2010年07月16日

ヒロシマ

ヒロシマに原爆を投下したエノラゲイに搭乗して、原爆を投下した爆撃士は、ボストン郊外の農家に生まれた当事26歳の青年でだったという。夢はボストンレッドソックスの野球選手になる事だった―――

英BBC「世界に衝撃を与えた日」で、「マンハッタン計画」編、「チェルノブイリ原発」編、そして「ヒロシマ」編と視てみました。果たして「核」がイギリスでどのように取り扱われているのかは興味がありますし、やはり、アングロサクソンの側から眺めた《核》とは何なのかというのも興味深いものがありますし。

核分裂を利用して、悪魔的なまでの破壊力を誇る原子爆弾を製造、そして投下する。そのことに良心の呵責が無かったのだろうか? 

これは率直な疑問です。戦争とは合法的殺戮で、そこの法律は存在しませんが一応は国際法で非戦闘員(兵士以外の民間人)を殺す事は犯罪だし、そもそも法律以前に人間には大量殺戮をする事に対して、畏れがあるでしょう。一瞬にしてヒロシマでは10万人、ナガサキでは8万人、それ以外にも爆心地に居た犬猫、カエルやトカゲ、昆虫の類いまで全て焼き尽くす人類史上最大級の《大罪》は、どのような理屈で、そして、倫理や宗教を超越して何故、あれほどの惨劇を起こせたのか非常に興味深い。

エノラゲイの機内の様子、原爆投下に直接的に携わった者たちの心情、それと作戦司令部の指示。ただただ無機的に描かれているだけに、先日のドキュメントとヤラセの話ではありませんが、緊張感が伝わってくる。

先ず、エノラゲイの搭乗員らは、原爆投下の半年前から極秘任務プロジェクトとして召集される。冒頭で掲げましたが、爆撃士の生い立ちなどは一般的な農家の息子として生まれ、レッドソックスで野球選手になるのが夢だったというフツウの青年である。エノラゲイの機上からキノコ雲を撮影したカメラマンは当事21歳の成年で、これまた生い立ちはフツウのカメラ好きな青年兵士である。

情報は厳重に管理されており、通信は特別な暗号が使用されていたという。その新型爆弾の存在はプロジェクトチームを指揮した者、ただ一名しか知らされていないという厳重な情報統制ぶりで、エノラゲイの搭乗員は広島へと発つ一日前まで原子爆弾そのものの存在を知らされていない。

極秘任務としての訓練は受けていたが、休憩時間にはキャッチボールなどをして過ごす、ごくごくフツウの兵士であったりする。

マンハッタン計画による核開発で臨界に成功する。その後にはメキシコ州の軍事基地で原爆実験を行なっている。その威力が悪魔的なまでに強大である事が想像できているものの、科学者らも、その圧倒的な威力を畏れ、「地表が割れてしまうのではないか?」という懸念さえあったという。そうした中、実験で、あの威力を知る。

かくして「リトルボーイ」と名付けられた原子爆弾は戦艦で広島への空爆の拠点となるテニアンへ輸送される。半年間の極秘訓練を受けた兵士達もテニアンへ向かわされる。

マンハッタン計画の段階では、当初はナチスとの核爆弾開発競争が存在していたという。故に、アインシュタインは米政府に科学者を紹介し、マンハッタン計画が始まる。しかし、ナチスはソビエトにベルリンを包囲され降伏。すると原子爆弾は対ナチスではなく、米軍に甚大な損害をもたらせているジャップに用いられる事になったという経緯がある。

トルーマンからは7月4日以降の、なるべく早い時期に原爆を投下せよという命令が着ており、プロジェクトチームは天候だけを心配していたが、その日、ついに作戦決行を決断した。

テニアンの米軍ベースからリトルボーイを搭載した三機が飛び立つ。その内の一機がエノラゲイだったが、その段階でも原爆投下地点は明かされなかった。この瞬間、トルーマン米大統領は大西洋上の船内におり、エノラゲイ離陸成功の打電を受け取る。

エノラゲイは雲海の上を飛行している。雲の下にあるのは太平洋のみである。テニアンから、およそ6時間もかけてエノラゲイは日本へ、そして広島を目指していた。この頃、大西洋のトルーマンは新型爆弾の開発に成功して、それを日本の某都市に投下した旨の声明文草稿に目を通している。そのタイプライターで作成された声明文草稿は、原爆投下を世界に宣言する為の声明文であり、人類の歴史を変える事になる一大事を世界に宣言するものだった。この時点で声明文には【HIROSHIMA】の地名は無かった。トルーマンはじめ、一部の者にしか爆撃目標は知らされておらず、声明文草稿には地名を記入しなかったという。その空白には原爆投下作戦成功後、ペンで【HIROSHIMA】と書き込んで原稿とされる。

