■家具チェーンのイケアは昨年5月、テネシー州ナッシュビル郊外に新店をオープンすることを発表した。2016年に開店したメンフィス店に次いでテネシー州では2店舗目となる、イケア・ナッシュビル店は2020年夏にアンティオーク地区にオープンする。
メンフィス店より2,000坪も広い9,500坪店には家具や家庭用品など1万アイテム近くを扱い、家具展示スペース「ルームセット」が50ヵ所導入される。来年春に着工予定の新店はレストラン・キャパシティ450席を誇り、駐車場台数1,100台と大型となるのだ。
しかし、発表から1年経過した先月29日、イケアはこの計画を白紙にした。
新規出店のキャンセルはこれだけではない。イケアは昨年9月にもアリゾナ州フェニックス郊外のグレンデール地区に新店をオープンすることを発表したが、先日、白紙撤回した。
2020年春にオープンを計画していた店舗も9,700坪と大型だ。ナッシュビル店と同様にグレンデール店も家具や家電、家庭用品など1万アイテム近くを扱い、家具展示スペース「ルームセット」を50ヵ所導入、レストラン・キャパシティ450席に駐車場台数1,100台と巨大さを謳っていた。スタッフ300人の雇用を約束し、工事に500人の雇用を生み出すとも胸を張っていたのだ。
さらにノースカロライナ州カーリーにオープンを予定していた1万坪店も市の許可を得た直後にイケアは計画を取りやめたのだ。
1943年創業のイケアは現在、29ヶ国に355店舗展開している。昨年だけでも世界に13店舗をオープンさせた。アメリカには1985年に進出を果たし、昨年10月にオープンした国内45店舗目となるインディアナ州フィッシャー店、同年11月にオープンしたフロリダ州ジャクソンビル店、12月にオープンしたテキサス州グランド・プレーリー、そして今年5月にオープンしたミルウォーキー州オーククリーク店と現在は48店舗を展開している。
順調ともいえるイケアが、9,000坪以上となる新規出店計画を突然、3ヵ所も白紙撤回するのは異常事態といっていい。
調査会社IBISワールドによるとイケアの2015年、2016年の売上高は前年比8%以上だった。ここ2年は成長率が4%に届かない状態になっており、直近では40%の減益に陥っているのだ。これまで家具販売はEコマースの影響はないと思われていたが、そうとも言い切れない状態になってきている。
イケアも大型のリアル店に頼らないビジネスモデルを構築しなければならなくなってきているのだ。イケアUSのスポークスマン、ラティシャ・ブレイシー氏は小売り業界の急激な変化を認めながら「長期的に成長を目指すため、我々は未来のお客様にとっても便利でアクセスしやすいビジネスモデルを創造しています」と語る一方、Eコマースに投資していると明かしている。
イケアでさえオムニチャネル化を強化しなければ5年後、10年後に生き残るのは難しいとしているのだ。イケアもアマゾンエフェクトに経営を揺さぶられているともいえるだろう。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。当社クライアントに後藤はコンサルティングで「出店控えてIT投資」とアドバイスしています。「アマゾンが台頭している今、新規出店している場合ではない」とアメリカの最新事例を示しながら助言しているのです。特に大型店で出店していたチェーンストアは、アマゾンエフェクトで脆弱な状態になりやすいと強調しています。アマゾンエフェクトとはアマゾンによって消費構造が変化し、これまでの小売の常識が通用しなくなったことを言います。小売の常識とはお客は店で購入するということ。買い物は実店舗にお客が来ることが前提になります。この前提がアマゾンの隆盛で崩されているのです。消費者がネットで購入する機会が多くなれば「地域一番店」のアイデンティティさえ危ぶまれてしまうのです。地域で一番大きな店舗を出店すれば集客も比例するということが言えなくなってきているのですね。「地殻変動」で歩くことを強要される大型店に人が集まらなっています。
ところで「出店抑えてIT投資」は原理原則ではありません(コンサルタントはやたらと「原理原則」を使う傾向にあります)。それでも出店しながらのIT投資は難しいです。なぜだと思いますか?
Posted by usretail at 01:05│
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