2024年02月05日

【コストコ】、不適切にもほどがある!2年半つかったソファを「気に入らない」で返品?

240205コストコ
■アメリカ小売業は返品に対してとても寛大だ。通常1〜3ヶ月間となる返品期間なら「気に入らない」という理由でカンタンに返品できるのだ。

このほどシアトルの女性が「2年半使ったソファをコストコに返したら返金できた」との動画をアップし大炎上となっている。

コストコは寛大な返品制度でもよく知られている。

家族で長年使い続け「気に入らない」という理由だけで返品できたことを驚きとともに、厚顔な女性に対して批判が殺到しているのだ。

ワシントン州シアトル在住のジャッキー・グエンさんが23日、TikTokにコストコで購入したソファを返品する様子を投稿した。

動画の冒頭にはジャッキーさんがリビングルームにあるL字型の大きなソファを映しながら、コストコに返品すると説明。

グエンさんによると、同ソファは2年半以上も前に購入したもので、購入日は覚えているもののレシートは紛失していた。

グエンさんらはピックアップトラックでソファを運び、コストコの返品カウンターの行列に並んで返品を開始したのだ。

担当者がコンピューターで会員であるグエンさんの購入履歴を確認して返品に返金も完了したという。

ただこのTikTok動画は300万回以上も再生されるだけでなく、返品に対する彼女の倫理観が議論されることにもなった。

肯定的な意見よりも「返品を乱用している」などとネガティブな意見や感想が溢れていたのだ。結局、脅迫的なコメントも目にしたことからグエンさんはコメント機能を無効にした。

 こういった倫理観を問われるような返品は実はたまにある。数年前の1月にもコストコで購入したクリスマスツリーを返品する人が行列にいて話題になっていた。

見方を変えれば返品を乱用していると思われるようなお客が話題にのぼるのは自然なことでもある。なぜならそれだけ大半のお客は返品に対して慎重な姿勢をとっているからだ。

本当に問題になるような返品があるのなら、そもそもコストコは返品に厳しい制限を設けているはずだろう。

実はコストコは17年前、家電製品の返品期間についてそれまでの6ヶ月間から90日間に短縮した。コストコの家電売上は当時、年間総売上高の5%にあたる30億ドルを占めていた。

お客が大きな薄型テレビを設置できずに返品したり、薄型テレビ販売価格の急激な下落で不満に思ったお客が返品したりと、家電製品の返品は同社で大きな問題になっていたのだ。

半年前に購入した7,000ドルで購入した50インチの薄型テレビが5,000ドルに値下がりしていれば誰だって古いテレビを返品しながら新しいものを購入して差額の2,000ドルを得たいと思うものだ。

それだけ2007年前後、プラズマテレビや液晶テレビ等の薄型テレビの値下げが常態化していた。

ちなみに50インチのテレビの価格は現在、当時より多機能高性能となったうえで安いものでは200ドル台にまで落ちている。

 テレビなどテクノロジーの進化が早いものは寛大な返品に適さない一方、ソファなどは寛大な返品でも対応するのがアメリカ小売業だ。

なぜならアメリカ小売業は顧客の生涯価値に根ざして商売しているからだ。

英語で「カスタマー・ライフタイム・バリュー(Customer Lifetime Value)」とはお客が生涯を通じて死ぬまでその店で支払う総額のことを意味する。

アメリカの大手チェーンストアでは顧客の生涯価値を最大化することを目的にしている。

したがっていくつかの「気に入らない」等を理由にした返品があっても想定内であり、それ以上に買い物をしてもらうことを念頭に置いてビジネスしている。

特にメンバーシップ・ホールセール・クラブのコストコは商品を売って儲ける小売ビジネスではなく、会員を増やして会員費で儲けるビジネスモデルとなる。

2年半も使い倒したソファが返品されても、コストコでは想定されていることになる。それ以上にメンバーシップを更新し続けながら、コストコでの買い物を習慣化していくことに価値がある。

人は習慣の生き物である。買い物にも現状維持バイアスが働き、他のお店に浮気することなく顧客の生涯価値が最大化することをコストコはわかっているのだ。

 最近では返品レスも拡大している。返品レスとは返品しなくても返金してくれる慣習だ。

例えば当社のワークショップ研修ではウォルマートでネットスーパー注文をする際、受け取ったあとでアプリを使って野菜や果物を返品処理する。

プルダウン・メニューにある「気に入らない」などの理由を選択すると「返品は必要ありません(No need to return)」という文言とともに返金だけが完了するのだ。

 参加者全員が驚くもののアメリカ小売業が最大化するライフタイムバリューを学ぶことになる。不適切にもほどがある!返品も実は想定内なのだ。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。「現状維持バイアス」とは、 未知のものや変化を受け入れず、現状維持を望む心理作用のことです。アメリカ小売業を現状維持バイアスで見る人はいません。が、アメリカ小売業はどんどん変化しながらも、人間の心理である現状維持バイアスを利用して顧客を(あまり良い表現ではありませんが)餌付けするのです。その一つが返品制度。「100%満足度保証」の返品ポリシーがあることで、お客はその店で買い物することを習慣化してしまうのです。習慣化してしまうと他の店で購入することができなくなります。典型的なのはアマゾンでしょう。アマゾンではサブスクのアマゾン・プライムまで使って、顧客を餌付けしているとも言えます。習慣化されてしまっているので多くの人にとってネット購入で最優先されるのがアマゾンとなるのです。「ネットで買い物といえばアマゾン」とマインドシェアとも言います。マーケティング的にいえば消費者のブランドに対する相対的な好意度、選好性の「プレファレンス(Preference:好意度)」を意味します。
 返品は寛大がアメリカ小売業です。何度も強調しますが買い物は一期一会ではありません。お客が生涯に渡ってウチの店で買い物をしてもらうよう競争しているのです。