2011年07月19日

三億円事件の犯人は…

一橋文哉著『三億円事件』(新潮文庫)を、実に十年以上、遅れて読みましたが、面白かったです。ノンフィクションはこうでなくっちゃね…。

三億円事件については、何かの拍子に「真犯人は誰らしい」といいた記事が散発的に論じられますが、それらを踏まえて、決定版的な位置づけでしょうか。

ざっと20年前に「埼玉県の暴走族のリーダーが犯人らしい。事件から間もなくして自殺してしまった」のような風聞がありました。そういう風聞というのは、情報の断片。で、それと並行して「白バイ隊員の息子が犯人だったらしいよ」なんていうウワサもある。

どちらも不正確というか未完というか。ですが、やっぱり、突き詰めていったとき、そうしたウワサだったものが必ずしもガセネタではなく、当たらずも遠からじであったという事が確認できました。

現在ともなると、一般人でも三億円事件について、かなりの情報を有していますよね。ですが、その決定版になると思われるのが、この著書になるんでしょう。

古くは阿久悠原作で沢田研二主演「悪魔のようなあいつ」というテレビドラマがありましたし、織田裕二主演の2時間ドラマ「新説三億円事件」なんてのを記憶していました。そういう中で、自ずと、三億円事件の背景は人々の頭の中に入っていますやね。

現役白バイ隊員の息子で、暴走族のリーダーだった少年Sこそが犯人だったという説がある。このシナリオが最高に悲劇的です。埼玉県ではなく、東京の立川付近を舞台にしていた構成員60名以上という暴走族があり、その暴走族を警察は「立川グループ」と呼んでいた。で、その立川グループのリーダーこそがSであったという。

父親は現役の白バイ隊員だと伝わっていましたが、これは警部補にあたり、厳密には中堅幹部だともいう。ところが、その父親はSの度重なる非行によって出世コースから外されていったという、実に生々しい家族の葛藤が描かれている。生真面目で仕事一筋の警察官の父親、それに世間体を気にするタイプの母親という環境があり、その元で少年Sは非行に非行を重ね、少年鑑別所へ。

この少年Sについては三億円事件当日には鑑別所に居たという話もありましたが、実際には脱走に成功して自宅に居たという内情が明かされている。最重要容疑者として捜査本部も少年Sに目星をつけて、事件発生から5日後に事情聴取に赴いたものの、母親は「息子は居ない」と嘘をついて刑事らを追い返してしまう。そして、その日の晩、少年Sは青酸カリを飲んで自殺をしたという事になっている。

長い間、その少年Sが真犯人だと考えられていましたが、この一橋さんの著書では昭和の名刑事・平塚八兵衛氏の「私的な捜査メモ」が明かにされている。それは平塚が少年Sの父親である警部補に対して、事情聴取をした際のメモなんですが、テレビドラマ以上にテレビドラマで驚かされます。少年Sは三億円事件の真犯人ではないが、少年Sの非行を巡ってのS家の葛藤が浮き彫りにされている。世間体が悪いことは勿論、父親が完全に出世コースから外れたこと、それでも少年Sが非行を繰り返しものだから、S家は崩壊寸前に追い込まれていた様子が伝わる。少年Sは免停とされた事があったが、それを父親が警察官であるという立場を利用し、同僚に頭を下げて免停を取り消しにした事があったという。ところが少年Sは「仲間と同じようにオレも免停になりたかったのだ」と悪態を吐いたという。

少年Sは60人もの構成員を束ねる暴走族のリーダーという顔を持つ反面、繊細な一面もあったという。仲間らには「父親が警察官で、その父親に迷惑がかけたくない」なんて言葉をポツンと洩らしたりもしていて、暴走族仲間からすると「淋しがりや」であるとか「アイツには(三億円事件のような)デカい事件を起こすような人物ではない」と分析されていたりする。父にしても息子にしても、気を遣ってみるが上手に親子のコミュニケーションが取れないという深刻なジレンマを抱えていたことが浮かび上がってくる。

最終的には父親の告白によると、母親が少年Sに無理心中を持ちかけて青酸カリを飲ませてしまったかのようなニュアンスを残しているのですが、そこまで平塚に告白しながらも「三億円事件は真犯人ではありません。息子の名誉の為に、これだけは言っておきます」と念を押している。

