みずほ銀行とソフトバンクが共同出資している消費者金融「ジェイスコア」という企業のサイトには、150問ほどのアンケートが用意されており、そのアンケートに回答すると、その者のスコアが提示されるという。そのスコアが高いと融資を受けられる上限額が上がり、金利も低くカネを借りられるという仕組みであるという。既に、日本で、こういうスコア化が始まっているのだなと驚きました。

アンケートでは、

「店の人にオーダーを間違えられると気になるか」



「どのくらいラジオを聴くか」

等の質問のほか、読んでいる新聞、人生経験、運動習慣など多岐にわたる質問が用意されているという。それらの質問は、その回答者にカネを貸し出すにあたっての信用スコアと直接的には関係していないように思えるが、実は、人工知能によってプロファイリング化されており、つまり、その回答者の性格やら人格やらをも含めてスコア化し、どれだけカネを貸せるのかを推し測っているのだという。

15日付の読売新聞11面、若江雅子編集委員の解説を参考してのものですが、これは、私には、中々に、ショッキングな解説でありました。私の感想は後回しにして、ひたひたと迫りつつあるスコアリング社会の話を続けます。

ジェイスコア社では、2017年からサービスを開始しており、既に50万人以上がスコア算出のアンケートに挑戦しており、本年中にも100万人突破を目指しているのだという。勿論、このテのビッグデータ産業は、情報を多く集積すればするほど、その情報がお宝に化けるという訳ですね。ポイントカードの乱立も、或いは、失敗したようですが、例の家庭用ロボットなんてのも、実際には情報を収集する為の装置であると、人工知能社会を解説した書籍(新書)で目にした事がある。

わざわざ自分から率先して個人情報を与えるような行動をとるものだろうかと考えたくもなりますが、思いの外、そこら辺の抵抗感は低くなってきているのかも知れませんやね。テレビ、新聞ともに電子決済や電子マネーについての宣伝はばんばん打たれてるが、ネガティヴな発言は控え目であると思う。言ってしまえば、消費者金融を利用するタイプの人たちに有効であろう、広告がばんばんと打たれている。「なんとかペイ」の乱立ですな。リクルート社から政府までもがカネを出して普及させようとしているのだから、中々に悪魔的な社会であるかも知れない。

「個人情報保護の大切さを知らんのか?」などと常日頃、言っている人が、その実、「コンビニの会計時に小銭なんてダサい。支払いはスマートじゃなきゃね」と言っている提灯ネット記事に釣られていたりするものかも知れないなって思う。

さて、そのスコア、今後は外部販売に乗り出す予定であるという。つまり、個人情報の売り買いが開始される訳ですね。もう、この時点で個人情報保護って言っていた人たちはどうなんだ、ウチの子の顔写真を卒業文集に掲載するのは個人情報保護の観点から逸脱するなどと言っていた人たちは、どう思っているのか、とにかく、そういう事になっている。

スコアのような、データを管理する機関、そうした企業を【情報銀行】と呼ぶらしい。こちらも、昨年末から日本IT団体連盟による認定制度が始まり、申請受付が開始されているとの事で、既に、個人情報を売買するシステムが、日本でもスタートしているという。このスコアリング事業には、ヤフー社、NTTドコモ社、LINE社も参入を表明しており、将来的には情報銀行を目指しているという。

この、スコアリング社会の先駆者は御存知の通り中国である。米国でもクレジットカード情報を元にした信用スコアがあるが、その情報は飽くまでもクレジットカード等の、金融情報に係る信用スコアに過ぎない。しかし、中国ではスコアの取得先も活用先も、全方位的であり、消費者の生活の隅々まで広がっているという。小耳に挟んだことはありますが、ソレですね。中国のスコアの場合、資産のほかキャッシュレス決済履歴、通販利用歴、SNS上の交友関係までもの保有データを統合してスコア化し、既に運用している。スコアは金融取引、商取引に係る用途だけではなく、そのスコアが就職、結婚、進学などに影響しているほか、ビザ申請の公的サービスでも使用されているといい、スコアが高ければさまざまな特典を受けられるが、反面、低スコアであると就職も難しくなるという。

