2018年01月13日

【ウォルマート】、賃金引き上げに歓声、大量閉店に悲鳴!好調も店舗減らしてIT投資?

180113サムズクラブ@シアトル
■ウォルマートは11日、最低時給を11ドルに引き上げると発表した直後、サムズクラブ63店舗をスクラップすることも明らかにした。スタッフ賃金を引き上げボーナスを支給する一方で、店舗の大量閉鎖に一部をネット物流に転換するなど、チェーンストア展開からネット対応に軸足を移していることを浮き彫りにした。ウォルマートは2月からスタッフの最低時給10ドルを11ドルに引き上げ、勤務年数20年以上には1,000ドルを支給する。また10週間の産休を給与全額払いで取得できるほか、父親やパートナーには6週間の育児休養も認める。これらの計画によりウォルマートの年間の人件費は3億ドル増え、ボーナス支給では4億ドルを計上する。昨年末に決まった税制改革法案成立により、法人税率が下がり利益が大幅に増えることも背景にあるとみられている。なお、ウォルマートは世界で220万人のスタッフをかかえる世界最大の民間雇用主。アメリカ国内では150万人超を雇用している。
 一方、ウォルマートは11日遅く、傘下で会員制卸売り販売サムズクラブの10%にあたる63店舗を閉鎖することを明かした。閉鎖されるサムズクラブの最大12ヵ所をネット対応の物流センター(フルフィルメントセンター)に転換する。店舗閉鎖に伴うリストラ数などの発表はないものの、ウォルマートではリストラ対象となるスタッフで条件を満たす人は、ボーナスと60日分の賃金、退職手当などを支給するとしている。フルフィルメントセンター増設により再雇用もあるものの、4,000人近くが職を失うものと見られている。店舗スクラップにより660店のサムズクラブは、597店となる。なおサムズクラブの第3四半期(8月〜10月期)の売上高は148.6億ドルと前年同期比4.4%の増加だった。営業利益も4.5億ドルとなり、同12.9%増の二桁の増加となっている。既存店・売上高前年同期比は同2.8%の増加。内訳は客数が3.6%増加し客単価は0.8%の減少だった。サムズクラブの既存店ベースは7四半期連続して増加している。
 賃金引き上げ直後に大量リストラを発表したことで、ウォルマートにとってタイミングの悪いPRとなってしまった。

トップ画像:ワシントン州シアトル地区にあるサムズクラブ。今回の大量閉店でサムズクラブは、アマゾンやコストコの本部のあるワシントン州から撤退となる。

⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。これまで戦略的なPRを行ってきたウォルマートにとって、今回のグッドニュースに水を差す形となったバッドニュースの発表は痛恨のミスです。せめてバッドニュースから始めて、グッドニュースでしめるほうが、企業イメージは損なわれなかったはずです。もっと言えば、昨年の年末商戦(11月〜12月期)の売り上げ速報を公表して、既存店ベースがよかったとして(逆に悪かったとしても)「アマゾン・エフェクトを考え(今のうちに手を打たなければ後々、大変なことになる等)リストラを今、決断しなければならなかった」としたらメディアの反応は違っていたと思います。昨年からの大量閉店が示すように、これまでのようにお店を増やしても必ずしも成長できないとする「チェーンストアの限界」が一般化しつつあります。当ブログで何度も指摘するように、消費構造の急激な変化となる地殻変動に対して「出店控えてIT投資」「店数減らしてIT投資」を取る戦略が増えています。
⇒経営は10年先の計画を持って、逆算の経営をしなければいけません。10年先はどうなるかを考え、そこから逆算すると、今のやり方を続けていてはダメなことが分かるはずです。サムズクラブは現在、10%も店を閉めなければならないほど経営が傾いているかというとそんなことはありません。直近の営業利益は前年同期比で二桁増、既存店は7四半期連続でプラスとなっています。ただ、今を起点に考えて将来の計画を立てることは、過去からの延長になるからうまくいきません。持続的な成長を手に入れるには、過去や現在を否定することです。しかし、これができません。これまで信じてきたチェーンストア理論が間違っている、陳腐化しているということを認めなければならないからです。これは阪神ファンをやめて巨人ファンになるようなものです。生粋の巨人ファンがジャビット君を捨て、トラッキーを愛でるようなもの。感情的にはとても受け入れられませんが、5年後、10年後の消費を予想すれば素の感情にも抗わなければならないのです。
 ウォルマートはPRのミスを反省しなければなりません。私たちはサムズクラブの大量閉店からチェーンストアの現実を学ばなければなりません。出店控えて、店舗減らして、IT投資です。