14日付朝日新聞の教育面（20面）に掲載されていたインタビュー、「柄谷行人回想録」から摘まみ食い的な引用を――。

自分は、観念のための観念にはまりこんで、現実との関係を失っている、と思った。

とはいうものの、僕の考えは形式体系について突き詰めていけば、どうしてもスピリチュアルな、目に見えない領域は、ただ否定して済む問題ではなかった。だけど、僕は、それを理論化するもできず、精神的に混乱した。〜略〜

柄谷行人は、エドワード・サイード（思想家・批評家）とスピリチュアリティ―について会話を交わした経験があるという。サイードは「自分はそういうものに何の関心もない」と返答したが、その際に〈自分は、観念のための観念にはまりこんで、現実との関係を失っている〉と思ったという引用部分に繋がっている。つまり、サイードは「霊性になんて関心がない」と語ったが、柄谷行人は霊性を捨て切れていない自分に気付いた。しかし、結局、霊性を切り捨てることはできなかった。

80年前後に僕が直面した問題は、�爐△寮き瓩梁減澆任靴腓Α８魎考夕阿�もたらす力も、目に見えるような力じゃない。マルクスが物に憑依する力を�猜�神�瓩噺討鵑世茲Δ法⇔酖�な力なんですよ

振り返れば、80年前後に僕が悩んでいたのは、あくまで哲学的、理論的な事柄で、いわば自分の頭の中の問題だった。だけど、今回はもっと現実的な、切実な問題に関わっている感じがあった。このままいけば世界戦争だと思っていたしね。

僕はサイードのように、霊的なものについて現実性を認めない、ということはできない。霊なんていうと怪しまれるし、実際そういう場合も多い。だけど、現に霊的な力が働いているんだから、しょうがない。むしろ、その力をみなければ現実を理解できない。だから、�猯遒領廊瓩箸靴�言いようがないものについては、そう言うことにした。

近年、ロシアとウクライナ、パレスチナも大変なことになっている。世界中でいっぺんに出てきたでしょう。こんなにもろいものだったのかと思います。

他方で、僕は交換様式を考える中で、こうなることは分かってもいた。オルタナティブは、むしろ世界戦争によって出てくるかもしれない。そうならざるをえないところに追い込まれて……

哲学界のノーベル賞に該当するバーグルエン哲学・文化賞を受賞（2022年）したという柄谷行人にしても、そういう話をしている訳ですが、昨日、自民党総裁選への不出馬を表明した岸田総理は、その会見の中で自らが打ち出した「新しい資本主義」なるものが次代に花開くものになる旨の自画自賛コメントをしていた。もう、２周とか３周とか５周ぐらいズレてしまっているという事かも知れない。

それと政府は国民に対して、預貯金ではなく、株式等の金融商品への投資の促進についても〈新しい資本主義〉の枠組みの中の一つである事を認めていた。つまり、国家方針、国策である事を認めているかのようにも聞こえたかな。