2010年11月27日

尖閣問題と核武装論

26日深夜からのテレ朝「朝まで生テレビ」には櫻井よしこさんが初登場。冒頭で、これまで出演しなかった理由を「怒鳴りあうのが苦手だから」と説明していたこともあり、櫻井さんへの配慮なのかパネラーは6名限定、ギャラリーなしの収録録画ノーカット放送という体裁でした。

構図としては、高野孟さんと櫻井よしこさんが日頃の主張からしてぶつかっておりますんで、そのあたりが面白味だったでしょうか。対立構図は、さほど明確になってはおらず、櫻井陣営には森本敏さんと潮匡人さんが席として配置され、高野陣営には富坂聰さんに加藤嘉一さん。

で、パネラーの中で加藤さんのポジションが謎だったのですが、北京の内情を語ることのできる方で、番組が用意した席としては高野陣営だったのですが、語る内容からすると、日本に戦略がない事を危惧している発言が多く、何故か櫻井さんや森本さんの意見に近かったりもする…。

ですが、渡辺アナと進行役の田原総一朗さんが、どちらかといえば高野びいきでしたから、全体的には中立的な発言量で体裁がとれていたかも。


で、序盤に少し気になったのは、「この尖閣問題で勝利したのは日本である」という高野・富坂さんに対して、潮さんが必至に対抗したところでしょうか。富坂さんらの主張は、「尖閣問題は中国がレアアースの問題を巡って、その異質性を世界に露見することになり、外交的にも経済的にも大きなマイナスだった」をタテにして、敗者は中国政府であるという。

ですが、潮さんがこれに納得できず、再三に渡って食い下がりました。その主張は「日本は恫喝外交に弱い、全く無力である事を露見してしまった。これが最大のマイナスポイントである」という日本人的心情からすると、至極、まともに見える論法。ここでミステリアスな存在であった加藤さんも「中国でも船長が解放されたときには衝撃が走りました。日本には主権がないのか、中国ネット市民からは驚いて受け止められていた」と。

尖閣問題に於ける最大の敗者は誰か?

実は日本は負けてはおらず、最も損をしたのは温家宝であるという理屈は、確かに週刊誌などでも散見していますかね。

ですが、富坂さんの言い分にも一理ありますが、物事を水平に眺める批評的観点からすれば、中国が損失を被ったのは偶発的な結果論に過ぎず、あの尖閣問題の一連を持ってして「日本が勝った」というニュアンスは好ましくない気がします。富坂さんに他意はないのですが、高野さんには他意がある。高野さんは民主党や小沢一郎を担いできた経緯があるから、民主党政権の失政と正面から向き合いたくないのでしょう。

で、番組中に洩れてしまいましたが、尖閣問題での弱腰ぶりが国後にメドベージェフを呼ぶ、その呼び水になってしまった可能性もある訳で、「敗者は温家宝であり、日本は敗者ではない」のような理屈は個人的には受け入れられませんでした。

それと、船長釈放に関してですが、水面下で田原総一朗さんが「あれはアメリカに支持されたから釈放したのだ」という論陣を張っている。これも先日から気付いていたポイントだったのですが、即座に櫻井さんが探りを入れました。何か田原さんの物言いだと、ウラがあったというニュアンスで引っ掛かっていたんですが、櫻井さんが前原ヒラリー会談など表立った場所でも「騒動を深刻化させないように」というシグナルが送られていたと洗い直すと、田原さんからの反論はありませんでした。

ニュアンスの機微の問題なのでややこしいのですが、つまりは、

「米政府の助言に従うカタチで日本政府が泥酔船長を釈放した」

のではなく、やはり

「米政府からの《早期に事態を収拾するように》と要望され、そのプレッシャーを受けた現行内閣、特に仙谷官房長官が那覇地検の判断で釈放するという政治判断をした」

で、間違っていないと確信できました。

田原さんの「船長釈放は米国の意向だった」に引っ掛かったのかというと、これにも伏線があり、週刊文春が「例の漁船は漁船ではなく、任命を実行する為のミッションシップであった」という自称スクープ記事を掲載しており、週刊文春の記事と田原さんの「米国の意向であった」の見解に繋がりがあるのかと思っていたから。

週刊文春によれば尖閣問題が起こる端緒なった9月8日、米第七艦隊が中国漁船の無線をキャッチしていたという。その後に海上保安庁が漁船に体当たりをされて拿捕・逮捕されるという経緯を辿りましたが、米軍と自衛隊は中国漁船が漁船ではなくミッションシップ(任務を帯びた任命船)であると無線によって知っていたことになる。海上保安庁が撮影した体当たり映像も米軍と自衛隊とで解析、それが故意の体当たりである事を確認した上でミッションシップであると確信していたというんですね。だから、その上で、例の中国漁船が中国の工作船で、その工作員を日本の海上保安庁が逮捕してしまったと認識した上で、米国が軍事作戦を伴った見解として、日本政府に対して「船長を釈放して早期に事態を収拾せよ」と言っていたという裏側の話なのだろうかと勘繰っていたのですが、そういう事ではなく、単なる外交的圧力の話でした。櫻井さんにして紛糾に対しては「早期に解決しろ」以外の対応は在り得ません。それを現行政府が突然の釈放をしてしまったのだから問題は小さくない、となる。

