2006年08月21日

子猫殺し

なんかネットで騒動って多いんだね。新聞の投稿欄よりも選者が仲介しないだけ、ストレートな反応が多いけど。

livedoor ニュース


このエッセイを読む限りだと、この女流作家さんの云わんとしている事って、少し判るけどね。動物虐待とか、そっち系じゃなくて、人間の身勝手だと判っているが故の確信犯っぽく感じる。焦点は「子猫を殺す」って行為が問題なんだけど、どこか姥捨山の話とか、競走馬の安楽死処分の話とか、そんなものに共通したものを感じなくもない。

小さな頃の記憶――。確か日曜日の午前中だったと思う。家の裏手にある用水路でザリガニを採ろうと畦道を歩いていた。ふと用水路を見ると奇妙な薄ピンク色をした肉塊があった。いや、最初から肉塊だなんて思わなかった。何かゴミが浮かんでいるのだと思い、腰をかがめてその物体を観察して、初めて理解できたのだった。よくよく見れば、それは猫の死骸だった。体毛がなく、薄ピンク色をしていて何かしら気味が悪かった。丁度、柳の下に登場する足のない古典的な幽霊のような格好をしていた。前脚を浮かばせ、後脚は沈んでいる状態で用水路の中に浮かんでいた。その肉塊の格好が「うらめしや」のポーズに似ていて、当時の私は真剣に河童の死骸でも発見したんじゃないかと思ってマジマジと観察した。

家に戻ってから母に怪しい肉の塊を発見したことを打ち明けた。出来れば母にも確認させたかったが、母は迷うこともなく告げた。
「猫の死骸だね。××さんの家の猫が子猫を生んで困ってたみたいだし」

その××さんの家というのは過去にも子猫をダンボールに入れて用水路に流していた。そういえば××家のおじいさん自身も、そんな話を悪びれるでもなくしていた。とても残酷な話だが、昭和40年代〜50年代頃までは猫に避妊手術をする飼い主など殆どなく、子猫を川に流してしまうという行為も、さほど珍しい話でもなかったようだ。

よくぞ、そんな残酷なことが出来るものだ、と思った。が、おそらくわが国の古い時代の寒村などでは、そんな事は日常茶飯事ではなかったか。保健所へ連絡すべき? それは今だからこそ、そんな発想をするのであって、当時の社会で飼い猫は愛玩動物であるものの、家畜との区別も曖昧だったように感じる。ニワトリを飼っている家では当たり前のようにニワトリをシメた時代。猫とて飼い主自らが始末したのではないかと思う。

坂東氏のエッセイで気になるのは、そこだ。おそらく、坂東氏の年齢はそこそこの年齢と思われる。だから、当たり前のように家畜を処分する時代を知っていたと思う。
「子猫の死をも飼い主の手で…」とあるように、昨今、頻発している動物虐待の事件とは性質を異にする問題だと感じる。

つい先日、人間の話だが、延命治療を望むか否かのアンケート調査の結果を新聞で読んだ。6割〜7割の人が延命治療を望まず、更に延命治療を望まない人の大多数は身内の延命治療を目の当たりにして、そう感じているというデータがあった。意識もないまま体中に管を通されて生きている肉親の姿を見てしまえば、自分の死に際しては余計な延命治療はして欲しくないと明確に判ってしまう為だ。私も父の死に際して、同様の感慨を持った一人だ。手のほどこしようのない患者を、管だらけにする意味が判らない。(呼吸器は勿論だが、尿道にチューブなどをつけ排尿させる。末期になると腎不全などが起こるので尿が出なくなるのだが、それらを確認する為に管を通す。痛いに決まってるじゃんねぇ。)

坂東氏の行為を好ましいとは思わないけど、糾弾に値するかどうかは微妙かも。むしろ、保健所に電話して始末したとして、その飼い主が罪悪感を背負わないのであれば、考えようによっては手を汚さないだけ、そちらの方が罪深くも感じる。

猫のような愛玩動物とか、食用の牛やら豚、サラブレッドなんかも経済動物って側面は否定できなくて、人間の為に生れてきて、生かされている。愛玩動物の場合、基本的には殺さないからピンと来ないけど、人為的に交配して、売買されてるし、少なからず人間の都合と最初から無縁じゃない部分で生きている。「ペットを飼うべきじゃない」なんてバカな事は云わないけど、ペットを飼う行為って、潜在的に『人間の傲慢さ』が隠れているんだと思う。

この女流作家がどんな性格なのか知る由もないけど、ペットと人間との関係の上にある人間の身勝手を罪と捉え、『敢えてその罪悪感を私が背負う』という思考なんじゃないかな。作家という職業からしても、そうしたネガティブな部分も「業」として見つめている気がするけど。

ussyassya at 22:41│Comments(11)TrackBack(9)世相・社会 

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この記事へのコメント

1. Posted by P45   2006年08月22日 00:46
通りすがりに済みません。

>姥捨山の話とか、競走馬の安楽死処分の話とか、そんなものに共通したものを

これは全く違うと思います。
わざわざ産ませて殺すんですよ。
共通してるとは思えません。

延命治療の話もここで持ち出すには
相応しくない、論点のズレたものに思えます。

この作家の選択肢に何故「飼わない」が無いのか。
そこが理解できません。
昔は捨て猫なんてたくさんいた、なんて
現代社会に生きる、しかも作家という職業なら
そんなナンセンスな事言うでしょうか?
不思議でなりません。
2. Posted by メロンぱんち   2006年08月22日 01:01
P45さん>
コメント有難うございます。妙な記事ですみません。違和感あったと思いますが、坂東氏の行為自体が理解に苦しむというか…。

