瞬く間に鎮火となったようですが、25日に米トランプ大統領が日米安保の破棄について周囲に言葉を漏らした旨のニュースが飛び交いましたね。ブルームバーグ辺りが報じたものを共同通信が報じた。間もなく、菅官房長官がホワイトハウスからも連絡を受け、それはフェイクニュースであると説明を受けたとして、同ニュースを打ち消した。

うーむ。分からんなぁ…。そりゃホワイトハウスから「それは誤報だ」とか「フェイクニュースだ」という風に外務省なり首相官邸に連絡が入った可能性は別に信憑性を疑う必要はないと思う。しかし、トランプ大統領が日米安保の破棄を検討した事は嘘なのかどうかは判然としないし、或いはトランプ大統領のディールという手法からして日本に対しての外交圧力として「日米安保の破棄」をチラつかせたという可能性だって考えられる。

実は、この話、思い当たる節がある筈なんですよね。おそらく、12〜15年前、日米安保は解消に向かっていくべきではないのかという話があったように記憶している。東西冷戦構造が終結したのだから、日本はアメリカとは徐々に距離を取り乍ら、改憲して国軍を保持できる国になるべきで、つまりは、独立すべきではないのかという意見で、多くの者が一致していた「朝まで生テレビ」のシーンを記憶している。そもそも改憲勢力とは、その頃は、そういうものだったし、そういう勢力こそが保守だったのだ。しかし、現実は異なる道を歩んだ。中国が台頭してきた事が大きく影響しているのだと思いますが、逆に、日米同盟の狄鴫臭瓩箸いκ向へ舵を切った。

おそらく、アメリカの安全保障的な庇護下から独り立ちする方向へ行きたがったが、事情が異なってしまい、日本の立場としては日米安保の深化を模索せざるを得ないという状況になってしまったのでしょう。なので、或る時期から日米安保にはザラザラとした感触が付き纏うになって、近年を迎えている。

そういえば第一次安倍内閣は、「戦後レジームからの脱却」というフレーズを掲げていましたよね。しかし、日米同盟の深化という事は、少なくとも安全保障政策としてはアメリカから離れないという方向性へ舵を切ったという事でもある。選択肢が無かったというのが実際と考えるべきでしょうけど、これは「日本」というアイデンティティーを建てようとした場合、違う方向になってしまっているという事のようにも感じる。

中々、不思議なのですが、安倍政権を支持している保守派というのは、例えば春名幹男著『仮面の日米同盟』(文春新書)のような、不都合な事に対しては徹底的に無視するところがあるよなって思う。余り、ホントの事を認めたがらないというか、それこそ、先日発生した「老後に2000万円必要だ」の問題と似ていて、ホントの事が報じられてしまうと、慌てて鎮火するようになってきている。しかし、考えようによっては、こういう状況こそが、怖いのであり、憂うるべき事態なのではないだろか。

1971年12月29日付で、当時のジョンソン国務次官がニクソン大統領に提出したメモがあるという。それはニクソン大統領が佐藤栄作首相と会談を行う前に会談が円滑に進むように事前に提出されるメモでページ数は実に34ページにも及ぶという。そのメモには、刻銘に在日米軍が日本に駐留している意味合いを記してあったという。その一節が以下。

在日米軍は日本本土を防衛するために日本に駐留しているわけではなく、韓国、台湾、および東南アジアの戦略的防衛のために駐留している。北大西洋条約機構と違って、日本とは、統合司令部に関する取り決めがなく、何かの種類の統合計画もない。このように、在日および在沖縄米軍基地はほとんどすべてが米軍の兵站の目的のためにあり、戦略的な広い意味においてのみ日本防衛に務める。

