2023年05月03日

【アルディ】、新規出店120店!レジ係りが座っているのはレジスピードが早くなるから?

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■インフレを追い風にディスカウントスーパーマーケットのアルディの快進撃が止まらない。ドイツ資本で38州に2,240店以上を展開しているアルディは29日、今年度中に120店舗をオープンすると発表した。

アルディによると昨年度、新規に139店をオープンもしくは改装し、新たに940万人の顧客を獲得した。

実際、物価高を追い風にアルディの客数は増加傾向となっており、実店舗の客足をモニタリングする調査会社のプレイサーai(Placer.ai)が2月に発表したデータでも2020年第4四半期からほぼ右肩上がりで客数が増加している。コ

ロナ前となる2019年第4四半期に比べて2022年第4四半期は30.8%も客数が増えている。2022年は2019年に比べて客数が9.3%も増加しており、前年となる2021年と比べても7.3%の増加となっているのだ。

プレイサーaiはあくまでも客数だけをモニターしているため、客単価は考慮に入れておらず売上高で比較すればさらに大きい増加率となると推測されるのだ。

アルディは昨年9月、既存店・売上高前年同期比が二桁の増加となったとの異例な発表を行っている。売上高などの詳細は明かさなかったもののアルディによると、インフレの影響もあり100万人もお客が増え、多くが中・高所得者層だった。

またアルディは今年4月までに530万人の顧客を新規に獲得したと明かしているのだ。顧客数の増加で第1四半期中だけでも35店舗のオープンとなる。

  アルディは店への集客だけでなく、オムニチャネル化も進めており2月には宅配サービス大手のドアダッシュと契約をし38州2,100店で宅配サービスを行うことを発表した。

アルディはすでにインスタカートと提携しており、宅配サービスだけでなくカーブサイド・ピックアップもおこなっているのだ。

 ディスカウントスーパーだけあってアルディはローコスト運営を徹底している。1,500アイテムと絞られた商品の9割はプライベートブランド(PB)となっており、同等のNB商品と比べて最大60%も安い。

低価格を実現するためPBの品質を落とすようなトレードオフは行っていない。

アルディの100%満足度保証では「保証は2倍(Twice as Nice Guarantee)」と謳っており、返金だけでなく代替品も進呈としているのだ。

品質面は青果物にも現れており品揃えを20%も増やしながらも、その新鮮さから5年間で果物や野菜の売上は70%も増加したという。

低価格を実現できるのは、400坪前後となる売り場に施すローコスト・オペレーションにある。

代表的なのが25セントのレンタル式(デポジットで返却時に返金)ショッピングカートだ。レンタル式にすることでショッピングカートはいつも指定された場所に戻されることで盗難コストが減少する。

駐車場に無造作に放置されて、ダメージを受けることもないのでメンテナンスも不要だ。スタッフがカートをあつめる手間も省けて人件費の圧縮にもなっている。

店内のインテリアが実質本位で余分な装飾は一切しないノーフリル(no-frills)もローコスト運営の工夫の一つとなる。

店内ではライセンシングフィーのあるBGMを流していないのもアルディ流だ。商品陳列も段ボール箱を開けて積むだけのオープン・カートン・ディスプレイ(open carton display)を採用し、スタッフが商品を一つ一つ棚に並べる必要がない。

対面のデリ・精肉コーナーもなく、袋詰めのスタッフもいない。こういった工夫で人件費を最小に抑えているのだ。

さらに細かく指摘するなら、PB商品のパッケージにはパーコードがマルチサイドにつけられている。スキャニングミスがなくなり、レジ係りのオペレーション効率を上昇させる。

また多くの店舗では午前9時〜午後9時の12時間営業となっている。24時間営業のウォルマート・スーパーセンターや、最大18時間営業(早朝6時〜深夜0時)となる競合スーパーよりアルディの営業時間は短いのだ。時短営業でも人件費を抑えていることになる。

 人手不足によりアルディでは2021年頃から一部の店舗でセルフレジの導入を始めている。昨年にはオハイオ州の一部でもテスト導入されていることが目撃されているのだ。

アルディは今年に入って、ニューヨーク州北西部のロチェスター郊外にあるグリース地区などセルフレジを徐々に拡大している。

なおアルディのセルフレジはキャッシュの利用が不可となっており会計はクレジットカードやデビットカード、アップルペイにグーグルペイでの支払いのみ。

新規となる120店舗にはオープン時からセルフレジが導入されているのかに注目が集まりそうだ。

トップ画像:アルディのレジ係りは座って仕事を行う。座っていることで身体への負荷が軽減されることもあるが、アルディが行った実証実験によると座っている方がレジスピードが早くなることからシーティングが採用されているのだ。あくまでも効率重視ということになる。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。アルディのローコストオペレーションはレンタル式のショッピングカートなどがよく知られています。効率化重視という意味であまり知られていない部分ではレジ係りが座って仕事をしていることもあげられます。アルディによると、座っていることで身体への負荷が軽減されることもあるのですが、実証実験によると座っている方がレジスピードが早くなることからキャッシャーのシーティングが採用されているのです。レジ係りの会計スピードはモニタリングもされ(毎日のレポートもあり)1時間当たり1,200アイテムのスキャニングが目標とされているとのことです。1分間では20アイテム。素早い会計のためレジ係りは牛乳や水など人気商品についてはバーコード番号を覚えるように指導されるのです。ところでレジ係りにいえば、クォーター(25セント)硬貨がなくてもショッピングカートを用意してくれたりします。というのも1ドル紙幣を25セント硬貨に両替しようにも、そもそも現金を顧客が持ち合わせていないことも増えているからです。
 ところでウチの近所のアルディでは日本人の男性が働いています。レジ係りになると挨拶等の声が大きく動きが機敏なので、ちょっと誇らしく思えています。