いずれにしても、冒頭に書きましたが大騒動になってしまう事への疑問も踏まえての投稿なので、氏の行為を擁護するものではありません。

回想部分は「昔は捨て猫なんて珍しくなかったから、猫殺しなんてどうって事はない」という投稿ではなく、そうした体験や経験などが彼女の行為に影響を及ぼしているのだろうという関係性への言及という程度と考えて下さい。

延命治療の話は【生命】を司るものの正体に触れたくて引用してみました。彼女は「私が全てを背負う…」と考えているのであろうな、に至る伏線というか、導入部分というか。
3. Posted by メロンぱんち   2006年08月22日 01:30
本文中には書きませんでしたが、批判が充分に挙がってしまっている以上、同調ではなく、坂東氏を理解する為のアプローチなのですが読みにくくてすみません。(歩み寄りがあるの意)

氏の主張である「人間の干渉なく、自然のなかで生きることだ」には実は反対です。生まれ落ちてしまった以上は生かされるべきが正論である事は間違いないでしょうし、現実にペットが存在する以上、可愛がるのが正論でしょうから。
4. Posted by ぇめ   2006年08月23日 14:38
はじめまして。
とても参考になるご意見を述べていらっしゃるなぁと思い、
私のブログでリンク&トラバ送信させて頂きました。

私自身は、作家さんの考えには大反対ですし、到底許せることと思えません。
ですが、めろんぱんちさんの記事を読んで
色んな物の考え方、捉え方があるんだなぁと勉強になりました。

5. Posted by メロンぱんち   2006年08月23日 15:30
ぇめさん>
コメントならびにTB有難うございました。「色んな物の考え方、捉え方がある」と解して頂いた事、大変、嬉しいです。

既に猛烈な批判の渦中にあり、感情的に火に油を注ぐよりは、この作家さんの思考を理解しようと歩み寄ってのもので、その行為を肯定するものではありません。複雑ですが、そのあたりの事情も額面通りに解釈していただき光栄です。
6. Posted by terutell   2006年08月23日 18:05
はじめまして。
「子猫殺し」のエントリーが興味深かったので、私のブログの「そこに空地があるから」というエントリーで参照として挙げました。
以下の指摘は特に参考になりました。

>坂東氏の年齢はそこそこの年齢と思われる。だから、当たり前のように家畜を処分する時代を知っていたと思う。

また、次の部分は、私も同じようなことを考えていたので、共感しました。

>坂東氏の行為を好ましいとは思わないけど、糾弾に値するかどうかは微妙かも。むしろ、保健所に電話して始末したとして、その飼い主が罪悪感を背負わないのであれば、考えようによっては手を汚さないだけ、そちらの方が罪深くも感じる。
7. Posted by 匿名希望   2006年08月23日 19:40
5 記事に共感しました。 
今ネットで沸き起こっている論争は、あまりにも短絡的でありきたりな道徳感で片付けられており幼稚です。この作家を非難しない人間=擁護している=犯罪予備軍と飛躍し皆で「そうだそうだ」の大合唱ですね。色んな視点があり解釈がある、という見方ができる人が少なく、だから日本人は議論が下手糞なのだと言われる所以なのだと実感してます。 

「ペットと人間との関係の上にある人間の身勝手を罪と捉え、『敢えてその罪悪感を私が背負う』という思考なんじゃないかな。作家という職業からしても、そうしたネガティブな部分も「業」として見つめている気がするけど。」
非常に感じました。的確に言い得ておられると思います。
8. Posted by MUTO   2006年08月23日 23:06
はじめまして。

> 焦点は「子猫を殺す」って行為が問題なんだけど

焦点はそこではなく、「発情期を迎えて妊娠、出産する」ところまでを雌猫の生の喜び、充実であると規定して、産まれた子を育てるところはどうでも良いと断定するこの作家の歪んだ価値観でしょう。
多くの動物の性が人間や類人猿と異なり生殖と不可分であることは「人間の都合で」考えても容易に判ることで、もし猫が話せたとしても出産まで体験したら生まれた子は廃棄する…なんて話を呑むとは普通は想像しないでしょう。

『可能な限り生セックスを楽しむのが雌としての生の喜びで、不随して生まれる邪魔な子供を殺せば良い』
という価値観への違和感が、多くの批判の中心にあるのだと、私は思いますよ。 決して、単なる「動物可哀想」vs.「どのみち人間の都合だもん」の諍いではない。
9. Posted by メロンぱんち   2006年08月24日 02:23
terutllさま>
匿名希望さま>
コメント有難うございました。(連名でのレスですが、気を悪くなさらないで下さいませ。)

渦中の女流作家の行為は、理解不能な訳ですが、批判に終始するよりも彼女がエッセイとして告白している以上、何かを訴えるつもりなのであろうと、読み手からも解釈しようという姿勢もなくては…ですね。

サラブレッドの安楽死の話などは、直接的には関係ない訳ですが、おそらく、そんな普遍的テーマを女流作家さんが背負っているつもりなのだろうと感じなくもない…というか。
10. Posted by メロンぱんち   2006年08月24日 02:28
MUTOさま>
コメント有難うございました。興味深く拝読いたしております。
この作家さんが多少、エキセントリックな感性である事は間違いないと思いまう。また、MUTOさんのおっしゃる【メスの快楽】という視点も興味深くあります。(例のエッセイに目を通したのみですので、深くは論じられませんが)

問題を感性で片付けるつもりはないんですが、必ずしも感性と道徳は一致しない事が多いように感じいています。
11. Posted by diablo 3 gold   2013年03月23日 22:53
きないんじゃないだろか。

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