その後、70年代から80年代にかけて米国は「日本の安保タダ乗り論」を喧伝し、いつしか日米関係は「日本側が米国軍に守ってもらっている」という解釈が浸透してゆき、思いやり予算をはじめとする力関係の均衡が歪んで、双務性から片務性へ、つまり、日本はアメリカには守ってもらっているという解釈が浸透してゆき、今日に到る。 春名氏は、それらを証明する機密文書を幾つか入手し、「在日米軍は日本を守る為に駐留していない」という事実について元内閣官房副長官補や政府高官らに問い質しているが、一様に、さほど驚かないという。但し、在日米軍が日本を守る為に駐留している訳ではないこと、それについて「日本の政治家は誰も知らない」と断言したという。


てな、具合なのだ。これ、不思議なんですよね。おそらく新右翼などは、こういう問題についても論じているのに、何故かメディアで主流となっている保守思想は、そういう問題はない事にしてしまっている。良くも悪くも、安倍晋三色の強い自由民主党的な保守思想なのでしょう。私の個人的な印象だと、読売や産経が掲げる保守イデオロギーは安倍晋三支持層とダブっているんですが、これが新潮社やら小学館あたりで囁かれる事がある保守思想とは結構、開きがあると思う。

しかし、ぼちぼち、限界ではないのか。アベノミクス、最初の頃の黒田バズーカこそ成功したが、例のトリクルダウン以降は失敗だし、目先を変えようとして展開させた働き方改革なんてものをマトモに評価する事なんて不可能であろうと思う。原発を輸出するという世界のセールスマン戦略にして失敗しているし、消費増税に対してのスタンスは異常だし、忖度なのか何なのか官僚全体が平気で嘘をつくようになってしまっている現状は異常と認識しないと話にならない。

三原じゅん子議員の演説が話題になったそうですが、内容を直視すべきだ。話している内容は「民主党がぐちゃぐちゃにしたものを安倍政権が立て直したのだから感謝すべきであり、問責決議案を出してる野党は、恥を知れ」という論旨であり、威勢、演出力は良くても、主張の中身というのはカラッポといえばカラッポなんじゃないのかなって思う。

イランを巡っての日本とアメリカの関係や、最近の出来事にしても、何が何だか分からない。日本タンカーへの攻撃があったのは事実と認識すべきなのでしょうけど、同盟国たるアメリカが指摘している通り、わざわざ安倍総理がイランへ訪問しているタイミングで、イラン政府の手のかかった勢力が日本のタンカーを攻撃したとすると、その意味が組み立てられなくなる。イランが何か交渉を有利に進める為に工作したと考えようにも、そもそも安倍総理のイラン訪問はアメリカとイランとの仲を取り持つ為であったと報じられていた筈なのだ。もう、何が起こっているのか、よく分からない状況になってきてしまったのではないか。アメリカの言っている「イラン犯行説」というのは、どの程度までホンキで信じていいのか分からないような状況になってしまっているのが実際ではないのか。イラン政府に対して正直者であるという具合に思っている訳ではないのですが、イラン側に日本のタンカーを攻撃して何か得るメリットがあったんだろか…。ちょっと分からない。兎に角、よく分からない展開になってしまったんですよねぇ。で、こうして同盟関係にありながら、ひょっとしたら自分が欺かれている可能性を考えねばならない、そういう危うい同盟関係だという事ではないのか。

最近、国賓として迎え、歓待したものの、考えようによってはトランプという人には、そういう態度は通じず、兎にも角にも、ディールという具合で物事を思考している可能性がある。過去の発言の中には「世界を支配しているのは恐怖だ」といった類いのものがあった事を考慮すると、交渉を有利に運ぶ為に嚇しも辞さないタイプの指導者である可能性も否定できないんでしょうからね。

色々と言論環境もいびつになっている気がする。「メディア論」に数日前に触れましたが、本来であれば、メディアは「王様は裸じゃないか」と指摘できる事が重要だという話がありました。しかし、何故か、この指摘が出来なくなったか、しなくなったか、考えることがめんどくさくなってしまったか、そんな感じなんですよねぇ。まぁ、世界全体が不安定だというのも確かでしょうけど、結構、色々な矛盾が最近、噴出しているような気がする。