有名人の訃報を耳にする機会も増えてきましたが、ここへ来て「カネやん」、「ノムさん」なんてことになるとねぇ。「カネやん」なんて物心ついたときには既に「伝説の400勝投手」だった訳で、実際にリアルタイムで目撃していたのは、日本テレビの「特ダネ登場」でしょうねぇ。カネやんさんは、「特ダネは、得だね!」という超ド級のダジャレを得意にしており、如何にも御大然とした存在であった。私が視聴していたアニメ「侍ジャイアンツ」にもカネやんは登場していたんじゃなかったかな。やはり、独特のキャラを持っており、スーパールーキーだった長嶋茂雄にプロの意地を見せて4打席連続三振に打ち取ってみせた逸話などは正しく語り草として定着し、モノクロ映像をプロ野球史としてテレビで視てきたものと思う。

「ノムさん」にしても、水島漫画では何故か南海ホークスのような地味目の球団が取り上げられる事が多く、相応に知識が増えるにつれ、その個性に惹かれたものでした。「ぼやき」なんてのも頭脳作戦といえば頭脳だし、そもそも捕手にして打棒の人というのは珍しかった印象がある。おそろしく弱いプロ野球球団として西武ライオンズがスタートし、「おいおい、所沢といっても埼玉県は埼玉県だし、巨人ばかり応援している場合じゃないぞ」などと周囲で盛り上がるも、まだ、その頃は松沼兄弟と田渕幸一ぐらいしか名前が知られている選手が居なかったんですよね。そこへ、ひょっこりと、あの「野村克也」が「生涯一捕手」なんて言葉を掲げて、40歳でテスト生として入団してきたというのは、結構な衝撃でした、泥臭いにも程がある。テレビで「ノムさん」の真価が当たり前に評価されるようになるのは、その後にヤクルトスワローズの監督に就任して以降でしょうけど、それでも、あのヤクルトを強くしていった時代ってのはプロ野球が面白かった気がする。

うーん、巨人との開幕戦で、選手生命も終わったなんて扱いをされて、広島カープから移って来た小早川毅彦が5番で出場し、三打席連続ホームランを打った時は、どこぞのサウナ内のガラスに覆われたテレビで野球中継を視ていたんですが、サウナの中の様子というが忘れられない。うなだれる巨人ファン、それを尻目に、きゃっきゃっとはしゃいじゃってるアンチ巨人らしき人たち。野村再生工場、おそるべし! 「そう簡単にポンコツにされてたまるか」という気持ちが土曜の夕方からサウナに居るような人々には有って、知らぬ間に小早川に感情移入していたんでしょうねぇ。こんな事、ホントにあるのかよっって。今にして思い起こしても、まるで奇跡のようなものを目撃してしまったような感慨がある。巨人一筋というタイプの人には申し訳ないけど、あれほどの快哉ってのも無いんじゃないだろか。

ハイセイコーブームなんてのは私の叔父の世代の話だけど、やはり、砂の上を走っている地方競馬の馬が芝の上を走っている中央競馬に参戦したというのがブームのポイントなんですね。馬券を手に飲んだくれているオッサンたちがハイセイコー号に夢を重ねる訳だ。「中央のエリート馬なんて、ぶっ倒しちまえっ!」と勝手に感情移入が入って、ブームが起こる。詰めかけた競馬ファンたちによって東京競馬場の柵が壊れたほどの熱狂を呼んだ。しかし、現実は武豊の父上である武邦彦騎乗のタケホープがハイセイコーの前に立ち塞がった。まさしく、語り草ですな。

アスリートと呼ばれ、小難しい理屈を捏ね繰り回すタイプの全方位的アスリートよりも、泥臭いバックボーンを持った人の方が、感動を呼び起こせるような気がする。つい数週間前の大相撲もそうだったけど、波乱こそが、世の中を惹き付けるってのはホントでしょう。

そして、ふと思い出したのが「梓みちよ」ですね。週刊新潮のベタ記事として1964年に昭和天皇の前で歌を披露し、昭和天皇から

「狎屬舛磴鵑海鵑砲舛廊瓩髻△匹Δ睛難う」

と声を掛けられたらしい。当然、本当のタイトルは「こんにちわ赤ちゃん」なのだが、昭和天皇は正確なタイトルを御存知なかった訳です。我が身に置き換えてどうでしょう? 訂正すべきであるが相手が天皇陛下である事を考慮すると、訂正するのも差し出がましい行為じゃないかと考えるでしょう。当時の「梓みちよ」は弱冠20歳であったが、陛下に対して

「いえ、爐海鵑砲舛論屬舛磴鶚瓩任后

と、言えたらしい。これは、中々、堂々とした態度だよなぁ。

で、懐メロCDなどで「二人でお酒を」を耳にすると、ああ、確かに結構な名曲であるよなって思う。歌っている世界そのものが、オトナなのだ。「恨みっこなしで別れましょうよ」って歌であり、しかも当時の歌唱シーンも覚えていますが、舞台上に座って片膝を立てたり、胡坐をかいたり。勿論、そういう態度に「けしからん」と怒っていた人も在ったのかも知れませんが、やはり、当時としては斬新だったのでしょう。やはり、経歴の中に宝塚音楽学校を1年で中退したと記されている。そーゆーもんだろうね。越路吹雪、確か、宝塚時代に喫茶店でタバコをぷかぷかと吹かしていたので、宝塚歌劇団にしてもタバコは喉に悪く、歌唱に差し障りがあるとして眉を顰めていたといい、当時の保守派からすると「不良」の印象だったのが越路吹雪だったらしいのですが、そんな不良の要素が、宝塚歌劇団の後輩たちからは「カッコいい!」と思慕されたのだという。美は乱調にあり――の世界ってのがあるのかも知れない。

現在の日本では、少しでも不良的な要素があるとメディアから放逐されてしまいますが、考えてみれば、小市民的倫理感の中の品行方正な人たちの中から、スターを見い出すというのは難しいに決まっているのかも知れませんやね。日本が萎縮しちゃっているって事かもよ。