
■ニューヨーク・マンハッタンでは先月、世界最大級の流通専門展示会の「NRF2019ビッグショー(NRF2019 RETAIL’S BIG SHOW)」が開催された。会場となったジェイコブ・ジャヴィッツ・コンベンション・センターには800社以上が出展し、3.7万人が来場した。人工知能(AI)や機械学習を活用する流通トレンドが主流となる中、日本からも流通関係者が全米小売業協会(NRF)が示す流通業の近未来を学んだのだ。
彼らの多くがイベントに参加しながら、マンハッタンにある店舗を訪問するストアツアーを行った。特に注目されたのが昨年11月、5番街52丁目にオープンした「ナイキ・ハウス・オブ・イノベーション000(Nike House of Innovaiton 000)」。6階建てで総面積が68,000平方フィート(約1,900坪)となるナイキのハイテク旗艦店だ。
未来の小売店をコンセプトにした新旗艦店では商品のカスタマイズや専門スタッフによるコンサルティングの他、ナイキ・アプリのストアモードによる、利便性の高いショッピングを提供している。
しかし、日本からの流通視察ではまったく歯が立たない店舗となっているのだ。買い物にはアプリの使用が前提となっており、売り場はショールームでしかないためだ。ナイキ・ハウス・オブ・イノベーション000は売り場を見るだけでは、手も足もでないような店舗になっているからだ。高額なスニーカーではアプリがないと試着さえできない。売り場にも入れてもらえない。
旗艦店を視察するには、ナイキの専用アプリをダウンロードして「ナイキプラス会員(Nike Plus Member)」に登録する必要がある。
日本ではストアアプリが広く普及していないため、多くの関係者がナイキ・アプリの「リテールモード(Retail Mode)」「ショップ・ザ・ルック(Shop the Look)」「スキャン・ツー・トライ(Scan to Try)」「インスタント・チェックアウト(Instant Checkout)」の機能を知らず店を後にすることになる。
ショップ・ザ・ルックは、マネキンの足元にあるQRコードをスキャンすることで、マネキンが着用しているそれぞれの商品情報を入手できる機能だ。スキャン・ツー・トライは店頭商品のバーコードをスキャンし、自分に合うサイズの在庫を確認し、スタッフにアイテムを試着室に送るよう依頼ができる機能だ。またショップ・ザ・ルックから商品を選択し、スキャン・ツー・トライで試着室に送ることも可能になるという。
インスタント・チャックアウトは、レジ行列に並ぶことなく購入できるモバイル・チェックアウト機能だ。キャッシャーレスの旗艦店ではストアモードで商品バーコードをスキャンしてカートに入れアップルペイ等で決済を行うシステムとなっている。
皮肉にもアメリカ小売業の現状を知るために行うストアツアーで、現実さえ見れない状況に陥っているのだ。

