8億ドルだった。純利益は店舗などの資産売却により前年同期の1,700万ドルから3,600万ドルと大幅に増加した。粗利益率は在庫を圧縮していることで前年同期の39.8%から39.9%と0.1ポイント増加。一般販売管理費率はリストラの費用等で37.8%と前年同期の37.5%から0.3ポイント増加した。メイシーズ店内で展開する提携業者からのコミッションを除く既存店・売上高前年同期比4.0%の減少だった。コートやブーツ、冬物アクセサリーが季節外れの温かさで売れず、既存店売上を低迷させた。なお既存店ベースの減少は11四半期連続となっており、リーマンショック時に記録した11四半期連続前年割れと並んだ形だ。前年同期の既存店ベースは3.3%の減少だった。オンライン売上高は発表していないものの、メイシーズによるとオンライン売上は33四半期連続して二桁成長している。
メイシーズは先月2日、新ロイヤリティ・プログラム「スター・リワード(Star Rewards)」を開始した。スター・リワードはメイシーズのクレジットカードも所有している顧客が対象となり支出額に応じて「プラチナム(Platinum)」「ゴールド(Gold)」「Silver(シルバー)」に分けられている。メイシーズで年間、1,200ドル以上を使うプラチナム会員は5%のバックに無条件の送料無料、いつでも使える25%オフの「スターパス(Star Pass)」クーポンを得られる等の特典がある。なおメイシーズでは年間1,200ドル購入する上顧客は、売上全体の半分を占めると公表している。500ドル〜1,200ドルを支出するゴールド会員は送料無料とスターパス・クーポン、500ドル以下のシルバー会員の特典はスターパスのみとなっている。
メイシーズの既存店・売上高前年同期比推移グラフ(メイシーズ店内で展開する提携業者からのコミッション売上除く)。第3四半期(8月〜10月期)の既存店ベースは4.0%の減少だった。これにより既存店ベースは11四半期連続の減少となり、リーマンショック時に記録した11四半期連続前年割れと並んだのだ。大量店舗閉鎖後も客離れが起きており、本体デパートメントストアの回復の見通しは、いまだ立っていない。
メイシーズが今年6月に行った投資家向けのプレゼンテーションで使ったスライド資料。100人の顧客のうち超上得意客9名が平均で年間18回来店され、総額2,100ドルを支出し、売上高の46%を占める。上得意客13人が平均で年に9回来店され、年に574ドルを支出し、それが売上の19%占める。顧客の38人が年に3回の来店で年に246ドル支払い、売上の23%をしめる。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。オムニチャネル・リテーリングで失敗している企業は多くの場合、売り場にその原因を見る事ができます。オムニチャネルの利便性とは、スピードにあります。ネット注文してから顧客が商品を受け取るまでの時間です。手間も小さなストレスもないほうがいい。メイシーズに行くと、スピードが遅く、ノロマであることが売場からわかります。メイシーズは先月からロイヤリティ・プログラムを刷新しました。が、超上得意客であるプラチナム会員にはスピードではなく、金銭面での特典しか与えていません。ビッグスペンダーの彼らはクーポンやディスカウントなどの金銭面の特典に、それほどインセンティブを感じません。ストアピックアップやカーブサイド・ピックアップをできるだけ素早く(待ち時間なく)、手順などの負担を少なく、心理的にもストレスフリーで行えるようにするのがコア客への対応です。返品も同様で素早く、手間なく、ストレスフリーが基本です。
オムニチャネルを目指す企業に向けて強調しますが、オムニチャネルは「素早く」「手間なく」「ストレスフリー」です。自分が買い物客になった、客観的な目線で見ればオムニチャネルのレベルもわかってきます。
Posted by usretail at 03:12│
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