読売新聞が人生相談コーナー「人生案内」で平成を総括する連載が続いていますが、これが中々に好企画だったなと感じる事になりました。人生相談のようなものには現代が抱えている悩みが投影されている。悩みとは即ち「心」であるワケですが、やはり、病的な方向へ向かっているのは間違いなく、はて、これで福祉が増進したとか、幸福が実現された等とは、中々、考えにくいよなって思う。

27日付では「老若男女がキレ易くなったこと」が取り上げられていた。特定可能な帰属集団とか、特定可能な世代がキレ易くなったのではなく、社会全体がキレ易くなったという主旨であった。元々は「キレる少年」や「キレる若者たち」という風に「キレる」(感情を制御できない)という現象が語られたが、その後に「キレる中高年」などになり、現在ともなると「キレる高齢者」になっている。特定の世代がキレ易いままに齢を重ねているのではなく、世の中全体がキレ易くなったと分析している。また、そこではキレる原因についても「余裕なきルール厳格社会」によって、平成に生きる平成人がキレ易くなった理由であろうと分析している。

28日付では若者からの人生相談が多かった事柄として「コミュニケーション取れない」という悩みが多かったという。平成前期には相談者自身が、(自分が)内向的である事に悩んでいるという類いのものが多かったが、西暦2000年頃から「どうコミュニケーションを取っていいのか分からない」という悩みが増え、特に若年世代にプレッシャーを与えたのではないかという。そして、2010年頃に【コミュ障】という用語がインターネットを中心に広がり始めた。何故、そのような事になったのかについての分析もなされている。実は企業が新卒採用をする際、重視する要素の第一位が「コミュニケーション能力」であり、そのコミュニケーション能力の乏しさに不安を感じる人が増えたものだという。当然、そのプレッシャーは大学生などに発現した。

29日付ではテーマは孤独・孤立で「独居でも 家族がいても寂しい」という相談に触れている。独居老人や単身者が孤独を感じて寂しいという相談は想定がつくところですが、家族がいても孤独だという意見までもが増えてきたという。

老後が長くなった事で、一人で暮らす高齢者が増加した社会背景が挙げられている。65歳以上の単身世帯は1990年には162万世帯であったが2015年には593万世帯に増えたのだという。国立社会保障・人口問題研究所は、この65歳以上の単身世帯の増加傾向は今後も続き、2040年には896万世帯になると推計されているという。

中高年世代でも未婚率上昇があり、生涯未婚率は1990年の時点では男性5.57%、女性4.33%であったが、2015年には男性23.37%、女性14.06%となった。この部分には具体的な相談例も挙げられていますが、「男性と付き合った経験がない」と悩む40代女性からの相談や、「女性と付き合ったことがなく、コンパやお見合いパーティーに参加したが、ダメでした」と悩む50代男性の相談があり、未婚率の問題以前に、〈異性との交際経験そのものがない〉という平成という時代の干乾びた現実を浮き上がらせる。

更に「家族が居ても孤独」と訴える相談も増えてきているという。「夫や子どもと会話がありません」という40代女性の声や、「息子の家族と同居していますが、ほとんどの時間を一人で過ごし、嫁とはもう6か月もまともに話していません」という70代女性の声が紹介されている。

「キレ易くなった平成」については、その原因が「ルールの厳格化によって惹き起こされている」という回答らしいものもあったのですが、「孤立・孤独を感じる平成」の方の回答は少し分かり難い。コミュニケーション能力を要求される社会になったので、自らのコミュニケーション能力の低さを悩む者が増えたのだろうという見解が一つ。

また、孤独という問題は世界中に広がっているらしいので明快な解決方法を示せるワケもありませんが、それでもフランスのことわざだという「選んだ孤独はよい孤独」を紹介している。つまり、実は家族と同居していても孤独を感じるものだし、孤独を怖れて結婚したとしても先立たれてしまう事だってあるのが現実だから決定的な解決方法が見つけられる筈もありませんが、自分という犖牒瓩噺き合ってみることで「よい孤独」なる境地を味わえるのではないかという哲学者・鷲田清一さんの過去の回答を取り上げている。


27日付の一面には「2017年度の高齢者に対する虐待件数が過去最高に達した」という主旨の記事も掲載されていました。実は、この記事は、諸々の問題とも関係しているかも知れない。

高齢者に対しての介護職員からの虐待は510件で前年度比12.8%増。家族による高齢者への虐待は17,078件で前年度比4.2%増。(統計は厚生労働省の発表による。)統計を取り出したのは2006年からであったが、それぞれ過去最多。職員による虐待は5年連続増で、家族による虐待は11年連続増なのだという。

たぶんに「虐待」がクローズアップされているので単純に通報件数が増えてきていることも考慮されるべきですが、高齢者虐待問題にしても、現代人のストレスの限界が表出している気もしますかねぇ。

家庭で発生する高齢者虐待の件数に驚かされますが、加害者の内訳は以下の通り。

息子…40.3% 夫…21.1% 娘…17.4%

理由は「介護疲れ・介護ストレス」に拠るものが最多だという。