ヒストリーチャンネルで「ノストラダムス・エフェクト」で「ヒトラーの呪い」(第6回)を視聴。

ヒトラーがオカルトかぶれであった事は、改めて確認することになりましたが、ヒトラーが自殺をした日というのは1945年4月30日だったそうで、この「4月30日」という日付に意味があるという。北欧というべきか、ドイツというべきか、まさしく『ファウスト』にも描かれていた「ワルプルギスの夜」と呼ばれる日付であった、と。この「ワルプルギスの夜」とは、どうも古い習俗がキリスト教と結び付いたまま、残ったものであり、その4月40日の夜に魔女たちが集結するという伝統的祭祀があり、意味合い的には「魔女の夜」になる。その日にオカルトかぶれであったヒトラーは自殺している。その事を以って、〈ヒトラーの呪い〉であると解釈する人たちを紹介していた。どういう意味かを今一度、説明すると、「ワルプルギスの夜に死んだヒトラーは、きっと甦るだろう」という趣旨のオカルトを後世にも残したという訳です。

〈ワルプルギスの夜〉というワードは、ゲーテの戯曲『ファウスト』でも大きな大きな意味合いを持っている。まさしく「魔女たちの宴が開かれる晩」であり、各地から魔女たちがブロッケン山に集まってくるという特別な日なのだ。実際に『ファウスト』を読んでみると、非常に大きな意味合いを持っている事に気付かされる。

そもそも私が『ファウスト』を読み終える事ができたのは『金枝篇』が関係していてる。おそらく『金枝篇』に目を通していなかったら『ファウスト』を読み終える事は出来なかったと思う。何故かというと『金枝篇』に目を通す事で、現在のキリスト教文化した欧州文化とは異なる〈キリスト教以前の欧州文化〉に気付けたから――であった。おそらくはドルイド教などの多神教が元々は北欧にあったが、それが後にキリスト教化された。このことによって「欧州はキリスト教化された」と語り継がれている。しかし、違うのだ。「欧州文化とキリスト教」とは融合したという説明の方が分かり易いかも知れない。キリスト教の方こそが欧州化されている部分が大きく、欧州史では封建主義体制は権威づけの為に宗教を利用したので、欧州の秩序体制にはキリスト教の教会権力が欠かせなかったという関係で、謂わば、持ちつ持たれつの関係。そのような歴史の中で、現行の欧州秩序が出来上がっている。

キリスト教は西洋化した。聖母マリア信仰や聖遺物崇拝がカトリックでは盛んである訳ですが、そもそもユダヤ教の異端から生じたキリスト教は、そのような教義を有していなかったと考えられる。それこそ、「ナザレのイエス」とて、今日では金髪にブルーアイといった如何にもな西洋人の容姿で描かれたりもする事がある訳ですが、おそらくはユダヤ人だった筈であり、現在の中東地方の人たちの容姿に近かった筈であるという。では、何故、カトリック世界では強烈な聖母マリア信仰があるのかというと、豊穣の女神を祀るというキリスト教以前にあった欧州文化の習俗をキリスト教化させたから。サンタクロースに係る逸話であるとか、ハロウィンという慣習であるとか、それらも同じで、おそらくはキリスト教とは関係がなく、それよりも古層の習俗・祭祀と密接に関係している。そして欧州秩序が確立されてゆく中で、根強い習俗はキリスト教化され、他方で非キリスト教的なものについては「魔女」であるとか「悪魔」といった概念に押し込めたという訳です。

これが分かると、エクソシスト(悪魔祓い)の習俗であるとか、そういったものが、どういう性質なのかが分かるようになる。また、少し角度が異なりますが、いわゆる聖体拝領と呼ばれる儀式がありますが、パンとワイン、それは聖体に模した肉と血とを体内に取り入れるという意味合いでは原始宗教にして普遍宗教である事にも気付けるかも知れない。『金枝篇』でも「何故、生贄と呼ばれる習俗は世界各地に存在しているのか?」から〈カニバリズム〉や〈王殺し〉を捉え直している。実は、この世界は、中々に悪魔的に発展した系譜であり、他人を食らうことによって一人前として認識されてきたと考えられる。「食らい、食らわれる」という世界なのだから、食われる前に食う。聖なる力があるのであれば、その聖なる力を食して体内に摂取し、自らが聖なる力を得ようとする。そういう思考は、実は原始世界では普遍的な思考であった可能性が高いという事を『金枝篇』は示しているのだ。

なので、ゲーテがライフワークとして取り組んだという戯曲『ファウスト』には冒頭からノストラダムスの「諸世紀」(予言書)が登場するという訳です。劇中のファウスト博士は、世界の仕組みを知りたいと願い、且つ、すべての快楽を手に入れたいと欲し、その願望を叶えられるのであれば、魂を悪魔に渡してもいいという契約をメフィストフェレスと結ぶという粗筋となった。(ヒストリーチャンネルの「ノストラダムス・エフェクト」でも触れられていましたが、16〜19世紀にかけて「ノストラダムス」の予言書は欧州の知識人層に広く知れ渡っていたというのが史実であり、「ノストラダムなんて日本以外では全く知られていない」といった言説こそが正真正銘の〈トンデモな言説〉である。)

また、ナチスの紋章として知られる鉤十字は、トゥーレ協会という秘密結社の紋章にもある。おそらくトゥーレ協会の紋章からナチスの紋章はヒントを得たと考えられる、そういう問題にも言及していた。

ヒトラーに、あの天才的な演説術を教えたのはエリック・ヤン・ハヌッセンという超能力者にして奇術師であったという話にも触れていたかな。ハヌッセンはヒトラーを霊視して、ヒトラーは世界を変える人物であると霊視した。そしてハヌッセンはヒトラーに演説手法から身振り手振りまでを教えてみせた。ハヌッセンは「ナチスが政権が奪取する」と予言したが世間は物笑いの種にしたが、実際にナチスは勢力を拡大し、1931年に国会議事堂放火事件の予言を的中させる。裏では、ヒトラーと繋がっており、オカルト面では支えていた人物だったという訳です。しかし、このハヌッセン自身がユダヤ人であった事で、1933年にナチスによって殺害された――と。