森本さんがアシストする。「総理は法律に無関心だし、外交問題にも詳しくない。だから法律家の仙谷さんに任せたんです。拘置延長の時点なら釈放できると考えて釈放したのでしょう」と説明すると、櫻井さんが「こういう言い方をしていいのかどうか抵抗もありますが、分かりやすく云うと、現行政権は卑怯なんです」と発言。

高野さんが噛み付く。「だったら中国人船長は釈放しなかった方が良かったというんですか?」と投げ掛ける。その挑発的な言葉に高野孟さん的な価値観が投影されているんですが、櫻井陣営は敢然と「粛々と国内法に基づく法的手続きをして良かった」と立ち向かいました。「それだと日中の対立は緊張状態のままではないか? 中国と戦争になったかも知れませんよ?」と誰かが脅すと、森本さんが「逮捕した状態で外交が出来たハズだ」と展開し、具体例として「このままだと船長は起訴され、日本の国内法によって有罪が確定してしまいますけど、どうしますか?」と外交カードにするのが常識的な対応であると櫻井さんに加勢。

ここがクライマックスだったかなぁ…。おそらく高野さんは「釈放していなかったらどうなっていたと思うんですか?」で攻め切れると一瞬は思っていたのではないでしょうか。それは例によって後付けの理屈だし、なんら証明のしようもない、前提となる基準さえない読めない仮定の話ですからね…。この辺りに決定的なまでに高野的論理の弱さがあるといいますか。

それと、高野さんは尖閣を巡る対中ラインに「棚上げでいいのだ」と展開したシーンがありました。櫻井さんが「棚上げすることに展望があるのですか?」と問い掛けると、「展望はありません。棚上げするのだから展望はありません」と返答したシーンがありました。

高野さんの理屈にも一理はあって「棚上げしてしまうのだから展望なんてものはない」という回答はディベート技術としては最強だし、そうした四次元殺法的な哲学も実在しているようですが、前後の文脈には「日本には戦略がない」とか「日本は対処すべき課題がある」と論じていたのだから、云ってしまえば、無責任でもある。


そして終盤、大きなテーマとして核武装論が持ち上がりました。進行の長野智子アナが櫻井さんに思い切って質問させてもらうと前置きしたもので、尋ねたものでした。この核武装論の櫻井さんは上手でした。「論議は必要であると思います」とした上で

「核武装論に関しては一点だけ絶対に避けるべきことがあり、『絶対に核武装しない』と云わないことです」
と返答。「核武装は絶対にしません」では済まされないという理屈ですね。すると今度は渡辺宜嗣アナが妙な認識を露呈してしまう。

「日本は被爆国ですから核を持つ事が許されないではないですか」

という。すると即座に櫻井さんが指摘します。

「被爆国だから核を持ってはいけないと決めつけるのは何故ですか? 日本は被爆国であるからこそ、核を持つ事が許されるという事にもなりませんか?」

という日本核武装論の端緒となった清水幾太郎氏の核武装論を踏襲した見解で補則します。

確かに、そこなんですよね。実は…。渡辺アナ同様、あまりにも日本人は「被爆国なのだから核兵器廃絶に向けて行動しなければならない」と刷り込まれてしまっているといいますか…。核武装について話し合おうというと、それだけでコテンパンにやられて問責決議案なんてことになる。ですが、政治力や外交には脅しもある訳ですから、核兵器保有国とそうではない国とでは実際に影響力に差が生じてしまっているし、日本の周辺だけでもロシアも中国、北朝鮮が核兵器を有してしまっており、しかも被爆国である日本が再び核の脅威に晒されている現実をどのように捉えるのか? 倫理的側面で核の問題には一致した見解がありますがそれでもアメリカ、インド、パキスタン、イギリスもフランスもイスラエルも、実はみんな「核兵器を廃絶した方がいいですね」という表の顔とは裏腹に、純然たる核兵器保有国でもある…。

本当に日本人が核廃絶を世界に問うのであれば、日本が核武装をして世界から核兵器が無くなるまで見届け、最後の最後に被爆国である日本が核武装を解除するという役目を買うという選択肢だってあるハズなんですよね…。

そうした中で、少なくとも日本は「我々は永遠に核武装いたしません」というアナウンスだけでも辞めたらどうか? 何の役にも立たないばかりか核保有国からしてみれば米国に頼るだけのカモで、「被爆国だから核は持ちません」という理屈ではカモがネギを背負っている状態かも知れない。経済大国になった一時期があっても日本は政治的リーダーシップだけは手に入れられませんでしたが、どうも武力と無縁ではないんですよね…。核を持つべきだとは言い切れませんが、それに変わるモノがない限りは、日本は本当の意味での「主権」というものを持てないのかも知れませんしね…。

ussyassya at 11:31│Comments(6)TrackBack(2)雑記 

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1. ダルビッシュ紗栄子の2ちゃんで問題の動画!  [ 日々の出来事をつづるキロのブログ  ]   2010年11月29日 14:18
私、キロが日々のニュースあれこれをいち早くみなさんにお伝えします。提携したいサイトもあればご連絡下さい。
2. 今をときめくCoachが高額ディスカウント中!  [ 人気急上昇のコーチが激安で買えるサイト ]   2011年03月06日 23:54
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この記事へのコメント

