■アメリカではワクチン接種を受けたことを証明する唯一の方法は、接種後に米疾病対策センター(CDC)から発行されるペーパー・カード「コロナワクチン接種証明カード(Covid-19 Vaccination Record Card)」だ。
この紙のカードには名前や誕生日にワクチンの種類や接種日、接種場所などの医療情報がペン書きで記載されている。
何百万人もの成人が新型コロナウイルスワクチンをすでに接種しているが、接種場所で受け取った紙きれ一枚しか接種証明するものがない。
カード紛失時に対処するため、世界最大の小売チェーンのウォルマートは16日、コロナワクチン接種証明を同社のストアアプリにデジタル記録として残すことができるようになったことを発表した。
コロナワクチン接種証明カードのデジタルバージョンはファーマシーアカウントに紐付けられ、名前や誕生日、ワクチン接種日、ワクチンの種類、ワクチン接種を受けた店住所などが処方箋の購入履歴と同様にアプリ上で閲覧可能となる。
対象はウォルマートでワクチン接種を受けた人になる。
QRコードになることでいわゆるワクチン・パスポートとしても利用可能だ。
ウォルマート傘下でメンバーシップ・ホールセール・クラブ・チェーンのサムズクラブでも同様にワクチン接種を受けた人を対象にカードのデジタル化もできるという。
買い物に便利なツールとなるウォルマートのアプリ機能はここ数年で大幅に拡充している。
ウォルマートの店内に入るとGPSによりアプリの画面が自動的にストアモードとなり、その店舗で提供している各種サービスから営業時間などの店舗情報、リアルタイム混雑状況、店内にある商品のプライスチェッカー機能が使えるのだ。
ウォルマートはストアモードの店舗情報に店内マップも導入した。ウォルマート店内でお客からの最も多い問い合わせは、探している商品の売り場だ。ストアモードでストアマップを表示させ、利用者が商品名やカテゴリーを入力することで店内の在庫場所をマップ上で示す。
マップにはカスタマーサービスやトイレなども表示され、5,000坪以上のスーパーセンターでもスタッフに場所を聞く手間はなくなる。
ストアモードにはAR(Augmented Reality:拡張現実)技術を応用したARスキャナー機能が追加されている。ARスキャナーを使うと前にスキャンした商品の価格を比べれるだけでなく、レビュー数や5ツ星評価などでも比較が可能となる。
プライスチェッカーによる単純な価格表示よりも商品比較が容易なのだ。
その他、スマートフォンとレジを同期することで即座に決済できるモバイル決済システム「ウォルマートペイ(Walmart Pay)」がある。
毎日の買い物からクリスマスや新年会、誕生日会など特別な買い物用に備忘録としてリストを残すことができる「買い物リスト(Lists)」も便利だ。
いつも購入する商品は再注文してピックアップだけにする「リオーダー(Reorder)」に処方箋のリフィル等が簡単な「モバイル・エクスプレス・ファーマシー」も人気の機能だ。
レジと同期することで振込先などの入力を省いた「モバイル・エクスプレス・マネー」、さらに返品時間を短縮する「モバイル・エクスプレス・リターン」などもある
ウォルマートは先月、バーチャル試着室プラットフォームの「ジーキット(Zeekit)」の買収計画を発表した。
ジーキットのバーチャル・フィッティング・ルーム技術をストアアプリに統合することで、顧客はドレスなどファッションアイテムを自分の画像に合わせて仮想試着ができるようになるのだ。
つまりウォルマートは買い物に便利なアプリ機能を増やすために買収したといえる。世界最大の小売チェーンは、買い物に便利な様々な機能をストアアプリに盛り込もうとしているのだ。
ウォルマートのデジタル・ワクチン・パスポートは限定的な利用となるものの、顧客にとっては紙の確認カードを携帯する必要もなくなり紛失する心配や手間がなくなるのだ。
ウォルマートは顧客満足度を上げるためにも、ストアアプリに便利な機能がさらに追加されていくことになる。
トップ画像:ウォルマートのストアアプリではコロナワクチン接種証明をデジタル記録として残すことができるようになった。QRコードになることでいわゆるワクチン・パスポートとしても利用可能だ。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。コロナ明けにクライアントと一緒にアメリカに流通視察にやってくるコンサルタントは、いずれクビにされる人も出てくると思います。流通業界のDXは注目されている大きなテーマになっています。アメリカの小売業界でDXに不可欠なのはストアアプリ。言い換えればストアアプリなくしてDXを語ることは絶対にできません。なぜならストアアプリが顧客と店の大きな接点になっているからです。ストアアプリは単なる接点というだけでなく、チェーンストアに様々な売上増となる変数も持ち合わせているからです。その一つがクローズド・ループ広告です。顧客はストアアプリの色々な機能を利用して買い物しますが、複数になる接点上に顧客の購買履歴に沿った広告を忍ばせるのです。これも小売チェーンのDX。米国にクライアントと一緒にやってきて一緒に帰国するようでは、日本人コンサルタントはストアアプリを研究することはできません。ストアアプリの重要性が日本の小売関係者にも広がれば、不案内なコンサルタントはお役御免です。
いつも強調しているように変化に勉強や研究はつきものです。変化しないコンサルタントは時代に取り残されます。「DXの原理原則」「DXの基本・本質」など言葉遊びはいりません。必要なのは最先端の事例です。
Posted by usretail at 01:44│
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