2017年12月10日

【返品】、オンデマンド返品代行サービス!消費・返品大国でも市場として成立するのか?

171210リターンランナー
■アメリカは消費大国と同時に返品大国でもある。購入日から一定期間、購入した商品が気に入らなければ簡単に返品できるのだ。全米小売業協会(NRF)が11月に発表したデータによると、今年の返品率は11%に達する。返品率が8%だった2015年の調査から3ポイントもアップだ。また今年、11月〜12月のクリスマス商戦期中の返品率は13%にも上るとの試算だ。アメリカではギフトレシートを添えて贈ることで、プレゼントも返品可能となる。ギフトレシートとは商品の返品・交換用の領収書のことで、金額は載っていない。購入の支払い時に贈り物であることを伝えれば、通常の領収書とは別にもらえるのだ。ギフトレシートには店名や返品条件、バーコードなどが記載されている。どんな場合であっても返品できることは常識であり、たとえサンタクロースからのプレゼントも、気に入らなければ返品できるというのがアメリカの考え方なのだ。購入した商品の1割が店への返品になるのなら、これをビジネスにできないだろうか?と考えることができる。実際に返品を代行するビジネスが始まった。「リターンランナー(ReturnRunner)」はオンデマンド返品代行サービスだ。時間に追われる忙しい人に代わって、返品する品をもってお店に行き、長い行列に並び、返品をおこなってくれる。手数料は9.99ドル。返品する商品が増える毎に99セントアップする。対象はアパレル、靴、バッグ、小型家電製品などで、80X80センチぐらいの箱に入り重量は20ポンド(9キログラム)まで。宝石など高価なジュエリーや高額なバッグ、毛皮などは対象外となっている。リターンランナーは、ダウンロードした専用アプリで返品する人と返品代行する人(ランナーと呼ぶ)をマッチさせる仕組みだ。返品する人は事前にアプリ経由でレシートを画像で送り、時間を決め(週7日の午前8時〜午後6時)ランナーにピックアップしてもらう。返品が完了すると返品レシートが送られてくるのだ。ただスタートしたばかりであり、サービス地域はシカゴに限定され、返品を行える対象店もノードストロームやターゲット、ニーマンマーカスなど20社程度となっている。リターンランナーはオンラインストアへの返品代行も行っており、宛先ラベルがあれば輸送会社のUPSやフェデックス、郵便局に行き返品手続きを行うとしている。
 ストアピックアップやオンデマンド買物代行サービスが徐々に拡大する中、オンデマンドの返品代行の市場もあるのかもしれない。

トップ画像:リターンランナーのランディングページのスクリーンショット。オンデマンド返品代行サービスのリターンランナーはいわばインスタカートの返品バージョンと言えるだろう。手数料10ドルで返品代行サービスの市場はあるのだろうか?
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。さすがに5ドル、10ドルの返品に手数料10ドルのオンデマンド返品代行サービスを使う人はいません。数百ドルのドレスを数着返品するときなどには需要としてあるかもです。購入した商品をお店で返品するとわかるのですが、いささかの罪の意識を感じるものです。後藤は1年前、サムズクラブでアイパッド・プロを税込み640ドルで購入しました。で、1ヶ月後に返品しました。返品時、いつものようにスタッフから返品理由を聞かれるも「気に入らなかった(I don't like it)」とだけ返答しました。スタッフは商品確認を行い、スマートフォン・アプリにあるeレシートのバーコードをスキャニング、自分のクレジットカードを端末に差し込んでクレジットバックで返品完了となりました。途中、スーパーバイザーを呼ぶことにもなりましたが、5分程度で約7万円の返品が終了です。後藤は実験で返品を行いましたが、若干というかかなりの罪悪感を覚えました。

⇒厚顔無恥で非常識な人なら何も感じないで返品もできるでしょう。でも普通、返品にかかるコスト等を考えて、お店に対しては「やっぱり悪いことしたなぁ」と思うものです。こういった罪の意識に性差があるのかどうかはわかりません。が、デパートなどでドレスを数着購入して返品する女性は一部に(特に他人からよく思われたい人など)、自分では返品したくないと思う人もいるかもしれません(ちなみにリターンランナーの創業者は若い女性だ)。小さい子供を持つ母親など、わざわざ返品に時間を割きたくない人もいるでしょう。手数料10ドルを支払うひともいるかもしれません。ミレニアル世代など、これまでとは金銭感覚が違ってくることもあるでしょうし...ただ、オンデマンド返品代行サービスで気になるのは、クレジットカードで購入した場合、返品時でも(返金でクレジットバックするため)本人のクレジットカード提示が求められる時です。リターンランナー返品対象店はクリアになっていると思いますが、他の店はどうなんでしょうかねぇ。
 「返品もオンデマンドで代行してもらう」とは、いかにもアメリカらしいです。が、果たしてビジネスとして存続できるだけの市場(利用者)はあるのでしょうか?