週刊文春２月15日号の能町みね子さんの「言葉尻とらえ隊」から少し引用します。
今回は「週刊文春擁護」の内容です。自誌で擁護する後ろめたさはあるが、それは置いてといて。
園子温が週刊誌に対して提起した訴訟が和解した、というニュースをめぐり、GACKTがＸで週刊誌批判のコメントをしていました。彼は前にも「売れればいいだけの週刊誌にモラルはない。（略）色んな記事を書かれたボクが言うんだら間違いない」と書き、かなり個人的な怒りを爆発させている。
ちなみに園が問題としたのは「園子温が女優に迫った卑劣な条件『オレと寝たら映画に出してやる！』」という週刊女性の記事ですが、声明によれば、記事の内容に異なる部分があるから取り下げさせたということになります。加害の事実がなかったと決まったわけでもなければ、被害者と和解したわけでもない。
なにしろ、告発した女性は自死しているのである。
それでも、週刊誌に記事を取り下げさせたことにGACKTは快哉を叫んでいる。週刊誌は敵なのだ。
能町さんが取り上げていたのは、GACKTさんの反応を取り上げて、そこに週刊誌憎悪の感情のようなものが読み取れてしまうという意だ。もう、殆んど同じ意見ですかね。一時的なものであったにしろ、一部の人たちに起こった文春バッシングは明らかに異常な現象であったと思う。根底には私怨があり、それが松本人志さんの性被害疑惑報道を巡って発現しているという感じ。同コラムにはイラストが添えられており、そこには〈東国原氏〉と思われる人物が「文春は２億以上、売っている！」のように発言しているイラストになっている。で、そうした週刊誌や週刊文春に私怨を持つ人たちの声の扇動されて、ＳＮＳ等では「松っちゃんの記事で幾ら儲けやがったんだ！」とか「儲けられればなんでもいいのか！」といった週刊文春のモラルを攻撃する声に挿げ替えられてしまっている。
物事は真っ直ぐに見るべきだ。週刊文春の文藝春秋社は伝統的に「当事者主義」という手法を採用しており、仮に渦中の人物に対してでもあっても、その人物の意見を掲載するという方針を採ってきたと語られている。だから、或る時期には総スカン状態にあった故・石原慎太郎の寄稿した文章が長々と掲載されたりしたし、その「当事者主義」は同社にとっては発足間もない頃からの基本方針になっている。そういう意味では節操はないが、そういう部分を持っていたからこそ、出版不況の中にあってもしぶとく生き残っている総合週刊誌になっている。当事者主義というのは不思議でイデオロギー的には敵対していると思われている旧ニューレフト系の人物にまでインタビューをしたりして「まさか私に取材が来るとは思いませんでした。折角の機会なので…」と、敵対しているような人物にも当事者を直撃するというのが伝統になっている。スポーツ紙のように番記者がいて、それが日頃から懇意にしていて、懇意にしている人たちから取材すべきテーマを紹介してもらっているというスタイルではないのだ。
２月８日号には松本人志さんの問題を巡って、橋下徹氏、デーブ・スペクター氏、江川紹子氏に文春の報道スタイルについて語らせるという企画をしていた。15日号でもしているけどね。デーブ・スペクターさんあたりの意見に多くの者は首肯するのではないかなと思った。それは、松本さんが第一報を受けた後に「松本アウト〜！」という具合に反応し、素直に行為を認め、謝罪や反省の弁を語る方向性にもっていっていたなら、こうまで拗れなかったのではないかという指摘であった。
その証拠に性被害を受けたとされている女性は（おそらく）現時点まで被害届を出していない。この「被害届が出されていない」という部分についてもテレビのワイドショウでは現職の弁護士まで巻き込んで「被害届が出されていないのに、何故、文春は報じているのでしょう？ 文春のモラルの問題ではないですか？ 週刊誌にモラルなんてない！」のような歪曲した報道にしてしまっていた。この部分で「女性自身」と「週刊文春」も一緒くたにして〈週刊誌〉全般へ主語を拡大させていますが、その辺りのマスメディアの対応は酷かったと思う。ワイドショウに出演しているのはスポーツ紙の記者や芸能記者や、どうも人気者になりたいという願望を持っているタイプの弁護士や学者、元政治家や高学歴タレントらであったが、彼らが展開させた婉曲的な擁護論は、これまた婉曲的に告発者を嘘つき呼ばわりするような指摘になっており、複雑な思いを抱えながら告発に踏み切った人たちの感情を逆撫でするような報道になっているように見えた。
週刊文春の２月８日号では、文春10人目の証言者となる元セラピストであったというＩ子さんが、１月13日に警視庁渋谷署の刑事課に相談に出向いた事が掲載されており、かなり、事態を悪化させてしまっている（いた）としか思えないのだ。警視庁渋谷署刑事課では既に時効が成立している2014年の事案であったので被害届は受理しなかったが、１月19日に「被害の相談を受理した事とし、その相談内容を記録として残している」旨、Ｉ子さんの夫に連絡があったという。
なので、本当の意味でモラルが問題なのはテレビ局の側のモラルのように思える。基準を設けて、放送禁止ワードを設定しますというのがモラルとか倫理なのではなくて、テレビ裁判をやってはいけないとか、メディアリンチをしてはいけないというのが、モラルや倫理の一丁目一番地だ。一丁目一番地が守れていない媒体がモラルや倫理を語り、自分たちは正義のつもりになっているというのであれば、そりゃあ、滑稽だ。その人たちの頭の中こそが御目出度いって事になる。同じく一丁目一番地か二番地あたりが「疑わしきは罰せず」に類するものでしょう。それに気付かないあたり、如何にもコンプライアンス思想に毒されている現代メディアの正体、その醜悪な正体を晒しているって事だと思う。
