いきなりですが、【bot】(ボット)について福田直子著『デジタル・ポピュリズム』(集英社新書)から引用します。

いまやネットの書き込みは、人間だけが書いているのではない。ネット専門家によると、ツイッターの書き込みのうち、ざっと四分の一は、アプリケーションの一種であるボットによるものであるという。ツイッターでは地震速報や天気予報、交通情報など、重宝なアプリケーションがあるが、これらはすべてボットにより情報が発信されている。ここ数年、ツイッターのアカウントもボットが急増しており、四八〇〇万ものアカウントがボットという研究がある。ソーシャルメディア用にプログラムされたボットは、人間よりもはるかに高速で、人間に似た行動や書き込みをすることもできる。

ボットはネットに入って徘徊する「クローラ」として使われることが多い。クローラはスパイのようなもんで、利用者が知らないうちにウェブ上の文章や画像などを取得し、自動的にデータベースにダウンロードする。検索語によって必要な情報を探し、検索エンジンのデータベースや統計調査に利用され、普通はすぐには悪影響をおよぼさない。

ネットセキュリティー会社のインパーバ・インカプスラ社のボットデータ流通量報告によれば、過去五年間、ネットのデータ流通量を分析した結果、半分以上に人間のクリックや足跡がみとめられたのは二〇一五年だけで(五三%)、ほかの年はすべて過半数がボットによるものであった。ボットが多くみとめられた二〇一三年は、三八・五%が人間によるもの、残りの六一・五%がボットであった。

二〇一六年で見てみると、ボットの活動は全ネットデータ流通量の五一・八%で、人間によるものは半分以下の四八・二%であった。


2016年以降、ツイッターのアクセス数の内の半分以上はボットが占めるようになっていたという話ですが、案外、そんなものなのかもね。更に、ツイッターに関しては、次のように述べられている。

ソーシャルメディアの分析で世界的に知られるSysomos社の調べによると、現在、ツイッターのアカウントのわずか五%が、全体の七五%の書き込みを行なっているということだ。つまり、少ないアカウントから大量のメッセージが発信されているということになる。そして、ツイッターの書き込みの二四%はボットによる。

ボットはネット上で簡単に購入できるようになった。試しにネット検索してみると「ボット、売ります!」というサイトがいくつも出てくる。


なんだか知らない間に、凄い事になってしまっているっぽい。それでも、「まぁ、ツイッターの話でしょ? 世界水準はフェイスブックだから」と思うでしょ? しかし、フェイスブックの方が重症かも知れない。(例によって、着色文字は引用です。)

ネット上では、ボットだけではなく、フェイスブックの「いいね!」ボタンも購入することができる。

「『いいね!』ボタンを買う」と検索するとフェイスブックの「いいね!」ボタンの価格一覧が表示された。そして、「いいね!」ボタンだけでなく、「ツイッター、インスタグラム、ユーチューブなど、それぞれのソーシャルメディアに応じて、フォロワー、アクセス数やクリックを増やせます」というサイトなど、「ソーシャルメディアマーケティング対策」を提供するさまざまなサイトがある。

バイフェイクライクス(Buy Fake Likes)のサイトには、「上質の『いいね!』ボタンを迅速に、一〇〇〇個をわずか一〇ドルあるいはそれ以下で配達します!」とある。


アクセス数だけにあらず、現在ともなるとボットによるツイートやSNS上の「いいね!」も金銭で買えてしまうようになっており、しかも、それらの評価によってインターネット検索順にも影響され、何が何だか分からない状態になってきているという。「いいね!」は、どのように配達されているのかというと、何と言う事はない、インド、フィリピン、バングラディシュなどには「クリック牧場」なるものがあり、そのクリック牧場なる狭い部屋には労働者がいて、「いいね!」ボタンをクリックし続けたり、ツイッターのフォロワー1000人分を僅か1日1ドルで集めているのだそうな。