広島上空。夏の朝は雲一つない晴天であった。既に広島の人々は戦争で疲弊しており、ここのところ三日ほど連続してエノラゲイと同型のB-29爆撃機が上空を飛び、その都度、警報が発令されていたが爆撃は無かった。そうした経緯もあった為、広島の人々は防空壕に入ろうという者もなく、街はいつものように動いていた。

軍需工場での労働に向かおうとしていた国民学校1年生の女子生徒は「豆ごはん」という当事の御馳走を弁当箱に詰めて家を出て、爆心地500メートルの河原で弁当箱を膝の上にして佇んでいた。

或る4歳男児は前夜に親から買ってもらった真新しい三輪車に乗って庭先で遊んでいた。爆心地から1500メートル。

エノラゲイは機上で、リトルボールを起爆状態にして投下地点を探していた。目標としていた地点が近づき、投下1分前から機内には高音の警告音が鳴らされた。搭乗員は目をやられないように離陸前に手渡されていた特大のゴーグルを目に当て、その歴史的瞬間に備えた。高音で鳴り響くブザーが嫌が応にも緊張感を高める。

投下。

リトルボーイは投下後、42秒後に爆発するように仕掛けられていた。42秒という空白の後、エノラゲイの搭乗員は、とんでもないスケールのキノコ雲を見ることになった。上空1500メートルを飛行していたが、そこに立ち上ったキノコ雲はエノラゲイよりも高かった。キノコ雲を作っている煙の中、ところどころ赤い炎が見えた。なにか、途轍もない破壊力の爆弾を投下したのだと呆然とした。

爆心地から1500メートル地点にいた男児の乗っていた三輪車は高熱で焼かれ、大部分が溶けていた。男児は死亡していた。遺体は遺体が発見された庭に埋められたが、それから30年後、正式な墓へと移された。

爆心地から500メートル地点にいた女子生徒の遺体は、とうとう見つからなかった。高熱で焼かれて灰になってしまったと思われる。周辺の瓦礫の下から女子生徒の弁当箱だけが焼け焦げ、変形して発見された。弁当箱の中身にあった豆ごはんは、ただの炭になっていた。

何が起こったのか理解できないまま、広島の人々は泣き叫んでいた。原爆投下当日に一人の報道カメラマンが広島に入り、自らに「私は報道カメラマンなのだ。喩え冷血人間だと思われても、この歴史的瞬間を写し、歴史に残すのが私の使命だ」と半裸の人たちにカメラを向けてシャッターを切った。しかし、涙が止まらない。焼けただれて男か女かの判別さえつかない。横たわった母親の傍らで泣き叫ぶ赤ん坊の声に胸が苦しくなった。カメラマンは、4枚しかシャッターを切ることが出来なかった。

その日、その瞬間、人類は変わった。世界は変わった。歴史は変わった。

後に核実験で、原爆は爆発とほど同時、コンマ6秒で絶大な爆風と高熱で家畜のような生命体を含む、なにもかもを一瞬で焼き尽くす威力であると指摘された。ヒロシマへの一撃は、生身の生きた都市でありながら原爆を投下された。

その後、ナガサキにも原子爆弾が投下され、間もなくジャップは降伏した。

番組のラストシーンは、戦勝パレードに歓喜する米国の人々と、紙吹雪、そして星条旗の映像。その映像に続いて、いがぐり頭の日本人少年が真っ直ぐにカメラを見つめるという映像に切り替わってエンドロールへ。


無機的な描き方ではありますが、突き詰めると番組は「核」に否定的だったかのように思いました。チェルノブイリ編では、「これが人類に対しての最後の警告である」というナレーションで終わった事もありましたが、ヒロシマ編の無機的な描き方は、無機的であるが故に、その罪の大きさ、そこから脱出が出来ない絶望的な罪の大きさが伝わる。