1. Posted by 加藤嘉一の南京大虐殺論争における立場   2010年11月27日 15:52
↓のような思想的立場です。

加藤嘉一の南京大虐殺論争における立場

2009年、陸川監督によって製作された中国映画『南京!南京!』が公開された際、自身のブログに、映画を撮影した陸川監督に「敬意を表す」と題した記事を掲載した。映画の日本に対する影響について、「…“南京大虐殺は事実ではない、そもそも存在しなかった”、あるいは“虐殺はあったが、30万という数字は不当に誇張され、政治化されたものである”と主張する極右分子の怒りを買うことになるだろう」と述べ、いわゆる南京大虐殺論争では虐殺者数について30万人以上であるとの見解を支持している。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8A%A0%E8%97%A4%E5%98%89%E4%B8%80

「左翼コメンテーター」どころか、完全な「中国共産党の御用達コメンテーター」です。中国で、堪能な中国語を活かし、南京大虐殺論争や天安門事件について中国共産党を支持する発言、日本政府を非難する発言を繰り返しています。
2. Posted by メロンぱんち   2010年11月27日 16:13
加藤嘉一の…さん>

なるほど。名前も素性も全く知らない方で、どのような位置づけなのか謎でしたが、そういう事でしたか。

「中国のガバナンスが危機に瀕している」

のようなコメントばかりで森本さんや櫻井さんへの相槌も多く、彼の発言はどういうベクトルなのか苦慮してテレビを視聴していましたが、南京大虐殺の数のゴマカシさえ認めないとなると、おっしゃる通り、極左の論客だったのですね…。
3. Posted by 三四郎   2010年11月27日 19:19
日本が唯一の被爆国だからこそ核を持てないという意見にはかねてから疑問を持っていました。逆に唯一の被爆国だからこそ、どの国よりも核武装する資格があり、二度と核を落とされないためにも持つべきというのも「有り」だと。

現実問題として日本が核武装するとなれば、是非はさておき国際社会からの圧力は相当なものになるでしょうし、その過程で失うものも多いと思います。しかし櫻井さんの言うとおり「決して核は持たない」などといいきることほど愚かなことはないと思います。
4. Posted by オハイオより   2010年11月27日 22:17
今となっては独自の核武装という選択肢が、現実に日本にあるとは思えません。
(他国が許さないという次元ではなく、今の日本人にその覚悟が出来るかという意味で、核だけで戦えるわけもなく、地上部隊の大増強、予算、少子化、気概諸々)
30年前ぐらいに戦略と覚悟を持って始めるのならともかく、今からでは失う物ばかりのように思います。

単純に考えると、日米安保と心中する覚悟を持つか、孤立し、崩壊の危険があっても独自路線を歩むかのいずれかでは。

核を持つかというのはまだ道具論に過ぎないし、主権を守るということは、我々に地上戦を戦う覚悟があるかということだと思います(飛び道具ではないと、、)

アメリカ嫌、基地も嫌、軍隊も戦争も嫌、負担、兵役も嫌、尊敬や平和だけは欲しい、核の傘に守られ、他国の軍隊に守ってもらい平和を謳歌しながら、一方で被爆国だから核はいらないと言われても、自己矛盾でしょう。
大きなところに行く前にまず、集団的自衛権を行使すると認め、核の持込を認める、当たり前のところから出発したいものです。
5. Posted by メロンぱんち   2010年11月27日 23:29
三四郎さん>
「絶対に核を持たない」という態度だけは改めるべきですよね…。現状として日本の隣接国で核を持っていないの韓国のみですし、中国やロシア、北朝鮮の脅威を感じながらも日本と韓国だけがポッカリと核を保有していないという情勢になってしまっただけに、牽制が利かなくなっている可能性があるといいますか…。

日本に核が撃たれたとして、米国は絶対に核報復をしてくれるとかという問題も話していたのですが、森本敏さんいわく、

「そのときの状況次第、米国の国益次第でしょう。日米安保とはそういう条約ですから」

実は、日米同盟に狂いが生じたり、日本に対して米国が守る価値がないと感じる状況になれば、日本の核の傘は機能しないことになってしまう…というストレートな指摘もありました。
6. Posted by メロンぱんち   2010年11月27日 23:34
オハイオよりさん>
実際、集団的自衛権の話にはなっていました。朝鮮半島情勢が緊迫している現在も、ネット上では「韓国を支援するな」という意見を見かけるんですが、実際には日本にも北朝鮮を牽制する役割が本来は求められているだろう、と。

ただ、日韓関係も悪いですし、米国にしても現時点だと「日本と韓国で話し合ってくれ」と回答しそうですよね。

日本は何か自国の平和だけに固執していて、自由主義圏の一員として主体的に動く事を無益なことだと日本人自身も思ってしまっているといいますか…。

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