で、「昭和の名刑事」は少年Sをシロとした。何もかもを吐露した父親を信用し、「三億円事件だけは息子ではない」という言葉を信じたという事のよう。

平塚八兵衛が少年Sをシロとしたことで、平塚こそが三億円事件の捜査を難航させる要因になったという批判があるのは、その為なのですが、一方で平塚はモンタージュ写真に頼っていた既成の捜査方針を否定した人物でもある。捜査本部は少年Sに似た人物の顔写真に白バイ警官風のアレンジをしてモンタージュ写真に仕立て上げてしまっていた。実は、モンタージュは既に大工仕事中に事故で死亡した大工だった青年の顔写真でしかなかった。そうした捜査方法を平塚が否定たという。

平塚は平塚なりに本気で真相解明の意志を持っていたらしい事が分かる。

この事件に関しては評判が悪い平塚刑事でしたが、この少年Sをシロとした判断そのものは正しかったのではないかという気がします。平塚メモでは少年Sの父親が「息子を殴ったこと」、「口論になった事」を平塚の前では認めていた事になるんですね。既成の捜査資料では、その警部補兼父親の証言は、近所の証言と食い違うなど矛盾点が多かったのですが、平塚にはホントの事を打ち明けたようなんですね。

「息子が青酸カリを飲んだ瞬間、その部屋では妻が脱走中の息子に対して出頭するように説得にあたっていた」と打ち明けていたというのが平塚刑事の私的メモとして残されているそうな。

察するに青酸カリをテーブルの上に置いて無理心中を図ろうとしたか、もしくは少年Sが発作的に飲んでしまったか…。そこまで少年Sの父親である警部補が打ち明けた以上、確かに三億円事件の犯人が少年Sだったとは少し考えにくくなってくるのではないか? 奇しくも少年Sは三億円事件の当日、少年鑑別所を脱獄して自宅に戻っていたとしたら、三億円事件に関与していなくても、その非行に対して母親が無理心中を迫っていてもシナリオとして不自然ではなくなってしまう。「妻が息子と無理心中を迫っていました」とまで打ち明けた少年Sの父親が嘘をつくだろうか?

警部補である父の心の内側を覗いた平塚八兵衛はギリギリの判断として最重要参考人にして最もドラマチックな少年Sをシロと判断した......。

で、一橋解釈ですが、一橋さんのアプローチには物証がある。というのも、三億円事件では紙幣番号を控えられた五百円札が含まれていたのですが、一橋さんは、その事件によって奪われた五百円札、その一枚の写真を入手している。

そこから浮かび上がってきたのは、やはり、立川グループだという。最重要参考人とされ、白バイ隊員の父親を持ちながら服毒自殺をした少年Sとも近いところにいた「人物たち」だったと導いている。

犯人は複数犯の三人組であり、黒幕は当事30代だった埼玉県川越市の男だと見立てている。その男は元警察官でありながら、当事は非行少年らにメシを奢るなどし、地元暴力団や不良米軍兵士らとつるんで密輸のような仕事をしていたという。また、この男には、かつて銀行員だった妹があり、その妹が自殺したことで、銀行に対して復讐の念をも抱いていたという。また、焼け焦げた紙幣番号が焼かれていたのも、この男の実家付近、川越だと推察している。この埼玉県川越市の男こそが主犯。

二人目は共犯者で、立川グループ内では「ジョー」と呼ばれていたハーフの男だという。日本人女性と白人米兵との間に生まれた混血で、ヒト呼んで「クレイジー・ジョー」。当事は二十代前半の男で、このジョーは先に挙げた川越市の三十代の男と懇意にしていた事が明かされている。ジョーは米軍基地にフリーパスで入れる人物であったといい、密輸関係で川越市の男と、このジョーなる人物は親しい関係にあったとされる。このジョーなる人物は強奪した三億円は福生市・立川市にある治外法権扱いの米軍基地に一時的に保管されていたといい、それを請け負ったのが、このジョーであるという。

そして三人目の共犯者が悲劇的な実行犯の少年のロクという人物。そのロクは名古屋出身だが、当事は立川界隈で非行少年をしていた。車輌窃盗のプロフェッショナルにして、バイクの運転技術が抜群に高く、バイク改造などに精通していたという。暴走族同士の間の行なわれていたレースでは負け知らずのバイク少年。このロクは、ジョーの弟分であり、いつも一緒にいた実の兄弟のような間柄であったという。

三億円事件の企画・立案は川越市の元警察官の男。そして、下準備と現金の保管がクレイジー・ジョーと呼ばれた男が請け負い、そして鮮やかに偽白バイ警官を演じて三億円を持ち帰っていった実行犯が「ロク」というニックネームで呼ばれていた当時は十代の少年だっただろう――と導いている。