今回は「週刊文春擁護」の内容です。自誌で擁護する後ろめたさはあるが、それは置いてといて。
園子温が週刊誌に対して提起した訴訟が和解した、というニュースをめぐり、GACKTがＸで週刊誌批判のコメントをしていました。彼は前にも「売れればいいだけの週刊誌にモラルはない。（略）色んな記事を書かれたボクが言うんだら間違いない」と書き、かなり個人的な怒りを爆発させている。
ちなみに園が問題としたのは「園子温が女優に迫った卑劣な条件『オレと寝たら映画に出してやる！』」という週刊女性の記事ですが、声明によれば、記事の内容に異なる部分があるから取り下げさせたということになります。加害の事実がなかったと決まったわけでもなければ、被害者と和解したわけでもない。
なにしろ、告発した女性は自死しているのである。
それでも、週刊誌に記事を取り下げさせたことにGACKTは快哉を叫んでいる。週刊誌は敵なのだ。
能町さんが取り上げていたのは、GACKTさんの反応を取り上げて、そこに週刊誌憎悪の感情のようなものが読み取れてしまうという意だ。もう、殆んど同じ意見ですかね。一時的なものであったにしろ、一部の人たちに起こった文春バッシングは明らかに異常な現象であったと思う。根底には私怨があり、それが松本人志さんの性被害疑惑報道を巡って発現しているという感じ。同コラムにはイラストが添えられており、そこには〈東国原氏〉と思われる人物が「文春は２億以上、売っている！」のように発言しているイラストになっている。で、そうした週刊誌や週刊文春に私怨を持つ人たちの声の扇動されて、ＳＮＳ等では「松っちゃんの記事で幾ら儲けやがったんだ！」とか「儲けられればなんでもいいのか！」といった週刊文春のモラルを攻撃する声に挿げ替えられてしまっている。
物事は真っ直ぐに見るべきだ。週刊文春の文藝春秋社は伝統的に「当事者主義」という手法を採用しており、仮に渦中の人物に対してでもあっても、その人物の意見を掲載するという方針を採ってきたと語られている。だから、或る時期には総スカン状態にあった故・石原慎太郎の寄稿した文章が長々と掲載されたりしたし、その「当事者主義」は同社にとっては発足間もない頃からの基本方針になっている。そういう意味では節操はないが、そういう部分を持っていたからこそ、出版不況の中にあってもしぶとく生き残っている総合週刊誌になっている。当事者主義というのは不思議でイデオロギー的には敵対していると思われている旧ニューレフト系の人物にまでインタビューをしたりして「まさか私に取材が来るとは思いませんでした。折角の機会なので…」と、敵対しているような人物にも当事者を直撃するというのが伝統になっている。スポーツ紙のように番記者がいて、それが日頃から懇意にしていて、懇意にしている人たちから取材すべきテーマを紹介してもらっているというスタイルではないのだ。
２月８日号には松本人志さんの問題を巡って、橋下徹氏、デーブ・スペクター氏、江川紹子氏に文春の報道スタイルについて語らせるという企画をしていた。15日号でもしているけどね。デーブ・スペクターさんあたりの意見に多くの者は首肯するのではないかなと思った。それは、松本さんが第一報を受けた後に「松本アウト〜！」という具合に反応し、素直に行為を認め、謝罪や反省の弁を語る方向性にもっていっていたなら、こうまで拗れなかったのではないかという指摘であった。
その証拠に性被害を受けたとされている女性は（おそらく）現時点まで被害届を出していない。この「被害届が出されていない」という部分についてもテレビのワイドショウでは現職の弁護士まで巻き込んで「被害届が出されていないのに、何故、文春は報じているのでしょう？ 文春のモラルの問題ではないですか？ 週刊誌にモラルなんてない！」のような歪曲した報道にしてしまっていた。この部分で「女性自身」と「週刊文春」も一緒くたにして〈週刊誌〉全般へ主語を拡大させていますが、その辺りのマスメディアの対応は酷かったと思う。ワイドショウに出演しているのはスポーツ紙の記者や芸能記者や、どうも人気者になりたいという願望を持っているタイプの弁護士や学者、元政治家や高学歴タレントらであったが、彼らが展開させた婉曲的な擁護論は、これまた婉曲的に告発者を嘘つき呼ばわりするような指摘になっており、複雑な思いを抱えながら告発に踏み切った人たちの感情を逆撫でするような報道になっているように見えた。
週刊文春の２月８日号では、文春10人目の証言者となる元セラピストであったというＩ子さんが、１月13日に警視庁渋谷署の刑事課に相談に出向いた事が掲載されており、かなり、事態を悪化させてしまっている（いた）としか思えないのだ。警視庁渋谷署刑事課では既に時効が成立している2014年の事案であったので被害届は受理しなかったが、１月19日に「被害の相談を受理した事とし、その相談内容を記録として残している」旨、Ｉ子さんの夫に連絡があったという。
なので、本当の意味でモラルが問題なのはテレビ局の側のモラルのように思える。基準を設けて、放送禁止ワードを設定しますというのがモラルとか倫理なのではなくて、テレビ裁判をやってはいけないとか、メディアリンチをしてはいけないというのが、モラルや倫理の一丁目一番地だ。一丁目一番地が守れていない媒体がモラルや倫理を語り、自分たちは正義のつもりになっているというのであれば、そりゃあ、滑稽だ。その人たちの頭の中こそが御目出度いって事になる。同じく一丁目一番地か二番地あたりが「疑わしきは罰せず」に類するものでしょう。それに気付かないあたり、如何にもコンプライアンス思想に毒されている現代メディアの正体、その醜悪な正体を晒しているって事だと思う。
