2019年10月11日

【緊急寄稿】、セブン&アイが大リストラ!大量閉鎖以上に買い物が便利になるIT投資?

191011ホームデポ
■セブン&アイ・ホールディングスは10日、グループの事業構造改革の方針で主力のコンビニエンスストア事業のセブン・イレブン約1千店の閉鎖・移転などリストラを発表した。1973年の創業以来一度も店舗数を減らしたことのないチェーンストア大手が不採算店舗などの大量閉店に動くのだ。ネット通販の拡大に人手不足という問題もあり、これまでの店舗拡大一辺倒から大幅な見直しに迫られている。

チェーンストアを生んだアメリカでは店舗数増加によるシェア拡大の時代はすでに終わっている。チェーンストアの重要な「お客は店の売り場で買い物する」という前提がアマゾンの台頭で崩壊しているためだ。

店を作って多店舗展開をしても、ネット通販を利用する今のお客は売り場まで足を運ばないのだ。お客が店に来ないため、チェーンストア理論の原理原則となる規模の経済性が追求できない状態に陥っている。

 全米一、世界一の小売企業のウォルマートの国内店舗数は昨年度、8店舗しか増えていない。1971年の上場以来、最低となる店の増加幅だが、既存店・売上高前年比は3.7%増と過去15年間では最大の伸びとなった。

ホームセンター最大手のホームデポでは直近となる2018年度中に増えた店舗数は1店舗のみだ。ホームデポの国内店舗数は昨年度ばかりか過去10年で5店舗しか増えていない。ホームデポは6年連続して既存店ベースを5%以上の成長で維持している。

家電量販店チェーン最大手となるベストバイは6年連続して国内の店舗数を減らしている。直近となる2019年度の国内店舗数は1,026店だった。前年から270店も店舗数を減らしているのだ。スクラップされたほとんどがモールに展開していた小型のベストバイ・モバイルの店舗だが、スタンドアローン展開の大型店も店舗数を減らしている。

ベストバイの既存店・売上高前年比は5年連続して前年を上回っている。2018年度の既存店ベースは5.6%増、2019年度は同4.8%増と、特にここ2年の伸びは著しい。

これらの成功事例には共通していることがある。これらの成功しているチェーンストアの共通項はIT投資だ。店舗数を増やすことより、ネット注文でお店受け取りとなるボピス(BOPIS:Buy Online Pickup In Store)などオムニチャネル化を進めたことで売上を維持している。

つまり「出店控えてIT投資」もしくは「店数減らしてIT投資」という戦略スタンスなのだ。

 一方で大量閉鎖で喘ぎ、破綻に追い込まれているチェーンストアの多くはこういったオムニチャネル化を進めてこなかった旧態然の企業だ。

ペイレス・シューソースやジンボリー、シャロットルッセ、チャーミングチャリー、最近でもフォーエバー21、バーニーズ・ニューヨークなど倒産したチェーンは多岐にわたる。

チェーンストアの鑑として言われていたベッドバス&ビヨンドもオムニチャネル化に乗り遅れたため、既存店ベースが下回り続け赤字に陥っている。

 流通先進国の事例では、チェーンストアによる店舗拡大による売上の拡大が通用しない。アメリカを5年〜10年遅れて追う日本もこれからチェーンストア理論の陳腐化を目の当たりにするようになるだろう。

トップ画像:10年以上前までは年間で100店舗以上を出店していたホームデポ。しかしIT投資を行っていることでホームデポは過去10年で5店舗しか増えていない。チェーンストアの重要な「お客はお店の売り場で買い物する」という前提が崩れているため、チェーンストア展開の時代ではないのだ。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。誤解してもらいたくないのは後藤はチェーンストア理論を否定しているわけではないことです。日本のチェーンストア経営者が学んだチェーンストア理論がアメリカで時代に合わなくなってきていることを強調しているだけです。アメリカで起きていることは日本でも遅れて起きます。そういったことは何度も繰り返してきました。で、チェーンストア経営者に後藤の声が届かないもどかしさがあります。彼らの多くが高齢で頻繁にアメリカに事例を見に来れなくなったことや耳の痛い話を聞かなくなっていること、相変わらず紙媒体の情報に頼っていることがあると思いますね。感情バイアス、認知(記憶)バイアスなどのいわゆるバカの壁、つまり思い込みで素直に理解できないということもあるでしょう。売上減など自分自身の問題として認識できるまで「チェーンストア理論のメルトダウン」は一笑に付すことになります。でもこういった認識のズレもアメリカでもう起こっていることです。
 ちなみに不採算店舗の大量スクラップや本社人員を含むリストラ、新レイアウト開発しても一時的には良くても「地殻変動」が進めば上手くいくとは限りません。買い物が便利になるIT投資が絶対です。セブンペイの失態が明らかなように、その前にトップや役員の意識改革かな。