そしてロクという少年も、先に挙げた少年Sと同様に若くして逝去していたという。

三億円事件発生直後にロクは立川界隈から姿を消し、自身の出身地でもある名古屋へと戻っていたという。不思議なことに名古屋へ戻ったロクは同じ名古屋市内に住んでいた実家と接触せず、また同じく名古屋市内に住んでいて慕っていた筈の祖母とも接触をせず、奇妙な生活を送っていたという。ロクは名古屋市内のアパートを転々としながら真面目に自動車工として働いていたが、三億円事件発生から7年後に轢き逃げ事件(未解決)に遭遇して、そのまま死亡していたという。

立川市界隈の非行少年OBらには「ロクはなんでも病気で若くして死んだらしいよ」というウワサが流れていたが、一橋さんが調べたところでは実際には未解決の轢き逃げ事件で亡くなっていたという。



一橋解釈だと、この三人組こそが真犯人だと導いている。

因みに、こういう複数犯による事件が未解決に終わった場合、「何故、仲間割れが起こらなかったのか?」と議論されますが、実は一橋の解釈だと犯人グループには仲間割れが起こったフシが伺える。

ロクが轢き逃げ事件で死亡していた事、それについては事件のプロデュースをした黒幕の川越市の男、もしくはクレイジージョーが殺害したとは導いていないものの、その可能性も僅かながら残ってしまっている。

ジョーと、川越市の男は、事件後にアメリカはLAに渡って玩具店の経営を手掛けたとある。しかし2年ほどで経営破綻し、以降は宝石の卸しなどをしているという。混血のジョーは弟分のロクを亡くしたショックから精神的な変調をきたし、或る時期に川越市の男性と決裂、単身で麻薬密売などに手を染め、その後は精神病院に入院・通院しているとされる。

川越市の男は2000年、ハードスケジュールで来日しており、首都圏近郊の精神病院を何軒も何軒も回り、かつての相棒クレイジージョーを探した痕跡を残しているという。また、その際、FBIから公安警察に連絡が入り、公安は男に対して事情聴取を行なったという。

拙ブログ:ドラマ「三億円事件〜20世紀最後の謎」〜2011-7-22



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1. 『三億円事件』 一橋文哉  [ じゅうのblog ]   2013年12月11日 23:18
ジャーナリストの「一橋文哉」が三億円事件の真相に迫った『三億円事件』を読みました。 [三億円事件] テレビで三億円事件を扱ったドラマを放映していたので、三億円事件に関する作品を読みたくなったんですよね。 -----story------------- ついに警察が緊急事情聴取! 

この記事へのコメント

1. Posted by hiro   2011年07月20日 21:48
一橋文哉の三億円事件なら10年くらい前にドラマ化されてました。
川越の男をビートたけし、クレイジー・ジョーを長瀬智也が演じていました。

もし一橋説が本当であれば単独犯説に固執したとされる(と松本清張の著書で読みましたが)平塚八兵衛は捜査を難航させる要因そのものだったのでしょう。
2. Posted by メロンぱんち   2011年07月20日 22:46
hiroさん>
そのドラマだと、ロクが土壇場で…という脚色があったと思うんですが、原作を読んで見ると確かにロクが可哀想になっちゃうんですよね…。ジョーとロクは兄弟のように仲が良かったと語られているだけに、ロクが欠けてからジョーが麻薬中毒に陥っていく…。これを松田龍平がロクで、長瀬智也がジョー、川越の男がビートたけしで映像化されているとなると、ちょっとゾクゾクしますね。

ご指摘の通り、平塚は単独犯説に固執したのもホントで、単独犯か複数犯かでは大きな読み間違いがあったことになります。自分だけで少年Sの父親の件を握りつぶしていたのなら、それも士気を下げたかも知れませんね。
3. Posted by 戸倉   2011年12月08日 14:27
諸説ありますが、俳優M・T(結婚を機に引退した国民的アイドルのご主人)は少年Sこと、せ・・・殿に非常に可愛がられていましたよ。M・Tは少なくとも実行グループは知っているはずです。
4. Posted by メロンぱんち   2011年12月08日 15:47
戸倉さん>
「立川グループ」という呼称も警察が便宜上、命名していたもので、当時の立川界隈に集まる非行グループらは、どことなく何か感じていたものがあったような気もするんですよね。