現時点ではアリババグループなどが、そうしたスコアの運用をしているが、そこに更に中国政府がスコアを連携し、信用情報の一元管理を可能とする社会信用システムの構築を目指している。この問題、まさしくディストピアの誕生のようにも思え、しかも、中国の政府が、アリババのカリスマ経営者らに対して、情報を提供させる事で合意している旨の報道もあった事から、おそらくは、そう何年も経ないうちに、中国に於いて、その注目すべき一元的社会信用システムが姿を現すものと予見できそう。中国政府による中国の人々の個人情報の一元管理は2020年、完成予定であるという。

察するに、その2020年に登場するそれは完全管理社会の誕生かも知れないのに、誰も声高に異を唱えないというのが引っ掛かりますかね。2〜3年前に、アメリカでは映画「1984」の上映会が起こったというけれど、日本ではさほど話題にならなかったような記憶がある。

また、先述したジェイスコア社の場合、同社が推奨する行動をとるとスコアを上げることができる機能がついているという。同社が用意した数十冊の書籍の要約を読んだり、スマホで測定した歩行数が目標値を上回ったりするとスコアを上げられる機能がついているのだそうな。しかし、これは何を意味しているのだろうかって思う。

「青いクジラ」と言いましたっけ、世界各地で自殺者を出した謎のゲームがありました。ゲームをさせて、色々な課題をクリアさせ、最終的にはゲームの利用者を自殺に誘導してしまうという恐ろしいゲームの話がありましたよね。実は、応用している洗脳テクニックという部分では似ている気もする。課題をクリアするとスコアが上がる。その事で快楽物質が脳に流れる。それを続けている内に冷静な感覚は麻痺し、与えられた課題のクリアに盲目的に突き進んでいく。そのメカニズムというか、ノウハウとして、脳の報酬系を利用し、洗脳しようというものなのだろうから昔ながらの教養体系、自由思想の体系からすると、かなり危険なことをしようとしているようにしか思えない。それが肯定されちゃうのかって思うと同時に、既にスタートしてしまっていることに驚かされる。

裏返すと、ゲームにのめりこませて、そのゲームのプレイヤーを自殺にまで誘導できるゲームをつくれてしまっている事からすれば、スコアを上げる為に何らかの課題を利用者に課すという事は、かなり危険な行為であると思う。カモを合法的に育てる方法が、遠くない未来に完成するって事ではないんだろか。

憲法が専門の山本龍彦慶応大教授は「人々がAIの定義する『良い行動』に適合するように考え、行動するようになれば、社会の多様性が失われるのではないか」と述べたという。また、政府の検討会で情報銀行の認定制度を検討してきた森亮二弁護士は「スコアの影響力を抑えるために、就職や結婚、進学など、生活に重大な影響を及ぼす場面では使用を禁止すべきだ」と主張しているという。また、宍戸常寿東大教授は「これまでの社会評価は、学歴や所属、出身地、収入など、その人の一部の属性にすぎないラベルを基にしていた。それが全人格的な評価に代われば、今までより公平で効率的な社会を実現する可能性もある」とする一方で「一生逃れられない差別を固定化するかもしれない。さらには内心の自由が侵され、統制された一人一人の人間が一方向に誘導される危険な社会を生む恐れもある」と警告しているという。

先ず、スコアが支配するスコアリング社会が、公平な社会を実現する可能性なんてものは、私は極めて低いと思う。AIがスコアをつけて、しかも、それが人格をスコア化できる等というのは何かの誤解なんじゃないだろか。それが商業利用であったり、政府による一元管理の道具として使用される以上、そこで人格のスコア化は不要ですな。既得権益層は、敵対勢力の排除や、好ましくない反動分子の監視に利用しようとするだろうし、基本的には効率的なカネ儲けの為に開発されている事からすれば、既得権益層、それこそ上級国民でもない限りはメリットは見込めず、むしろディストピアの登場と見るべきなのではないかなって思う。

仮に私が監視する側の立場であったと仮定すれば、その利用法も想像はつきますやね。その座を脅かそうとする敵対関係にある者を排除する事を考えるし、その自らの地位の確保、体制の固定化を画策する。また、労働の対価を得るのではなく、その役得から生じる手数料、その最大化を目論み、その優越的地位を固めようとする。私以上に腹黒そうな人たちが沢山いるのが現実であろうだろうから、向かう方向性ってのは、そっちでしょうねぇ。

全人格スコアが国家に一元管理される未来に、これまでにない公平な社会が実現されるというのは、かなりの理想論なのではないだろか。