
■アメリカ小売業界を語る上で返品制度は不可欠となる商習慣だ。返品制度は「100%満足度保証(100% Satisfaction Gurantee)」と言われ、商品が気に入らなければ100%返金するという制度だ。
100%満足度保証を謳っているチェーンストアや多くのお店では、購入した商品について返品期間内であれば、理由を問わず、使用済みでも、消耗していても返品・返金に応じてくれる。
日本にあまり馴染みのない100%満足度保証は、国や地方自治が命令して行っていることではなく各企業が独自で行っている。
こういった「無条件返品」は100年以上の歴史があり、返品コストは利益に盛り込んでいる。全米小売業協会(NRF)が2017年に発表したデータによると返品率は11%に達した。
返品率が8%だった2015年の調査から3ポイントもアップしていた。また2017年の年末商戦の返品率は13%にも上るとの試算が出されていた。
Eコマースの隆盛により年々、返品率は上がっているものの小売業界にとってはいわば必須になっている。
なぜなら顧客の生涯価値を最大化できるからだ。
顧客の生涯価値とは、一人の消費者が生涯を通じて、顧客となったお店で買い物をしてくれる総計金額。
気に入らない商品があって返金しても顧客の生涯価値からすればわずかな金額でしかない。逆にわずかな金額さえ返金を惜しんでしまったら、莫大になる生涯価値を失うことになるのだ。
顧客の生涯価値を最大化できるために100%満足度保証がある。
100%満足度保証を過去に200%満足度保証にする企業があった。購入したモノが気に入らなければ2倍にして返金するという戦略的なキャンペーンだ。
チェーンストア最大手のウォルマートは生鮮品を扱うスーパーセンターを積極的に出店していった1990年代後半から2000年代初頭にかけて、精肉やデリを対象に200%満足度保証を行っていた。
安売りのイメージが強かったウォルマートは当時、肉好きのアメリカ人から「値段が安いものは、それ相応の品質なので良いものではない」と購入を敬遠されていたからだ。
競合していたディスカウント倉庫型スーパーのフード4レスも対応して200%満足度保証を行っていた。
コストコと同業のメンバーシップ・ホールセール・クラブでウォルマート傘下のサムズクラブも野菜や果物を対象に200%満足度保証を一時期行っていた。
ネットスーパーが盛り上がりをみせる中、新鮮さを売りにするため東部に展開する食品スーパーが生鮮品を対象に200%満足度保証を開始した。
ニューヨークやニュージャージー州などに400店以上を展開するストップ&ショップは生鮮三品を中心にした「フレッシュネス保証(Freshness Guarantee)」を始めた。
ストップ&ショップのフレッシュネス保証は青果・精肉・鮮魚に乳製品、ベーカリー、デリ、花を対象に満足がいかなければ価格を2倍にして返金するというものだ。
ストップ&ショップのお店で購入した場合、フレッシュネス保証の有効期間が30日以内となっている。
購入から30日以内であれば、ストップ&ショップに商品とレシートを持っていけば現金なら現金、クレジットカードならクレカと支払い方法に応じて200%で返金される。レシートを紛失した場合はストアクレジットになるという。
カーブサイド・ピックアップや宅配サービスなどのネットスーパーの場合、有効期限は7日間となる。ネットスーパーでは、ストップ&ショップのカスタマー・ケア・センターに連絡して返金を受けることになるのだ。
トレーダージョーズなど一部のスーパーを除き、アメリカではネットスーパー展開に積極的だ。店での購入にネットスーパーを併用するオムニチャネルショッパーは客単価が最大化するというデータがある。
ストップ&ショップは返金額を2倍にしてもオムニチャネルショッパーを顧客にしたいのだ。