「埼玉県の暴走族のリーダーが寺の敷地にカネを埋めたらしい」のような噂について確か大谷昭宏さんあたりが触れていたことがありました。僅かに内容が違っているものの、後年に明かされた話ともダブって感じたりもするんですよね。それら噂、風聞が、案外、事実と近かったようですね。

やはり、少年S、気になりますよね…。
5. Posted by 戸倉   2012年01月23日 12:43
先日は、挨拶もなく、突然の書き込み失礼しました。立川グループとは「新宿紀伊国屋二期星」のことですね。「埼玉県の暴走族リーダー」かどうかは・・・「在日韓国人」です。大阪、仙台などにいました。当時、仙台では指名手配されていました。11月に銀座で、ある事件を起こし逮捕されています。計画的にですが。金を埋めた場所は、S少年宅近隣の雑木林です。今もその場所にあります。
6. Posted by メロンぱんち   2012年01月23日 15:55
戸倉さん>
いえいえ。貴重な情報を有難うございました。

単発ながらミリオン出版さんの雑誌などが未だに3億円事件を取り上げていたりしているようです。犯人ではないかと噂されている東京都内在住の或る会社役員をあたったり、テレビ局の番組スタッフに密告されてきたネタをフリーライターさんが実際に調べに行ったり…。

改めて眺めてみると、少年Sの近辺が何といっても目を惹きますよね。
7. Posted by 関根篤   2012年03月24日 20:50
結論はココで3〜4年前にすでに出ていますよ(膨大なコメント欄参照)

8. Posted by メロンぱんち   2012年03月25日 03:06
なんとも言えませんが、朝日新聞出版の某書籍(2010年1月発行)では、記事中の少年Sの近辺で、

「新宿紀ノ国屋二期生」

「福生赤線グループ」

の人物が捜査線上に浮かんでいたが取調べ中に自殺未遂事件を起こし、更には19歳で喫茶店のオーナーになった人物について、当時を知る刑事部長が「あいつもまだ生きている事だし、こまかい事は一切はなせない」という弁が掲載されていました。

ほかにもミリオン出版の雑誌に記事として真犯人と囁かれる人物にライターが直撃してみたが…という程度の内容が2010年頃に掲載されていた記憶があります。
9. Posted by チル   2013年11月23日 14:46
sさん安らかに
10. Posted by メロンぱんち   2013年11月24日 19:31
チルさん>
少年Sと、白バイ隊長の父親との確執はなんだか、しんみりとさせるものがありますね…。

核家族の時代となり、すぐに父と子との確執、家庭の断絶とか家族とは何かという話があった気もします。
11. Posted by 開示   2015年06月26日 23:01
犯人が大阪府警淀川署女性刑事朝岡、神奈川県平塚市白バイ教習所節田と榎田、三菱重工業勤務本宮、福島県双葉郡浪江探偵社500210。
12. Posted by 開示   2015年06月26日 23:02
福島県双葉郡浪江探偵社500210朝倉を重要参考人と去れて見える。
13. Posted by 開示   2015年06月26日 23:03
モンタージュ写真が榎田。
14. Posted by 開示   2015年06月26日 23:06
(ゆそう)と日本初で語る方々が白バイ銀行強盗三億円事件の真相。
15. Posted by 開示   2015年06月26日 23:12
犯人が銀行へ押し入るが逃走後で大阪府警淀川署女性刑事朝岡と内定して事件時効まで去れた。
16. Posted by 開示   2015年06月26日 23:28
よど号ハイジャック事件が東京都世田谷区麦石自宅を本拠地とする、警視庁朝岡と茨城県舞鶴市内旧日本軍片桐。犯人
17. Posted by 開示   2015年06月26日 23:33
日本車、メルセデスベンツを組立した福島県南相馬市朝モータース22−2913渡辺さん。
18. Posted by 開示   2015年06月26日 23:35
日本国憲法は東京都八王子市日高が書いた。福助販売店
19. Posted by 開示   2015年06月26日 23:43
福島県双葉郡浪江探偵社500210朝倉が第二次世界大戦真っ只中から重要参考人。
20. Posted by 開示   2015年06月26日 23:46
アメリカ合衆国FBiで逮捕去れている。第二次世界大戦時でアメリカ合衆国内、探偵社500210朝倉。
21. Posted by 開示   2015年06月27日 00:02
この人物(重要参考人)が第二次世界大戦を中断して各国と会話をして終戦記念日を迎えている。不明

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