
■ネット通販最大手のアマゾンは今月初め、リアル店舗の「アマゾン・ブックス(Amazon Books)」「アマゾン4スター(Amazon 4-Star)」「アマゾン・ポップアップ(Amazon Pop-up)」の全店をスクラップすることを発表した。
アマゾンはリアル店舗展開の方針を見直し、全68店を閉鎖するのだ。
アマゾンのリアル店舗展開ではITに目が奪われがちだが、アマゾンのリアル店舗展開で初となったブックストアも実は書店として多くの革新性があることをあまり知られていない。
2015年に1号店をオープンした書籍専門店のアマゾン・ブックスは12州とワシントンDCに24店舗を展開。
100坪〜200坪となるアマゾン・ブックスは多くの点で通常の書店と異なっていた。例えばアマゾン・ブックスは当初、すべての書籍の表紙を正面に向けた陳列方法「面陳(面陳列)」「面展(面展示)」を採用していた。
最も異なるのはカスタマーレビューはあるものの当初はプライスカードによる価格表示がされていなかった点だ。
アマゾン・ブックスはダイナミック・プライシングのネット通販と価格を同一にしている。需給状況に応じて価格が毎日のように変動しているため、数年前までプライスカードによる価格表示がされなかった。
本の価格を知るには、店内にあるスキャナーで本の裏表紙にあるバーコードをかざすか、アマゾン・アプリのカメラ機能を使ってスキャンする必要があった。
現在までに平積みや面陳には電子タグが付くようになってはいたものの、棚差しの本には電子タグは付いていなかった。
アマゾン・ブックスはまた決済がキャッシュレスということも特徴的だった。クレジットカードやデビットカードのみの支払いで、現金決済ができないようになっていたのだ。
アマゾン・ブックスではアプリから支払える決済機能も追加されていた。レジ近くにPOPにある「アプリからのお支払い」のQRコードをアプリで読み込むと利用者のアカウントに紐付けて決済ができたのだ。
昨年から手のひら決済「アマゾン・ワン(Amazon One)」での支払いも導入されていた。
アマゾン・ブックスが最も異質なのは売り場で確認できた。日本の書店では絶対に真似できない書籍のくくり陳列を行っていたのだ。
通常の本屋では著者別やフィクション/ノンフィクション、サイエンスフィクション、歴史、伝記、ビジネスなどのカテゴリー別に括って本を置いている。
アマゾン・ブックスでは「アメリカ北西部のノンフィクション・ベストセラー作品(Nonfiction Top Sellers in the pacific northwest)」、4スターストアの出店にも影響した「星数4.5以上の高評価デビュー小説(Highly Rated Debut Novels 4.5 Stars and Above)」「2021年アマゾンのベストセラーから我々のイチオシ作品(Our Picks from Amazon.com's Best of the Year 2021)」などのセクションが設けられていた。
例えばアマゾン・ブックス1号店のオープン当初に「スタッフ・フェバリット(Stuff Favorites)」と題して、アマゾン創業者で元CEOのジェフ・ベゾス氏の推薦図書があった。
そのときのベゾス氏のイチオシは、ベゾス氏の当時の妻であるマッケンジー・ベゾス氏の「トラップ(Trap)」や、この後にノーベル文学賞を受賞するカズオ・イシグロ氏の「日の名残り(The Remains of the Day)」が並べられていた。
「愛を伝える5つの方法(The 5 Love Languages)」「ギフト・オブ・フェア(The Gift of Fear)」「セブンイヴズ(Seveneves)」の全5冊があった。
自分の妻の作品についてベゾス氏は「作者は私の妻であり、受賞歴もある小説家で面白い作品」とコメントを残していた。
カスタマーレビューが1万件を超える本や部屋のインテリアにもなる「テーブルに置くと映える本(Coffee Table Book)」という括りもあった。
アマゾン・ブックスでは他店がマネできない革新的な本の括り方を採用していた。
その一つが「この本がお好きなら...(If you like)」という本の括りで、ユーザーの本の購入データから「この商品を買った人はこんな商品も買っています」のレコメンデーションを本屋でも採用していたのだ。
2つ目の異質セクションは「読みだしたら止まらないページターナー(Page Turners)」もしくは「(面白過ぎて)本をおけない(Unputdownable)」。
電子書籍リーダーのキンドルから得られたデータをもとに「3日以内で読み終えた本」の括りだ。読みだしたら、やめられない、とまらない、ぐらい面白い本を並べていた。
そして3つ目に「電子書籍キンドルで最もハイライトされた本(Highly Quotable)」の括りがあった。
キンドルには、文章で重要だと思ったところや、気になったところを蛍光ペンで線をひくようにマーキングできる機能がある。
キンドルで読んでいると途中で、例えば「187人がハイライト」と注釈が入り、点線が引かれている文章がある。
同じように自分にとって重要だなと思えば、指で文章をなぞってハイライトをする。ハイライトをつけた人数が多ければ多いほど、多くの人がこの本を読んでいて、刺さった、感動した、共感した人が多いということになる。
つまりハイライトが多いほど、重要なこと、共感できることが多く書かれていたということになるのだ。
そんなに刺さる文章が他を圧倒するほどあるのなら、一度は読んでみたいと読書家なら思うかもしれない。
コロナ禍で本の需要が高まったことから、アメリカでも紙の本の売れ行きが伸びている。
NPDブックスキャンによると2020年は7億5,790万冊の本が売れ数量ベースで前年比8.2%も増加した。2021年には8億2,570万冊とさらに8.9%も伸長したのだ。
アマゾン・ブックスの売上も伸びていたと推測できるのだがスクラップとなった。
アマゾンは昨年11月、コーヒーチェーン最大手のスターバックスと提携した「スターバックス・ピックアップ・ウィズ・アマゾン・ゴー(Starbuck Pickup with Amazon Go)」をニューヨーク・マンハッタンにオープンした。
レジなしのコンビニであるアマゾンゴーはシアトルの郊外に開店する計画もある。
個人的には郊外にスターバックス・ピックアップ・ウィズ・アマゾン・ゴー&アマゾン・ブックスが展開されることを望みたい。
トップ画像:シアトル市内に2015年にオープンしたアマゾン・ブックス1号店。