何故、そんな事をするのかというと、これも自明でもありますが、今日ともなるとSNSのアクセス数の多寡によって、ランキングが形成され、その上位ランキングになると金銭的利益に結びつくのからであるという。確かに、6〜7年前にNHKスペシャルでもグーグル検索の上位に表示される事が大きな利益になるので、おかしな事が起こっていると報じた番組を視た記憶がある。現在ともなるとインターネット検索の8割をグーグルが占めるようになっていますが、これが何を意味しているのか…。

因みに、先日、触れた「ダックダックゴー」を実際にダウンロードして私も使用していますが、特に問題なく使用できています。ダウンロードした後にブラウザの設定⇒詳細設定を操作してみると、新たに追加されているダックダックゴーがあり、ダックダックゴーに切り替えると、あら不思議、ホントに広告が表示されなくなる。

マイクロターゲット広告なども既に身近になっており、思えば、ネット広告は、勝手に私の居住地区などを考慮して効果的な広告がネット上に表示される。それは裏返せば各ユーザーのネット広告の表示を司っているネット上のアルゴリズムが「この利用者はどこそこに居住している人だ」という前提で、その人に対しての最善のネット広告を表示しようとするので、その居住地域の店舗などをこちらの指定していないのに表示するようになっているのだ。このマイクロターゲット広告みたいなものは、ダックダックゴーにしても表示されるよう。

また、ケンブリッジ大学のサイコメトリックスセンターがの研究員がまとめた『個人の性格と特質は、デジタル記録に残された行動から予測できる』という論文が、米国科学アカデミー紀要(2013年4月9日号)に掲載された。それによるとフェイスブック上のユーザーが「いいね!」ボタンを68個分ほど分析すれば、そのユーザーのプロフィールを浮き彫りに出来るというものであったという。

ユーザーの人種、年齢、同性愛者であるか否か、支持政党は民主党か共和党か、など、どれも高い確率で確定できるというのだ。ただし、分析はそこで終わらない。

「いいね!」ボタンを更に一五〇個、三〇〇個と重ねて分析すると、学歴、知能指数、宗教、酒やたばこを好むか、麻薬を使っているかということのほか、両親が二一歳までに離婚しているかどうか、といったところまで高い確率で判明する。

さらに、誰とどのような関係にあるか、誰が伴侶であるかということもわかる。そしてカップルの共通の友人関係やスマホでの電話記録、ブログなどへの書き込みやソーシャルメディアの発信内容などを分析すると、二ヵ月以内に二人が別れる確率まではじき出すことができるという。


そんな事まで出来ちゃうらしい。

これ、取り返しつきませんな。しかも、この話、実はポピュリズム(大衆迎合)と関係しているという。しかも、それを可能にしているのはデジタル社会らしい。

更に、よく言われている事ですが、デジタル社会の将来に起こる懸念はフェイクニュースなどの蔓延と、既にニュースをシェアする余力そのものが社会から喪失している事だと指摘している。

二〇〇〇年代初冬に成年期を迎えた「ミレニアル世代」の若者は、フェイスブックで政治に関するニュースをシェアすることにあまり関心がないという。次世代の若者たちは生まれたときからスマホをはじめとするデジタルのガジェット(小道具)に囲まれて育った「ポスト・デジタルネイティブ世代」だ。

いまはまだアナログ世代とデジタルネイティブ世代が共存している。あと一、二世代が過ぎれば、完全にアナログ世代がいなくなる。そのとき、デジタルネイティブ世代の住む世界はどうなっているのであろうか。


確かにねぇ…。基本的には対人関係は冷え込んで、押し付けられた多様性(ホントは非多様性)の中で、社会を維持していけるのかどうか…。なんでもかんでもハラスメントに該当にしないかビクビクとしながら人間関係を維持していくのも難しそうだし。次世代の事ながら、内心では完全に近未来SF映画みたいな世界になっているような…。