実際に、その後の世界の歴史は核兵器を中心にして米ソ二大構造が支配し、ソビエト崩壊後も核兵器は更なる進化した形で拡散し、未だに悪の論理から人類は脱出できてない。

トルーマンは戦争犯罪に問われるべきだったんじゃないんだろか? 少なくとも裁判にかけられるべきだった気がします。

原爆投下を支持した者たちの言い分は「日本に上陸すれば100万人の尊い米兵の命が失われる可能性がったから仕方なかった」という。しかし、そうではないのも明白です。当初、マンハッタン計画は対ナチスを巡る新兵器開発計画であり、既に本土爆撃に成功している日本に投下する必要なんて無かった訳です。東京大空襲にしても非戦闘員への攻撃は国際法違反。そして、その罪深い大罪の上に、今も国際秩序や現代社会が在る。

戦争なんてものは、勝ってなんぼって事なんでしょう。倫理なんてものは、合理主義的な価値の手にかかったら弱いものです。「正義」や「平和」なんてものは幻想に過ぎないのかも知れないと気付かされる。

もし、自分自身が意思決定者、或いは実行者の立場であったなら、相当な重圧があっただろうし、その後の後悔も絶大であっただろうと想像します。その一撃で十万人からの人命を、個人的怨恨もない、そこにある全ての生命を一瞬で滅ぼしてしまう大罪に手を貸せるかどうか…。





かつて左翼系論客(清水幾太郎氏)が、核武装論を展開して、周囲を驚かせたといいます。清水の核武装論の核心は、

「日本は被爆国なのだから核武装する権利がある」

というものでした。

字面だけ負うと、トンデモない話だと感じるでしょう。実際、とんでもない提案です。

何故、そう思うのかというと、通常、日本人の核に対しての見解は、「日本は被爆国なのだから核廃絶に努めるべきであり、それが被爆国日本の指針に決まっているじゃないか」というのメインストリームだからです。

ですが、問題は「核」の話なんです。一瞬で周囲を地獄にしてしまう「核」に係わる問題です。悪魔的破壊兵器であると知りながら、誰もそれを捨てようとしない「核」の話なんです。

もし、本気で、この世から絶対に核を廃絶をさせると誓おうとすれば、清水幾太郎の理屈も理解できるようになるでしょう。つまり、清水が云わんとしていた事は、「被爆国であるからこそ、核廃絶の適う瞬間まで核を持って監視する使命があるのだ」、という意味だったのではないでしょうか。

いずれにしても、現代人は未だに核兵器の上にできている秩序の中で生活しているんですよね。

ussyassya at 11:29│Comments(5)TrackBack(1)DVD鑑賞記 | 雑記

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この記事へのコメント

1. Posted by 三四郎   2010年07月17日 15:19
>トルーマンは戦争犯罪に問われるべきだったんじゃないんだろか? 少なくとも裁判にかけられるべきだった気がします

同感です。このこと一つとっても、「東京裁判」の胡散臭さを思わずにはいられません。核兵器を開発した時点で、ナチスと「軍拡競争」に突入し、後世の人類に重荷を負わせたのですから、ヒトラーと同等の「人道に対する罪」に問われてしかるべきだったと思います。
2. Posted by メロンぱんち   2010年07月17日 15:53
三四郎さん>
改めて考えさせられましたが、トルーマンを裁かなかった事が、その後の世界を決めてしまったのではないか、という気もすました。

広島に原爆を投下する前段階で、その驚愕すべき威力に気付いていたのだから、広島に投下せよという命令は非人道的な大罪としか云いようがないんですよね。

死傷者数だけではなく、後遺症などが残るものであったワケですし。
3. Posted by 猫丸   2010年07月26日 19:43
番組は見ていませんが、また8月を迎えますね。
過去は変えられませんが、未来は変えられます。
にも、かかわらず、人間は核兵器を一掃できません。こうした番組を見た後の強い思いをもってしても、他国に核兵器を廃絶させられません。我々が選んだ政治家は核兵器搭載艦を寄港させています。それが日本人にとってプラスだったのでしょう。
時間がかかっても過去の反省を未来に生かしたいものです。
4. Posted by メロンぱんち   2010年07月27日 01:23
猫丸さん>
海外でどのように扱われているのか興味深かったのですが、BBCが作るドキュメントなどは英語圏以外の国々でも紹介されたようで、世界中の人間の大半は、核兵器のある世界の矛盾に気付いているのだろうと思うのですが、まだまだ積極的に取り組まれているという気はしませんよね…。

日本で製作したドキュメント番組、映画などが世界中の世論を動かすとか、そういう動きもあっていいのかも知れませんね。
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